Mistery Circle

2017-10

《 白の夢 》 - 2012.07.03 Tue

《 白の夢 》

 著者:すぅ








目を開けると、私の周りは白だった。
一面の白が、私を包んでいた。

いったいここはどこなのか? 
わたしは、どうしても知りたい気持ちにかられた

私は眠っていたの?
でも、ベッドも無い。

・・・思い出せない。

私は何をしていたの?


いくら考えても、わからない。


周りを見渡してみても、一面の白が沈黙を続けるだけ。
どうやらここは部屋のようだが、どこなのかはわからない。


ちょっと深呼吸して、今の状況を整理しよう。
・・・うん。

えーと、まず私は、誰?
そう・・・私は「藪影庵」の彩見・・・。

「藪影庵」は、妖さんが一杯来る蕎麦屋。

そして「藪影庵」は、元々、私のお母さん(妖さんより妖さんっぽい)が、切り盛りしていたお店。
お父さんは、仕事で海外を渡り歩いていて、だいたいいつも「絶賛航海中」。
お母さんは、そんなお父さんが大好きで、時間を見つけては会いに行っちゃう。
未だにラブラブ(死語?)なのはいいんだけど、娘のことも少し考えてよね。

だから、今は(仕方なく)私がお店を守っている訳。
厨房を預けている辰さんもまた・・・・「たつさん」な訳で・・・。

それから、この前の夏休みに喋る本の妖さんと出会ったなぁ。

ああ・・・そういえばB古書堂の栞さんに、一杯お仲間さんを託されたんだっけ。

あんまりにも五月蝿いから、お母さんの部屋に運んでやったけど。
あれから本達の声を聞いてないなぁ・・・。

そういえば、お母さんが、「こういうのは、還るべき場所に還さないとね、ウフフフ♪」
って笑っていたけど・・・まさか、ね。

・・・しかし、まとまりのない思考だなぁ・・なんて思うのは、きっとここが夢の中だからに違いないと、勝手に解釈している私がいた。

そんなことを考えていると、お尻の下に一枚の紙があるのに気が付いた。
長時間敷いていたせいか、所々がシワになってしまっている。
(私重かったかなぁ・・・・。)

申し訳ない気持ちで、紙のシワを懸命に伸ばしてみると、何か書いてあることに気づいた。その紙は少し古く、書いた文字は、インクが滲んでいて読めない場所もあったが、かろうじて読める部分を読んでみた。

「カ・・ボチャ?」
カボチャ?
カボチャってあのカボチャ?

あの、中が黄色くて、皮が硬~い、甘~いヤツ?

良く見ると他にも読める部分があって、「奇妙」やら「不思議」とか書いてある。

「カボチャで、奇妙で、不思議?・・・ハローウィン?」

一人でブツブツ喋っていると、遠くで変な笑い声が聞こえた気がした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

笑い声を聞いたせいなのか、少し思い出してきた。
確か、この紙は誰かから貰った気がする。

そう、お店の定休日に街をブラブラしている時にだった・・・と思う。

えーと、どんな人だったっけ。
・・・ダメだ、顔が出て来ない。

確実に覚えているのは、その人から甘~い匂いがした事かな。
「変わった香水の匂いだなぁ」なんて、思ったのを覚えている。

その人にこの紙を渡されて・・・それから記憶がない。

という事は、私はその人に誘拐された、とか?
目的は?
私が、近所で「お店の美少女看板娘」だから?
「・・・な~んてね・・・・無い無い♪」

と、一人、ノリツッコミをしていると・・・・。


「・・・すす♪」


・・・なんか聞こえた。

さっきも聞こえた、変な笑い声。

「ぷす・・・♪」

また聞こえた!

間違いない、私笑われてる!
誰か、こっちを見て笑ってるんだ!

でも、誰が?
周りをぐるーっと見渡すけれど、やっぱり誰も居ない。
ただただ、白い部屋があるだけ。

・・・こんな事、前にもあったような~・・・。
あ、これイヤな予感、イヤな展開。


私は恐る恐る、紙へ視線を戻す。
・・・紙からなんか出てきてる。

黄色~い、そして甘~い匂いがする、でも何か分かんないモノ。

しかもなんかプルプル震えてるんですけど!?

・・・気持ち悪い!

慌てて、私は紙を投げ捨てた。
ヒラヒラと、紙は落ちていった。

紙が床に落ちた途端、「痛い!」という声が聞こえた。

何これ?
まだ紙から、黄色~いのが出てきてる。

「ぷすす♪」
その黄色いのが、明らかに笑った。

やだ・・・何これ?
こんなとこにも妖出るの?

紙を拾ってみるのも、ちょっと怖いので、足でツンツンしてみた。

うん、硬い。

しかも、ツンツンするたびにプルプルしてる。
あはっ♪
何故か楽しくなってきて、更にツンツン。

あ、プルプルが止まった。
黄色~い何かが、動きを止めたと思ったその時。
ピョン、と紙から何かが飛んできた。

「きゃぁ!!」
ビックリして、私は反射的に悲鳴を上げて目を閉じた。
しばらくそうして固まっていると、誰かが後ろから肩を叩いてきた。

「ねぇ~ねぇ~。」

・・・怖い!
振り返りたくない!

「ねぇ~ってばぁ~。」

・・・怖い!
でも見たい・・・でも怖い!

一人で怖いテレビを見てる時と、同じリアクション。
ヒトって不思議なモノで、結局見ちゃうんだよね。
やっぱりこの時も好奇心に勝てなくて、私は振り向いた。

・・・なんか浮いてる。

カボチャだ。
しかも服着てる。

あぁ~、これ、ハローウィンで良くあるカボチャだー。
可愛い帽子被ってるなぁ。
・・・で、何これ?

それは、30cm程度の大きさで、ちょっと派手ピエロのような服を着ている。
手足があって、
ステッキをぶんぶん振り回している。
そう、目の前に居たのは、目と口があって喋るカボチャ。

さて、皆さん、こういう時どうします?

目の前にぷかぷか浮かんでて、ステッキをぶんぶん振ってるカボチャが居たら。

①観察する。
②触ってみる。
③逃げる。

多分、③を選ぶ人が一番多いんじゃないかなぁって私は思うんだけど。

え?じゃあ彩見さんはどうしたのかって?

④。
お母さんお手製のお守りをぶつける。
実はこの前、
「あら、彩見、何か付いてるわね。ウフフ♪」って言って、これをくれたんだけど。
何が付いてたんだろ?
まぁいいや。

私は、そのお守りをカボチャに本気で投げ付けた。
ジュウッ。
お守りがカボチャのオデコに当たった瞬間、香ばしく焼ける良い匂いがした。

「あっつ!?」

カボチャの目が、涙目になったのが分かった。
カボチャって泣くんだねー。

ぷすぷすと、白い煙を上げるオデコを触るカボチャ。
「な・・何すんのさ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くらぁーーーーーーっ!!
ちょっと 待たんかぃ、こら!
キミ 今 何した?
何したかって 聞いてんねん!・・・・・以下略」

・・・お母さんお父さん、あなた達の娘は今カボチャに怒られています。


それから小一時間、カボチャに怒られた所で私は聞いてみた。
そう、「貴方は何なの?」と。

そうしたら、カボチャは胸(あるのかな?)を、ふふんと張りながら答えた。

「僕はね、言葉の妖精さっ!突然ごめんよっ!ごめんよっ!」

まーた訳の分かんない事を言うのと出会っちゃったなぁ・・・。
しかも「僕」って事は、男の子なんだね。

夏休みのあの哲学者さん達で、ちょっと学習してた私は黙って話を聞く事にした。

「君が彩見さんだねっ?話は聞いてるよっ!」

・・・誰から?
というより、私は貴方を知らないんだけど。

そんな私の気持ちが伝わったのか、彼が慌てて自己紹介を始める。

「あ、僕の名前はナイ。よろしくね♪」
・・?ナイ?無い?
名前はまだ無い・・・って、猫?
それとも名前が「マダナイ」とかいうオチ?
などと考えていると。
「あのね、クラさんから頼まれてきたんだよっ!」と続ける。
クラ?蔵?
私の頭の中、?マークだらけ。
どうやらそれも伝わっちゃったみたい。

「ああ、クラさんは夏休みに君に見つけてもらった彼のことだよっ!」
ああ、あの冴えない(ごめんなさい)・・・・・哲学家さんのこと?
へぇ~、彼はクラっていう名前だったんだ・・・。
そういえば、名前聞いてなかったもんね。

「実は、彼から預かり物をしてるんだっ!」
・・・良く喋るなぁ、このカボチャ。
クラさんといい、このナイっていう妖精さんといい、良く喋るのばっかりなのかなぁ。

ああ、それで預かり物だったね。
なんだろう。
「これだよっ!」
ナイ君(でいいのかな?)は、ポケットをゴソゴソすると、丸ーい手をこっちに差し出した。

彼の手には、白くて丸いものが一つ。
「これは、クラさんからのお礼だよっ!」
「お礼?」
「うんっ、一杯お話出来て楽しかったみたいだよっ!」
私は、それを手にとってじっと見てみる。
これ・・・もしかして真珠?
透き通るような乳白色に輝きは、本当に綺麗。

その真珠からは、かすかに潮の香りがした。

「そうそう、クラさんから伝言を預かっているよっ!
"詩人にとって、真珠とは海の涙の雫なのだ"だってさっ!」

あはは。
哲学家さんらしい、ちょっと訳の分かんない伝言。
でも、お礼を言われるってやっぱり嬉しいな。

「じゃあねっ、僕の用事はそれだけだよっ!ぷすすっ♪」
ナイ君はそう言うと、床の上の紙の中にダイブした。

スポンとナイ君は紙の中に消えてしまった。

不思議な妖精だったなぁ。
でも、ありがと。
なんだか晴れ晴れとした気持ちで、私はナイ君を見送った。

そして、気付いた。
「私・・・どうやって帰るんだろう・・・。」

ナイ君が消えた紙を拾い上げてみるが、かすれた文字があるばかり。
「ちょっとぉ!私どうすればいいの?」と叫んでみると、白い部屋がぐるぐると回り始めた。
眩しい光が私を取り巻いたと思ったら、私は自分の部屋のベッドに座っていた。

「・・・・今のは夢?」

それにしては、リアルな夢だったなぁ。

辺りを見渡すと、ベッドに本が一冊。
「・・・・クラさん・・。」

母が「還ってもらう」と言っていた本たちと、還って行ったと思っていた。

私は本を手に取り、裏表紙のクラさんに話しかけた。

「ありがとうクラさん。ナイ君から確かにお礼は受け取りました。
もしかして、帰ってきてくれたんですか?また一緒に居られたら嬉しいです。」



「そうか。それは嬉しいな。」
いつものようにクラさんが答えてくれた。

ほんの少し、「あ・・・言うんじゃなかった。」という後悔の気持ちも起きたけど、なんだか、離れるのは寂しいもんね。

・・・という訳で、私とクラさんの縁はしばらく続きそうなのである。
やれやれ。



しかしその時・・・・・裏表紙のクラさんと脇の小さなオレンジ色のカボチャの挿絵がハイタッチしていることには、全く気がつかない彩見さんであった・・・。





《 白の夢 了 》





【 あとがき 】
あとがき
なかなか話が思いつかなかった時に、mcのtop絵見ていて思い付いたお話です。不思議なカボチャさんとクラさん、勝手に出しちゃってごめんなさい(汗


【 その他私信 】
夕べ締切の1時間前に送ったんですよ!!
でも、不具合で送れなかったらしいんです!
ホントです!(必死)
でも、遅くなってゴメンナサイ・・・。



すぅ
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