Mistery Circle

2017-07

《 HAZY MOON -朧月夜- 》 - 2012.05.01 Tue

《 HAZY MOON -朧月夜- 》

著者:李九龍





 夜のしじまを縫うように、その巨大な物体は轟音と共に月明かりの下を駆け抜けた。
 立ち込める、雲へと掛かる朧の月夜――。そしてその空を切り裂き走る真白き機体の大型旅客機。
 その白くぬめるボディは暗き闇と同化しながら、冷たく青い月光を浴び、奇妙に照り輝いていた。
 眼下に望める広大な密林は尚も静寂のまま、その騒音の元凶が空を揺るがすのを黙認している。
 見つめる視点は、その旅客機と並走しながら徐々に近付きつつあった。
 そして更に視点はその機体の横に並ぶ窓の一つを捉え、一気にズームアップを果たす。
 窓から覗けるその場所には、白いサマードレスの少女と、スーツ姿の男性の二人の姿。
 隣り合ったシートに並んで座る二人は、互いに顔を窓の外へと向け、やけに浮かない表情でその暗い夜空を眺めていた。
「暗いわね」
 窓際に座るブロンドヘアーの少女が、呟くようにそう言った。
 少女の名前はエレナ・J・カナフ。透き通る程に肌の白いコーカソイド。年齢はまだ十歳かそこいらだろうか。幼さの残るその顔立ちに、やけに知的なイメージを漂わせている少女だった。
 そしてその隣。茶系のスーツに身を包み、愛用のブリムダウン帽をもてあそびながら頷いているのは、最近ようやく博士号を修得したばかりの新米学者である、リュート・D・クロフォード。
 シックな服装とべったりと後ろに撫でつけられた頭髪が彼を無駄に老けさせて見せてはいるが、実際はまだ三十を過ぎたばかりである。
「確かに――。今は丁度グラナスのジャングルの真上を飛んでいる筈なんだけど、残念ながら暗すぎてその片鱗すらも見られないね」
 リュートがそう返すと、エレナは、「そうね」と呟きながら窓枠に肘をつき、腕に頬を載せた。
「圧倒的な漆黒の暗闇。月の光すらも及ばない一面の黒の大地。今そこに確かに現存しているのに目に映らないって言う現実は、不思議なぐらい心を不安にさせるものだわ」
「随分と歳に似合わない、難しい事を言うね」
 リュートは笑いながら言った。
「年齢は関係ないでしょう」エレナは尚も窓の外を眺めながら言い返す。
「私、歳の事を言われるの大嫌い。他人は皆、私が十一歳だと知ると、十一歳の子供に対する受け答えしかしないんだもの」
 それを聞いてリュートは苦笑した。その言葉に、彼女はただ背伸びをしたいだけではなく、本当に年齢の事で苦労をしているのだろうと思わせる響きが感じられたからだ。
 リュートとエレナは、つい数時間ほど前にブラジルのサンパウロから出ているナイトフライト便に乗り込み、知り合ったばかりだった。
 こんな夜更けに子供一人で空港にいるなんてと、リュートは不思議に思ったものだったが、エレナ曰く、「ただ、おじいちゃんと隣り合う席が取れなかっただけよ」と、簡単な説明だけで、リュートを納得させていた。
 だが、リュートが推理する限りでは、エレナは故意にその祖父と離れた席を希望したのではないかとも思う。その要因は、エレナが面倒臭そうに膝へと載せている黒猫のぬいぐるみだった。
「家に帰るお土産なんだって」
 リュートの視線に気付き、エレナはふて腐れた顔を作りながらそう答えた。恐らくは、彼女が最も嫌がる“子供扱い”は、その祖父が一番なのではないかと、リュートは密かにそう思っていた。
「あそこで大きないびきをかいているのがおじいちゃん」
 エレナは指を差すでもなく、そう説明した。確かに彼女の見る視線の先には、十数列離れた斜め向かいの席でいびきをかく大柄な老人男性の姿があった。
 エレナは、リオで暮らす祖父の家から、イギリスのロンドンにある自宅へと帰る途中だと言う。逆にリュートはこれからが仕事であり、その服装からは普通想像もつかないであろう、ジャングルの奥地で泥まみれになりながらスコップを振るう事にあった。
 果たして希望に近いぐらいの収穫はあるだろうか――。リュートは明日からの予定を頭に描きながらそう思った時だった。
「こうして空から漆黒の大地を眺めている限りでは、かつてこの真下に一つの文化が存在していたなんて、想像も付かないわね」
 エレナの言葉を聞き、リュートは驚きの表情を浮かべた。
「まさか君、ヴェスカス文明の事を指して言っている訳じゃないよね?」
 問えば今度はエレナが驚き、リュートの方へと振り返る。
「どうしてあなたがヴェスカスの事を知っているの? 大学の教科書にだって、そんな古代の小さな文明の事なんか載ってないのに」
「それは僕が聞きたいぐらいだ」リュートは自らの胸に手を当て、そう言った。
「教科書に載っていないのは、それが本当に存在したのかどうかも怪しい、そんな曖昧な存在の文明だからだ。むしろ僕はそれを知っている君に驚く。どうして史実に無い文明の事を、君が知っているんだい?」
 聞かれてエレナは顔をしかめながら、「そんな事を調べている家族がいるからよ」と、溜め息混じりにそう答えた。
「家族に? あぁ、そう言えば君の名前に“カナフ”と付いていたが――」
 リュートがそんな名前の考古学者の名前を思い出しつつ、そこまで言い掛けた時だった。
「神が見ている!」
 突然、静かな機内にそんな男の大声が響き渡る。
 既に眠りについていた客達は驚きながら目を覚まし、そうでない客は何事だよと不満の声を上げていた。
「何かしら。随分と前の方から聞こえたけど」
「酔っ払いか、寝ぼけた客か何かだろう。気にする事ないよ」
「そうね――」
 そしてまた機内は静まり返る。まるで何も無かったかのように。
「ねぇ、リュート。あなたは“約束の石板”って、知ってる?」
 ふいに聞かれ、リュートは、「もちろん」と、嬉しそうな顔で答えた。
「実は僕は、その石板を探しにここに来たんだ。――まぁ、見付かるとは全く思ってもいないけどね」
「へぇ、物好きね。今の時代にそんな眉唾な話を信用して行動する人がいるなんて、信じられないわ」
「あぁ、そうだね。だから他人に、“変人”扱いされる」
「私は変人だとは思わないけど……」
「けど、何?」
「ううん、なんでもない。ただ私の国にある、とあることわざを思い出しただけ」
「あぁ。何を言いたいか判ったよ。“Curiosity killed the Cat(好奇心は猫を殺す)”だろう?」
「良く知ってるわね。縁起悪いから言わなかったのに」
「いや、構わないよ」リュートは苦笑しながら言った。
「実はそれも良く言われるんだ。もっとも僕の場合は、“好奇心の猫”って言う仇名なんだけど」
「なるほどね。――似合ってるわ」
 そう言ってエレナが笑うと、またしても前方の席の方からなにやら男の声が聞こえて来た。
 ただ、今度のそれはまるで怒っている時の独り言のようであり、もしくは何かの呪文のようでもあり、リュート達にはその内容まではまるで聞き取る事が出来なかった。
「何かしら。気持ち悪いわ」
「今、キャビンクルーが注意しに向かったよ。大丈夫」
 言っている間に女性の客室乗務員がその声の主であろう席まで行き、何かを訴えているのが見えた。そしてすぐにその乗務員が離れて行ったのを見ても、大した問題ではなかった事が判る。
「きっと彼も落ち着かないんだろうさ。――なんだか今日は、不安な気配に漂う夜みたいだからね」
「そうね。空気が霊的気配に満ちている感じ。グラナスの森の夜は心ざわめくと聞いた事があるけれど、それは本当かも知れないわ」
 そう言ってエレナは、毛嫌いしながら膝の上に抱いていた猫の人形を拾い上げ、腕に抱き寄せた。そうしているとまるで普通の子供みたいに見え、リュートは少しだけ可笑しくなった。
「ねぇ、リュート。さっきの話に戻るけど、あなたは“約束の石板”を含むモノリス(石柱)群を、どんなふうに見ているの?」
「どんなふうって? 例えば――」
「例えば、それが実在するかどうか以前に、それはなんの為にそこにあるのかって話ね」
 聞いてリュートは、「難しい質問だね」と、言葉とは裏腹な笑顔でそう答えた。
「僕はそれは、なにかの指標……いや、目印になっているんじゃないかと思っているんだ。ある一説によればその石柱は、かつてグラナスの森のあちこちに点在していたとも伝えられていたしね。それが場所や方角を示すものだったと考えてもおかしくはない」
「だけど結局、それは存在しなかった。噂は噂でしかなく、学者や探検隊達が森中をくまなく探し回って、ただの一つも見付けられなかった」
「そう……そこが不思議なんだ。それ以前にはこの地方に住む人々が森の中で当たり前に見掛けていたその石柱が、ある時を境にまるっきり全て姿を消した。従って石版の伝説は嘘の情報と断定され、それを建てたとされているヴェスカスの民もまた歴史の中から抹消された」
「わからないわね。その石柱群の話が最初から嘘だったとしても、どうしてそんな嘘を吐いたのかさえもわからない」
 エレナの言葉にリュートは黙しながら、そっと片手で唇を撫でる。それはリュートが考え込んだ際につい出てしまう癖のようなものだった。
「じゃあ逆に質問。君自身は、石柱に関してどんな考えを持っているんだい?」
 聞けばエレナは素っ気なく、「あなたと同じよ」と答える。
「でも“約束の石板”に関しては、広く伝わる話だけでは収まらないと思っているわ。どう考えてもそれが、男女の婚姻の儀式の為だけに存在していたとは考え難い。ただ単純にそこで婚礼らしきものも行われていたからこそ、そう言う為のものだと決めつけるのは愚かな考えね」
「確かにそうだね。“約束の石板”を知る人は大抵皆、口を揃えて『婚礼用の祭事の時の為のもの』と言い切る。まぁ、実際にそこでヴェスカスの民の婚礼はとり行われていたらしいから完全に嘘だとも思えないんだけど……。でもやはり何かしっくり来ない。どうして普段から姿を見せない存在の薄いヴェスカスの民が、その石板の前だけでは当たり前のように目撃されていたのだろうか」
「えぇ、不思議ね。確かに民はあの森の中で暮らし、生活を営んでいた筈なのに……」
「モノリス(石柱)と石板を除けば、他には全く何も無い。住居も、食器の類も、生活に関するものが何一つとして発見されていない」
「そう。あるのはただ、土着宗教の痕跡だけ。民の人骨一つすら見付かっていないんだから、誰もが皆、『ヴェスカス文明はまぼろしだ』って言う筈よね」
 そして二人の会話はそこで一端、途切れた。
「やはり、石の存在が鍵になっているんだろうなぁ」
 リュートは呟くようにして言った。
「そうね。グラナスのジャングルには川が無い。しかも恐ろしく曲がりくねった木々が道すらも作れないようにして密集している。なのにどうやって、それだけ巨大な岩石を遥か遠くの地から切り出して運んで来れたのか」
「謎だらけだね。だからこそ僕は、俄然興味が湧くんだけど――」
 その時だった。
「滅びよ! 神の為に!」
 叫び声が聞こえた。
 見れば客席のずっと前の方でシートから立ち上がり、長い髪を振り乱しながら一人のやせぎすな男が片手を上げ、叫んでいるのが見えた。
「神を愚弄し、神を欺き、神に唾吐く愚かな人類共よ! 消えるがいい! 後悔し、そして恐怖におののきその身をささげるがいい!」
 にわかに、辺りは騒然となった。
 エレナは自然に手を伸ばし、リュートはそれを捕まえるようにして手を握り締めた。
「リュート。何が起こったの?」
「判らないよ。ただ一つ言える事は、どうやらあれは寝言じゃないって事ぐらいかな」
 そうしてまた声高々と、「滅びよ!」と叫び差し上げられたその手には、何かが握られていた。――そう、まるで何かを操る操縦スイッチのような。
「おじいちゃん!」
 エレナが叫んだ。それとほぼ同時に、素早い動きでシートから飛び出した巨体の老人が、その男に強烈なタックルをかまして一緒に床へと倒れ込んだ。
 そして間髪入れずに巻き起こる轟音。激しい振動。リュートは咄嗟にエレナをかばい、自らはしたたかに左肩を前の座席の背もたれにぶつけた。
 突如、竜の咆哮のような唸り声が機内に満ちた。リュートはすぐに気が付く。機体の一部が損傷し、そこから空気が漏れ出ている音だと言う事を。
 この旅客機はグラナスの森を舐めるような低空飛行を続けていた筈だから、例えこのまま機内の空気が抜け続けても酸欠にはならないだろうとリュートは思った。だが、右に左にと身体が引っ張られ、後方から見える窓の外の灯りなどが、エンジンからの発火を予想をさせた。
「落ちるの、リュート?」
「いや、きっと大丈夫。スピードは出ないけど、“反重力装置”が働いて、浮いてはいられる筈だから」
 その瞬間、恐ろしい程の破壊音が轟き、機体の天井が一気に剥がれ飛んだ。そしてそれはリュートとエレナの座る場所にも達し、まるで現実感の湧かない曇天の夜空がそこに見えた。
「いやあぁぁぁぁぁーっ!」
 エレナの叫び声。そして浮き上がる小さな身体。
 リュートは必死にエレナにしがみつき、シートごと抱きつくようにしてエレナの身体を押さえる。
 ――刹那、見てしまった。
 目の前を横切る、先端の尖った巨大な物体。続いて、本来は見える筈の無いだろうグラナスの森の原生林。
 あぁ、落ちるな。思った瞬間、今度はリュートの身体が浮き上がる。
 必死でしがみつくエレナの手すらもふりほどき、リュートはグラナスの夜の闇の一部へと同化した。

 *

 ――やけに幻想的な眺めだなぁ。
 闇から帰ったその直後、リュートはそんなのんきな感想を持ちながら、真正面に見える朧の月夜を見上げていた。
 長い長い、暗いトンネルのその先に、月は見えた。
 仰向けに寝転がったリュートはその淡い月光を全身に浴びながら、降り注ぐ“人々”を、眺めていた。
 一見すればそれはまるで雪のようでもあった。小さく、ひらひらと舞う白き物体。
 だが良く良く見ればそれはどれも“人”であった。まるで何かのデフォルメ人形のように、楕円に手足が生え、目鼻が付いているだけの形だったが、それが“人”である事だけは間違いがなかった。
 人が、死が、その魂が、月を背後に長いトンネルを抜け、降り注いで来ているのだ。
 あぁ、これは異国の空気が見せる独特な夢の中なのかな。思いながらもその背には、現実に肉体を有している人々の手の温もりが感じられた。
 確かにリュートの背後――いや、その身体の下には、幾人かの存在があった。十人程の掌がリュートの身体を押し上げるようにしてそれを支えている。
 そして更にリュートはその体勢のまま、水に浸っていた。まるで水底にいるかのように顔すらも水の中に浸かりながら、人の手に支えられ、降り続ける“人”を、月光と共に眺めているのだ。
 これは随分と面白い“夢”だなと思い、フッと笑ったその瞬間、今度はリュートの身体が浮き始めた。
 背中から、身体中から、支えていた手が離れ、リュートの身体は浮き上がる。
 降る“人”もまばらとなり、リュートは少しだけ孤独を感じながら、月へと引き寄せられるかのように浮遊を続ける。
 あぁ、なんて気持ちがいい夢なのだろうと密かに想いながら――。

 *

「気が付いた?」
 声が聞こえた。
 慌てて身を起こせば、そこは草の生い茂った地面の上だった。
 どうして一瞬にして二度も現実に帰るような体験をするのだろうと愚痴りながら声の主を探せば、それは近くの倒木に座るようにして、そこにいた。
「泣いてるの?」
 リュートは、暗闇の中にやけに目立つ白いサマードレス姿の女の子――エレナに向かって話し掛ける。
 声はせずとも、エレナがそこで頷いたのが判った。
「どうしたの?」
 尚も聞けば、「死んじゃった……」と、エレナは言った。
「死んだ……って、おじいちゃんの事?」
「うん――。いいえ、おじいちゃんだけじゃないわ。全員……」
 そして今度は、忍ぶ事なく泣き声をあげるエレナ。リュートは心配になって立ち上がり、彼女の元へと近付こうとしたその時だった。
「来ないで!」
 断固とした、拒否の言葉だった。思わずリュートも、その足は止まった。
「どうしたんだい、エレナ」
 聞いても返事は来ない。ただエレナは、無言で首を横に振り続けるだけだった。
 気が付けば、リュートは全身が濡れそぼっていた。亜熱帯の熱気がそれを寒いと感じさせはしなかったが、それでもその不快感はかなりのものだった。
 だが、見渡してもそれらしきものが無い。川も、沼も、水たまりらしきものも。
 俺は一体どこに落ちたのだろうと思いながら考えあぐねていると、いつの間に来ていたのだろうか、横に立つエレナが月夜を見上げ、ぼそりと言った。
「――私も死んでしまえば良かった」
「何を言って……」
「もう生きて行ける術が無いのよ」エレナは続ける。
「もうおじいちゃんはいない。私は両親の元に帰るしかない。――残されたのはただ、絶望だけだわ」
「どうして? ご両親の元に帰る事の、何が絶望なんだい?」
 言われてエレナは、そっとリュートの方へと向き直る。とても十一歳とは思えない端正で美しいエレナの顔が、月の灯りを受け、ますます神秘的な表情となってリュートの目には映った。
「私、おじいちゃんの元に逃げて来ていたの」エレナは言う。
「パパは無職で、アルコールと薬物の中毒者。ママは極度のノイローゼで、私に虐待ばかりを繰り返していたわ」
「そんな……」
「嘘じゃないのよ。だから私は、おじいちゃんの元で暮らす為の手続きをしに、いったん家へと帰る決心をしたの。そしてそれが済めば、正式に私はおじいちゃんと一緒に暮らせるようになる筈だった」
 再び夜空を見上げるエレナの頬に、一筋、涙が流れ落ちた。
「私も死にたかった。生きてまたあの苦痛を味わうぐらいなら、いっそ皆と一緒に死ねば良かった」
「そんな事言わずに……」
「触らないで!」
 エレナは叫び、後ずさる。そしてリュートは、伸ばしかけたその手を引っ込めた。
「ごめんなさい、リュート。なんか私――」
「いいんだよ。気が昂ぶっているんだ。気にしないで」
 言いながらリュートは両手を広げてみせた。
「いい人ね。あなた」
「ありがとう。でも僕としては、『悪い人ね』って、女性には言われたいんだけどね」
「馬鹿ね。それは十一歳の子供に言うジョークじゃないわ」
「そう言う時だけ十一歳の子供なんだね、君は」
 にわかに、小さな笑い声が上がった。どちらからともなく小さな声で笑い出し、そしていつしかそれは本当に愉快なのだろう声へと変わる。
「リュート。あなたには逢いたい人がいるの?」
 聞かれてリュートは、「どう言う意味?」と、聞き返す。
「つまり――。恋人とか、家族とか。あなたの帰りを待っている人とか」
「あぁ、いるよ。遠い国に住む恋人が」
「そう……」エレナはそう言ったきり、何故かそれ以上は聞こうとしなかった。
「ねぇ、リュート。私さっき、一人ぼっちでここに座りながら気が付いた事があるの。あなた、ヴェスカスの言語はいくらか知ってる?」
「あぁ、うん。少しだけなら」
「じゃあ、“約束”と、“誓い”は、ヴェスカス語で何て言う?」
「それは――。同じだね。どちらにも区別は無く、『フォティマ』だ」
「そう。“アヌバス・デ・ヴュシャ・フォティマ”。直訳すれば“約束の石板”だけど、実際は“誓いの石板”とも読めるわよね」
「うん。――それで?」
「どうしてそれが“約束”となって広まったのか。それはきっと、最初にその石板を見付けた人が起こした勘違いなんじゃないかと思うの」
「どんな勘違い?」
「婚礼よ。たまたま、祭事で使うその石板の前で婚礼が行われていた。そしてその石板の持つ魔力の説明と、石板の名称を現地の言葉で聞いてしまった」
「あぁ、その石板の前に立つ二人の願いが同じならば、その願いは神に届けられ、約束される――と」
「でもそれって、男女二人の限定でもなければ、婚礼と区切って説明された訳でもないわよね」
「まぁ、確かにそうだね。もしもそれが話の通りなら、説明されたのはただ二人の願いが同じならばそれは聞き届けられるって部分だけだ」
「ねぇ、リュート。それを一度、試してみない? ――ううん、試すだけの価値はあるんじゃないかなと私は思うんだけど」
「エレナ。君は一体、何を言って……」
 言いながら一歩を踏み出したリュートは、暗がりの中で地を這う木の根につまづき、前のめりに転んだ。その拍子に飛び出してしまったのか、コツンと言う音と共に、目の前にリュートが愛用しているオイルライターが放り出された。
 月光を浴びてきらきらと光る金属の欠片。リュートはそれに向かって手を伸ばし、そしてようやくその異変に気が付いた。
 ライターは確かにそこにある。だが、掴めない。どうしてもそれが掴めない。掌はまるで空気をかき分けるかのようにして、手応えのないまま素通りをする。
「リュート……」
 必死になって地面をまさぐるリュートに向かって、エレナは呼び掛ける。だがリュートからの応えは無い。
「ねぇ、リュート」
 エレナはリュートの前へとしゃがみ込む。だがその時のリュートは珍しくも激しくうろたえ、周囲の事になど気を使えない様子で、込み上げる恐怖と戦っている最中だった。
「あぁ――リュート。ごめんなさい」
 そう言って、頑なにリュートの接近を拒んでいたエレナは自らその手を伸ばし、そしてリュートの手を包み込むようにして、小さな白い手を添えた。
 だが、無情にもその手はリュートの手をすり抜けると、そしてそこに落ちていたオイルライターだけを拾い上げて、リュートの目の前に差し出された。
「ごめんなさい……ごめんなさい。私の為に、そんな事になって」
 エレナは再び、しゃくりあげるようにして泣き始めた。
「あなたには逢いたい人も、帰りたい場所もあるのに、私を助けようとしたばかりにそんな目に合って……。でも、生き残った私にはもう、絶望しかないのよ。なんて皮肉なの」
「エレナ……」
「逆だったら良かったのに。生き残るのは、あなただけで良かったのに。そうすればきっと私も、皆と一緒に“あの中”に行けたかも知れないのに。なんの苦労も無い、やすらぎだけの世界に」
「エレナ」
 リュートは今度こそ力強くその名前を呼び、触れられないエレナの頬へと手を差し伸ばした。
「ありがとうエレナ。そして、ごめん。もう大丈夫だよ。うろたえて済まなかった」
 手が、頬へと触れる。だがやはりその感触は無いままに、リュートは撫でる動作だけをした。
「君は僕にこの事を気付かせまいとして、近付くなと言ったんだね」
 リュートは聞くが、エレナは大粒の涙をこぼすばかりで何も答えない。リュートはエレナを抱き締めるような仕草をしながら、つい先程、飛び上る彼女の身体を必死になって抱き留めていた感触を思い出す。
 そうして、どれぐらいそんな無言の時間が過ぎたのだろうか。エレナはふとその顔を上げ、「あなたに私の命をあげる」と、呟いた。
「――なんだって?」
「リュート、私わかったの」エレナはリュートの腕から離れ、そう言った。
「私はここで、おびただしい数の死者の魂の行進を見たわ。あれはきっと、この旅客機の事故で亡くなった人達の魂。皆はこの前まで歩いて来て、そして小さな白い粒となって消えて行った。吸い込まれるようにして、あの中へね」
 振り向くエレナ。そしてその向いた方向には、暗い闇夜すら切り取られてしまっているかのような、更に深い闇があった。
「やはりあれは、婚礼などの儀式の為だけの存在なんかじゃないわ。もしかしたらあれは、現実と別世界とをつなぐためのもの。きっと、あの存在が叶えてくれると言われる願いだって、あれを通じて神らしき者に直接語り掛けられるからこその恩恵なのではないかしら」
「エレナ。君は一体何を言って……」
「あなたはまだ気付かないの? 今私達は、“奇跡”の前に立っているのよ。あなたが心から渇望し、それに触れてみたいと願ったその存在の前に立っているのよ」
 エレナはそう言い、草むらの途切れる場所まで歩いて行って、その場でカチリとオイルライターに火を灯した。
「あぁ――」
 リュートの唇から感嘆の溜め息が漏れ出した。
 その周囲に満ちた暗闇よりも更に深い闇へと染まり、二人の眼前に立ちはだかる巨大な一枚の岩盤は、小さくほのかな灯りを受けてその暗黒の中に浮かび上がった。
「リュート、あなたに私の命をあげるわ」エレナが静かな口調でそう言った。
「さぁ、願って。私達の“生”の交換を。この奇跡の前で――。一緒にこの“誓いの石板”の前で、私達の奇跡を願ってちょうだい」

 *

 てらてらと、揺れる小さな炎の灯りの中で、ぬめるように照らし出されるその石板の表面をなぞるように、リュートはそこに刻まれた歴史の跡を追って行く。
 起源はメソポタミア文明のそれとほぼ同じだとされてはいるが、その岩盤に刻まれた文字の曲線の美しさは、それに比較にならないほどだった。
「エレナ。灯りを、もう少し上に――」
「もう無理よリュート。これで精一杯」
 言った途端、「熱い!」と小さく叫び、エレナはライターを取り落す。途端、再びの漆黒の闇が辺りを包んだ。
 ――否。もうそれは既に漆黒ではなかった。その暗さに目が慣れると同時に、遥か向こうの山の稜線から紫色のほのかな明かりが浮かび上がって来ているのが判った。朝が、近付いて来ているのだ。
「何かわかった? リュート」
「あぁ、大雑把にではあるけどね」リュートは答える。
「この石板に刻まれている文字の内容は、決して宗教めいた呪文でもなく、何かの教えでもない。ただ、この石板を中心としてこの森全体に広がっている水路と、その要にあるであろう石柱の場所を記した地図のようなものだった」
「水路? ――どこに水路が? このグラナスの森は、川が無いのが特徴なのに」
「あるんだ。きっと、この地面のずっと奥底に」
 そう言ってリュートは、自らの足元を指差した。
「地の……奥って事?」
「そう。きっと、地表からじゃあ掘り当てる事すらも不可能なんじゃないかなって言うぐらいの奥底さ。しかもそれは迷路のように、この森の隅々まで張り巡らされ、広がっている。この道なき森の、唯一の道のようなものなんだ」
「まさか……そんな事が書いてあるの?」
「いや、書かれてあるのは石柱の座標らしきものと、注意書きめいたものばかりさ。この下に川があるって知った理由は、僕自身がその地下層へと行って来たからなんだよ」
「行って来たって、いつ?」
「いつ、って――。君が、倒れている僕の目の前で泣いていた時の事さ。僕は夢見ごこちのまま、あの地下層から浮上して来た。もしかしたらそれは本当に夢だったのかも知れないけれど、僕にはそんなふうには思えない。背中に――人の掌が触る感触があったんだ。そしてこの全身を濡らす、たわわな水の感触も」
「まさか……」
「うん、まさかとは思ったけれどね。でもそれで辻褄は合う事になる。川の無いこのジャングルの奥地に、こんな巨大な岩盤を運べた理屈。ヴェスカスの民は確かにこの森に存在していた筈なのに、どこにもその生活の痕跡を残していない理屈も。つまりはこの森中に点在する石柱群は全て地上と地下を結ぶトンネルであり、ヴェスカスの民の生活の場は、水と共にいられる地下にあったんではないだろうかと」
「リュート……」エレナは呟くようにして言う。
「あなたはいかなる状況でも、楽しい事を考えられる人ね。死んだばかりだと言うのに、そんなに活き活きとした顔をして」
「あぁ、そうだね。僕は今、物凄く興奮しているよ。最後にこんな奇跡に出逢えた。僕が子供の頃から惹かれてやまなかったその奇跡に、こうして出逢えた。――もう、満足だよ」
「駄目よ!」エレナは叫んだ。
「あなたは生きなきゃ! あなたには逢いたい人がいるんでしょう? 愛する人がいるんでしょう? あなたの学問だって、この一つで全ての興味が終わる訳じゃあないじゃない。あなたはまだ生きて、また新しい奇跡の跡を追い掛けなきゃ……」
「それは今度は、君が追うんだ」リュートはしゃがみこみながら、エレナに言った。
「君の中には、僕と同じ魂が込められている。いや、僕のものよりもずっとずっと大きく純粋なのかも知れない。――だから僕はもう、君に全て託す。僕の学問はここで終わりだけれど、君は僕を追い越して、もっと先へと進んでくれ。この世界にはまだまだ沢山の神秘と奇跡が眠っている。そしてその存在へと近付けるのは、迷う事無き好奇心と大いなる行動力だ」
「やめてよ! そんなのあなた自身で探しなさいよ! 私はあなたに命を託すって言ったでしょう?」
「エレナ!」リュートは言った。
「いいかい、良く聞いて。今から僕は、君にとある人の連絡先を教える。君が本気で両親の元へと帰りたくないのなら、真っ先にその人に連絡するんだ。遠い国に住む若い女性だが、きっと君を助けてくれる。君の力になってくれる。君はもう、自由に君だけの人生を送るんだ。誰にも邪魔されない、君だけの人生を……」
 その時、どこかで地鳴りのような音が響き出したのを聞いた。
 やがてその音は地鳴りのように激しい振動を伴って、リュート達の立つ場所までやって来た。
「これは……?」
 リュートが問うと、エレナは覚悟をしたかのように、「閉じるわ」とだけ呟いた。
「閉じるって、何が?」
「……蓋よ」そう言ってエレナは、リュートの顔を見上げた。
「リュート、これが最後の交渉よ。あなたに私の命をあげるわ。だから私とこの石板の前で、“生の交換”を願って」
 だがリュートはやはり、なんの迷いもない笑みを浮かべながら、首を横に振った。
「君は確かに、恵まれない家に育ったのかも知れない。だけど君はそんなに聡明だ。そんなに好奇心が旺盛だ。――大丈夫だよ。ただそれだけあれば、生きて行ける。昔の僕のように」
「リュート……」
「そして生きて、伝えてくれ。彼女に……愛していたと」
 聞いてエレナは、ゆっくりと頷いた。そして地面へと落ちたリュートのオイルライターを拾い上げ、「これ、貰って行くわね」と、告げた。
「きっと私が行く道は、凄く暗くて寒いでしょうから、これを頼りに歩いて行くわ。――さようなら、リュート。やっぱりあなたいい人だったわ。そしてとても嫌な人。私自身の汚い面が、途方もなく惨めに思えて来るほど、嫌な人」
「エレナ、君は何を……」
「夜明けが来るわ」
 途端、大きな地鳴りと振動と、そしてその辺り一面を照らす異国の朝の光が射し込めた。
「もしも……両親に逢ったら……伝えて……」
「エレナ!」
「私も……」
 その後は、もう既にリュートの耳には聞こえなかった。
 無理に微笑んだ涙顔でエレナは尚も何かを話していたが、その顔も姿も輪郭も一瞬にして曖昧になり、全ては朝日の光の中に溶け込んで、そして消えた。
 やがてエレナの立っていた辺りに小さな白い胞子のようなものが浮かび上がり、それがすぅっと石板の中へと吸い込まれると同時に、リュートの見ているその前で、石板は激しく振動をしながら地面の中へと潜り込んで行った。
 それは本当に、僅か数秒程度の出来事だった。石板が沈み込み、まるでその痕跡すらも無くなってしまったかのように消え失せた後には、既に何千年と言う深い年月が経っているであろう渦を巻いた巨木が、石板の立っていた辺りに深い根をおろしながら立ちはだかっていた。
「これじゃあ……誰にも見付けられない訳だな」
 そう言ってリュートは、その木の枝の一つに引っ掛かっていた愛用のブリムダウン帽を取り上げて、自らの頭へと載せた。
 もう既に、轟音も振動も静まっていた。
 森はまるで何事も無かったかのように朝の静寂となり、亜熱帯を思わせる鳥の鳴き声がどこかから流れ、聞こえて来るばかりであった。

 *

「僕はやっぱり――ヴェスカスの民は、まだあの森にいるんじゃないかと思ってるんだよ」
 リュートは語る。だが、それに対する返事は無い。
「民は消え、歴史は途絶え、史実からもヴェスカス文明と言う言葉は無くなった。だけどそれは今も尚、脈々とその地の奥底で続いてるんじゃないかなぁ。きっと、もう既にこの現代で受け入れられないであろう数々の神秘をそこに隠して……ね」
 広い部屋の中だった。壁も天井も、そして床までも。全てが清潔感漂う白一色のその部屋の中、簡素にカーテンで仕切られた一画のベッドの上、少女はいた。
「ねぇ、君はどう思う?」
 リュートは尚も聞くが、その横顔は何も語らない。
 横たわる少女の顔をひとしきり眺め、その冷たくなった頬を手の甲で一撫でした後、リュートは再び白い布で、その土気色な顔を覆った。
 苦しむ間もない死だっただろうと、医師は言った。
 床から突き出したパイプが、少女の胸を貫いていたと、そう聞いた。
 リュートは胸のポケットから、まるで原型をとどめていないぐらいに変形した愛用のオイルライターを取り出す。
「お前まで幽霊になっていただなんて、思いも寄らなかったよ」
 リュートはライターに向かって呟き、それを少女の小さな掌に握らせた。
「エレナ――。代わりに君が嫌がっていたこの人形、貰って行くよ」
 そう言ってリュートは、継ぎ目から綿を飛び出させた泥だらけの猫のぬいぐるみを胸に抱くと、滲んだ涙を悟られないようにして帽子をまぶかにかぶり、その部屋を後にした。
 長く白い通路を歩き出し、少し行った所で、二人の男女と擦れ違う。
 どちらも身なりの良い服装で、普段の生活が容易に想像出来るような二人だった。
 二人は今しがたリュートのいた部屋の中へと飛び込んで行き、そしてその後には絶叫とも咆哮ともつかない声を上げ、そして少女の名を呼んだ。
 リュートはその二人に一礼するかのようにして、再びその部屋に背を向ける。
 きっとあれはエレナの両親なのだろうと、リュートは推測した。そしてその父親だろう男性の方は、“カナフ”と名の付く権威ある有名な考古学者でもあった。
 どれだけあの二人の裏を想像してみても、エレナが語った自堕落な両親の像には到底行き着かない。恐らくは彼女が咄嗟に捏造した、架空の話だったのだろう。
 リュートはぬいぐるみを強く抱き締めながら思った。
 もしも彼女が本当の子供らしき素直さで、「私は生きたい」と願ったのなら、きっと自分はそれを受け入れただろうと。
 喜んで“生”を代わり、迷う事なく自分の命を捧げただろうと。
 視点は静止し、ただ一人、孤独にその長い通路を歩くリュートの背中だけを見送っていた。
 その背中はやけに寂しく、微かに震えているようにすら見えた。
 ――リュート・D・クロフォード、三十二歳の日の、一場面の事である。



《 HAZY MOON -朧月夜- 了 》



【 あとがき 】
「ノープロブレム」 俺は言った。
お題の一文、結局どこにも入れられなかったので、ここで言わせていただこう。(激反則

皆様、ご無沙汰しております。李九龍です。
今回は飛び入り参加オーケーって事なので、また内藤のクソカボチャ野郎に疎ましがられながら、原稿提出させて頂きました。
え~、リュート・D・クロフォードの、シリーズ第四作目です。
って事で、原稿を置いて俺はまた潜ります。
それでは皆様、また数年後にお逢い致しましょう。


李九龍

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