Mistery Circle

2017-05

《 Mystery circle 》 - 2011.12.20 Tue

2012年度オススメMC《《 ☆☆☆☆☆☆☆ 星七つ作品 》》


MC Vol. 46 掲載


《 Mystery circle 》 

 著者:知





 がちり、と音を立て錠が開いたのを確認すると私は更に奥へと進んで行った。
 最奥部と思われる部屋、そこは闇としか言い様がない場所だった。
 一寸先も見えない程の深い闇に包まれているこの部屋に何があるのだろう。
 普通ならば恐怖を抱く程の闇の中にいるのに好奇心や興味という感情を抱くだけではなく私の心は平穏安穏としていて、その事が不思議であり又それが当然のようにも思えた。
 ああ、私はここで何かを探すためにここに来たのだった。
 それは何だっただろうか。とても大切な重要なものだった、いえ、それはものではなかったはず。そう、大切で重要なことだったはず。
 でも、それが何か今の私には全く思い出すことができなかった。
『……さん……てく……さ……』
 遠くから何か聴こえてきた。聞き覚えのある声だ。誰の声だったか。
 その声に引っ張られるように私の意識が次第にはっきりしていく事に気づく。そして、意識がはっきりとしていくに従い最奥部から遠のいていく。
 ああ、結局今回も何も手に入れることができなかった。
 そう思ったとき、私の意識は完全に戻った。

「オトハさん、起きてください。朝ですよ」
 サラの柔らかい声が聴こえてきた。軽く揺すりながらなのだけれど、それが逆に眠りに誘っている感じもする。
「もう、そんな時間……?」
「はい。もう、朝食の準備もできていますから早く着替えて降りてきてくださいね」
 私が起きたのを確認するとそうとだけ言い残し、私が寝ている部屋から出て行った。私が起きたのを確認したらすぐに部屋を出て行ったところをみると、他の仲間を起こしに行ったのだろう。

 覚醒の呪文は使えるのにわざわざそれを使わずに皆を起こすのはサラの優しさの現われなのだろうか。前に催眠の罠にかかってしまい覚醒の呪文を受けて睡眠状態から戻ったことがあったけど、そのときに凄い不快感が襲った事を思い出した。熟睡している最中に近くで何かが爆発したような大きな音をたてられて起こされた感じだった。
 あーそういえば、あまりに起きないようだったら使うって言ってた記憶がある。確かジンがよく覚醒の呪文で起こされていると聞いた記憶もあったような。
 あれを何回も受けても寝坊するのか。思っているよりも凄い人物かもしれないジンは……いえ、鈍いだけね。
 いくら戦士であろうとあの鈍さはだめだと私は思うのよ。
 骨が折れているのに気づかずに戦闘を続けて、戦闘が終わった後に私が骨が折れている事を指摘してから痛みに気づき痛がり始めたのはいい笑い話。
 おっと、思い出し笑いをしている場合ではなかった。早く着替えて降りないと。あまりに遅いとサラからお叱りを受けてしまう。


「いただきます」
 仲間全員がテーブルに座るとそう唱和して食べ始めた。
 ジンが朝からボロボロに見えると事からすると覚醒の呪文を受けたのだろうか。
「勇者様、今日はどうするのですか?」
 食事の途中でサラが勇者であるレイにそう尋ねた。
「んー今日は村の周辺の捜索かな。村の様子だと大きな事件も起こっていないようだし、明日には次の村に出発でいいと思う」
「わかりました」

 この世界には神族、人間族、魔族の大きく分けて三つの種族が住んでいる。
 この世界ができた当初は人間族しかいなく、後に外の世界から神族と魔族がこの世界にやってきたとされている。
 最初は別種族間で細かい争いはあったものの、三つの種族は神族は天界、人間族は地上界、魔族は地下界、というように住処が分かれていたため、互いに深く干渉することはなく平和に三つの種族は暮らしていた。
 しかし、魔族がこの世界全体の支配者となるべく地上界に侵攻を開始し後に人魔戦争と呼ばれる大きな争いが始まった。
 大きな魔力を持つ魔族に非力な人間族は打つすべがなく、無駄に抵抗して滅ぼされるか大人しく隷属するかのどちらかしかないと絶望に満ちたとき手を差し伸べたのが神族だった。
 神族の加護を得た者――後に勇者と呼ばれる事になった――とその仲間達が魔王を激闘の末打ち破り、魔族を地下界へと送り返すことができた。
 それ以来、魔族が地上界へと侵攻を試み勇者がそれを追い返す、という事を繰り返している。
 今、まさに新たな魔王が誕生し地上界へと侵攻し、私達は勇者であるレイと共に魔王討伐の旅をしている最中なのだ。

「しかし、この周辺は魔物も弱いし大きな事件も起こってないよな。危険もない場所にこんなにゆっくりしていていいのか?」
 朝食を食べて少し回復したのだろうか、ボロボロだったジンがそう言った。
「古い文献を調べてみると魔物の強さとかで魔王の根城にどれくらい近づいているかある程度判断可能ということが分ったわ。急に強くなる事もあるみたいだし、今みたいに慎重に行くのが正解だと思うわ」
 ジンの言葉にそう返答した。
「ボクとサラとジンで村の周辺を捜索。オトハはこの村に残されている文献を調べておいてくれるかな」
「了解。まぁ、知らない事が書かれているのはなさそうだけどね。わざわざ、全員で捜索する必要もないし異論はないわ」
 レイの言葉にそう返事をすると各自準備のために泊まっている部屋へと戻っていった。


「まぁ、この程度よね」
 重要な文献は村長宅に保管されているとの事だったので村長宅に赴き、閲覧の許可を得て保管されている部屋へと入り本棚を見てそうぼそっと呟いた。
 百冊もないだろうか。小さな村だから十分に多いほうではあるのだけれど。
 これぐらいなら一、二時間あれば終わるかな。早く終わらせても暇な時間が増えるだけなんだけれど。
 そんな事を思いながら十数冊の本を一度に取り魔法を使い浮かせ、十数冊の本を同時に読み始めた。
 勿論、そんな読み方をしては本の詳しい内容は分らない。けれど、本を選別するには十分。選別基準は単純。気になる内容が書かれているか否か。
 数十分で選別作業を追え、五冊の本が選別作業に引っかかった。
「と、言ってもどれも今までで分っている事の再確認にしかならなさそうなんだけどね」
 その程度の本なら二、三冊同時に読んでも大丈夫なのだけれど、読み終わってもレイ達の捜索が終わるまで暇になるだけ。
 そう思い一冊ずつゆっくりと読むことにした。

「予想外の収穫があったわね」
 五冊全部読み終え本を元に場所に戻しながらそう口に出していた。
 厳重に保管されていても不思議ではない内容が書かれている本があった。何故、こんな村にあんな本が紛れ込んだのやら。
 まぁ、普通に読む分にはなんの変哲もない内容だから誰も気がつかなかったのだと思う。
 魔法を使って解読しないとこの本の著者が真に書き残したかった内容が分らないようになっている。
 その内容はとてもではないけれど仲間達に言うわけにはいかない物だった。いえ、例え言ったとしてもあまり意味がないかもしれない。
 書かれていたものだけだとそれがどういう事を意味するのかわからないだろうから。
 ただ、その本のおかげで私が前から考えていたあることが真実味を帯びてきた。
 それが真実なら人間族の間で常識とされているあることが完全に否定される事になる。
 私達魔法使いは知識欲の塊である。
 自分の危険も省みず只管に知識を追い求める。地位も名誉も財産も要らない。ただ、知識を求める。それにより周りからどう評価されようと全く意に介さない。それが魔法使いだ。
 私も勇者の仲間になるまでは知識を得るために様々な危険な橋を渡ってきた。
 魔法使いである私としては嬉しい収穫だったけれど、勇者の仲間である私としては忌避したい収穫に自然とため息が漏れてしまった。
 過去の勇者の仲間となった魔法使いもこのような葛藤と戦ったのだろうか。
 それとも、ただ魔法学校を卒業し魔法が使えるだけの魔法使い(そういう魔法使いは魔術師と呼ばれる)が勇者の仲間になっていたのだろうか。
 自分の命だけならいくらでも知識のために危険な橋を渡ることはできる。
 でも、今は仲間の命がかかっていて、人間族の存亡もかかっている。迂闊な事はできない。
 取り合えず、仲間には収穫がなかったと伝えておこう。
 そう結論を下し、宿へと向かい歩き出した。
 

「これで終わり……かしら?」
 魔物の群れの最後の一匹を魔法で倒し、他に魔物がいないか警戒しながら一息を吐き私はレイにそう問いかけた。
「待って……うん、終わりみたいだね。皆、お疲れ様」
 私の言葉にレイは周りに魔物がいないかを確かめ、そう労いの言葉をかけた。
 レイは魔物の気配を感じることができる。魔法なのか、それとも勇者の能力かはわからないけれど他にも特別な能力をいくつか持っている。
 今まで誰一人として離脱することなく旅を続けられているのはレイの能力あってこそといっても過言ではないだろう。
「それにしても、魔物が強くなってきましたね。人を襲う魔物も少なくないみたいですし」
 回復魔法をかけおえたサラが憂えた声でそうぽつりと言った。
 神官という職業柄だろうか特に戦う能力がない人が傷つく事を嫌うサラにとって辛い状況だろう。
「魔物の動きが活発という事は魔王の根城に近づいてきた証拠、と考えていいのではないか?」
「そうね。でも、魔物が人を襲っているという事はやっと中間ぐらいまでたどり着いたという感じだと思うわ」
 ジンの言葉に私はそう返すと
「ん? どういうことだ?」
 ジンは首を傾げながらそう尋ねた。
「今までの魔王の地上侵攻に関する文献から色々な事がわかっているのよ。魔王の根城から遠く離れた場所では大人しい魔物が多く人を襲うことは滅多にないわ。それに弱いわね。中間ぐらいの場所だと気性が激しい魔物が多く人を襲うことが多くなるわ。強くはなるけれどその気性の激しさに比例した強さとはいえないわね」
 ジンの疑問に対しそこまで一気に言うと一呼吸入れ
「そして、魔王の根城の近くになると魔物が人を襲うことは殆どなくなるのよ。勿論、人が魔物の住処に近づいたり人から攻撃してきたら反撃はしてくるみたいだけれど。勿論、強さはそれまでの魔物と比べ物にならない強さになるみたいよ」
 と、説明した。
「なるほど、だから今は中間ぐらいというわけか」
 ジンが周りに転がっている魔物の死体を見てそう納得したように言った。
「まだ多くの文献を比較できてないから不確かかもしれないけどね」
 ジンの言葉に私が肩をすくめながらそう言うと
「オトハがいう事だしな。俺は合ってると思うぜ」
 と、何も根拠なしにそんな事を言ってきた。
「あんたね……もし、私が間違った事言ってたらどうするのよ。事次第によっては命に関わる事もあるんだから少しは自分で考えたり調べたりしなさいよ」
 どうもジンは私だけに限らず他の仲間の意見を鵜呑みにする傾向がある。それを正そうとすると
「考えろって言われてもな。俺は馬鹿なのは分っているし、古代文字どころか普通の文字すらまともに読めるか怪しいしな。だから、俺にとっては信頼できる仲間の意見を素直に受け入れるのが一番いいと思うんだよな」
 と、あっけらかんとそんな事を言ってきた。
「もし、私達が間違っていたらどうするのよ」
「お前達が間違った事を俺が正解が分るとは思えないし、信頼したのだから最後まで信頼するさ。お前達は十二分に信頼できると思っているからな。というか、俺が自分で考えた方が危険だと思うんだよな。例えそれが間違っていて俺の命が危険になったとしてもそれは俺が悪いのだし何も恨み言を言いはしないさ」
 私の言葉にそう即答しやがった。
 確かにジンは馬鹿だ。でも、馬鹿ではないのかもしれない。
 彼は戦士だ。そして齢三十半ばになろうとしているのだから今までに何度も危険な目にあっているはず。
 本当に馬鹿なら既に死んでいるだろう。信頼できるか否か。命を預けられる存在であるか否かは感覚でわかるのだろう。
 自分ひとりで全てができる必要はないのだ。自分ができない事は信頼できる誰かに任せればいい。
 当たり前の事だけどこれをできる人は少ないし、又、任せる人を間違えて失敗する人が多いだろう。
「ん? 俺変な事言ったか?」
「いや、そんな事ないよ」
「はい、そんな事ありませんよ」
 レイが微笑みを浮かべながらそう返し、サラもレイの言葉に同意した。
 全幅の信頼を寄せてくれる人に対してはそれに応えようと思うのが人間だ。
 こんなジンだから信頼して背中を任せられるのだ。
 レイもサラも同じ事を考えているだろう。三人ともそんなジンに対し微笑みを浮かべている。
「凄く納得できないんだが」
 私達三人が微笑んでいるのを見て気に食わないという感じでそう言うのを見て、誰とはなしに声を出して笑い始めた。
 色々な村や町、城の文献を見ることで色々分った事がある。
 今はまだ言えない事も多いけれど、ジンの信頼に応えるべく時がきたら話さないといけない。
 私はそう心の中で誓った。

 
 中間ぐらいまで達しただろうと思ってから約半年が過ぎた。
 けれど、まだ、魔王の根城にはたどり着いていない。
 これも、レイが可能な限り準備をしっかりとしてから進む。但し、魔物に襲われている村や町があればそこへできるだけ早く行き退治し、それから、又、元に束所に戻って準備の続きをする。という、効率という点ではかなり悪いといわざるを得ない行動をしているからだ。
 しかし、そのおかげで魔物の被害はかなり小さくなっているのは間違いないだろう。
 魔物に襲われている村や町があればそこへできるだけ早く行き退治し、とは言ったけど退治に向かって時点ではまだ襲われていない状態だったであろう事が殆どのはずだ。襲われている事を知ってからでは到着が間に合わないことが多いはず。それなのに全部間に合っているのだ。
 間違いなくレイは魔物に襲われようとしている場所がわかっている。
 これも勇者に与えられた力なのかとも思ったが、文献を見る限り魔王の地上界への侵攻の度に幾つかの村が滅んでいる。
 歴代の勇者も襲われようとしている場所が分っていて、けれど、魔王を倒すことを優先するために多少の犠牲は仕方ないとしてすぐに退治しに行かなかった可能性もある。
 そうであるとしたら、レイが何故、こうも犠牲を出さないようにしているのかが分らない。
 そして、襲われようとしている場所が分るのが歴代の勇者にはないレイだけの力だとしたらどのようにそのような力を身につけたのか分らない。
 歴代の勇者にない力という事はレイ個人として身に着つけている能力のはず。しかし、そんな力について文献で見たことも噂に聞いたこともない。
 レイは謎だらけなのだ。
 それは勇者として謎であるというだけではなくプライベートも謎なのだ。
 勇者としてではなく素のレイがあまり見えてこない。色々なやり取りで少し素が垣間見える事もあるけれど、すぐに勇者の顔に戻る。
 そういう様子を見ていると無理に勇者であろうとしているようにみえるのだ。
 レイは間違いなく勇者なのにどうしてここまで頑なに勇者であろうとするのだろうか。このまま進んでいくとどこかで簡単に折れてしまいそうな感じがする。
 レイは勇者としてどこかおかしい。
 そして、サラは歴代の勇者の仲間の神官としておかしく、ジンは歴代の勇者の仲間の戦士としておかしく、私も歴代の勇者の仲間の魔法使いとしてはおかしい。
 このおかしさがどこからくるのはわからない。ただ、それが魔王を倒すのに影響がなければいいのだけれど。
 そんな事を考えていたときにあの事件が起こった。


「皆、大丈夫?」
 レイは自身がボロボロにも関わらず、私達にそう声をかけた。
「な、何とか……」
「これは拙いわね」
 その言葉にジンは途切れ途切れながらそう返し、私はサラの様子を見て眉をひそめた。
「……す、すみません……そろそろ限……界で……す」
 息も絶え絶えに何とかそうサラが言った。
 本格的に拙くなってきた。サラは回復役。ただの魔物であれば回復役がいなくても何とかなるのだけれど
「ふむ、こんなものか? 今代の勇者とその仲間は」
 殆ど無傷の魔族が拍子抜けだというようにボロボロになっている私達を見下している。
 魔族と言っても見た目は人間と殆ど変わらない。
 分りやすい違いと言えば、桁外れの魔力と身に纏っている黒い瘴気と呼ばれているものだろう。
 この瘴気を受けると野生動物が魔物化し人を襲うようになると言われている。
 そして、瘴気のせいで普通の人間ではまともにダメージを与える事はできない。しかし、勇者はこの瘴気を弱める力を持っており、側に勇者がいるだけで仲間の私達もダメージを与えることができる。はずなのだけれど……
「瘴気は弱まっているのに、何でダメージを与えられない……んだ?」
 レイが肩で息をしながらそう悔しげに言い放つ。
 そう、瘴気は弱まっているのに傷を一つつけるのも苦労しているのだ。
 目の前にいる魔族は魔王ではない。という事は魔王はもっと強いはず。
 本当に勝てるのか。この魔族にも魔王にも。
 誰もそんな事は言わないけれど、そんな空気を私達を包んでいる。
 これは、本格的に拙い。
『皆、ここは逃げましょう』
 私がそう皆の心に直接語りかけた。中間を過ぎたあたりに伝心の魔法を全員にかけておいてよかった。
『で、でも……』
『無理に戦ってここで死んだら元も子もないでしょ。特に勇者のレイが』
 レイが何かを言おうとしたのを遮ってきつくそう言った。
 レイも分っているはずだ。逃げない限り私達は全員死ぬ事になる。
『逃げる手段はあるのか?』
 ジンがそう尋ねてきた。
『ええ。少なくともあなた達三人は生きて逃げることはできるわ』
『……そうか。なら、オトハに任せるしかないな』
 私が言葉に感情を全くのせず言った言葉に少し言葉に詰まりながらもそう返した。
 こういうときに実戦経験の多い戦士が仲間にいることがありがたく感じる。
『念のため聞くが、オトハも逃げられる可能性はどれくらいあるんだ?』
『ん、五分五分……かしら』
『五分五分か……今の状況を考えたら悪い賭けではないな。レイもいいな?』
 ジンがおどけた感じでそういうと、サラの様子をちらと見、レイに確認を取った。
 サラが回復魔法の使いすぎで意識を失っている。
 けれど、意識を失うまで回復魔法をかけてくれたおかげで、ジンもサラを担いで逃げるまで回復したはず。
『っ……了解』
 意識を失ったサラを見、レイもこの場は逃げる事に賛成した。
『私が合図したら何も考えずに前進する事。いいわね』
 私はそう言うと、返事を待たずに身に着けていた腕輪の一つを砕いた。
 封じていた魔力の一部が開放され、力がみなぎってくる。
「……ほう」
 とどめをさそうと思えばさせたのに何もしなかった魔族が、感心したように微笑を浮かべた。
 封じている魔力を全部開放しても一般的な魔族の魔力に及ばない。
 でも、倒すのではなく仲間達を逃がすのが目的。ならば一部でも十分だ。それに、使うのは私の魔力だけではない。
 自分の魔力だけではなく周りにあふれている魔力も使う。人間の魔法使いでここまでできる人は少ないだろう。
 使えるだけの魔力を使い炎の魔剣を作り出す。
 本来なら人間族には使えない魔法。私も場が整わないと使えない魔法。
 別の世界の神話に登場する世界を焼き払う剣の名を冠するこの魔法はその名に恥じない威力と範囲を誇る。
『今よ』
 仲間にそう合図を送ると全力で前に――魔族の方に向い――走り出した。
「……なっ!」
 魔族は予想外の行動に一瞬、気が仲間達の方に反れた。
 その一瞬が命取りよ。
「我、召喚するは世界を焼き払う異界の炎。汝のその力もて我が敵を焼失せしめん――レーヴァティン!――」
「しまっ……」
 本来なら世界を焼き払うだけの力を持ったこの炎だけど、私にはそこまでの力を発揮させることはできない。
 でも、それでもこの場はそれで十分だ。最低、魔族の足止めが出来ればいいのだから。
「……はぁ……はぁ……」
 急激な大量の魔力の消費に気を失いそうになるのを何とか堪える。
 炎は未だ魔族を包んでいる。
 仲間達の気配は私が感知できないほどまで遠く離れた。無事、逃げ切れたようだ。
「まさか、人間の魔法使いで異界の炎を召喚できる者がいるとは思わなかったぞ」
「……っ」
 焼かれ続けながら魔族が私にそんな賛辞を投げかけてきた。
 やはり、私では届かなかった。
 魔族が魔力を放出するとそれだけで包んでいた炎が全て消失した。
「……ここまでやっても…無傷……なの。反則にも……程が……あるわね」
 肩を上下させながら憎たらしげにそう言い放つ。
「いや、結構効いているんだけどな」
 私の言葉に飄々とそう返してきた。
「そうは……見えない……わ……よ」
「具体的に言えば勇者達を追いかける程の力は残ってない。お前の作戦は成功だ」
「……そう」
 逃げることができたというより、逃がされたという感じが強かったため素っ気なくそう返した。
「まぁ、今回は勇者をどうこうするのではなく、勇者の仲間、とりわけお前か神官を捕らえることが目的だったからな」
「やっぱり、そういう……ことね」
 この魔族に私達を殺そうとする意思を感じ取れなかった。なら、目的は何かと考えたらレイ以外の誰かを捕らえるのが目的ではないかというのは簡単に思い浮かぶ。
「流石にわかっていたか。なら、どうする? 大人しく捕まるか抵抗するか」
 そんなの決まってるじゃない。
「大人しく捕まるわ」
 抵抗したところで結果は変わらない。それに、捕らえるという事は私の命をすぐさまどうこうする気がないという証拠だし。
 人質に使うこともない。使わずとも楽に勇者を殺せるのにわざわざ人質に使うなんて回りくどい事はしないだろうし。
 そう考えての判断だった。
「助かるよ」
 魔族がそう言うと私の肩に触れた。
「……あれ」
 力が抜けていく。魔力が吸い取られてる?
「流石に根城の場所を知られるわけにはいかないのでね。暫く気を失っていてもらうよ」
 魔族がそう言うと私の意識はぷつりと途切れた。


 意識が戻ったとき目の前は真っ暗だった。目隠しをされているようだ。
 途中で意識が戻ることも考慮に入れていたのだろう。
 魔法を使い周りの様子を探ってみる。
 どうやら私は駕籠のようなもので運ばれているようだ。今どのあたりを……駄目、妨害されているのか今どのあたりを進んでいるのかわからない。その点に抜かりはないようだ。
 でも、現状を把握する事はできるので十分ね。
 駕籠を担いで私を運んでいる魔物が二匹。他にはあの魔族と魔物が十数匹。魔物も私達が戦った事がある魔物よりも格段に強い。
 まぁ、今更逃げる気もないし大人しくしておきますか。
 捕まったのは運が悪かった。しかし、運が良かったとも言える。
 言い伝えでは魔族は殺戮を好む野蛮な者とされているが、必ずしもそうでないことはあの魔族からもわかる。
 話が通じる相手なら私が試したかったことができるかもしれない。それができたら、長年の謎が、勇者の仲間になってからより深まった謎が解ける糸口になるかもしれない。魔法使いとしての私がそう歓喜していた。
 問題は魔族側がどういう意図で私を捕らえたか……優先順位を間違えないようにしないと。
 そんな事を考えていると
「着いたぞ」
 と、駕籠の外からあの魔族が私に声をかけてきた。
「あー意識が戻ってるのやはり気づかれてたのね」
 肩をすくませそう言い駕籠の外から出る。
「……」
 駕籠の外に出た瞬間、私は周りに満ちている魔力の量に呆然としてしまった。
 まさか、ここは地上界の根城ではなく地下界の根城なの? 地上界ではありえない魔力の量に直感的にそう思った。
「いくぞ」
 あの魔族はそう言うと歩き出した。勿論、私の目隠しは取らないまま。
「ちょっと、目隠ししたままなの? 周りが見えなかったら歩けないじゃない」
 と、あの魔族の後ろに付いて歩きながら文句を言ってみる。
「……歩けてるではないか」
 まぁ、そう返されるわよね。でも、
「歩けるけどね、歩きづらいのよ。はっきり見えているわけではないんだから。ぼやけた輪郭しかわからないのよ」
 と、文句を言ってみる。
 自分ながら敵の本拠地でよくこんな軽口が叩けるものだ。
「……このまま真っ直ぐ行くと何がある?」
 魔族が少し考え私にそんな事を聞いてきた。
「んー橋があって……ああ、堀に架かっている橋だから城門があるのかしら? 門番が二人、いえ、魔物のようだから二匹いるみたいね」
「十二分に見えているな、行くぞ」
 そうにべもなくそう返すと城門へと向かい歩みを再開した。
 くだらないやり取りに付き合ってくれたところをみると、意外とこの魔族は付き合いがいいみたい。
 やはり言い伝えでは歪められて伝えられている事は多そう。そんな事を考えながら目隠しされたまま魔族の後に付いて歩いた。


「ここだ」
 目隠しされたまま城内に入るとある部屋の前で止まった。
 ドアの向こうには誰がいるのか……そんなのは分りきっているか。
 ドアを一枚挟んでも感じる圧力。隣にいる魔族より大きい魔力。
 魔族がドアを三回ノックし中に入り、私もそれに付いて入る。
「……っ」
 入った瞬間、肌が粟立った。
 魔力が少ない者や精神の弱いものならこの場に入っただけでショック死しかねない。
 緊張のあまり思わず生唾を飲み込んでしまった。魔王とはこれ程まで凄まじい存在だったのね。
「目隠し、取るぞ」
 魔王のいる部屋に入り漸く目隠しが外された。
 さて、魔王はどんな姿をしているのやら。
 急に明るくなったので光が眩しく感じ目をしかめてしまったが、すぐに慣れ、魔王の姿が見えてきた。
「お初お目にかかる。予が魔王だ」
 若い。それに見た目は殆ど人間族と変わらない。
 これが現魔王……
「そう身構えるな。そなたをどうこうする気はない」
 固まっている私を見て魔王がそう言い放つ。
「なら、少し圧力を弱めてくれないかしら? そこまで魔力を垂れ流しにされたら本能的に見構えてしまうわ」
 魔王の言葉に対し肩を竦めてそう返す。
 ここまで垂れ流しているのはわざとのはず。多分、私が邪な事を考える気すら起こさせないためだろう。
「すまない。これでどうだ?」
 魔王はそう言うと垂れ流していた魔力を消し圧力が弱まった。
「ええ、大丈夫だわ……早く地上界に戻りたいし単刀直入に聞くわ。私をここまで連れてきた理由は何かしら?」
 力の差があるとはいえ敵を自分の領地まで連れてきたのだ。余程の理由があるはず。
「察しが良くて助かる。現勇者があまりに歴代の勇者と違ってな。仲間であるそなた達がどう思っているのか聞きたかったのだ」
 魔王の言葉に思わず頭に疑問符が浮かんだ。それだけのために?
「それだけのために、と思っているようだな。しかし、これは重要な事なのだ。魔族にとっても人間族にとってもな」
 続けて魔王がそう言った。
 それぐらいなら素直に言っても支障はないでしょう。
「確かに言い伝えや文献にある勇者の像からかなり外れた勇者ではあるわ。どこがおかしいかと聞かれたら困るけれど。他の仲間も口には出さないけれど同じことを感じていると思うわ」
「そうか。そのおかしさが魔族や人間族にとってよいおかしさならよいのだが」
 私の返事に魔王がぽつりとそう零した。
 魔族や人間族にとって……か。魔王の何気ない呟きに私はため息を吐きそうになった。
 知識得るにつれますます深くなっていたある疑問。その答えのヒントがその呟きに含まれていた。
 でも、私の勘違いかもしれない。それが本当だとしたら世界がひっくり返る程の事だ。判断は慎重にしないと。
「それを聞きたいだけ、というわけでもないでしょ?」
 魔王に話の続きを言うように促す。
「ああ。これは取引なのだが。これから暫くの間、勇者について調べたいことがある。それを調べて送ってくれぬか?」
「仲間を売れ、という事?」
 魔王の言葉に眉を上げてそう返した。
「いや、そういうわけではない。調べて欲しい事柄はそれを予に教えたからといって勇者やその仲間、人間族に不利になる事はない」
 逆に言えばそんな情報が必要という訳ね。
「魔族にとって人間族ではなく神族が真の敵だからな」
 ……計算してこの言葉が出ているのか、何も考えずに言ってるのか判断に困るけれど、嘘は言っていないように感じる。
「返事の前に聞きたいことがあるわ。取引ということは私に何か報酬があるわけよね?」
 考える時間や判断要素を増やすために色々話を引き出そう。そう思い、尋ねた。
「報酬は地下界にある魔道書や文献の閲覧の許可だ。どうやら地上にある文献を色々漁っているようだが地上にある分だけでは真実はわかるまい。焚書されている物もあるからな」
 魅力的な言葉に何も考えず取引を受け入れそうになるのを堪える。
 どうやら、私が疑問に思っている事がありそれがどういうものか魔王は分っているようだ。
「魅力的な報酬ね。でも、その前に二つ……いえ、一ついいかしら?」
 あれについて魔王の口から直接聞けば少なくとも取引を受け入れるか否かの判断はできる。
 それ以上のことを魔王の口から聞いても私が信じられなかったら意味がない。
 逆に聞けば聞くほど信じられなくなる可能性もある。例えそれが事実だったとしても。
「今、地上で暴れている魔物。あれはあなたの命令?」
 もし、この場に他の仲間がいたら、何を当たり前のことをと言われそうな言葉。
 だけど……
「いや、予はそんな命令はしていない。そもそも、地上界の根城の近くや地下界にいる魔物以外は予は従えていない」
 魔王から返ってきた言葉はこうだった。
 魔王が嘘を言っているわけではない。文献を調べるとそうだと推測できるのだ。
 それから導かれる事がある。でもそれについてここで答えを出す必要はない。
「そもそも、魔物は地上にいる動物や動物の死骸が魔族の瘴気に触れることで力を得たものの事だ。魔物が生まれるのは魔族に責任はあるが、その魔物が人間族を襲うのは人間族に責任がある」
「はぁ、予想できていた事とはいえ事実をつきつけられるときついわね」
 なるべく余計な事は考えないようにしながら私は魔王の言葉にそう返した。
「さあ、どうする。取引を受け入れるか否か。受け入れたらそなたの魔法使いとしての知識欲が満たさせる。そして、その知識は今後の戦いを有利にするものだ。それだけではなく、受け入れても仲間や人間族に影響はない」
 魔法使いの私としたら何も考えずに取引を受け入れる報酬だ。そして、受け入れる事をためらう事柄も魔王の言葉を信じるなら解消されている。
 そして、魔王の言葉に嘘はなく信じられるものであることはわかっている。
 魔王は――魔族は人間族を滅ぼす気はない。滅ぼす気があったならとっくに滅ぼされている。魔族にとって危険なのは勇者だけなのだから。何よりもこの事実は大きい。
 ならば私の返事は、
「その取引受け入れるわ」
 これしかなかった。
「よろしく」
 私の返事を聞き、魔王が握手を求めてきた。
「こちらこそよろしく。あなた達に不利になる可能性もある報酬を与える。そこまで勇者の情報が欲しいのね」
 それに応え、握手をしながらそう皮肉を言う。
「まぁ、色々あるのだ。人間族と魔族の間にある隔たりのようにな」
「本当にね」
 それに魔王も皮肉で返し、その言葉に私は肩を竦めた。
 言葉に出すわけにはいかないある事実。正直、もう私は直感的にそれが真実だと感じている。
 けれど、それを口に乗せて発してはいけない。
 世界のバランスが大きく崩れてしまう事実なのだ。
 場が整わなかったら私はこの事実を墓場まで持っていかなくてはならない。
 そうなった場合、私にできるのはその事についてそうと匂わせる文書を書いた人のように、未来にその匂いに気づくことができる人が現れたときに答えにたどり着く手がかりになるように文書に残すだけ。いつか場が整う事を信じて。
「折角、ここまできたのだ。少し外を見てみるか?」
 魔王がそんな事を提案してきた。
「そうね、地下界がどんな感じなのか興味があるわ」
 その提案に乗り、私はそう返した。
「なら、付いてくるがいい」
 魔王自ら案内してくれるようで、今度は目隠しなしで城内から外へと出た。
 外に出た瞬間、私の目に映ったのは、夜にも関わらず明るい町並み。そして、夜空を裂いて縦横無尽に走る線だった。
「珍しいか? あれは電線。遥か昔に魔族が人間族に魔法を教える代わりに人間族から教わった科学技術の一つだ」
 やってくれる。不意打ちを食らった。行きに私に目隠しをさせたのはこの事実の印象を強くするためでもあったのね。
 魔王の言うように科学技術は元は人間族が持っていたもの。けれど、今では影も形も残っていない技術。何故そうなったか……いえ、それは今、考える事ではないわね。
「さて、そろそろ仲間のところに戻るわ。どうやって情報を送ればいいのかしら?」
 頭を振り、気を落ち着けてから魔王にそう尋ねた。
「定期的に使いの者を寄越す予定だ。魔族を寄越すから例えその場を見られても問題はあるまい。直接何か尋ねたい事ができたら呼ぶ可能性があるが、その場合のそなたの仲間への言い訳は考えておいてくれ」
「わかったわ。そう言えば、名前教えてなかったわね。私はオトハよ」
「名前を教えられたらこちらも名前を返すのが礼儀だろうが、生憎予には名前がなくあるのは魔王という称号のみでな」
 思いがけず面白い事を知った。
「へーそれについて詳しく聞いてみたいけれど、そこまでの間柄ではないわね」
 色々危ういバランスで今の関係は成り立っている。
 魔王は人間族と争う事を避けたいとは思っているようだけれど、魔王が欲しがっているレイの情報を得たときどう転ぶかはわからない。
 お互いに距離をとらないと肝心なときに痛手となりかねない。
「そうだな。さて、オトハを地上界へ送り届けよう。暫く目を閉じていてくれ」
 私の言葉に魔王は微苦笑を浮かべながら返事をするとそう言った。
「分ったわ。次会うときは戦うときかしら?」
「そうならないことを願おう。魔族と人間族のためにもな」
 魔王がそう言うと同時に浮遊感が襲い、魔王の気配が消えた。
 いえ、この場合、私が魔王の側から去ったと言った方が正確ね。
 地に足がついた感覚がしたので目を開けると、見慣れた町並みが広がっていた。
 さて、仲間に言えないことが増えたわね。
 そんな事を思いながら仲間が待っているであろう場所へ向かい始め数歩進んだとき
「使いの者を寄越すとは言っていたけれど、場所や時間については何も言ってなかったわね。ああ、そういえば、勇者に関するどんな情報を集めればいいのかも聞いてないわね」
 ふと、その事に気づいた。
「何も言わなかったという事は使いの者が私に直接会いにくるということ、と考えますか」
 もしそうならば、魔王は勇者の現在位置を特定できているという可能性が高い、という事になる。
 魔王にとって人間族は滅ぼす対象でなかったとしても、勇者は魔王を倒しうる邪魔な存在のはず。
 殺さないのか殺せないのか……もしかしたらその両方なのかもしれない。
 私はそう結論づけると止めていた歩みを進めた。

 
 それから数日過ぎたある日
「オトハ、ボクの顔に何か付いてる?」
 私に見つめられている事に気づいたのか、レイが顔のあちこちを触り何か付いてないか確認しながらそう尋ねてきた。
「いえ、何でもないわ。ごちそうさま」
 この様子だと誰も気づかなかったようだ。
 食器を流しへ運び私が泊まっている部屋へ戻り、私が寝る前まではなかった机の上にある一枚の紙をもう一度手に取り見た。

【今まで滞在した村や町での勇者に関する噂を集めて文書にまとめてくれ。一月後使いの者を寄越す。その者に報酬を預けておくので文書と交換を願う】

 そう書かれている紙は昨日の夜までは確かになかった。
 この部屋に誰か侵入した事は私は気づかなかったし、どうやら、他の仲間も気づかなかったようだ。
 レイは魔物や魔族の感知能力がいいのに気づかれずに進入できた。
 魔王と戦う事になった場合の事を考えると頭痛がしてくる。
「こんな事を知ってどうするのかしら?」
 そういぶかしみながら、今日の自由行動の時間から勇者に関する噂を集めていく事を決めた。
 
 
「そろそろ、一月が経つわね。さて、どんな魔族が来るのやら」
 文献を一通り読み終え外に出て一息ついたときにそんな事を考えた。
 取り合えず、旅の最初の方で訪れた村や町でのレイに関する噂はまとめ終えた。
 ふと、マントが引っ張られている感じがして疑問に思い下を向くと、マントをくいくいと引っ張っている小さな女の子がいた。
 私と目があうと引っ張るのをやめにこにこと微笑み始めた。
「ん? どうしたの? 迷子になってしまったの?」
 女の子が見上げなくても目線が合うように膝を折りそう尋ねると、ぶんぶんと首を横に振った。
 確か迷子にしては泣いていないのはおかしい。
 魔王討伐の旅に出てから時が経つので勇者とその仲間の顔は市井の人にも随分知られるようになった。
 私が勇者の仲間だと分って話をしてみたいとでも思ったのだろうか。
 そんな事を考えながら彼女の顔を何気なく見つめたとき
「……っ。そう、あなたが使いの者なのね」
 人間の小さな子には考えられない魔力を彼女が持っていることに気づき、そう確認すると女の子は嬉しそうに微笑みながら首を縦に振った。
 なるほど、確かに彼女と外で話している所を誰かに見られても疑問に思われることはないだろう。
「はい、これが今回分ね。何か入れ物ある?」
 百枚近くあるからこの子がそのまま持ち帰るのは厳しいはず。入れ物を持っていないならどこからか調達しないと。
「……ないけど、大丈夫」
「そう? じゃあ、はい」
 始めて彼女の声を聞いた気がする。
 文書を受け取ると彼女はどこからか小さな黒い珠を取り出し、何かを呟くと紙は珠の中に吸い込まれた。
「へー便利ねそれ」
 その様子を見て思わずそんな事が口に出ていた。
 魔法道具の一種なのだろうけど、こんな便利なもの地上界にはない。
「はい、これ」
 彼女は小さな黒い珠をどこかに仕舞うと、小さな白い珠を取り出し私に渡した。
 おそらく、小さな黒い珠と同じ物なのだろう。
 こうして手にとってみても普通の珠にしか見えない。
「そのたまの中にご本が入っているって。次からはそのたまの中に入れてって父さまが言ってた」
「そう、ありがとう」
 女の子の頭を撫でそう言う。
 定期的に使いの者を寄越すと言っていたはずだけれど変わったみたいね。
 確かにこの方が色々問題が起こらないだろう。
 さて、どうやって使えばいいのか。
「……あっ、こ、これも」
 少し困ったような顔を私がしているのを見て思い出したのだろうか、彼女が紙を渡してきた。
「ありがとう」
 その紙にはこの珠の使用方法が書かれていた。
「これで用事は終わりかな?」
 紙に書かれている内容を軽く全部見てから彼女にそう問いかけると、首を縦に振った。
「そう……これは言えなかったら言わなくていいのだけれど」
 そこで一旦、言葉を区切り彼女を見つめると小首を傾げ続きを促したので、続けて
「父さまって魔王の事?」
 と、聞くと彼女はすぐに首を縦に振った。
「そう。今日はありがとうね」
 その返事を見て、彼女の頭を撫でながらそう言った。
 私の言葉に微笑みを返し私が頭を撫でるのをやめると町の奥にある森の方へと歩き出した。
 まさか、まだ小さい自分の娘を使いに寄越すなんて。
 そんな事を考えているとふとある仮説が思い浮かんだ。
 いえ、そうだとしたらあの魔族の存在が矛盾するわね。
 思い浮かんだ瞬間、反例を思い出しその考えを否定した。
 さて、どんな文献が入っているのかしら。私は中身を確認するのを楽しみにしながら宿へと帰った。


 それから半年近く経ち今まで滞在した事のある村や町の勇者に関する噂を送り終えたとき、追加の文献に紛れて一枚の紙切れが入っていた。
 それを見て朝食時に仲間達に今日は私は一日中自由行動に取りたい旨を伝え、了解を貰った。
 魔王と取引を結んでから半年経った今、私達は魔王の根城があると思われる場所の近くまできていた。
 まだ魔王の根城は見つかっていないけど見つけるのも時間の問題だと思う。
 あの魔族の襲撃があってからレイはより慎重に事を進めるようになっているけど、後半年後までには勇者は魔王と相見える事になると思われる。
 準備を終えもう一度紙を見直す。
『尋ねたい事ができた。半日ぐらい時間が取れる日に下記の場所にきて欲しい』
 私としても戦い事になる前にもう一度魔王に会っておきたかったので渡りに船だった。
 紙に書かれていた場所へ到着すると紙が光輝き始め私を中心に魔方陣を描いていった。
「転移魔法!?……こんな高度な魔法まで道具一つできるなんて」
 そんな私の驚きを余所に転移魔法は完成し私を転移先へと運んだ。


「久しぶりだな、オトハよ」
 転移先は魔王のいる部屋だった。
「ええ、久しぶりね。前置きはいいわ。聞きたい事って何かしら?」
 私は部屋に魔王以外がいないことを確認すると単刀直入にそう聞いた。
「うむ。勇者に関する地上に噂は今まで送った分で全部で相違ないな?」
「ええ」
 魔王の確認に私は即答した。
「……そうか。ならば、今代の勇者は男の勇者としてはありえない勇者ということになるな。いや、そもそも根本が間違っていたという事か」
 私の返事を聞き何か考えるしぐさを見せた後そう言葉を漏らした。
「どういうこと?」
「そうだな……詳しく説明している時間はないから端的に言うが。長年続いていた奇妙な環が壊れかけている」
 奇妙な環か……
 地上に奇跡的に焚書されずに残されていたある事実について書かれていた文献。
 それは一人の著者により書かれた物だった。
 巧妙に隠されていた著者が本当に書き残したかった事。一冊解読しただけでは分らない箇所があったのだが、全部解読するとある一文ができた。
『奇妙な環を壊せ』
 まだ奇妙な環が何を指すのか私にははっきりとはわかっていない。
「いや、まだ推測でしかないか……確かめる方法は……」
 魔王が何か考えていた様子だったけど、
「あったな。すぐ近くに」
 私を見てそう言った。
「何のこと?」
「勇者に関して思いがけない仮説が生じてな。その仮説の証明はオトハの協力があればすぐに可能なのだ」
「そう……その仮説を証明することは人間族にとって益があるのかしら?」
「ああ、少なくとも損にはならんよ」
「そう。何をすればいいのかしら?」
 魔王の返答を聞き、私は考えることなくそう言った。
「特に何もする必要はない」
 魔王がそう言うと、魔王を包んでいる何かが変化した感じがした。
「な……」
 言葉を発せようとしたが口が上手く動かない。
 いや、私は何を言おうとしていたの?
 頭がぐるぐる回る……
 私の中に何かが入ってこようとする感覚。気持ち悪い。
 抵抗すると気持ち悪さが増す。でも、抵抗しないと大変な事になる。そう直感し抵抗をやめない。
 この感覚は貧血になったときによく似ている気がした。
 でも、何かが違う。
 何かが入ってこようとしている感覚に耐えていると、男が私を観察している事に気づいた。
 誰……と数秒考え魔王である事を思い出す。
 ああ、彼はこんなにも……
「こんな所か」
 魔王がそう呟くと今まで感じていた気持ち悪さが綺麗さっぱり消え去った。
「……今のは何だったの?」
 思わず魔王をねめつけた。
 魔王を見たときに感じた体のほてりは異常なものだった。
 あれ以上あの状態が続いていたら私がどうなっていたか。
 そう、私はあの貧血に似た感覚の時に、魔王がこの世に二人といない魅力的な人だと幻視していたのだ。
 魅了の魔法? そんな生易しいものではない。
 何かが入ってこようとしている感覚は何とか耐えることができた。だけど、魔王を魅力的に感じたあれは私に違和感すら覚えさせなかった。
「予が――魔王が持つ能力の一つ。これがあるせいで人間は勇者抜きで魔王に勝てないのだが……」
 そう言うと魔王は何かを考え始め
「勇者と旅を始めてから一年は経つ、相違ないな?」
 私にそんなことを確認してきた。
 それに私は頷く事で返事をした。
「そうか、どうやら確定のようだ」
「どういうこと?」
「オトハだけに説明しても意味がないな……博打の要素は残るがこれ以上はどうしようもあるまい。地上の根城に勇者と共にたどり着いたとき説明しよう」
「結局、戦うしかなくなったといこと?」
 魔王は勇者との戦いを避けようとしていたはず。諦めたのだろうか。
「いや、戦わなくても済むかもしれないしそうではないかもしれない。事は勇者次第。戦うことになったとき負けるのは予だ。何も悩む必要はない」
 表情を全く変えず魔王はそう言った。
 嘘を言っているようには感じられない。
「そう……遅くても半年後には勇者は魔王の根城を見つけるでしょう。では、そのときに」
「うむ」
 魔王がそう返すと私は元にいた場所に戻っていた。
「そのときまで長くて後半年。どれくらいまで真実に近づけるかしら」
 私はある覚悟を胸に抱き宿へと帰った。

 
 それから私達が魔王の根城を発見したのは数ヵ月後だった。だけど、レイは万全の準備を整えるために時間を使い、魔王の根城に向かったのは半年後になった。
「よくきたな、勇者とその仲間よ」
 城の最奥部にある玉座の間。そこに魔王はいた。
 地下界の根城で会ったときに感じた威圧感は全く感じられない。やはり、私の推測は正しいみたいね。
 そんな事を考えていると
「……いきなり斬りかかってくるか。乱暴だな」
 レイが魔王の姿を確認するやいなや魔王を剣で斬りつけようとした。
 速い……私にはレイが魔王に向かっていく姿が見えなかった。
 その剣を防いだ魔王も流石。けれど、やはり、少なくとも地上では魔王は勇者には勝てない。私はそう確信した。
「……魔王と交わす言葉など、ない」
 魔王が展開している防御壁を壊そうと力をこめながらレイは魔王の言葉にそう返した。
「であろうな。勇者にはそれでよくても予にはちと都合が悪くてな」
 魔王がそう言うと魔王を包んでいる何かが変わっていく。
「サラ、ジン後へ下がって」
 レイの援護に向かおうとしていた二人に下がるように声をかけると二人は私の言葉にすぐさま反応し私がいる場所まで下がった。
「あの状態の魔王に近くづくのは危険。少なくとも私とサラは絶対に近づいてはいけないわ」
「でも、勇者様が……」
「大丈夫。魔王では勇者は倒すことはできないから」
 サラが何かを言おうとしたのを遮ってそう返し魔王とレイの様子を確認すると、レイは剣を構えながら呆然と立ちすくんでいた。
「ふむ、取り合えず、一つ目の賭けは成功であるな……さて」
 魔王がレイの様子を確認するとそう呟き私達の方を見た。
 サラとジンが思わず身構えるが
「さて、これからどうするつもりかしら?」
 その二人を遮るように前に立ち魔王にそう声をかける。
「戦ったら負けるのは予であろうな。勇者が戦えなくてもオトハが戦えれば予は倒せる。そうであろう?」
「……確かにね」
 私の名前を呼んできたか……魔王の言葉に肩をすくめながらそう返した。
「……なんで魔王がオトハの名前知っているんだ?」
 私と魔王のやりとりを呆然と見つめながらジンがそう聞いてきた。
「話せば長くなるけど……そうね、単純に言えば、私と魔王はある取引をしてね。名前を知らないと色々不便でしょ。だから教えたのよ」
「……オトハが囮になって逃げたときですか」
 意外に冷静な様子のサラがぽつりとそう呟き、私はその言葉に頷いた。
「でも、どうして魔王と取り引きを?」
「そうね……旅をしていて色々違和感を覚えてね。言い伝えは本当に正しいのかってね」
 サラの質問にそう返すと
「なるほど。それなら納得ですね。まさかオトハがこの短期間でそこまでたどり着くとは思いませんでしたが……」
 私の言葉だけで何を悟ったのかサラはそう心底納得がいったというようにそう言った。
「あの日以降、オトハの様子がおかしいのは気づいていましたが。ここまでの事をしているとは思いませんでした」
「サラ、あなたはどこまで知っているの?」
 思わず私はそう問いかけてしまった。
「あなたの魔王との間に起こったことなら全く知りません。ですが、人間族、魔族、神族に存在する奇妙な環に関する事に関しては全てを知っています。勇者様と旅を始める前から」
「やはり、そなたは唯の神官ではなく聖女であったか」
 思いがけない言葉に私が言葉を失っていると魔王が納得がいったというようにそんな事をサラに投げかけた。
「やはり気づかれていましたか魔族の王。本当はどうにかあなたの協力を得るよう働きかけに伺いたかったのですが、妙な行動をしたら神族に気取られる可能性があったため動けませんでした。でも、どうやら私が動かなくても上手く、いえ、動かなかった方が上手くいったようですね」
 それに対し丁寧な口調でそう返すサラ。
 神官にとって魔族は滅ぼすべき悪だったはず。魔王はサラの事を聖女だと言っていたけど、聖女は上位階級になった神官の一部にしか与えられない称号のはず。ならば、魔族を滅ぼうとより強く考えているはずではないのだろうか。
 そんな事を考えていると
「何だ……何が起こっているんだ? 馬鹿な俺にもわかるように誰か教えてくれよ」
 あまりに急な展開かつ意味がわからない状況についていけていないジンがそう吠えた。
「ふむ、確かに各自が持っている情報を共有した方がいいな」
「なら、私から話すけどいいかしら?」
「かまわない」
「はい。オトハが話して私と魔王が足りない部分を補足する形が一番かと」
 魔王の言葉に私がそう提案すると魔王とサラから了承の言葉が貰えたので私から話し始めることにした。
「どこから話せばいいかしら。そうね……私は勇者と旅を始める前から勇者と魔王の戦いに興味を持っていて色々な文献を調べていたわ。でも、私が見ることのできる文献だと詳しいことはさっぱりわからなくてね。そんなとき、私が勇者の仲間に選ばれたことを知ってね。これは好機だと勇者と実際に旅をしながら色々調べる事にしたの。勇者の仲間ということで今まで見ることのできなかった文献も見れると思ったからね」
 私は先ず勇者の仲間になる前のことについて軽く話した。直接は関係ない話だけれど話さないと分りづらいことも出てくるだろうし。
「旅を始めた当初はすぐに知りたい事を知れると思っていたわ。それが逆に疑問が深まってね。レイが勇者らしくないということに気が付いたのは旅を始めてすぐだったわ」
「勇者らしくない?」
 話を黙って聞いていたジンがそう口を挟んだ。
「ええ。歴代の勇者らしくない。少なくとも文献に載っている勇者像からかけ離れている。そこで先ず思ったのはレイが本当に勇者なのかということ。でも、すぐにレイは間違いなく勇者であることはわかったわ。でも、次に何故勇者らしくないかという疑問が深まってきたわ。
 結局、魔王に会うまでその疑問は解けることがなかった。でも、ある事がわかってきたの。常識だと思われているある事が真実ではない、とね。流石にそれに気づいて焦ったわ。でも、そうだとすると文献に書かれていて疑問に思っていたことが腑に落ちてね」
 今、私が話していることに関しては魔王も、そしておそらくサラも知っている事だからジンの顔だけを見ながら話し、ジンが続きを促すような素振りをしたので続きを話し始める。
「そのある事というのは……魔王は――魔族は人間族を滅ぼそうと考えていない、ということよ」
 私の言葉を聞いた瞬間、ジンの顔が強張った。
「地上で魔物が暴れている地域もあるけれど、全ての魔物が魔族の傘下というわけではないの。そもそも魔物は魔族の瘴気を浴びる事で力を持った動物の事だから、魔族が関係していないわけではないけれど、暴れいてる魔物はただの動物だった頃に心のない人間に虐げられていた動物達。ある意味では人間の自業自得とも言える。でも、人間が魔物を生み出してしまう魔族を地上から排除しようとするのは決して悪い事とは言い切れないわね」
「然り。魔族は魔族の思惑があり地上に侵攻している。そのせいで地上に住んでいる人間に悪影響があればそれを取り除こうとするのが当然というものだ」
 私の言葉に魔王がそう返す。
「元々、外の世界にいた頃から魔族と神族は戦いを繰り返していたみたいなのよ。でも、互いの力は五分五分で決着はつかなかった。でも、戦いを重ねていくうちにたどり着いたこの世界。そこに住んでいた人間の存在によってそれは変わった」
 ここから話すことは推測の部分が混じっているので魔王の様子を確認しながら話していく。
 何か間違っている所があれば訂正が入るだろう。
「人間族と接触を試みたのは魔族側だったわ。当時の人間族は魔族にも神族にもない技術――科学技術があった。それに興味を持った一部の魔族達が魔法を人間族に伝授する代わりに科学技術を教わったの。これは今の人間族に失われた科学技術が地下界に残っている事でも証明できるわ。私のように魔法が使える人間族がいるのもその名残ね。
 神族は自分達以外の存在は下賎なものと考えている一族でね。人間族と接触しようとしなかった。でも、魔族が人間族と交流する事で力をつけ始めた頃から様子が変わったみたいね。魔族の存在で魔物と化した動物が現れるようになったから魔族の事をいぶかしく思っていた人間もいてね。そういう人間に取り入り人間と魔族が互いに争うよう仕向けたの。人間の信頼を得るために神術を伝授し、神術は魔法と違い才能がないものにもある程度扱えたらしく神族側につく人間が次第に増え、ついには人間と魔族は争うようになり、最終的には地上から魔族が追いやられることになったらしいわ」
「……それが、人魔戦争の真実……なのか? 言い伝えと全く違うではないか」
 私の言葉を黙って聞いていたジンがそう重たく口を開いた。
「ええ。神族に都合が悪いことが書かれている文献は全て焚書して嘘の言い伝えを残しているわ。一部残っているものもあったけれど、巧妙に隠されて書かれているものばかりだったわ」
 私はジンの言葉に肩をすくめながらそう返した。
「そして、ここからがより重要なのだけれど……魔族は人間族を滅ぼそうと考えていないって言ったけれど、では、何のために地上に侵攻しているのかって疑問に思わない?」
 ジンが話を頭の中で整理しやすいようにそう質問すると、
「……確かに、そうだな……魔族では勇者に勝てないのだろ? わざわざ倒されにきていることになるんだよな。何でそんな事してるんだ?」
 と、少し考えてからジンが頭に疑問符を浮かべながら言った。
「勿論、魔族のためなんだけれど、それが人間族のためにもなるの。魔族と神族は長い間争っていて決着がついていない。その決着をつける鍵になるのが人間族だったのよ。人間族がついた方が勝つ。今は形式的には神族についてる状況ね。でも、自分達以外が下賎なものと考えている神族が魔族を滅ぼしたとき人間族を放っておくかしら? 支配下に置くか従わなかったら滅ぼそうとするでしょうね」
 ジンは黙ったまま私の話を聞いている。話についていけなくなった様子ではないので話し続ける。
「地下界への道は魔族以外が通れないようになっているわ。でも、神族は地下界に侵攻するために道を作ろうとしているの。それがある程度の完成度まで達したら魔王は地上に出るの。地下界への道を作ろうとしている場所に根城を作ってね。幸いな事に神族はそのプライドのせいか人間族から何も教わろうとしなかったから、魔族と相対すると神族が負けてしまう可能性が高いから撤退する。そして、人間族が神族が作った嘘の言い伝えに従って魔王を倒す。その繰り返しが何度も行われているわ。この変な繰り返しは『奇妙な環』と呼ばれているわ」
「『奇妙な環』?」
「ええ。神族が有利な状態なのよ。人間族の力を借りたら魔族は滅ぼせる。人間族を支配下においているに等しい状態だから簡単に力を借りることはできる。でも、それをしない。もしかしたら人間族の一部にでも反乱されたら危険だとい考えているのかもしれないけど、そこはわからないわ。魔族も神族も、そして人間族のごく一部もこの環からの脱出方法に気づいていながら、その環から逃れられない。だから『奇妙な環』なのよ」
 私がそう言うとジンは少し考えてから
「……ちょっと待て。一部の人間は気づいていて人間は神族を倒せるのだろ? 何で神族を倒そうとしないんだ?」
 と、私に聞いてきた。
「そう思うわよね。でも、そうもいかないの。神族に人質を取られているようなものだから」
「人質?」
「ええ。その人質が勇者なのよ」
「……どういうことだ?」
 ジンが顔をこわばらせて聞いてきた。
「勇者という存在。本当は魔族における魔王と同じ存在――簡単に言えば人間族全体の王となる者だったの。言葉は悪いけれど幼少の頃から教育する事で勇者を洗脳して神族の味方に育て上げる。勇者候補は数人いるから抜かりなくその全員をね」
 私がそこまで話すと
「丁度いいので補足しておきます。私達神に使える者が本来使えているのは勇者――人間族の王の選定者でありこの世界の創り主でもある創造神です。神族は創造神の使いと自負しているようですが真っ赤な嘘、ただの勘違いです。この事実は神官の仲でも聖者や聖女という称号を得た人しか知りません。正確にはその事実にたどり着いた人が聖者や聖女という称号を得る事ができるのです」
 サラがそう口を挟んできた。
「と、いう事らしいわ。この『奇妙な環』を繰り返している状態、神族以外にとって最悪ではないの。勿論、いつか脱出できるならした方がいいことには変わりないけれど。私もこの事実を知ったとき、私の胸だけに秘めるつもりだったわ。何か大きなことがない限りね」
「……という事は、何かあったのか?」
「ええ……といってもこの事実に気づいたのは数ヶ月前でね。確信を持ったのはついさっきだわ」
 そこまで言ってから私が言ってもいいのか確認するためにちらと魔王の方をみる。魔王が頷いたので続けて私が言う。
「レイ、実は女なのよ。男の振りをしていたの」
「なっ!」
「ああ、そういう事ですか。それなら色々納得がいきますね」
 ジンとサラが対照的な反応を見せた。
「どうやら、魔王は結構前からそうではないかと疑っていたみたいだけれどね。私に今までに滞在した村や町でレイに関する噂を集めてくれと言われたときは何のためにと疑問に思ったわ。でも、ある噂が全くないことに気づいたときはっとしたわ。これが知りたかったのかってね」
「それは、勇者の子どもを身ごもったという噂が全くなかった、ということですね」
 サラがそう確信したような口調で聞いてきた。
「ええ、そうよ」
 と、私が返事をすると
「ちょっと待て。別におかしくないのではないか? レイはそういう事に興味なさそうだったし」
 と、ジンが問うてきた。
「いえ、これは明らかにおかしいの。勇者ってどういう人が選ばれていると思う?」
 私が首を横に振りながら逆にそう問うてみた。
「何か共通点があるのか?……まさか、全員に血の繋がりがあるとかか?」
「正解に近いわね。勇者の先祖をたどると初代勇者に行き着くの。少しでも初代勇者の血がある者が選ばれるのよ。初代勇者がどのように選ばれたのかはわからないけど、これは紛れもない事実よ。魔王も同じでしょ?」
 魔王のそう確認を取ると魔王は首を縦に振った。
「だから、勇者は魔王討伐の旅の途中で子どもを作らなければいけないの。もしくは前でもいいけれど、世界を旅することになるから勇者の血を広く残すことができるから途中の方が好ましいとされているわね。百人以上の子を残した勇者もいたそうよ」
「子を残すのは魔王を倒した後でもよくないか?……待てよ、確か勇者は魔王討伐に成功したら天界に迎えられるのだったよな。まさか……」
「魔王を倒す程の力を持った人間はいくら神族に従っているとはいえ神族にとっては邪魔でしかないからね。天界では奴隷のように扱われて、勇者は死んでなくても代替わりするから代替わりしたらお払い箱になるのかしら」
「でも、勇者が女だったら魔王の討伐に出る前に子どもは残せても数人だよな? 勇者は女がなる事がない……わけではないよな、レイが女だというのなら」
「ええ。だから、もし勇者に選ばれたのが女だたら旅の途中で殺すのよ。神族がね。魔王討伐の旅の途中に勇者が亡くなって二人目の勇者が魔王を倒したということが何回かあるけどその場合の一人目の勇者は全員が女性だったわ」
「……そこまでするのか」
 私の言葉に思わずジンは絶句した。
「神族を庇うわけではないが、他にも女が勇者だった場合不都合があってな。そちらの方が主な理由だ」
 魔王がそう口を挟んできた。
「へぇ、その理由って?」 
 その言葉を聞き私がそう尋ね返した。
「オトハは知っているだろうに。まぁ、いい。それは勇者が女だと魔王が男だったときに魅了の瞳に耐えられないからだ。魔王が地上に出るときは男の魔王のときであるのだが、それは置いておこう。魔王が持つ魅了の瞳は種族が違っても効果はあるが同性には効果がない。魅了の瞳は勇者も持っていて、勇者と長い間旅をするか勇者魅了の瞳に魅入られた者には魔王の魅了の瞳は効かない。という事もわかっておる」
「やはり、あのときのが魅了の瞳だったのね。確かにあれは抗えないわね」
 魔王のその言葉を聞き片眉を上げて私はそう呟いた。
「うむ。すまないとは思ったがあれが一番確実な確認方法だったからな。予を倒すのには勇者が女でも問題はない。魅了の瞳は種族が違っても効果はあると言っても効果は短くずっと見つめていないとすぐに効果が切れるのだ。勇者がその場にいさえすれば普通の人間でも予を倒すことはできるからな。討伐にきた勇者が女だった、というわけでは博打するには危険である。しかし、予には神族は誰も知らず人間族もごく一部しか知らないであろうある事実を知っていてな。その事実と勇者の旅の様子を見ると博打に出る価値があると思ってこの状況に至る、というわけだ」
「それは初耳ね。それが何か教えてくれるかしら?」
 思いがけない言葉が魔王の口から出たのでそう問うた。
「うむ、そなた達には知る権利があろう。あの勇者は一人目の勇者ではない二人目の勇者である」
「……なんですって。何故、あなたがそんなことを知ってるの?」
 魔王から返ってきた言葉はとんでもないものだった。
「簡単な話だ。一人目の勇者はある魔族の手で殺されたから。人間族で知らないものが多いのはその勇者は一人で旅をしていたからである」
 ……とんでもない言葉が次々と魔王の口から飛び出してくる。
「魔族が地上界で勇者に勝てるなんて……ああ、あの魔族ね」
 魔王の言葉を頭の反芻していると急にある答えが思い浮かんだ。
 私達を全滅の危機まで追い込んだあの魔族だ。
「うむ、その通り。あやつは魔族といっても予に従っている訳ではなく協力関係にあるのだが。あやつの存在こそが予の切り札だ」
「ええ、常識を覆す存在。凄い切り札を持っていたものね……でも、今この場にはいない……レイ殺す気はないということでいいのね」
「うむ、今、勇者を殺しても意味がない。他の勇者候補が勇者になるだけ。寧ろ、それは逆効果になる可能性が高い」
 魔王の言葉に嘘はないようだ。なら逆にある疑問が生じる。
「なら、どうして一人目の勇者を殺したんだ?」
 その疑問をジンが代弁してくれた。
「それについての説明はしなくてはなるまい。だが、その前に……」
 魔王はそう言うと、レイが横たわっている方を見て
「勇者よ、体は動くであろう。こちらへ来い。これからの話はそなたも聞きたい話であろう」
 と、レイに問いかけた。
「……気づいていましたか」
 レイはそう声を発すると立ち上がり、私達の側までやってきた。
「今までの会話は全部聞かせてもらいました。もう、隠しても仕方がないですね……術を解くのは久しぶりで逆に違和感がありますね」
 そう言うとレイの声が変わった。何らかの術で女だとばれないように声を変えていたようだ。
「神術の一種か……よく神族に気づかれなかったものだな」
「彼等は地上に降りてくることは滅多にないですから。おそらく、魔王も私に聞きたいことがあるかとは思いますが、先にそちらからお願いします」
 魔王の言葉にそうため息混じりに返し、レイは話の続きを促した。
「うむ。あやつが一人目の勇者を殺したのは勇者自らが命がけの勝負を挑んできたからだ。旅の途中で巨大な力を持った魔族がいることを感じ取ったのだろうか、勝負を挑んできた。勝負はあやつが勝ち勇者はあやつが手を抜いていた事を感じ取ったのであろう。次は全力で戦ってくれと言ったらしい。あやつも命を落とすかもしれないと忠告したのだがそれでも構わないと返し、それから数週間後、勇者とあやつは戦い勇者は敗れ死んだ」
「そうですか……あいつらしいですね。嘘は言っていないようです」
 魔王の言葉にレイがそう返した。
「レイ、一人目の勇者の事知っているの?」
 その言葉に思わず私はそう聞いた。
「はい。私とあいつは幼馴染ですから。知っていましたか? 新しい勇者が選ばれる地域はある程度特定されていて、魔王の根城はその地域から最も離れた場所にできるの」
「……神族は何らかの手段で次の勇者が選ばれる地域を知って、そこから最も離れた場所から地下界へと侵攻しようとしているわけね」
 私がそう言うと
「そういう事なのでしょうね。私のことを話す前に後、一ついいですか?」
 レイがそう返し、魔王にそう問いかけた。
 魔王が頷くと、咳払いを一つしてレイは言葉を発した。
「あいつを殺した――私が勝てなかったあの魔族は元勇者。私の先祖ですよね」
 その言葉はとんでもないことであったが
「うむ、間違いない」
 魔王はそれを肯定した。
「やはり、そうでしたか」
 レイは納得がいったという顔をし、それ以上何も言わなかった。
「さて、次は予からの質問だが、いいか?」
 魔王の言葉にレイは頷いた。
「そなたは魔物を倒すのをためらっていたように感じる。一人目の勇者もそなた程ではなかったが暴れている魔物以外は倒そうとしなかった。そのような事は歴代の勇者はしなかった。それどころか魔物は全て倒す、という感じであった。これはどういう理由からなのだ?」
「やはり、その事ですか……」
 その魔王の質問は予想していたものであったのか、レイはそう前置きしてから質問に答えた。
「それは、私の母が起因です。あいつは母を幼い頃に亡くしていて私の母を実の母のように慕っていましたから。母の言葉が心に残っていたのだと思います」
「……母君が起因……もしや、そなたの母君は……」
 その言葉を聞いて魔王は何か思い当たることがあったのだろう、けれど、何かを言おうとして言い淀んだ。
「はい。私の母は動物使い――いえ、魔物使いです」
「なるほど……魔物使いは魔物の心が読める。そなたも魔物使いである母君の血を引くのだから魔物の心は読めるのであろう。それなら魔物を倒すのをためらうののは当然であるな。それでありながら歴代の勇者より魔物の被害が少ないのは使役している魔物から情報を得ていたからか」
 魔王の言葉にレイは頷いた。
「勇者でありながら魔物使いの血を持つか。創造神も面白い者を勇者に選定したものだ。神族はこういう自らの立場を危うくする可能性のある者が勇者にならないよう裏回しをしていたはずであるが、長い間今の状態が続いたからか油断があるようだ」
「聞きたいことは終わりですか? なら、どうしますか? 魔王には私は殺せない。でも、私を殺せる存在は魔王側に存在するわけですから」
 身構えることなくレイは魔王にそう問いかけた。
「予はそなたを殺す気はない。そなた次第なのだ。今までの流れに逆らうか逆らわないかは。そなたが予を倒すというのなら大人しく倒されよう」
「流れに逆らう?」
 魔王の言葉にレイがそう問い返した。
「そなたが魔族に協力してもかまわないというならば、『奇妙な環』を壊すために動こうと思うのだ。しかし、それは勇者の協力なしではできない事。こうして話を聞いてくれるそなたが勇者である今が絶好の好機であるが、そなたにもそなたの思いがあろう。無理強いはできぬ。協力が得られないのなら今はそのときでないと大人しく引き下がるだけだ」
 レイの問い返しにそう答えた。
 そう、結局、魔王や私がいくら動いてもあまり関係ない。勇者であるレイ次第なのだ。
「協力する場合、私は何をするの?」
「取りあえずは地下界にきてもらうことになる。勿論、そなただけではなく仲間もきてもらうことになる。具体的なことは地下界で後々話そう。事は重用だから協力が得られないのに話すことはできない」
「ん? 俺達も行かなきゃいけないのか?」
 魔王の言葉にジンが口を挟んだ。内容が内容だけに当然の反応だろう。
「うむ。どうしても嫌というならここで話したことの記憶を全て消す事になる。オトハと聖女は消しても殆ど意味はないがな」
「……あー俺以外はある程度知っていることもあったからか」
 魔王の言葉に一瞬首をひねったがすぐに納得ができたようにそう言った。
「ジンはどう思いますか?」
 私とサラには聞かずジンだけにそう聞いた。私とサラに聞いても答えはわかりきっているからジンだけに聞いたのだろう。
「んーもし、魔族に協力しないとしたら……レイは天界に行くことになりそこで虐げられる。魔族に協力するとしたら……」
「魔族に協力した勇者という事で歴史に残るわね。失敗したら人間を裏切った勇者というレッテルを貼られてね」
 ジンの言葉に私が補足すると
「成功したら、神族の支配から開放した英雄となりますね」
 サラも私の言葉に続けて言った。
「……そうなるか……ん? オトハとサラは魔王への協力がどういうものかわかっているのか?」
 私とサラの言葉に何かを感じ取ったのかジンはそう問い返したが私達二人は何も語らなかった。
「まぁ、どうでもいいかそんなこと。人間族がどうなるとか大きなことはよくわからないが、一つだけ確実なのはレイが一番影響があるということか。どの道を選んでも……なら、俺の答えは簡単だ。レイがどんな道を選んでもそれについていく、それだけだ」
 その言葉を聞きレイが目を大きく見開いた。
「信頼している仲間が悩んで出した言葉だ。それを信じてついていかなくてどうする。どんな結果になろうともレイを責めはしないさ」
「……もし、私がどれも選ばすに今すぐここから逃げ出す、と言っても?」
 ジンの真剣な言葉を聞きレイの中で答えが出たのか、おどけた感じでそんな問いかけをした。
「じゃあ、レイと一緒に俺も逃げる」
「あら、私も置いていかないでよ」
「私もお供しますよ」
 ジンの言葉に続き私とサラもそう返した。
 張り詰めていた空気が和らぎ、誰とはなしに笑い出した。
「答えは決まったようだな」
 そんな私達の様子を見て魔王がそう言い
「はい、協力します」
 レイはそれに頷きそう答えた。
「そうか。なら、今から予は根城ごと地下界に戻る」
「魔王を討伐したのと同じ状態にするのね。それからどうするの?」
 魔王の言葉に反応し私はそう返した。
「うむ。魔王討伐の宴が開かれるであろうから、宴が終わった後、夜が明ける前に全員でここへきてくれ地下界へ招待しよう」
 と場所を書いた紙を渡してきた。
「言い伝えのおかげで勇者が急にいなくなったといぶかしむ人はいない。歴代の勇者の仲間も魔王討伐後姿を見た者は少ないことがわかってる……それを使うわけね。神族はおかしいことに気づくだろうけど、それを表に出すわけにはいかない。言い伝えの嘘がばれる可能性が出てくるから。というところね」
 魔王の考えを代弁し、魔王は私の言葉に頷いた。
「あー地下界に俺の妻や子を連れて行ってもいいか? まだ子が産まれて間もなくてな。妻一人で子を任せるのは不安なんだ」
 思い出したというような感じでジンがそう魔王に聞いた。
「そなたの妻が魔族に抵抗がなく、地下界で暮らすことを是とするなら構わない」
「ああ、その点は大丈夫だ。妻は俺の言う事は素直に従ってくれるしな。それに、俺の妻も勇者の仲間に選ばれた程の戦士なんだ。選ばれた後、魔物について調べていて俺に何かおかしいと零していたから、何か気づいていた可能性もある」
 ジンが何気なくとんでもないことを言い放った。
「どういうこと?」
 この場にいるジン以外の全員を代表して私がそう問いかけた。
「いや、最初は俺の妻が選ばれていたんだ。いつ勇者が迎えにくるかと準備していたらこないまま新に俺が勇者の仲間に選ばれたとお触れが出てな。今だから言えるけど本当に俺でいいのか疑問に思いながら旅をしていたよ」
「……ジンの奥さんはあいつの仲間に選ばれていたのかもしれませんね」
 ジンの返事を聞き暫く考えてからレイはそう言った。
「そう言えば、私も魔王が地上に侵攻してきたという噂を聞いてから私にお触れがくるのが遅かったわね」
 レイの言葉を聞き、ふとそんな事が思い浮かび口に出し
「私もそうですね」
 サラもその言葉に同意を示した。これも違和感の正体の一つだったのかもしれないと今更ながらに思った。
「さて、これ以上魔王の根城にいるのが長いと神族に怪しまれるかもしれん。そなた達が地下界にきてからならいくら怪しまれても問題はないが、それまでは避けたい」
 魔王がそう促した。
「はい。では、又、会いましょう」
 レイがそう言うと握手を求め、魔王もそれに応じた。
 その瞬間どこかでがちり、と音を立て固く閉ざされた扉の錠が開いた気がした。





《 Mystery circle 了 》





【 作者コメント 】

◎やばい、抜け殻状態は脱出できたけれど、書く気が起きない……まぁ、頭の中で構想は練れているからいいけど。

「はい、そこ。記念MCの話を練っているのはいいけれど、内藤さんからこんなメール来ているわよ」

ん……なになに……

『おめでとうございます。
2012年度オススメMC企画にて、以下の作品が受賞しました。
●総合オススメ賞
Vol. 46《 Mystery circle 》
面倒とは思いますが、各受賞のコメントを非常にわざとらしく、感動をまじえてこちらへと送って下さい。
もちろんウケ狙い、悪ふざけありで結構です。盛り上げ重視なコメント歓迎します。』

おー受賞コメントが必要になるほど、票が入ったのか。

「と、冷静ぶっていますが心の中では小躍りしています」

そこ、余計な事言わない。

「でも、何の賞かは書いていないし……『自推したで賞』とか?」

いや、確かにこの作品を自推したけどね orz
まぁ、どんな賞かは分らないけれど、賞を貰えた事は素直に嬉しいです。

「自推する程、自分の中で納得がいく作品だったようだしね」

漸くMCで自推できるレベルの作品を書けたよ。
俺の他にどのくらい自推した人がいるかわからないけれど、自推できる作品を書き上げるという事は大事だと思う。

「この追伸文も気になるよね」

『受賞はかなぁり上位なので、かなぁり偉そうなコメントで書いて来てオーケーです!
マジ凄いよ! 付いたコメントはぶっちぎりだったし。(笑 』

付いたコメント"は"ぶっちぎり……この"は"から様々な事が想像できて怖いんだけどorz

「コメントは付いたけど、票は入っていないとか?」

何そのイジメ……イジメカッコワルイ

「まぁ、内藤さんだし、色々怖いよねぇ」

内藤さんだしなぁ……

まぁ、二度目になるけれど、どんな賞であれ、賞を貰えた事は素直に嬉しいです、ありがとうございました。
と、綺麗に終わらせます。



「……ところで、一ついいですか?」

ん? 何だ?

「MCの皆さんにとって、私は誰だってなりません? 名乗ってもいませんし……」

……こまけぇこたぁいいんだよ!!


――続かない――



忘れられた丘  矢口みつる(知)


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