Mistery Circle

2017-09

《 巻き戻しは走馬灯のように 》 - 2012.07.30 Mon

《 巻き戻しは走馬灯のように 》

 著者:李九龍





《 ローレライの憂鬱 》 - 2012.07.27 Fri


 デンマーク コペンハーゲン――

 そこをなんとか頼むよと、混雑するホテルのロビーの中で、声が聞こえた。
 ロビーは溢れる客でごった返していた。季節外れな突然の豪雨の為に飛び込んで来た客達ばかりなのである。人の発する熱と空気に混じる湿気が妙な生暖かさを感じさせる、秋の日の夕暮れの事であった。
 いや、申し訳ありませんが、今日はもうどの部屋も埋まってしまって――
 頼むよ。どこでもいいんだ。尚もその声の主は、カウンター奥のホテルマンに向かって問答を続けている。
 そう言われましても無理なものは無理でして――と、人と人の擦れ違う隙間から、困惑と迷惑の入り混じった感情をあらわにしたホテルマンの姿が見えた。
 その時、「ちょっと待って」と、やけに恰幅の良い、口ひげを生やした年輩のホテルマンがその間に割って入った。
「お客さん、どこから?」
 聞かれてそのコート姿のしつこい客は、雨で濡れた帽子を手でかぶり直しながら、「アメリカですよ」と答え、そしてのんびりとした口調で、「フロリダ、マイアミから」と続けた。
「それは災難でしたね。――いや、部屋が無い事もないのですが」
「支配人!」
 若いホテルマンが、非難をするような口調でそう咎める。だがその支配人と呼ばれた男性は、立てた指でそれを制し、「お客さん、一つだけ質問してよろしいですか?」と聞いた。
「えぇ……なんでも」
 コートの男は肩をすくめてみせる。
「本を、お持ちですか?」
「本――? どうして」
「いや、何か本を一冊、その鞄の中に入れているかどうかをお聞きしたい。質問はただそれだけです」
 言われてコートの男は、即座に、「いいや」と答えた。「残念ながら僕は、大の活字嫌いでね。本どころか天気予想のニュースですら読めない始末で」と、外を指差し軽い口調で返す。
「なら」と、支配人は言った。
「一つだけ、部屋はあります。但し」
 但し、何? と言わんばかりに、コートの男は鼻を鳴らした。
「“いわくつき”なお部屋です。安眠は全く保障出来ません」
「いいね」
 コートの男は熱のこもった声でカウンターに身を乗り出す。
 そうしてその男――リュート・D・クロフォードは、愛用のブリムダウン帽のつばを上げながら、「実はそう言うサービスのある部屋が好きなんだ」と、愛嬌のある笑顔でそう言った。



《 ローレライの憂鬱 》

 著者:李九龍






《 パラッツォ・ヌオーヴォの幽霊 》 - 2012.07.26 Thu

《 パラッツォ・ヌオーヴォの幽霊 》

 著者:李九龍





《 灰燼の街 》 - 2012.07.24 Tue


 著者:李九龍





《 The Moon Wall 》 - 2012.07.21 Sat


 著者:李九龍


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