Mistery Circle

2017-07

《 ろーぷれ! 》  - 2011.09.01 Thu

《 ろーぷれ! 》

著者:氷桜夕雅




男は見下した笑みを浮かべていた。
そうれはもう醜悪で下衆な笑み、こいつの表情を見てどこの誰が「冒険を始めたばかりの勇者(十六歳♂)」だと思うだろう
「くっ、流石勇者の息子ってわけ、か───」
俺はそんな男を前にして朦朧とした意識の中ふらつきながらなんとか“お決まりのセリフ”を吐くとぐったりとその場に前のめりに倒れこんだ
目の前が真っ暗になる───
自分の体から血がドクドクと流れて俺の周りに血の池を作っていく───
ああ、まずいこれは死ぬな。今回ばかりはなんて言うんだろうあの勇者のガキ───アヴィオールの動きがまるで違った、どこをどう見たって「冒険を始めたばかりの勇者(十六歳♂)」の動きじゃない。普通なら剣を持つ手も立ち回りも儘ならぬ状態で俺が手加減してようやく勝てるって話のはずなのに今日のアヴィオールは立ち回りからして熟練されすぎてやがる
『ちっ今回もレアアイテムなしかよ、また最初からやり直しだな』
そんなことを思っているとアヴィオールの奴がもはや勇者とは思えないような言葉を吐きその場から去っていった
もしかしてあれか?アヴィオールの奴、俺が隠し持っている初恋の彼女から貰った“銀奏のネックレス”が狙いなのか?
確かにあれは世の中じゃレアアイテム扱い、売れば数万とする品物だけどそんなものそう簡単に渡せるわけねぇ!!
そんな決意を決めたところで今の俺に、死ぬゆく俺にはなんにもできるわけない
薄れていく意識の中、只々俺は“銀奏のネックレス”が失くならないでくれとだけ願うしかなかった

ここはよくある剣と魔法のファンタジー世界
「ええっと、死んでしまうとは情けない・・・てかまたこのおっさんじゃん、また死んだの?うけるー♪」
俺が目を覚ましたのはその街の一角にある大聖堂、そのちょっとシスターと思えないようなアクセサリーをジャラジャラと付けた金髪の乙女?の前だった
「う、うるせぇ!大体俺はまだ二十三歳だ、おっさん言うな!俺にはちゃんとシリウスって名前がある!」
「どうせまた勇者様にやられたんでしょー。ま、お金落としてくれるからこっちとしては全然どんどん死んでくれていいんだけどー」
「全然よくねぇよ!蘇生代は自己負担なんだから・・・はーっこれで何回目だよ」
俺は渋々ジャケットの内ポケットから銀貨を三枚取り出すとシスターに手渡し苛立ちながら踵を返しその場を後にした
「はぁーーーーっ、これでまた昼は当分一番安い定食だな」
昼前の街の明るさをよそに軽くなった硬貨の入った袋を手の中で踊らせながら俺は思いっきりテンション低いですアピールをしながら街中を歩く
「はっ!そういえば俺のネックレス・・・っ!」
初恋の彼女から貰って、もし心臓を弓矢なんかで狙われた時守ってくれるかなって内ポケットに入れておいたんだが
慌ててジャケットの内ポケットを探るとジャラリと金属の感触が指に絡みつく、取り出してみるとそこには銀色の音符の形をしたネックレスがその手にある。紛れも無い“銀奏のネックレス”だ
「あ、あったぁ!!」
思わず安堵の吐息が漏れる。アヴィオールの奴探しきれなかったか諦めたかはしらないがとにかくよかった
勇者の奴、アヴィオールにやられるのは今に始まったことではない。なぜならあいつに負けることが俺の役割だからだ
“冒険を始めたばかりの勇者に対してギルドの先輩として戦いの厳しさを教えてやる!って感じで戦いを挑み、圧倒的な力を見せるも勇者の潜在的な力を前に惜しい所で敗北する”
そんな長ったらしくて途中で読むのを止めたくなるようなそんな役目が俺にはある
そりゃまぁそんな役目なんだから勇者アヴィオールにやられるのはしょうがないんだけどここ最近あいつが俺の持つこの“銀奏のネックレス”を狙ってどうやってかは知らないけど何度も俺に挑んでくるというのは正直納得がいかない
「とは言っても俺にはどうすることもできない、か」
この世界じゃ勇者様ってのは大陸を治める王様なんかよりも偉い、そりゃもう他所様の家に勝手に上がりこんでタンスとか漁ってもお咎めなしだからな
そう考えると俺の初恋の彼女から貰った“銀奏のネックレス”が奴に持って行かれるのも時間の問題か
「はぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」
今日一番のため息を付いたところでちょうど古臭い赤レンガの建物の前、俺の自宅兼ギルド本部である『夜空に飛翔する鷲』のについていた
『夜空に飛翔する鷲』はこの街随一の冒険者ギルドでようは冒険始めたばっかりの勇者、正確にはのちのち勇者になるアヴィオールが王様に言われてここに来て俺が相手にしてやるのさ、「ギルドに入りたければ実力を見せてみるんだな!」ってまぁ今のは俺のセリフなんだがそんでもって俺とアヴィオールが対決してまぁ結局俺が負けるって・・・ああ、これさっきも言ったな
なんか思い出したらテンションがまた下がってきたわ、さっさとギルドの二階にある家に戻って酒飲んで寝たいところだ
「ああ、でも言われるんだろなぁ言われるんだろうなぁ」
気分が重いままナラ材の扉を開ける、シャランと爽やかなカウベルの音がするがすぐにそれは不快な笑い声で掻き消された
「よぉー今日はまた笑わせてもらったぜシリウス!」
その声の主は奥のカウンターの席で酒をあおるように飲みながらこちらを向かってニヤついた表情を見せる。見知った顔だ、ギルドの最長老と呼ばれるプロキオン、白い髭の飲んだくれオヤジだ
しかも役割が“俺がアヴィオールにやられるのをツマミに酒を飲む”とかいうなんの役にも立たないどうしようもないやつだ
「なんだよ俺がやられるのはいつものことだろ」
俺が少し苛立ちながら答えるとプロキオンは笑いを堪えるよう腰に付けた古ぼけた懐中時計を俺に見せつける
「十七秒、最短記録だよ。お前のオヤジも大して強くなかったがこりゃ免許皆伝だな」
「そうかよ・・・俺は悪いけど部屋に戻させてもらうぜ」
付き合ってられないと馬鹿笑いするプロキオン爺の横を抜けようとしたとき、プロキオン爺がサラリと小さく呟いた
「おっ、そういえばお前にお客さんが来ておるぞ、上で待っておるからの」
「は、はぁ!?なに勝手なことしてるんだよ!?」
「そう怒りなさんな、小さい女の子じゃよ。なんでもお前に大事な話があるらしいぞ」
小さな女の子が俺に話?そんな知り合いもいないが一体誰なんだろう
「というか勝手に部屋にあげるなよな、割とマジで」
俺はその言葉だけ残して階段を駆け上がる
「大事な話とかそういうのは勇者様にしろよな」
そうだよ大事な話とかそんな話はあの勇者アヴィオールに話せばいいんだよ。俺の家系は親父も、爺ちゃんもずっと勇者の最初の相手をさせられるそんな役目なんだから、街から出ることもないし冒険したり魔王とかと戦ったりもしない
「そうだよ、俺なんかになんのようが・・・」
二階の一番奥の部屋、そこが俺の部屋だ。どこの誰だかしらないが用事があるって女の子が待っているその部屋の扉を俺はゆっくりと開けた
「フッフッフッ、よくぞたどり着いたなシリウス!」
「てかここ俺の部屋なんだけど?」
思わずツッコミを入れてしまった。目の前にいて訳の解らんセリフを吐いた少女は白くて足まで付きそうな髪に白いワンピース、背丈は俺の腰ほどまでしかない
「知ってまーす!知ってて言ってまーす」
椅子に座る少女の特徴的な深紅の双瞳がこちらを見つめる。ちょっとイラッときたが一応大人なので堪えて笑顔を作り話しかける
「はいはい、それでえっとお嬢ちゃん名前は?」
「よくぞ聞いてくれたぞ!私の名前はベネトナシュ、この世界の神ですよー。もっと褒め称えて良いぞ」
「はい?神様ごっこでもしているのか?」
思わず意味不明なことを言うベネトナシュに大人の余裕も忘れてツッコミを入れてしまっていた
「ごっこじゃないもん!!本当に神様だもん!!」
両手両足をバタバタとさせながら反論するベネトナシュ。余計に子供じみていてどうしたものかと頭が痛くなってくる
「あのさ、俺ちょっと疲れているのよ。遊ぶなら外でやってくれよ、な」
「うわ、私の神様度低すぎ・・・。折角全知全能の神様が迷える子羊シリウスちゃんの悩みを直々に解決しにきたのにー」
「お嬢ちゃんが俺の悩みを解決に?」
この小さい女の子が俺の悩みを解決してくれるって?本当どこまで自分に酔ってるんだか
「あ、そうだ!私がその悩みを聞く前に答えたら神様って信じてもらえる?」
「んまぁ当てずっぽうでもなんでも言ってみたらいい、それで満足したら帰ってくれ俺は疲れているんだ」
「んとね、じゃ勇者アヴィオールに初恋の人スピカちゃんに貰った銀奏のネックレスをしつこく狙われてきゃー全知全能なベネトナシュちゃんなんとかしてー・・・って感じでしょ?」
「・・・・・・へぇーそいつはすげぇや」
俺はそれだけ言うと静かに頭を押さえ考えこむ
・・・おかしい、なんでこの女の子俺の悩みを全部知っているんだよ!しかも俺の初恋の人の名前は今ここで初めて出たし!
でも確かにアヴィオールのやつに銀奏のネックレス狙われているのは間違いないしやはり本物なのか?
「え、じゃあ本当に神様なのかあんた?」
「だから最初から言ってるし!うわ、私の神様度低す・・・」
「それはもういいから!それで俺の悩みを解決してくれるってのは本当なんだろうな!?」
ベネトナシュのおどける様子に少々苛立ちながら俺はちょうど向かいの席に座り声を荒げる
「そもそもだ、なんで俺の悩みをわざわざ神様が出しゃばってきて解決してくれるんだ?普通神様ってのは良くも悪くも平等っていうかそういう立ち位置にいるもんだろ?」
「えーそれは、なんていうの?上司に二週目のイベント面白いのをなにか追加しろとか言われたからとか・・・・・・ってそんなのどうでもいいじゃん!私この世界の神なんだから敬えー休みくれー敬えー!」
再び意味不明なことを口走りながら再び子供っぽく手足をバタバタとさせるベネトナシュに思わず「こんな奴が本当に神なのか」とため息が漏れる
「それでその神様とやらは本当に何とかしてくれるのか?アヴィオールに銀奏のネックレス取られない方法なんてあるとは思えないけど」
「あるよ、アヴィオールぶっ殺せばいいじゃん♪」
「は、はいぃ?」
今この神様、サラリと残虐非道な言葉口走ったぞ。しかも妙に楽しそうだし
「殺すっていうかまぁ力の差を見せつけてやればいいのよ、んでもって『うぇーん、こいつ強すぎ何回も戦うとか無理!もう先進んでやるー』ってなればいいでしょ?」
「まぁ確かにそうなれば御の字だけど、今のあいつ滅茶苦茶強いぜ?俺が本気を出しても勝てるかどうか」
「フフフッ、そこは神様の私の力でなんとかしてあげようじゃあないの!」
ベネトナシュは目を輝かせ机に乗り上げるとビシッとこちらに指を突きつける
「な、なにするんだよ」
「えっとーシリウスちゃんは一応中級者の冒険者って役目だからそれなりに装備は充実しているでしょ?」
「装備が充実・・・確かにそうだがこれはどれもレプリカでしかないぞ」
あくまで俺の役目は演出だからな、実際に冒険に出るわけでもないからレプリカで問題はない
「だったら私が本物と変えてあげる」
言うが早い、ベネトナシュが指を鳴らすと俺の視界が突如として強烈な光で真っ白になる
「わ、なにしやがった!?」
「だから言ったじゃん、装備をレプリカから本物に変更っと」
「変更って・・・」
「そろそろ目を開けてみたらぁ?目の前には超絶美少女がいますよー?」
ベネトナシュの言う通りにというわけではないが俺はゆっくりと目を開く
そうしてまじまじと自分の装備を見つめてみるがまぁレプリカから本物になっただけだから見た目が変わるわけはなかった
「本当にこれ本物、なのか?」
「当たり前でしょーついでにほらなんかこう体の奥から力が湧いてきたりしてない?」
「言われて見れば確かに」
さっき死んだばかりで倦怠感があったんだがそれがいつの間にかなくなっており、むしろ体が熱く力がみなぎっている
「ついでなんでレベル99にしてみた!」
「は、はぁ!?そんなことしていいのかよ!」
「いーのいーの!『二週目からは敵キャラが皆レベル99!やばい!』って説明しとくからさ」
説明しておくって一体誰に?とは思ったがそんなことよりも俺はこの高揚感に少し溺れかけていた
この力があれば間違いなく勇者アヴィオールには勝てるだろう、それであいつが諦めてくれれば問題ない
「それよりも・・・」
どうやら俺は自然とあいつ、アヴィオールを倒してもいいってこの状況を楽しんでいた
早くこの力を試したい・・・いつもやられている身からすれば徹底的にアヴィオールに仕返しができるこれは願っても無いことだ
「感謝するぜ神様、これで一発あいつの目を覚まさしてやる」
「うむうむ、ちゃんと神様に感謝するとは成長したなシリウス!」
「ああ、でもとりあえず明日に備えてもう寝るんで帰ってくれないかな?」
「え、あのちょっともうちょっと感謝の言葉みたいなの欲しいなっていうか」
「はいはい『神様すごい、すごい』。だからもう帰ってくれ」
さらりと言った俺の言葉にベネトナシュは静かに辺りを見渡した後、息を大きく吸い込み・・・
「私は神様だって言ってるでしょ!!丁重に扱えーーーーーーっ!!!」
無駄に大きい声で辺り当たり散らしたのだった



「さて、もうすぐか」
次の日の朝、俺はギルド本部『夜空に飛翔する鷲』の入口前で腕を組み奴の、アヴィオールがやってくるのを待っていた
ちなみに昨日の夜あれから散々と喚きちらした年齢不詳、自称神様のベネトナシュ氏は丁重に俺の部屋から追い出しておいた
下の階にいるプロキオン爺の証言からその後、朝までずっとプロキオン爺にやれ「バグが多すぎる」とか「休みくれー」だとか意味不明な発言の後突如としてどこかに消えたらしい
「しかし、しかしだ・・・この力は残ってる」
酔いどれプロキオン爺の証言だから信用できないけど神様であるベネトナシュは消えたようだが昨日の夜ベネトナシュが俺に施した
装備や強さは次の日になった今でも残っている、夢なんかではない
「どこかで見ているのかはわからないが急に意地悪とかしないでくれよ」
誰に言うわけでもなく小さく呟く。程なくして街の奥のほうから真紅のマントを翻し勇者アヴィオールがやってくるのが目に入った
「来たか・・・」
いかにもっていう爽やかそうな顔立ちの金髪の好青年、だが俺はこいつの正体の知っている。人のレアアイテム狙って何度も戦いを挑んでくるとんでもない野郎ということは
『ここが『夜空に飛翔する鷹』ギルドですか?』
俺の目の前まで真っ直ぐとやってきたアヴィオールは消え入るような小さな声で呟く、お決まりのセリフだ
そもそもお前何回目だよここに来るの!とかなんか初心者装ってるのバレバレだぞとか言いたいがそれは黙っておく
「ほうお前みたいな若造が俺のギルドに入りたいっていうのか?」
「いや違う、俺はお前の持っている“銀奏のネックレス”が欲しいだけだ」
「はっ?ちょっと待て!」
アヴィオールはもはや役目とか無視した言葉を吐き捨てるとそうそうに剣を引き抜き剣先をこちらへと突きつける
「レアアイテム落とせ・・・レアアイテム落とせ・・・」
恨み言のようにそう呟きながらジリジリとこちら距離を詰めてくるアヴィオールの表情は昔のような面影はない
見た目はそう変わってないんだが、昔というか以前はもっとこう「僕が勇者を倒すんだー」的な使命燃えていたはずなんだが
今の奴はどこか焦燥感に苛まれているというか窶れているそんな風に見える
「一体どうしたってのかは知らないが銀奏のネックレスは俺の大切な物だ、簡単には渡せないぜ。さっさと魔王を倒しに行けよ」
「断る。銀奏のネックレスはこの世で唯一つ、お前しか持っていない。だから早く落とせ」
「俺しか持っていない?そんな馬鹿な」
確かに銀奏のネックレスはレアアイテムだけどこの世で一つとかそんな物ではないはず、いやそれともあれかスピカちゃんは俺のためにそんな大切なものをプレゼントしてくれたというのか?
「だったら尚更渡せるわけないぞ!これはスピカちゃんから貰っ───」
「問答無用!!」
俺の言葉を遮りアヴィオールが斬りかかる。不意をついたつもりなんだろうがその動き、俺にはしっかり見えていて地面を一気に蹴ると距離を離し腰の剣を引き抜く
「ちっ、避けやがったか」
「あーあーもう知らないからな、先に手を出したのはお前の方だぜアヴィオール」
「だからなんだっていうんだ?」
語気を荒げるアヴィオールに対して俺は余裕の表情を見せながら剣を構えた
「さっきまでのは警告だ、口で言って諦めるならば見逃そうと思ったんだが手を出されたならば───今日はお前を倒す!」
「はぁ?俺の二週目はアイテムコンプリートって決めてるんだよ!だから立場をわきまえてさっさとやられろ!!」
その言葉と共に一気に振り下ろされる剣。しかし昨日は全く見えなかった剣の軌跡が今ははっきりと見える!
「だから今日はやられるわけにはいかないっての!」
アヴィオールの両手で振り下ろされた剣をいともたやすく俺は片手に持った剣で受け止めた、レベル99になった俺にはこの位の芸当たやすいものだ
「なっ、馬鹿な!?」
「だから無駄だっての、生憎と───」
一気に俺は剣を払い、アヴィオールの剣を空高く弾き飛ばすとそのまま一歩踏み込み・・・
「今日負けるのはお前の方だぁぁぁぁぁぁっ!!」
袈裟斬りに斬りつけた。ああ、斬りつけた・・・それはもう思いっきりにな
「ぐうっ!!!俺は勇者で貴様はただの雑魚だってのにぃ・・・!!か、必ず蘇って貴様を地獄にたたき落としてや・・・るッ!」
どこの魔王だよと言わんばかりの捨て台詞と共にアヴィオールはあっさりとその場に崩れ落ちた
奴の体から血が流れ大地に広がっていくのをまじまじと見つめながら俺は剣を払い鞘に収め自分のしたことに少し興奮していた
なんていうか本当にやってしまった、うん
「これ寧ろ諦めるというよりも逆効果のような気もするがまぁいいか」
最後の恨み節からしてなんか嫌な予感がするがそれよりももう一つ気になることがあった
「勇者って死んだらどうなるんだ?」
俺の足元で見事な死体となったアヴィオールをは全く消える様子とかはない、死亡回数に定評のある俺の経験からすればそろそろ消えてあのアクセサリーをチャラチャラと付けた金髪のシスターの所に行くはずなんだけど
「さすがにこのままってことはないだろう、ない・・・ないよなぁ?」
思わず不安の言葉が漏れる。いや大丈夫、大丈夫だとは思うんだけど俺がアヴィオールを倒したなんて状況が今までなかったから気が気ではない
そんな不安な俺の気持ちが現れたのかなぜか辺りが一気に暗くなる
「あ、あれ?なんで暗くなっているんだ?」
辺りを見渡すが暗雲が覆った様子はない、俺の目がおかしくなっているのか?
目を擦ってみるがそれでも辺りの様子は暗いまま、いやむしろさっきよりも暗さは増していた
「どうゆうことだよ、これ」
俺の言葉に誰も返答することなくゆっくりと周りの景色が闇に染まっていく、そうしてしばらくして全く何も見えなくなった世界に誰ともわからない低い声が響き渡った





───GAMEOVER...





「はっ!?ここは!?」
意識が覚醒し辺り、周りを見渡す。そこはさっきまでの街中ではなく見慣れた自分の部屋だった
「おお!よく戻ったなシリウス、ここでセーブするか?」
「セーブってなんだよ!」
背後からの言葉に思わず振り返ってツッコミを入れる
「ってこの状況まさかお前の仕業か?」
目の前にいたのは紛れもなく昨日自称神様を名乗った少女、ベネトナシュだった
「仕業ってなんだよぉー私は神様だぞー!お供え物しろー!」
相変わらず手足をばたつかせて子供っぽく反論するベネトナシュに俺は冷ややかな表情で言葉を吐く
「神様なら知っているんだろ?あんたの言うとおりにアヴィオールの奴を倒したらなんか暗くなってなぜかここに来た、この状況についてさ」
「えーシリウスちゃんがここに戻ってきた理由?知らなーい?」
「そいつは残念、全知全能な神様ならきっとこの状況を詳しく知っているんだと思ってたぜ。所詮神様って言ってもその程度かー残念だなー!」
「なにをー!全部知ってるんだからね!神様ナメるにゃ!」
ちょっと自尊心を弄ってやるとあっさりと口を割るベネトナシュ、なんというか子供よりも扱いやすい
「シリウスちゃんがここに戻ってきたのはアヴィオールは死んじゃうとシリウスちゃんみたいに教会じゃなくてセーブポイント、『過去の記憶』に戻るの。その時にこの世界の記憶も一緒に巻き戻るんですねー♪」
『過去の記憶』に戻る、聴き慣れない言葉だったがそれを聞いて一概の不安が脳裏を掠める
「ちょっと待て、それってアヴィオールの記憶はどうなってるんだ?俺に殺された記憶はあるのか?」
「んにゃ、アヴィオールの記憶?そうだねぇないんじゃないかな?時間が戻ってるんだからむしろシリウスちゃんが記憶を持ったまま過去に来ていることのほうが不思議だよ」
ああ、やはりそうゆうことになるのか。ということは俺がいくらアヴィオールを倒したところで何の意味が無いじゃないか
「なになに?シリウスちゃん意味深な顔しちゃってー♪」
「わかってないようだから言うけどアヴィオールが『自分が倒された』って記憶がないって言うんだったらいくら倒したところで無駄だろ」
俺の言葉にベネトナシュは最初はきょとんとした様子でこちらを見つめ返していたがしばらくして「あーそっか」と納得したように手を叩き
「あ、これじゃあ何回やっても無駄だねー♪」
と、おどけて見せた。っていうか提案したのお前じゃないかよ
「これじゃ確かに銀奏のネックレスは取られないけど永遠に戦い続けることになるじゃないか」
朝起きてギルドに行ってアヴィオールを倒す、すると時間が戻って最初に戻る。
アヴィオールの奴は記憶が失くなるから“ただ一回”「シリウスにやられた」だけでそりゃ苛立ちはするだろうがそこまでだ
だが俺はどうなる?俺にはついさっきアヴィオールを殺した感覚がまだ手に残っている。この感覚が心地良いものかといえばそんなわけはない、時間が巻き戻るとはいえ確かにあの瞬間俺はアヴィオールを殺した───人を殺したんだ
それを俺は銀奏のネックレスを取られないためには永遠にアヴィオールを殺し続けなければならない
「・・・俺には無理だ」
正直アヴィオールを殺し続けるなんてのは俺には無理だ、第一アヴィオールがそれで諦めるってのならわかるが一回やられただけで諦めるような勇者じゃない、となればいずれ根負けするのは俺の方だ
これはもう銀奏のネックレスが奴の手に渡るのを諦めるしかないな
「んまぁアヴィオールの記憶はないけどプレイヤーの記憶はあるというかまぁいいか・・・とりあえず、あきらめムードでお悩み中なそこのシリウスちゃんに朗報です!」
意気消沈している俺とは裏腹に何故かベネトナシュ楽しそうだった
「なんだよ、朗報とか言ってどうせまた役立たずな情報だろ?」
「もぅシリウスちゃんは私をもっと神様と讃えるべきだよ!折角良いイベント思いついたのってのにぃ」
良いイベントってなんだよ?相変わらず良くわからないがこの神様とやらは俺の悩みとは別のところで動いている気がする
だけどもうそんなことはどうでも良かった
「あのねあのね、勇者アヴィオールの仲間になればいいんじゃないかなって思ったわけですよ」
「な、仲間?」
俺はその言葉にハッとなってベネトナシュへと向き直った
仲間になる───それは思ってもない提案だった
「仲間になればぁ、銀奏のネックレスは一応アヴィオールの物になるでしょ・・・でも所有者はシリウスちゃんな訳!きゃー私なんていう閃きなのかしら天才すぎる!きゃー!」
「確かにそれは名案だ、けどなんで今まで黙ってた?」
「え、いやーそれはなんというか今思いついたというかもうすぐマスターアップだから面倒くさい作業したくなかったというかなんというか、まぁいいでしょそんなこと!だけど仲間になるのならシリウスちゃんの職業を変更しないとねぇ」
そう言うとベネトナシュはぼうっと上の方を向くとなにやらブツブツと呟き出す
「んー折角二週目、レベル99なんだから奇抜な職業がいいのよね。ええっと、うん!じゃこれにしよう!!」
職業を変えるってどうゆうことなんだ?まぁでもそれで銀奏のネックレスが守れるっていうんだったらどんな職業にでも変わってやろうじゃないか
「それで俺はなんの職業になればいいんだ?」
俺の言葉にベネトナシュは視線を戻すと抑揚のない口調でとんでもないことを口走ったのだった
「え、えーと……お相撲さん、かな?」



《 ろーぷれ! 了 》



【 あとがき 】
平仮名4文字に「あまだれ」つければ読者に媚びれる!
と思ってタイトル付けたが中身は女子高生の日常系萌え小説でもなんでもなく気がつけば登場人物おっさんばっかりだった

そんな話

【 その他私信 】
なんかあった気がするけど・・・忘れました
あ、推敲してないですっ!!誤字脱字長文失礼します!!

【 お題当てクイズ回答 】
出題者だから答え知ってる(´・ω・`)

『 べ、べつに好きで書いてるわけじゃないんだからね! 』 氷桜夕雅

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