Mistery Circle

2017-08

《 Mr. 》 - 2012.01.31 Tue

二作目 《 Mr. 》

著者:すぅ




「ねえ、この“堅物”をどうやって蕩かしたの。」
そう聞かれても答えに困る。
「特に何もしてないし。・・しいて言えば勝手に蕩けた・・・かな。」
「春菜ってさ、そういう自覚ないよね。」
夏海は、やれやれといった口調でそう言って、野菜スティックを齧った。
「ところで、この人参美味しいね。」
「寒いと甘みが出るらしいよ。」私は、そっけなく答える。


「そんなことより、彼の件については、詳しく話してもらうわ。」と、真顔で詰め寄る夏海。
う~ん。どうやら話をしないと今日は帰ってくれそうにない。


確かに彼は、堅物でクールだ。それは認める。
いつだったかは覚えていないが、彼に初めて会ったのは、とても寒い日だった。
そしてその日、彼がマフラーを巻いていたことを、何となく覚えている。


「ねぇ、彼ってさ、外国の血が混じっているらしいのよ。・・たしか祖先がオランダだったって話を聞いたわ。」と夏海は話す。
なんだ、私より彼のことに詳しいじゃん・・・。とちょっと複雑な気持ちになる。
そういわれてみれば、たしかに鼻は高いし、目も大きいし、 色も白い。
それにたまに、お洒落な帽子かぶっていることもあるし・・・。
と、彼についての記憶を辿ってみる。


夏海が、じれったそうにこっちを見るので、仕方なく、昨日のことを思い出しながら話しだす。

「そうね・・・昨日会った時は彼、『俺、掃除は結構得意なんだよ。』って言ってた。」
「部屋には、入れないつもりだったし、外で話ししてたから寒かったな・・・・」
夏海は黙って聞いている。
「そしたら、今日は『嫌じゃなかったら、君の部屋に入れてくれるかい?』なんて言うんだもん。」夏海は何も言わずに頷く。


「そりゃあ、私も断ったわよ。・・・そんなことしたら、どうなるかなんてわかってるし、
どうしてそんなことしたんだって、みんなにも責められるだろうし・・・。
でも、彼がどうしても・・っていうから・・・・つい・・・。それにワイン持ってきたから一緒にどう?って・・・。」
どう話しても、言い訳にしか聞こえない。



「で?彼は部屋でどうしたわけ?」と夏海。
「『俺、きっと大変なことになりそうだから・・・ちょっと覚悟してくれる?』って言って・・・・。
部屋に入ってくるなり、自分が落ち着けるようにしたみたい。」
「そして、『何かあっても驚かないでくれる?』って私に言ったわ。」


「そして自分の身の上について話し始めたの。
彼の祖先は、夏海が言った通りオランダらしいわ。
その後日本に移り住んだ子孫がいたらしく、彼はその末裔なんだって。
他の国にも彼の親戚はいるらしいんだけど、少し容姿が違っているみたい。
特に、スイスにいる親戚は酷い目にあっているらしく、時に捕まって藁を積み上げられた上に乗せられて、火あぶりにされるんだって・・・・。魔女狩みたい・・・。」 私は一気に話し、息をついた。



「ふ~ん。そんなこと話したんだ・・・。」夏海の声はちょっと不機嫌そうだ。
「でもね、話してただけだよ。ホントに・・・。」
「それはわかってるわよ!でも彼も思い切ったことしたものね。」と夏海はさらに不機嫌になる。
「時間がかかっても、私が蕩かしてあげたのに・・。なんでよりによって春菜に・・・。」
どうやら、彼を蕩かしたのが私だってことが気に入らないらしい。



「なんだかね、彼『いつも、その時を待っているだけなのが嫌になった。』って言ってた。」
「ふ~ん。それで思い切って自分から春菜の部屋へ・・・ってことなのね。」
「うん・・。そうみたい・・・。」


「それじゃ仕方ないわね・・・。彼が決めたことだし。」
夏海は諦めたように呟いた。



「それじゃ、今夜は飲もうか?」
切り替えが早いのが夏海のいいところだ。
「うん、じゃあ彼が持ってきたワインも開けるね。」
私はバケツに冷やしてあったワインに手を伸ばす。


「素敵な人だったよね・・・・・・・でもこうなっちゃったら仕方ないね。まだ冬まっ盛りなのに・・・。」
「うん・・・それじゃぁ彼に、乾杯しよう・・。」と私。
「人参スティックもあるしね。」
「あ・・・そっか・・・・冷やしてたのね。ワインも人参も。」
「そういうこと。」と笑ってつけたす私。
「きっとこれが、彼の望みだったのよ。」夏海はそう言って、カチリとグラスを合わせた。


自分から暖かい部屋に入ってくるなんて、それが彼の望みだったのかしら・・・・・。




ワインの後は、紅茶を入れるね。
蕩けた貴方で淹れた紅茶は、どんな味がするんだろう・・。
きっと貴方の身体の中で、血が沸騰しているような声が聞こえる。
そんな気がする。
ねぇ、MR.SNOWMAN。



《 Mr. 了 》



【 あとがき 】
二作目で、二作書くというチャレンジしてみちゃいました。

「ねがい」は、想いを伝えたくても伝える事が出来ない愛しい人を想像して描いてみました。
元ネタは特に無いんですが、お兄ちゃんが欲しかったなぁ・・・なんて私自身の願望だったりします(笑

「Mr.」は、ふと見た窓の外で降る雪を見て思い付いたお話です。
スノーマンの鼻は人参で、手ははたきと箒です。当然帽子はバケツです。
ついでにワインを体に埋めてます。(といういでたちの雪だるまを想像してください。)
そんな彼は、溶ける事になったとしても思い出の中で見守ってくれているでしょう

【 その他私信 】
調子に乗って、二作書いてみました。
お題は難しかったけど、面白かったです。


すぅ

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