Mistery Circle

2017-08

《 強制バトン 》 - 2012.07.03 Tue

《 強制バトン 》

 著者:辻マリ








俺がまだ物の道理も知らないガキだった頃
酒に酔った親父が言っていた
「俺達にとっちゃ飯の種なんだけどよ、あいつら、詩人にとっちゃ、真珠ってのは海の涙のしずく、なんだとさ、お綺麗な事ばっかり言いやがって、それを飯の種にしてやがる」
気に入らねえ、気に入らねえとこぼしながら親父は酒を飲んでいた
一日額に汗して働き、それで日々の糧を得る事を誇りにしていた親父だった
酒にだらしないところを除いては、家族を大事にする気の良い男だった
小さな港町にふらりとやって来た吟遊詩人を目の敵にしていた
力仕事の出来ない男は物の数には入らないと、蔑んだ目で彼を眺めていたのを覚えている
いいかお前はあんな連中にはなるな
男なら自分の手で脚で働け
それで得た物でお前の嫁を子供を養っていけ
酒を飲むといつも、親父はそんな話を繰り返していた
一つ覚えで同じ話ばかりする酔っ払いだった
そんな親父が死んだと、手紙が届いた
生まれ故郷の港町から船と列車を使って丸一日かかる基地まで
検閲を通し二ヶ月かかって、手紙は俺の手まで届けられた










ねえあんた見たかい?
さっき表通りを歩いてった軍人さん
軍服着てるってのに一人っきりでさぁ
何事かと思ったら
真珠工場の、ほら
春に病気で
フィルさんところの息子さんだったのよ
もう何年も見かけてなかったけど
士官学校に入ってたんだねぇ
立派な服着て
工場にもお金入れてたんじゃあないかしら
でもさぁ
親の死に目に会えないほど遠くで働くのは
親不孝なんじゃないかしらねぇ











親父は町外れの墓地に埋葬されていた
生まれた家に帰る前にまずそこを訪ねてみたが
子供の頃の記憶どおりの閑散とした場所だった
親が埋められていると言う認識以上に、人気の無さが目に付いた
墓地が賑やかなのもおかしいとは思うが
人の最期は随分寂しい場所にたどり着くのだなとしみじみ考えた
手紙を貰ったのは春ももう終わろうかと言う季節で
墓地の端では夏の花が盛りを迎えている
濃い緑にまぎれてひっそりと咲く白い花と
墓標の前にぽつぽつと供えられた花以外には
何の彩も無い場所を、俺は寂しいと思った
親父の墓標の前には誰が供えたのかまだ新しい花と
一冊の本が置かれている
普通、墓に供えると言えば花か、ある程度重みのある物だ
少なくとも、掌に収まりそうなこんな小さな本よりは重いものがふさわしい
文庫本か何かだろうか
こんな場所に本を置き去りにすれば
たちまち雨風と日差しでボロボロになり
周りに散らばりゴミになってしまうのに
誰がこんな馬鹿な供え物を置いていったのか
拾い上げて表紙を裏返すと
そこには一文
短い言葉が手書きで記されていた
「・・・?」
書かれていたものの意味を読み取って
俺は思わず首をかしげていた
何かのメッセージだろうか
そこにはごくごく短い、恐らくは言葉が綴られている
この国の言葉ではなく、俺が知っている他国との間で使える公用語でもない
何処かで見たような気がする、けれども知らない言葉が書かれていた











墓地を出た後、次に実家に向かった
今日帰り着く事は伝えていなかったので、もしかすると行き違いになってしまうかもしれないが、出かけていたのだとしても待っていれば母は帰って来るだろう
その程度の軽い考えで家まで向かった
たどり着いた小さな家は、この町を離れた日の記憶から少しも変わっていない
手紙を受け取る用の郵便受けは父が仕事の無い日に暇つぶしのついでに作ったものだ
家の中からは人の気配がする
母が居るのだろうか
人が居るらしいと言うその感覚に少しだけ安堵した
何も聞かされては居なかったが、家を手放している可能性も有ったからだ
玄関先まで歩いて、扉を叩こうと手の甲を出した
が、俺が目の前の木の扉を叩く前に、扉は向こうから内側に向けて開く
てっきり母が外に出てきたのかと思って、俺は出しかけた手を引っ込める
開いた扉から、数年ぶりに見る母の顔が現れる、と思っていたのだが
「やあ、おかえり」
出てきたのは全く覚えの無い男の顔だった
一目で異邦人だとわかる姿形だ
何処かで屋敷仕えでもしているのか貴族の使用人のような黒い燕尾服を着て
長い髪も肌も瞳も服も靴もなにもかもが真っ黒な
背の高い男だ
誰だこいつは
一瞬、帰る家を間違えたのかと思った
「あ、その」
俺がどもっていると、男は目を丸くしてから、
「待って、僕はただ留守番を任せられてるだけだから」
弁解するように手を振って、俺が家の中に入れる程度の広さに扉を開け放つ
そうして道を開けてから、俺の顔を覗き込んでそいつは笑顔になる
「手紙は届いたかい?お母さんから、君が帰ってくるまで留守番を頼まれていたんだ」
小さな家の玄関には不似合いな燕尾服は、明かりのついていない家の中の影に溶け込んでいきそうなほど黒い
「改めて、お帰り。お茶でも入れようか?」
まるでずっと一緒に暮らしてきた家族のように、そいつは俺を家の中に招き入れた










母は教会に行っているのだと、紅茶を淹れている間に男が俺に説明する
今日は丁度父が死んで100日目なのだというから、その手続きなのだろう
死んで100日で、生まれたときに授けられた洗礼名を教会へ返す
そうする事で魂は神の元へと還り、生まれ変わる順番待ちの列に並ぶ
母は敬虔な信者だったから、それを固く信じ、子供の頃から俺も言い聞かされてきた
こんな肌の色の違う、変な奴に留守番を任せるほど、母の中で信仰の比重は大きい
それにしても、だ
「あんたは、誰なんだ?最近この町に来たのか?」
偶然かそれとも母に教えてもらったのか、俺が子供の頃から使ってきたカップに紅茶を入れて出してきた男に、カップを受け取りながら問いかける
少なくとも、俺が士官学校に入るために町を出た頃、町にこんな奴は居なかったように記憶している
男は自分もカップに紅茶を入れて、俺の向かい側に座るとのんびり頷いた
「そうだね、僕はまだこの町に来て2年くらい、かな」
カップを持つ仕草が何処と無く優雅に感じるのは燕尾服のせいだろうか
「何処かの屋敷ででも働いてるのか?」
尋ねてみると、男は苦笑いを浮かべて首を横に振った
屋敷仕えをしているから着ているわけではないらしい
じゃあ何の仕事をしているのかと訊くと、男は表通り近くで古本屋を商っているのだと話した
古本屋が燕尾服と言うのは悪いわけではないが、不似合いな気もする
他人の主義に一々口を出すのは野暮な事だと思い、口にこそしなかったが
「まだ2年にしては、随分と馴染んでるんだな」
「そうかな?この町の人達が優しいからだと思うよ」
首をかしげる男に、俺はそうだろうかといぶかしむ
住み着いて日の浅い異邦人に優しくするほどこの町の人間が開放的だった記憶は余り無い
不意に思い出したのは、幼い頃
この町に流れてきた吟遊詩人の姿
親父がよく、酒に酔うたびけちをつけていたあの優男だ
いつの間にか町角に居て、気付いた時には何処にも居なくなっていたあの吟遊詩人は、町の住人とそれほど打ち解けていたようには見えなかった
俺自身が子供心に、あの男を敬遠していたからと言うのもあるかもしれない
少しの間、向かい側に座る男の事を意識から外して子供の頃の思い出を反芻していると、カップをテーブルの上に置く小さな物音が耳に届いた
視線を戻すと、男は先程よりも目を細め、口角を上げて笑顔を作った表情でこちらを見ている
「・・・実はね」
俺がこの町に戻ってきたなら話そうと思っていた事があると、燕尾服の異邦人は笑顔で切り出してきた
今日、初めて会ったはずの相手なのに、その笑顔に見覚えが有るような気がした
「君のお母さんにも、君のお父さんにも、どちらからも頼まれごとをされているんだ」
見覚えが有るような気がした笑顔を、さて何処で見ただろうかと考えているうちにそう言われ、俺は考えを一旦停止する
「親父に?」
聞き返すと、男はゆっくりと頷く
「そう、フィルから、とても大事な頼まれごとをされてる」
カップから立ち上る湯気を見つめながら、彼は先ほどまでよりも低い声で話し始めた
「君は今、軍人として、此処から遠く離れた駐屯地に居るよね」
「・・・そうだが」
言われた言葉に素直に頷く
俺が今働いている駐屯地はこの町からは大分離れている
連絡船で海を渡り、そこから更に列車を使い、ほぼ丸一日かけて、国境線近くまで移動しなければたどり着けない
それでも親父が子供だった頃より随分と交通の便は良くなった方だと聞いている
線路が伸びる前は、船で海を渡った後、三日ほどかけて馬で移動していたらしい
「あの駐屯地は国境線防衛の為の要塞だ。半年前、同盟が破棄された事は君も聞いているだろう?」
それは軍属の人間であれば誰もが知っている話だった
半年前、この国と国境線を接する他国との同盟が破棄された
元々数百年前の戦争で互いを攻撃しないために結ばれた不可侵条約に近いものだった同盟関係は、戦争が終わり、時間が流れるにつれ意味を持たないものとなっていったのだと、子供の頃読んだ歴史の本に書かれていた
俺が子供の頃から既に名ばかりの同盟関係だったのが、半年前ついに壊れてしまったのだ
原因が何だったのかは良くはわからない
政略結婚が失敗に終ったのだとか、貿易の利潤がどうのとか、くだらないものから真実味のあるものまで、噂だけは軍にもあれこれと流れてくる
とりあえず政略結婚だけは無いだろう
向こうの国は確か王族が代々治めているはずだが、こちら側の国は共和制で、王族なんてとっくに居ないし、大統領は5年ごとにまるで違う人間に代わっている
とにかく、同盟が破棄された事で、隣国との戦争も間近だと言われているのは確かだった
特に俺が今居る駐屯地は国境線と接している位置関係にあり、戦争が始まるとすればあそこからだろうともっぱらの噂だ
「もうすぐ戦争になりそうだってのは、俺も上から聞かされてる」
素直にそう言うと、男もそうだね、と頷く
「戦争が始まれば当然君は武器を持ち戦地へと赴かなければいけないだろうし、怪我で済めばまだいいけれど、もしかしたら戦死してしまうかもしれない」
勿論だ
逃げる事なんてもってのほかだろうし、今更除隊を願い出るほど俺は責任感の無い人間ではない
死ぬのが怖くないわけじゃあ無い
当然だ、死ぬのは怖い
けれど除隊や脱走だけはごめんだ
生きてこそなんていう言葉も有るけれど、それじゃあ何のために志願制の軍隊に所属しているのか
死ぬかもしれない事態に直面する事も覚悟の上で軍人になっただけの事だ
都合の良い時だけ覚悟を持った振りをする汚い生き方をするつもりは無い
「そうだな、俺はもうすぐ、母親より先に死ぬかもしれない」
死体が残ればまだ良い方だろう
最近の戦争で使われる兵器は人一人程度なら粉々にしてしまうものばかりだから、もしかすると母の元には遺品しか届けられないかもしれない
笑う事も怒る事もせずに、男の言葉を素直に肯定すると、テーブルの向かい側で彼は困ったように笑っていた
「うん、フィルも、君はきっとそういうに違いないって言ってたよ」
夕方が近い所為か、部屋の中は少しずつ薄暗くなっていく
その影に溶け込んでいきそうな黒尽くめの男が、懐かしい友達の名前を出すように、親父の名前を呼ぶ
見た目は俺とそう変わらない年恰好のはずなのに、どういうわけだかその時だけは、男が俺よりも親父よりもずっと歳を取っているように感じられた
「実はね」
男は困ったような笑顔のまま、言葉の続きを切り出す
「僕は知っているんだ。君がこの先、何時何処で死ぬか」
「・・・?」
切り出した言葉の意味を、俺はどうしても理解できなかった
人がいつか死ぬのは当然の事だろう、とか
軍人ならまあ戦争で死ぬだろうとか適当な事を言えば大体当たるんじゃないかとか
そう言って茶化す事も思い浮かばなかった
俺は男が言葉と共に何かをテーブルの上に出してきたのも気付かず、ただ、理解できない言葉回しに目を丸くしていた
「君は来月始まる戦争の、その最初の戦いで要塞の壁に押しつぶされて死ぬ。どうしてそれが判るかって言うと、僕が少し前まで人の生き死にに関わる仕事についていたからなんだけど、この際それはどうでもいい。ただ、僕は出来る限り僕が住もうと決めた街の人に親切にしたいと願っているから、望まれる限りは僕の持つ知識の一端を分け与えたいと考えている。本来ならこういう相談はその考えの範疇を越しているし、ばれたら結構な問題になっちゃうんだけど、フィルが君の事を心から想って僕を頼ってきたのは確かだから、僕はその想いに応えようと決めたんだ」
テーブルの上にいつの間にか男はカップを持たないほうの手を伏せて、その下に隠し持っている何かを俺に見せるためか、伏せていた手を静かに上げる
そろそろ明かりをつけないといけなくなる時間帯
帰ってきたときよりも薄暗さを増した部屋の中
ぼんやり光るそれは俺の目には小さな虫に見えた
「・・・それは何だ」
尋ねると、男は闇に溶け込んでいきそうなその真っ黒い顔で笑う
「これはね、フィルから預かった彼の残り時間だよ」
また訳のわからない言葉を男が使う
いや、訳がわからないわけではない
男が話しているのは確かにこの国の言葉だし、俺もその言葉自体は子供の頃に何処かで聞いたような気がする
けれどもその意味を思い出すことが出来なかった
「僕は古本屋を始める前はこの残り時間が亡くなった人の魂を集めて回る仕事をしていたんだけれども、その時に学んだ技術でね。どういう仕組みかは企業秘密だから教える事はできないけれど、ついこれが出来るって事をフィルに教えちゃってね。彼は本当に真剣な顔で頼み込んできたんだよ。残り時間を全部君に譲りたいって。もちろん、これは本当はやってはいけない事なんだけれど、彼は僕にとってこの町で一番最初に友人になってくれた存在だったからね。友人は大事にするのが僕の主義だから、僕はそれをフィルの遺言として受け入れる事にしたんだ」
身体全体がうすぼんやりと光る虫は、テーブルから静かに飛び上がると、男の言葉が理解できなくて呆然としている俺の鼻先まで飛んでくる
虫はそんなに好きじゃない
普段なら近くに飛んできた羽虫は手で振り払うくらいはする方なのに、その時の俺は不思議と身動きしないままそれをじっと眺めていた
「大丈夫、痛みも恐怖も何も無いよ。ただ、これをしたのが僕だって事は、出来れば誰にも話さないで居てほしいかな」
鼻先に飛ぶ虫の光の向こう側で、男が真っ黒な顔の中、白い歯を見せて笑っている
それを確認したところで、俺の目の前で虫の光がはじけた











起きなさいなと、肩をゆする振動で、俺はいつの間にかテーブルに伏せて眠っていた事に聞く
「あんた何時帰ってきてたの?」
顔を上げるとそこは実家の台所で、呆れ顔の母が俺の横で買い物籠を抱えて立っていた
今日帰ってきて、父親の墓を見てきたのだと告げると、ああそう、とだけ返ってくる
一体何時の間に寝てしまっていたのだろうか
先ほどまでこのテーブルで古本屋と一緒に茶を飲んでいたのに、窓の外はすっかり暗くなっている
見たところ、あの男は部屋の中にはもう居ないようだ
「・・・母さん、あいつは?」
問いかけると、夕食の準備のためか鍋を火にかける母は、あいつって誰?と振り返らずに訊き返して来る
「古本屋だよ。留守番頼んでたんだろ。俺、さっきまであいつと一緒だったんだ」
「え?」
変な反応が返ってきて、母が目を丸くして振り返ってきた
「古本屋って誰?」
「・・・誰って」
知り合いだろうと言うと、母はそんな人間は知らないと言った
どういう事だ
男の特徴を一通り並べても、母は知らないの一点張りで、結局最後は俺が長旅で疲れて転寝して夢でも見たんだろうという話にされた
そんなはずはない
確かにこの家の扉は俺以外の誰かの手で中から開けられて
俺はその人物の淹れた紅茶を飲んだ
そうだ紅茶を飲んだんだと思ってテーブルの上を見たが
「母さん、此処に有ったカップ片付けた?」
「何言ってんの、あんた自分の分しか淹れて無かったんじゃないの?」
食器棚の中には、使った形跡の無い乾いたカップが並んでいた











表通り近くに古本屋はあるかって?
そうねぇ、一軒有るわよ
でも、あんたが言うような最近来た人間が出した店じゃなくて
私が子供の頃から有るお店だからねえ
あんたも行った事あるでしょ
ほら、砂糖菓子屋の横にあるあのお店よ
気になるようなら明日にでも行ってごらんなさいな
おばあちゃんが店番してるから
それが済んだら、今度は一緒にお父さんのお墓に挨拶よ
二日くらいは居られるんでしょ?











敵軍の奇襲は日付が変わるギリギリの時間帯に始まった
「なんで生きてるんだ」
少し離れた場所で砲弾のはじける音がしている
まだ戦闘は続いているのかと考えながら
俺はいとも簡単に城壁を片手で押しのけた男の嫌そうな声に耳を傾けていた
身体中が悲鳴を上げているような痛みで
返って意識ははっきりとする
目の前に居る男は
夜空に溶け込んでしまいそうな真っ黒い服を着ている
そう言えばあいつも黒尽くめだった
黒い服を着ているのが決まりか何かなんだろうか
「アーノルド、お前は今日、この場所で、城壁に押しつぶされて死ぬ運命だ。そうだったはずだ。なのに、何故生きてる?何故死んでない?どうして運命が捻じ曲がっている?」
何故どうしてと聞かれても、俺にもさっぱりわからない
そう答えようとして、一つだけ心当たりが有る事を思い出した
話すなと念押しされたから、この男には何も言わないでおこうと思い、知らんと答える
声がでないかもしれないと危惧したが、意外にもあっさり声は俺の口からこぼれ出た
黒服の男は不機嫌そうに赤毛をかきむしると、懐から何か小さな本のようなものを取り出してページをめくっている
「・・・確かに書いてある。お前が此処で死ぬ事が」
苛立っているのか、乱暴に本を閉じると、押しのけた城壁の上に座り込む
片手でその本のページをめくるのを見るうちに、俺はもう一つある事を思い出した
男が今もって居る本を、俺は前に一度見た事がある
「それ、何の本だ?」
尋ねたが、返事は無い
きっと、俺のような普通の人間には話してはいけない事なのだろう
あれは親父の墓に供えられていた本と、恐らくは同じものだ
中身はきっと違う事が書いてあるのだろうけれど、種類としては同じものに違いない
あの日見かけたあの本は、きっと親父のための本で
この赤毛の男が見ている本は、俺のための本なのだろう
あの真っ黒な男の話していた事はきっと真実だったのだな、と、俺は心の中で納得した
それにしても身体が痛い
多分骨が何本も折れている
座り込んで何かぶつくさと独り言を言っている男は俺を助ける気が無さそうだから
誰か味方が此処を通りかかるのを待つしか無い
きっと赤毛が言うとおり、俺が今日此処で死ぬのが本来の運命で
今の俺は親父からもらいうけた残り時間で生きている状態で
それがばれたらどうなってしまうのか
流石にそこまでは判らないし、想像がつかなかった
ただ、あの親父の墓の前に供えられたあの本は
今も雨風に朽ちる事無く、そこに有るような気がする
「・・・此処から列車で港に向かって」
「は?」
どうして俺が今もまだ生きているのか、種明かしはしないけれども
せめてあの本を持っていってもらうくらいはして貰おうと思って
俺は赤毛の男が正確に聞き取ってくれる事を願いながら、実家のある港町までの道順を話し始める
日付が変わるギリギリの時間帯に始まった戦闘はまだ終らない
寝転がって見上げた空は、夜がまだ明け切らず暗いままだ
親父はあと何年、それとも何ヶ月生きる運命だったのだろう
その残り時間を貰った俺は、この先何が出来るだろう
深い意味を考えるのはさておき、俺はとりあえず、城壁の被害状況をどう報告しようかと考えて、溜息をついた





《 強制バトン 了 》





【 あとがき 】
またしても奴が現れました。
どうも定期的に存在を主張したいようです。
某刑事に追いつこう何て考えは持っておりませんが、此処まで来ると少しくらいは人の記憶に残ってくれると嬉しいなと思ってやまぬ親心です。


【 その他私信 】
最近また映画見るのが自分の中で流行りだしました。
イギリス映画が結構好きなんですがアメリカンなアクションもDVD待ちなのが有るしインド映画でちょっと気になるタイトルも有る今日この頃。
【エクスペンダブルズ】シリーズはその内女性版も出てほしいと思うけれども女怖いにしかならない気がするそしてきっとミラジョボ様確実に出るだろうし出るとするなら無双確定だろうしむしろミラジョボ様は本編のほうに出るべき。スタローン先輩と一緒に暴れるべき。


辻マリ
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