Mistery Circle

2017-11

《 夜行列車 》 - 2011.09.01 Thu

《 夜行列車 》

著者:鎖衝




【 序章 】

「名前なんて、別にどうでもいいじゃないですか」
彼女は言った。あっけらかんとした、朗らかな口調だった。
言っている事は否定的だが、何故かそこには厭味を感じさせない明るさがあった。
「それに、その方々の内面を知るには、こんな状況では邪魔な情報の一つかも知れませんよ。先入観を持って接するよりなら、秘密でいた方がいいと思いませんか?」
 彼女はまだ二十歳を少し過ぎた程度だろう。若さと言うよりは、幼ささえうかがえる。だがその言葉の端々には、その年齢を感じさせない、自身の意志の強さまでもが感じられた。
 そうしながらも、そんな強気な主張をした後すぐに、「それに、なんか恥ずかしいじゃないですか」と、顔を赤らめた。
「自分が誰なのかを知られるのって、なんだか妙に恥ずかしい気持ちがします」
 そう言って及川美香は、いたずらっ子のようにぺロリと舌を出してみせる。
 良く判らない子だと、私は思った。まるで子供と大人の別人格が、その時々で入れ替わっているかのような錯覚を感じる。
 私、井岡博美は、同乗者である二人を前に、寝台車の部屋の隅でぬるくなりかけたビールの缶を持て余していた。
 部屋は縦に長く、簡素な二段式のベッドが二組。そしてそのベッドとベッドの間に挟まるようにして一つだけ、カーテンの閉まった窓がある。
 奥のベッドの下段には、及川美香。そしてカーテンの閉まった窓を背にして、折り畳みのパイプ椅子に腰掛ける長身の男性。そして私はそんな二人と向き合うようにしながら、部屋の壁を背にして椅子へと座っていた。
 寂しい夜だった。夕刻頃から降り始めた雨は次第にその強さを増し続け、今はもう列車の窓打つその音さえも激しく、時折、カーテンの向こうに稲光のような眩い光さえも目に映る。
 そしてこの単調な揺れと振動。一定のリズムで続くレールの継ぎ目を教える音も、どこか寂しさを募らせる、そんな要因の一つとなっていた。
 部屋の上部の隙間から吹き込んで来るエアコンの風は生ぬるく、空気がべったりと重く、湿っぽい。どうにもこの環境には、馴染めない不快さが多く含まれているように感じる。
「いいねぇ、それ。誰が誰なのか判らないままってのも、なんか面白いじゃない」
 今の意見に賛同するかのように言ったのは、矢ノ口満。パイプ椅子に座る、長身の男性だ。歳は二十代の後半ぐらいだろうか。やせぎすで、スリムな体躯の男性だった。白いポロシャツに、ジーンズパンツ。そしてどこか知的さを感じさせる、銀のフレームの眼鏡が彼の特徴とも言えた。
 そして、及川美香。長い黒髪に、どこか南国風なイメージ漂う薄手のワンピース。屈託なく笑い、その内面の明るさを際立たせてはいるが、その目の奥にはどこか一本、芯の強さを感じさせる光が見えた。
「ところで、これで全員なんですかね」
 言って私は、つらくなって来た脚を組み替える。目の前には、さきイカとバターピーナッツの乗ったテーブル代わりの椅子が置かれているせいで、脚を伸ばす場所が無く、窮屈な格好を余儀なくされているのだ。
「いえ、もう一人遅れて到着する筈ですよ。多分、次の駅で乗り込んで来ると思います」
 及川美香が、私に気を使ってか、テーブル代わりの椅子を少しだけ自分の方へと引き寄せながら、そう言った。
「もう一人? 凄いなぁ、向こうで待っているのが何人か知らないけど、なんだかかなりの大人数になりそうだね」
 矢ノ口満は、楽しそうな表情でそう言った。
 確かにそうだと思った。次の駅で本当にもう一人が乗り込んで来たならば、もう既にそこでメンバーの半数は参加と言う事になる。
 ふと私は、向こうに集まっているだろう、メンバーの人数を知りたいと思った。すぐにバッグから携帯電話を取り出して、メールを打つ。宛て先は、”黒乃道化師”。ネット上の名前だが、彼とは既に七年来もの付き合いである。今回もまた、他のメンバーには内緒で秘密の企画を彼と一緒に練っていたりもしている仲だった。
――そっちはどう? そんな短い文章を送信し、再び携帯電話をバッグへとしまう。もちろん向こうも忙しい筈だから、返事は特に期待していない。
 バタバタバタッと、雨粒だろう、車窓を打つ音が聞こえた。今夜の天気は、関東から西の全てが厚い雨雲に覆われていると言う予報。明日の朝には晴れるとは言っていたが、どうにも信用出来ないぐらいの雨量である。
 なんとなく、話の弾まない重苦しい雰囲気があった。元々私は社交的でもないし、自分から話題を振るような事はしないのだが、向かい合う明るそうな二人でさえ話は途切れがちだった。尤もこれが本名だけの自己紹介に留まらず、慣れ親しんだ間柄な紹介ありきならば、もっと話も違う方向で盛り上がったに違いない。なにしろ私達は全員、全くの見ず知らずな関係ではないのだから。
 だが彼らは、お互いの名前――所謂、ペンネームと言うものだ――を、知らない方がいいと言う。私は声には出さず、二人は沈黙が苦痛には感じない人達なのかなと、そんな嫌味をそっと呟く。
 私達は、ネットの同人小説サークル、「輪舞曲-Rondo-」のメンバーだった。
 もう彼是六、七年も続いているだろうか。当時からあまり変わる事もない固定メンバーで、細々と長く更新され続けている。どちらかと言えば、自作小説を発表すると言うよりは、個人の記録的な匂いの強い、そんなサークルである。
 これまでに何人かの脱退や新規参加はあったものの、ここ数年は総勢八人と言う人数で、地味に更新されていた。閲覧者はそう多くもないのだが、熱心で根強いファンの存在が、私達の励みとなっている。
 今日、我々は、サークルのオフ会と言う名目で、初めてそのメンバー達と顔を合わせる事となった。同時にそれは、パソコンのネットワークの欠点でもある、”現実世界の広さ”が、直接的な問題となると言う事でもあった。つまりは、ネットの中では非常に近しい間柄でも、それがリアルのものとなれば住まう場所も様々であり、従って一堂に会すると言っても容易ではない事。つまりは、逢うには長い時間と移動距離を要するのだ。
 結局、会場は”黒乃道化師”氏が手配した、関西圏のとある貸し別荘。そして我々関東勢のメンバーは、こうしてその会場へと向かうべく、夜の列車に揺られているのだった。
「もう向こうじゃあ、盛り上がってるんだろうなぁ」
 矢ノ口満は言う。――そう。我々がオフ会の開催日であるその前日に、”前夜祭”と称して、関東勢だけで夜の列車の旅を企画したのだが、同時に関西勢もまたその前日の夜から宿を取り、集まったメンバー達だけで、”前夜祭”をやっているのだ。
 そしてそれは、そこそこに盛り上がってはいるのだろう。”黒乃道化師”に送ったメールが戻って来ていない所を見ただけでも、それは伺い知れた。
「しかしここ、禁煙なのが辛いね」
 矢ノ口が言った。すると及川は、「仕方ないじゃないですか」と、素っ気ない返事をかえした。
「喫煙所は確か、一番奥の車両だった筈ですよ。良かったら散歩がてら行ってみてはどうですか?」
「いや。これで我慢しておくよ」
 言って、さきいかを咥える矢ノ口を見て、私は思わず、「ガムならありますよ」と言って、列車に乗り込む前に購入しておいた、ミントのガムを差し出した。
「あぁ、嬉しいな。じゃあ一つ」
 言って手を伸ばす矢ノ口に、「全部どうぞ」と言って、それをケースごと渡す。
「煙草吸いが煙を我慢するのは相当厳しいですものね。遠慮なさらずに、どうぞ」
 言うと矢ノ口は、「じゃあ」と言ってそれを受け取り、礼のように額の上かざしてみせた。その時だった。
 ――ふと、影が横切る。ドキッとして振り向けば、向こうに見える部屋のドアの窓を、他の宿泊客が横切ったその影だと判り、安堵する。
「井岡さん、さっきから人が通る度に、ビクビクしてますよね」
 及川美香にそう言われ、私は照れ隠しに苦笑をしながら、「えぇ」と、答える。
「昔から苦手なんです。実際の姿が目に入らない人の影だけとか。カーテンの向こう側を通り過ぎる黒いシルエットとか。――きっと、不安なんでしょうね。実体が見えないって言う曖昧なものが」
「なるほど」矢ノ口満は言った。
「見えないものが怖いんだね。逆に、例えそれが亡霊であっても、見えるなら特に怖くない……と」
「そうは言ってませんよ」
 私はそう言って、笑った。
 その時だった。車内に低く、ささやくように、男性の声でアナウンスが流れ始めた。
「次は、S宮――。S宮です。お降りの方は――」
 続いて聞こえて来たのは、足の下から振動と共に響き渡る、車輪ブレーキの軋り音。最初は、やけにレトロ感のある古風な寝台列車だと感じていたものが、次第に不安要素の募る中古電化製品に乗っているかのような気分になって来る。
 これで無事に関西のA駅まで辿り着けるのかしら。思いながら、「夜行列車も、駅で停まったりするんですね」と聞けば、「そりゃあ停まるでしょう」と、矢ノ口満は言う。
「もちろん深夜間の停車はあんまり無いけどね。それでも完全なノンストップな訳じゃない。それにまだ夜の十時前だし、まだもうちょっとは主要駅に停車しながらの運行だろうね」
 やがて列車は、無事に停車を果たす。何人かの人影がドアのガラスに映り込みながら、下車するのだろう雰囲気を漂わせ、横切って行った。
 そうしてどれぐらいの無言状態が続いたのだろう。ふと、部屋のドアのガラス窓に誰かが立った。そしてその人影は、我々のいる室内を覗き込むようにしているのだろうか、そこから動く気配を見せないまま、いつまでも同じ格好で通路の光を遮っていた。
 ――嫌だなぁ。思った瞬間、「あら。もしかして大西さんかしら」と、及川美香は言う。そして入り口に一番近い矢ノ口満が立ち上がり、ドアを開けた。
 そこに立っていたのは、及川美香と同じぐらいの年齢だろうか。顔が良く見えない程に伸ばされた長い髪と、丸いフレームのサングラスをかけた、背の高い若い男性がいた。
 幽霊みたいな人ね。私は心の中で呟く。
「こんばんは、大西涼です。ここって、”輪舞曲-Rondo-”のメンバーの部屋ですよね?」
 それだけで、用が事足りるであろう第一声だった。
「ようこそ、大西さん」
 言って、及川美香は彼を招き入れた。そして正体不明のままのメンバーは、四人になった。


【 第一章・矢ノ口満 】

「実は僕、霊が見えちゃう体質なんだよね」
 そう言って、矢ノ口満は話し出した。私に向ける笑顔が、どこか当てつけのようにも感じられた。
「なんかウチの血筋ってほとんど全員がそんな感じでさ。僕自身も、物心付く前から見えていたんだろうなぁ。言葉を理解するようになって初めて教わった事が、『見えてない振りをしろ』だったし」
 矢ノ口満は語る。どうしてこんな話になったのかと言えば、それは十数分前にさかのぼる。
 自己紹介は、誰もが本名のみで行った。だが、誰がどのペンネームなのかにも興味はあった。ならば全員でそれを当ててみないかと言う流れになった。全員が一人一人、自分自身の”何か”を語る。そしてそれをヒントにして、他の人々が語り手のペンネームを当てる。そんな趣向のゲームが、及川美香から提案され、全員がそれに乗ったのだった。
 そして個人の語る内容の提案者は、意外にも遅れて最後にやって来た、大西涼だった。
『じゃあ、”懺悔”って言うのはどうですか? 内容は嘘でも本当でもいいから、自分なりの語り口調で、それを話すんです』
 そう言った彼の横顔は、薄く微笑んでいるようだった。
 ――薄気味悪い人ね。決して人とは目を合わせて話をしない彼を見て、私は素直にそう感じていた。
 そうして私達の“懺悔話”は、始まった。
「なんで霊と関わっちゃいけないのか。どうして無視しなきゃいけないのか。当時の僕には全く判らなかった」矢ノ口満の話が続く。
「――まぁ確かに、死んだ状態のままで彷徨っているのもいるからね。グロいし、見ていて決して楽しいものじゃないんだけどさ」
 どうやら、最初の語り手である矢ノ口満の懺悔は、怪談話のようだった。
 矢ノ口はそうして、彷徨う霊とは当たらず触らずの関係を持ちながら、成長して行った過程を語った。
「ある夏。九州の実家に行ったんだよ。あれは確か、僕が小学校の高学年ぐらいの時だと思うんだけど……」
 矢ノ口の実家は、九州の山奥の古い旧家だったようだ。木造の平屋で、表と裏に堀を二つも持った、大きな家だったらしい。
 帰省は、彼の学校の夏休みの事だった。お盆の帰省ラッシュをかいくぐり、長旅を終えて実家へと辿り着けば、運悪く彼は夏風邪をこじらせて一人熱に浮かされてしまった。食欲もないままに昼食である素麺を無理に流し込み、再び床の間の布団の上へと転がった。
 そうしていつしか、うとうととしながら気が付けば、家の中は彼一人だけになっていた。どうやら家族の全員は、彼だけを置いて墓参りへと出掛けてしまった様子だ。
 昼間だと言うのに、やけに寂しい時間だったと、彼は言う。聞こえて来るのは裏手にある山からの蝉の声だけ。後は何も無い。ひたすらに退屈で、寂しい時間だったらしい。
「突然そこに、別の音が混じったんだよ」彼は言う。
「なんか、忙しく部屋の外の廊下をパタパタと走ったり、あちこちの部屋の戸を開けたり、閉めたり。まるで誰かを探して歩いているみたいにね」
「誰かが帰って来たとか?」
 及川美香が聞くと、「僕も最初はそう思った」と、矢ノ口は言う。
「そう思って、閉まった襖に向かって声を掛けてみた。『――お母さん?』って」
「うん」
「そうしたら、足音が止んだ。物音がしなくなったんだ。不思議に思って、ふらつく足取りで廊下に出たら、誰もいなかった。代わりに、廊下の突き当たりにある仏間の襖が開いてた」
 ゾクリと、私の腕や背中が粟立った。
「誰かが帰って来ている。そう信じてたからね。なんの警戒心も無しに、僕は仏間を覗いた。そうしたら、そこにいたのはまだ小さな女の子だった」
「――幽霊?」
「そう、幽霊。さすがにいつものように無視は出来なかった。目は合っちゃったし、思わず声まで掛けちゃったしね」
 そうして矢ノ口は、その女の子の霊と遊び始めてしまったのだと言う。
 もう既に霊と言う存在に慣れた頃でもあったし、さほどその子に対しても、怖さや不信感は沸かなかったからだと言う。ついでに言えば、九州の実家には歳の近い従兄弟や親戚の子供は誰もいない。矢ノ口自身、奇妙な好奇心と、単純な寂しさからの行動だったらしい。
「最初は折り紙とか、お絵描きで遊んでたんだ。でもその子が何度も何度も庭に行こうって誘うんで、僕もしょうがなく付き合った。――それが、間違いだったんだな」
 玄関からではなく、開け放たれた縁側から出たのだと言う。
 見慣れた実家の庭とは、少しだけ違って見えた。その子が勧めるままに藁草履をはき、庭先の木々の間を通り抜けた。どうせ庭の中なんだから大丈夫だろうと言う予測は見事に外れ、木々の間を通り抜ければ、そこは既に見知らぬ神社の裏手だった。
「訳が判らなかったよ。一瞬にしてワープしたような気分だった。戻ろうにも、振り返ってみても今来た道は無い。木々の隙間どころじゃないよ。密集したイバラが行く手を阻んでいたんだから」
 そしてその女の子は、時々後ろを振り返るようにしながら、「おいで、おいで」を繰り返し、我先にと道を進んで行ってしまう。矢ノ口はもう、追うしかなかった。彼女からはぐれてしまったら、きっとどこにも帰れないだろう予感があったからだ。
 長い下りの砂利道を行き、両側に背の高いブロック塀が並ぶ道を行き、どこぞの家の裏手だろう用水路の脇を抜け、やがて辿り着いた先が、陽も射さないぐらいの鬱蒼とした草木に囲まれた沼のほとりだった。
 既に女の子はいなかった。ただ矢ノ口一人だけが、沼の岸辺に立ち呆然としていた。
 突然背中を、ドンと押される。振り返れば女の子はそこにいた。顔一杯に笑みを浮かべ、また矢ノ口をドンと押す。押されれば必然的に沼の方へと転びそうになるのだが、それを懸命に堪えて立ち直れば、またドンと身体を押してくる。
「何するんだよ!」
 矢ノ口は叫ぶ。だが少女はそれをやめない。まるで沼へと落とそうとするかのように、執拗に彼を手で突いた。
「殺されると思ったよ。――逃げられなかったんだ。少女の力はそんなに強くはないけれど、いつしか僕の方が根負けして転ぶだろうと、そんな予感だけが強くあった」
 助かったのは、それからしばらく経ってからの事だったと言う。
「あんた、何しちょっとん!」
 そう叫び、間に割って入ったのは、実家の祖母だった。少女は祖母に体当たりされるようにして弾き飛ばされ、彼はその祖母に抱きとめられた。
 有無を言わさぬ、素早い行動だった。祖母は小さな数珠のようなものを袖から取り出し、少女の首へとかけた。かかる程に大きな数珠ではなかったのだが、その数珠は少女の首にすっぽりと嵌った。
 そして僅か一瞬の後に、少女の身体はなくなっていた。ただそこにはじゅうじゅうと煙を上げる、黒くなった数珠があるだけ。彼はその場で気を失い、目を覚ませば何事もなかったかのように、実家の床の間で寝ていた。そして祖母がどうして彼の居場所を知り得たのか、それは未だに判らないと締める。
「――怖いわ」
 及川美香は言った。
「でも、”懺悔”とはちょっと違いましたね」
 と、大西涼。
「いや……」矢ノ口満は、言葉を遮る。
「”懺悔”は、その後の事なんだ」
 矢ノ口は言った。
 結局彼は、風邪の治った後に、祖母を含めてこっぴどく怒られた。どうして言い付けを守れなかったのかと言う事と、そして彼がしでかした最も大きな事について。
「あの子は、僕の母の妹だったんだ」矢ノ口は言った。
「小さい頃に沼で溺れて亡くなったらしくてね。不慮の事故なものだから、なかなか輪廻転生の輪にも入れなかった」
 矢ノ口は残ったビールを一気に呷り、そして話をこう締めた。
「子供の姿で現れた僕の叔母は、僕のせいで二度死んだ」
 仏間の位牌から、叔母のものだけが取り除かれたのだと言う。
 それからの彼は、滅多な事では霊の存在に対し、反応を示さなくなった。一応は祖母に霊の祓い方や避け方を伝授はされたが、結局は無視が一番の良策だとそう語った。
「今でも……見えるんですか?」
 私はそっと、哀しい顔をする彼に向かってそう聞いた。すると彼は途端に笑顔になり、「嘘でもいいんだったよね?」と、そう言った。
 最初に笑ったのは、大西涼だった。続いて及川美香も、口を押さえながら大笑いをした。
「でもこれで、矢ノ口さんが誰なのかが判ったわ。メンバーの中に、そのテの話が好きな人は一人しかいないもの」
 言われて矢ノ口は、「バレたかな」と、笑う。
「そう。お察しの通り、僕のペンネームは”智志”。メンバー唯一の、ホラー小説書きです。どうぞよろしく」
 僅かながらも、場が和む。ようやく一人、私自身も良く知る、そんな人が目の前にいた。
 笑う彼の背後、薄手のカーテンがその向こうに見えるであろう稲光を、瞬間的に照らし出していた。
 時刻は、夜の十時を少し回った辺りだった。


【 第二章・大西涼 】

「俺のは、怪談話じゃないんですが……」
 そんな前置きをしながら、大西涼は話し始めた。
 物静かなイメージのある、そんな人だった。長い髪が垂れ下がり、その顔を覆い隠してはいるが、その隙間から見えるその横顔には確かに端整さが見て取れた。
 もしかしたら極端な対人恐怖症か何かかも知れない。人の方を向いて喋れない事と、こんな夜更けに掛けている色の濃いサングラスが、その片鱗を伺わせた。
 あまり好きにはなれそうもないタイプね。私は思いながら耳を傾ける。
「俺が高校二年の時、姉が亡くなったんです。そして俺の”懺悔”ってのは、その姉を殺した奴に対する、復讐です」
 ――やっぱり嫌なタイプじゃない。思った瞬間だった。
「姉は俺の見ているその前で、電車に巻き込まれ、死にました」
 ドキンと、胸の奥底にあるどこかの部分が、強烈な音と共に激しく痛んだ。
「止める間もありませんでした。気が付けば姉は、走り込んで来る電車のその下で、不快な音と共に肉塊になってました。――そう、姉は俺の見ているその前で、自殺したんです」
 その当時の家は、神奈川県の某所にあったと言う。
 家の裏手は、まさに線路だった。恰好ばかりの柵も些末で、生活の場のその中に線路が通り、小さい頃から見慣れたローカルの電車が走っていたのだと言う。
「踏み切りなんて全然無い場所なんです。それこそ車の通る道路でも横切っていない限り、遮断機なんてものは当然のように存在してはいませんでした」
 彼の家の居間からは、線路が良く見えた。その線路の向こうは一段下った畑や果樹園などがあり、近隣の農家の人々は、当たり前のようにその線路を渡って向こう側に行き来していたらしい。
「雨の降る、暗い午後の事でした」大西涼は言った。
「家族は他に誰もいなくて、線路際にある家の裏手で姉がベンチに腰掛けて、携帯電話で誰かと通話しているのが見えるだけでした。俺はあいにくの雨で部活も流れ、たまたま早く家に帰って来てたんです。でも、姉がなんだか凄く深刻な話をしているみたいで。俺はそっと居間の椅子に腰掛けて、聞くとはなしに開け放たれた窓越しに、姉の会話を耳に入れてました」
 ――雨。そして、電車。嫌な言葉の符号に、私は心臓を高鳴らせながら聞き入っていた。
「良くは聞こえませんでした。ただ時々、『どうして?』とか、『ふざけないでよ』とかの言葉が聞こえて来る程度で、それ以上の込み入った話はまるで判らない。――誰かと口論でもしているのかな。そんな程度の認識でした」
 まさかとは、思った。だが彼の話は、想像した通りの展開となった。
「電話を切るなり、姉は走り込んで来た電車に飛び込みました。――きっと、急ブレーキを掛ける暇もなかったでしょうね。姉は俺の目の前で、ごく自然に、吸い込まれるようにして電車の中へと消えて行きました」
 残されたのは、携帯電話だけだったと言う。
「俺はすぐに、その携帯電話を隠しました。そしてその直前の内容は、両親にも警察にも言いませんでした。――だって、そうでしょう? 姉は誰が見ても自殺だったんですから。例えその直前に、誰かから自殺にまで追い込まれるぐらいに酷い事を言われたのだとしても、自殺な以上は誰の責任でもないんですから」
 ズキズキと、胸が痛んだ。同時に頭痛までもが併発するぐらいだった。私の心の奥底にある、嫌な過去を思い出させる、そんな話だったからだ。
「以来、俺の復讐が始まりました。姉の使っていた携帯電話は、それ以降、俺が通話料を支払い続けました。理由はただ一つ、姉を振って自殺に追い込んだ、その男への復讐からの事です」
 午後の四時十五分。彼の姉の通話記録に残る、最後の瞬間の時刻である。
「その携帯から、毎日掛け続けました。ほんの数コールだけを鳴らし、向こうが出てもすぐに切る。それだけの行為を同じ時間に毎日、五年間も続け通しました」
 言って、大西涼は横顔のままで薄く笑った。
「それで……?」
 及川美香がそう聞くと、大西は涼しい顔で、「それだけです」と、そう答えた。
「その電話の相手が誰なのか、結局俺には最後まで判りませんでした。ただ、その携帯に登録された苗字と、時々通話に出る相手の男の声で、いくらかの情報は掴めましたけどね。でも結局、最後までその人が誰なのかは判らず終いです。五年後、その男性が携帯を解約したのかどうか。番号に繋がらなくなって初めて、俺はその復讐を中止する決心が付きました」
「相手は……亡くなったのかしら?」
 及川美香は聞く。だが、大西の返事はただ、「さぁ?」だけだった。
 結局話は、嫌な雰囲気のままに終わった。その後に続くであろう、大西は一体誰なのか。結局それは誰も口にしなかった。
 果たして、いつの間に車内アナウンスが流れていたのだろうか。列車はゆっくりと確実に減速をし、そして真っ暗な駅の中へと滑り込む。やがて軽い振動と共に停車をすれば、またあのドアの向こうに、下車するのだろう乗客達の姿が影となって見えた。
「きっとここが最終の停車駅だよ。ここを過ぎたら後はもう、朝まで停まる事はない」
 言って、矢ノ口満は背後のカーテンを開ける。その向こう側には、思いも寄らない光景があった。
 真っ暗なホームの中に佇む、人、人、人。本当に同じ列車内に乗っていたのかと疑うぐらいに、その人の群れは多く見えた。
 降り立ったその人々は連絡通路へと上る階段の下へと群がり、傘を差したままその順番を待っている。
「何でこんな時間に、大勢の人がここで降りる訳?」
 及川美香が誰に聞くでもなく言うと、「きっとこの駅の先にある施設に向かってるんじゃないかなぁ」と、矢ノ口満はそう答えた。
「この先に、某新興宗教の施設があるんだ。そして確か今夜は、その団体の”お祭り”の日。きっとそれに参加する為の人々なんじゃない?」
「お祭り? こんな夜更けに?」
「そうだよ。そのお祭りは、夜中から朝に掛けて行われるんだ。星と炎を愛でる、そんな会さ」
「ふぅん――」
 及川美香はそう呟いたが、その後にはまるで、「薄気味悪いわ」とでも、言葉が続きそうな雰囲気があった。
 確かに私も単純に、嫌だなぁと感じた。なんだか私達だけを除いて全員が降りてしまい、列車が無人になってしまったかのような、そんな孤独感を覚えたからだ。
 やがて列車は動き出す。その向こうにまだ延々と続く、人々の群れを残したまま。
 時刻は、夜の十時半だった。


【 第三章・私(井岡博美) 】

「これは……五年程前の話になります」
 さんざ迷った挙句、結局私は、”それ”について話し始めていた。
 だが、話し始めて尚、心はまだ迷っていた。話せば少しは心が軽くなるだろう事は理解していたが、その内容の複雑さと、今まで誰にも言わずに自分の中へと秘めていた事に対し、抵抗があったのだ。
「先程の大西さんの話を聞き、思い出した過去があるんです」
 だが、私の口は話す事をやめない。
「あれは……雨の降る、寂しい夜の事でした……」
 私は”彼”と飲み明かした挙句、ふらつく足取りで、林道を歩いた。
 多少の緊張もあったのだろう。”彼”に対し、「泊めて」と素直に言える程大人でもなかったし、帰る距離と時間を計算し、事務的にバイバイと手を振れる程に子供でもなかった。結局私は、酔った挙句に――と言う、姑息な選択しか取る事が出来なかったのだ。
 もちろんそんな心理的な部分までをも話すつもりは無い。私は極力話を端折りながら、「高台に見える宿」を目指し、”彼”と一緒に雨の降る道を辿ったと、そう語った。
 まるで土地勘の無い場所だった。そこは観光地でもなければ、繁華街でもありはしない。どんな旅行パンフレットにも載ってはいないだろう、地方の田舎の小さな町で、”彼”と出逢わなければ一生の間に一度も来る事はなかっただろう、そんな場所だった。
 そしてそんな土地勘の無さは、”彼”も同じ。ただその場所は、お互いが顔を合わせる為に一番近い場所と言うだけの事。お互いの住まいを直線で結び、その中間地点に当たると言うだけの場所でしかなかったのだ。
「初めて逢った人なんですよ。それまでには電話でしか交流が無かったんですが……」
 ――宿を取ってるんだ。”彼”は丘の上を指して、そう言った。
 もしかしたらその言葉は、彼なりの遠回しな求愛だったのかも知れない。今となってはそれを確かめる術も無かったが。だが結局、私は”酔った”と言う理由にこじつけて、”彼”の取った宿に一緒に泊まる事となった。
 酔いと高揚。不安と好奇心。そして”彼”への好意と、”彼”から感じる私への愛情。――あの時の私は、絶頂の真っ只中にいたような気がする。従って、向こうの高台に見える宿屋の明かりへと向かう道順に多少の不安があったとしても、私にはなんの恐れも不安もありはしなかった。私は”彼”の腕を取り、雨の降る暗がりの中、何度も何度も立ち止まってはキスを重ねた。
 幸せだったのだ。生まれて初めて、人を愛する事の喜びに目覚めたのだ。一つの傘に隠れながら、私は”彼”に導かれるまま、その真っ暗な林道を歩いた。
 途中”彼”は幾度も、「道、間違えたかな」と不安そうに呟いてはいたが、「いいじゃない」と、私はそれを打ち消した。実際、どうでも良かったのだ。その時の私はただ、”彼”と一緒にいられる事だけが大事でしかなかったのだから。
 突然、目の前に石段が現れた。林道を抜けた先にあったのは、上へと続く短い距離の石段だった。
 僅か数十段程度の小さな石段。上を見上げれば小さな笠をかぶせただけの外灯が一つ。そしてその外灯は、雨に濡れててらてらと光る、黒い石の階段を照らし続けていた。
「あぁ、ここを登れば上の道に出られるみたいだね」
”彼”は安堵したかのように、そう言った。
 見上げればその更に上に、”彼”の泊まろうとする宿の窓の明かりが見えた。もう間もなくで辿り着く。そんな安心感と、それから起こるであろう未知の不安とで、私はますます酔いが回って来たかのように、顔が火照るのを感じた。
”彼”に手を取られ、足を滑らせないように注意しながら、石段を登った。そうしてようやくその頂上へと辿り着き、私は溜め息を吐きながら辺りを見回した。
 ――なんか、違和感があった。なにがどうと説明は出来なかったが、妙な違和感がそこにあった。
 まず、道はアスファルトではなかった。ゴツゴツと尖った大きな石ばかりが集まる砂利の道。今時こんな道路があるのかと、疑ってしまうぐらいのそんな道。そしてもう一つ、小さな外灯に映し出されたのは、高く積まれた石垣。そんな石垣がぐるりとカーブを描くようにして、私達の目の前にあった。
 やけに無骨な道だと思った。未舗装だと言う以前に、人の歩く道ではないじゃないかとさえ感じた。
「ねぇ、ここって――」
 私が言い掛けた時だった。左手側から、強烈な光が私を照らした。
 全く意味が判らなかった。その強い光は私を照らし続けながら、どんどんその距離を縮めて来る。
「逃げて!」
 続けて、背後から、”彼”の声が聞こえた。
 言う通りに振り向く私。そして私はつまづく。横に長く、延々と続いている、鉄製のレールに。
 私が全てを理解したのは、既にその光の基が目の前へと差し掛かった頃だった。同時に私は悟った。今ここで、私の人生と言うものが終わったのだと。
 両手で顔を塞ぐ。眩い光は熱ささえも感じられそうなぐらいに目の前にある。そしてふわりと持ち上がる、私の身体。まるで羽が生えたかのように私は高く浮き上がり――そして、ゆっくりと鈍い痛みがやって来た。
 ブレーキ音が聞こえ始めたのは、それから随分経ってからの事だったように思う。
 気が付けば私は、雨に濡れた草むらの中にいた。斜面を転がり、太い樹の根元にぶつかり、その動きを止めていたようだった。
 そして――あぁ、そして”彼”は、あの石段の途中に、うつぶせて倒れ込んでいた。私は駆け寄り、その身体を揺する。そして――。
「もう、いいですよ。井岡さん」
 矢ノ口満の声が聞こえた。そして私は服の袖で頬をこすり、そして両目に溜まった涙を拭き取る。気が付けば私は、思わず泣いてしまっていたようだった。
「ごめんなさい。こんな場所で……」
「いいえ、大丈夫ですよ」
 言って及川美香は、床に直接置いたビニール袋から、買い置きのビールの缶を一つ取り上げ、私に差し出す。
「ありがとう。いただくわ」
 そう言って、私はそれを受け取った。
 私は赤いネイルを付けた人差し指でプルタブを起こす。少しぬるくはなっているが、新しいビールの味が喉に心地良い。
 ――言ってしまった。私は大きな後悔と共に、小さな解放を心の隅に感じ取った。カミングアウトは癒しの一つだと言うが、確かにそうだと私は感じた。
 もっと早くそうしておけば良かったのにとも思ったが、一体こんな秘密をどこの誰にどう話すのか。そう考えれば、今のこのタイミングと言うものは、実にありがたいものだなと密かに思う。
 ――亮。久し振りに呼ぶ、その名前。私はビールの缶を額に当てて、その冷たさに目を閉じる。
 その時だった。私のジーンズパンツのポケットの中で、バイブレーションモードの携帯電話が震え出す。私は一言、「失礼」と言ってそれを取り出せば、表示にはメールの着信と共に、”黒乃道化師”の名前がそこに浮かび上がっていた。
 急いで開ければ、それは先程私の送ったメールへの返事だった。
 写真が一枚、添付されていた。男性二人、女性二人が、どこかの建物の中で記念撮影よろしくピースサインをしている写真。そしてメール本文には、「ただいま、宴会たけなわ!」と言う、彼からの返事が書かれてあった。
 自然に、頬が緩む。向こうはこちらとは違い、楽しいばかりの前夜祭なのだろう。
 そして向こうに写る人数は四人。そしてこちらも総勢四人。つまりは、”輪舞曲-Rondo-”のメンバーが関東と関西合わせて、全員参加と言う事を意味してる、そんな写真だった。
 どうしようか。この事を、今いる皆にも話すべきだろうか。思いながらメール本文をスクロールして行けば、頼みもしていないのに、彼は参加者達のペンネームをそこに載せてくれていた。
「右より、俺。大石政孝さん、阿久根純さんと、虚蝉千尋君。こちらは四人で盛り上がってるよ!」
 ――へぇ、と、私は思った。細い目で微笑んでいる”黒乃道化師”氏は、以前に写真で見たままのイメージで。小難しい文学一辺倒な作品を書く大石政孝さんは普通に中年のオジサン。そして意外にも、青春バンドものな作品を書くのが好きな阿久根純さんは、私生活までロックなファッションに入り浸っているかのような、そんな服装の若い女性。そして、最初は写真で女の子だと間違えてしまった”虚蝉千尋”君は、思っていたよりもずっと幼い男の子だった。
 これで全員と逢えるのね。思いつつ、自動的にこちらのメンバーが、絞れて行くのが判った。
 まず、矢ノ口満氏が”智志”さんである事は判っている。そうすれば必然的に残るのは、大のミステリー好きで知られる、”朔月桜”さん。そしてファンタジーやメルヘンチックな少女作品を書く、”十六夜来羅”さんしかいないと言う事になる。
 そしてなんとなくだが、時々強気な発言をする及川美香が、”朔月桜”さんで、イメージ的には少し違うが、消去法で大西涼が”十六夜来羅”さんではないかと言う結論に達した。
 もちろん今の時点では、どうでもいい事だ。どうせ明け方には向こうへと着く。そうなれば必然的に、全員の自己紹介が改めて行われるだろう。思いながら私は、そのメールを閉じようとした時だ。
 まだ、その下に本文があった。彼はやけに間延びするメールを打つなと思いながらそれをスクロールさせて行けば、そこには信じられない事が書かれてあった。
「尚、朔月桜さんは欠席だそうです。残念だけど、全員参加は無理だったね」
 強い稲光がまた一つ、カーテンを白く染めた。そして私は、痺れる思考で考えた。
 一人、多い。ここに乗っているメンバーは、どうしても一人多い。
 時刻は間もなく、夜の十一時を迎えようとしていた。


【 第四章・及川美香 】

「私、ねぇ。幼馴染を数年前に亡くしてるんです」
 そう言って、及川美香は立ち上がった。そしてそのまま矢ノ口満の横まで行けば、小さな声で、「場所、代わっていただけません?」と、そうささやくのが聞こえた。
 及川美香は、今まで矢ノ口が座っていた椅子に座り直し、「私は、その幼馴染の話をします」と、そう告げた。
「そして”懺悔”は、その後。全部終わってから、私なりの懺悔をしたいと思っています」
 そして及川は、一つ深く大きな溜め息を吐いた。まるで今から話す事こそが、自分の語らなければいけない”懺悔”の序曲のような雰囲気で。
「私の幼馴染は、気の弱い男の子でした」及川は言った。
「随分と面倒見たわ。それこそ幼稚園から高校まで。なんだかずっと彼の姉だったような気分」
 線が細く、その気弱な性格が顔へと滲み出た、そんな柔和な男子だったようだ。
「でも、そんな彼にも彼女が出来たの。――尤も、ただの一度も紹介はしてもらえなかったけどね」
 そして彼は亡くなった。彼が成人を果たし、それから一年後の事だったらしい。
「自殺……でした」及川は、遠い目をしながらそう言った。
「正確に言えば、無理心中。結局ただの一度も紹介してくれなかった彼女だろう人と、飛び込み自殺を図ったみたいなのね」
 ――ドクンと、心臓が高鳴った。また何かが、私の胸中に引っ掛かりを持ったのだ。
「でも私は、そんなの全く信じていない。だって不審な点が多過ぎるもの。彼だって、彼女と逢う日に備えてどこかワクワク、ソワソワしていたし、それに二人の遺体からは、遺書の一つも見付かってはいない。それに、亡くなった場所も変なのよ。どうしてそんな辺鄙な場所を、二人は選んでしまったのか」
 言って及川は、バッグから一冊の小さな手帳を取り出した。そしてそれを開きながら、話を続けた。
「私、彼の両親に無理を言って、彼専用の所有物であるノートパソコンを引き取らせてもらったんです。――もしかしたらこの中に。私はそう思いました。何しろ彼は、携帯電話と言うものを持たない人だったから。従って彼への連絡手段は、いつも自宅の電話かパソコンのフリーメール。――だから、もしも彼が無理心中でないならば、手掛かりはそこにあるんだと思っていたんです」
 そうして彼女は、開いた手帳を私達に見えるようにして、ページを向けた。そしてそこには彼女の手書きだろう文字で、”cheshire cat”と、書かれてあった。
 ビクンと、身体が跳ねるように反応を示した。――チェシャ猫。――亮の使っていたペンネームだった。
「パソコン自体は思った通り、このパスワードで侵入出来ました。でも、どうしても彼のフリーメールだけは開かない。違うパスワードだったんです。――色んなものを試しましたよ。彼の誕生日から、好きな食べ物。彼の趣味に関するもの。思い付くものは全て数字やアルファベットに置き換えて、毎日それを打ち続けました」
 ――開くまで、五年かかりましたよ。及川美香はそう言って、薄く微笑んだ。
「そうして苦労してメールを開き、ようやく判りました。その事件に関する真相の一端が。そして同じサークルのメンバー、”松永秋真”さんが、あなたと亮の間柄に深く関係していた事もね」
 視線は真っ直ぐに、私へと向けられていた。そして――そう、彼女は私に、”亮”と言った。もう間違いはなかった。彼女の幼馴染とは亮の事であり、そして彼女は、私と亮との関係を最初から知っていたのだ。
「あなたと亮とがリアルで逢うと知った彼――”松永秋真”さんは、その出逢いを邪魔しようと企んだ。――だが、それは失敗に終わった。二人は予想以上に意気投合し、その日の夜でさえ一緒に過ごそうとしていた」
 ――そう。まるで二人の間に、時間なんて関係はなかった。最初に逢ったその瞬間から、まるで亮は昔からの恋人だったかのようにさえ思えていた。
「そうして二人は……。背後から彼に押されるままによろめいて、深夜を走る列車に撥ねられた。普通ならば電車なんか来ないような時刻。雨の降る晩、見通しも悪いカーブの線路で、遮断機すらもないそんな場所で、二人は心中に見せ掛けて殺された」
 ――何を言い出したの? 私はたまらず息を飲む。だが、ひりついた喉は唾どころか呼吸すらも難しく、私を多いに困らせた。
「夜の十一時十三分。この路線では終電が走り去った一時間後の時間。ちょうどその場所を走るんです。しかも、まさにこの窓から覗けるその方向に」
 言って及川は立ち上がり、背後にあるカーテンを勢い良く開く。だが、窓に映るのは我々四人が室内の明かりに照らされて、青い表情で見詰め返すそんな光景ばかり。
 突然、室内の明かりが一斉に消えた。私は小さな悲鳴を上げて振り返れば、部屋の入り口ドアの横には、スイッチを操作したのであろう大西涼が立っていた。
「この方が、良く見えるよ」
 言った彼の姿はドアの窓から差し込む通路の明かりで、輪郭ばかりのシルエットにしか見えない。――だが、私はぼんやりと気付いてしまった。その顔、その声、その雰囲気。それはまるで、あの空白の五年と言う歳月を、「生きたまま育った」としか思えない、亮の面影が残るその姿だと。この空白の五年間で、すっかりと忘れ去ってしまっていた、懐かしき彼の顔なのだと。
「来て、井岡さん。そろそろ見えて来るわ。あなたが五年間、ただの一日も忘れなかったであろう記憶の場所。まだあなたの中に鮮烈に残るであろう、忌まわしきその場所よ」
 及川の手が、私の肩を掴む。そして力強く振り向かされると、私の視線は自然、その窓の向こうに広がる田舎の夜の風景へと注がれる。
 雨の雫に邪魔されながら、その風景は私の前で流れて行った。どこか懐かしいその風景。いつかどこかで見たかのような、ノスタルジックを感じる夜の風景。そしてやがて、それは見えた。暗い林をバックに、青白き外灯のともる濡れた石段。そして――。
そこに佇む、一人の男の姿を白い光の外灯が照らし出していた。
「――亮」
 呟けば、彼と私の視線が合った。擦れ違いざま、亮は私の姿をそこへと見付け、あの時と変わらぬ優しい瞳で私を姿を追い掛けていた。
 だがそれは、僅か一瞬だけの事だった。すぐにその姿は闇に紛れ、雨の幕へと隠されて、暗い窓の一部と塗り込められた。
「井岡さん」
 背後から、及川の声が聞こえた。そして私はぼんやりとした口調のまま、「私は、死んだの?」と、聞き返す。
 誰も何も言いはしなかった。重ねて、「私はもう死んでる人間なのね?」と聞き返すが、やはり誰からの返事もない。
「私は死んだ……。私は死んだ……。私はもう既に、五年も前に死んでいた。亮と一緒に……列車に撥ねられ……」
 嗚咽が聞こえた。押し殺す、低い泣き声。そしてそれは――自分自身から発せられる嗚咽だった。
「死んだのね。私がただ、気付けなかっただけなのね。――だから皆、そんな遠回しな嘘の体験談を語って、私に真実を気付かせようとしてたのね」
 膝が震え、私はその場に倒れ込むようにしてひざまずく。
「嘘ばっかり……」私は呟く。
「皆、嘘ばっかり……酷いじゃない。いくら嘘を吐いてもいいゲームだからって、そんな嘘吐かなくたっていいじゃない……」
 手を伸ばす。そして私はそこに垂れ下がる、カーテンの裾を握り締めた。
「私だって、一緒に死ねたら良かったって、ずっと思ってたわ。私だけ生き残るぐらいなら、亮と一緒に死んでしまえていれば良かったと、いつも思っていたわ。――今だって、もしもこれが嘘なんかじゃなくて、本当に私が自分の死に気付いていない亡霊だったなら、どれだけ嬉しいかって――」
 握り締めたカーテンの端が、まるで亮の手のようにすら感じられた。私を支え、引っ張り上げてくれているかのようにしっかりと。
「酷い嘘だわ……。私にぬか喜びなんかさせて」
 窓の外で、夜のしじまを邪魔するかのように鳴り響く、踏み切りの音が通り過ぎた。
 時刻はちょうど、あの夜から五年と二分が過ぎた頃だった。


【 第五章・松永秋真 】

「どこから話そうか」
 そんな及川の言葉に、「真実のみで話してね」と、私は言った。
 既に私達の前には、追加で購入したビールの空き缶が、十本以上も並べられていた。意外にも、矢ノ口が異常なぐらいのうわばみだったせいもあった。
「じゃあ、開いたフリーメールの部分からね」
 及川は言い、そして私は頷いた。
「”19790706”。その数字で、メールのパスワードは通じました。そしてその数字にどんな意味があるのか。開いたメールの数々を見て、ようやく私は理解しました。1979年7月6日。まさにそれは、彼――松永秋真さんの誕生日でした」
 誰もが及川の話に聞き入っている。だがそこには、困惑も、悲痛さもなかった。なんだかまるでその昔にサークルを立ち上げた、同期メンバーの一人の思い出話をしているような、そんな和んだ雰囲気さえあった。
「彼――亮のアカウントは、松永秋真さんから送られて来たメールで一杯でした。それこそサークルの立ち上げた辺りから始まり、後に行くに従って、お互いのメールのやり取りは異常なぐらい。酷い時は一日に二十通ものメールが行き交ってた。傍目に見ても、かなり気持ち悪いぐらい」
 聞いて私は苦笑した。きっと彼女は本気で辟易したのだろうと思えたからだ。
「特に全部は読まなかったわ。だって読んでも意味ないし、そこまでプライバシーに首突っ込もうとは思ってなかったし」
「でも、彼が亡くなる直前のメールは読んだのね?」
 私が聞けば、「そうね」と、彼女は答える。
「彼は、松永秋真さんと逢う約束をしていた。その場所こそは書いてはいなかったけど、きっとそれは電話で連絡済みだったようね。『じゃあ、さっき言った駅で』と、そんな記述があったから」
「ちょ、ちょっと待って!」そこに矢ノ口満が口を挟んだ。
「僕はずっと気になっていたんだけど、亮――あぁ、いや、呼びやすい名前で行こうか。チェシャ猫君は、井岡さんと付き合っていたんだろう? そして松永君の嫉妬によって、彼は殺された。――でもそれって、どう聞いても変だよね? 及川さんの話を聞いているとまるで、松永君の好きだった相手は、井岡さんじゃなくてチェシャ猫君の方だったように思えるよ。なのにどうして松永君は、井岡さんだけを狙わなかったんだい?」
 言われて私は笑った。もちろん同時に、及川美香も笑い声をあげていた。
「私も不思議だったわ。彼が同性愛の趣味を持っているなんて、一度も疑った事はなかった。そして彼自身もハッキリと、『彼女が出来た』と、そう言っていたし。――でも実際は、メールは全て松永秋真さんのもので埋まっている。彼とはしゅっちゅう電話もしていたみたいだしね。でも一番の疑問は、亮が死んだ夜に松永さんと一体何があったのか、よ。メールを読む限りでは、間違いなくその次の夜に、二人で落ち合う約束をしていた。そして亮は一人その地で亡くなり、松永さんも数年間はサークルに出入りをしていなかった」
「なんだよ、女性と心中したって部分は嘘なのか!」
 矢ノ口は叫んだ。そして私達はまた、笑った。
「そうよ。死んだのは亮の方だけ。そして――彼女こそが、”松永秋真”さんその人よ」
 及川美香は、私を見つめ、そう言った。そして私は不審な目で見る矢ノ口満に、「その通りよ」と言わんばかりに頷いてみせた。
「まさか――。あの重苦しい本格推理を書いている、松永君? 君が?」
 指を差してまで言う矢ノ口に、私はもう一度大きく頷く。すると矢ノ口は両手で頭を抱えながら、「信じられない!」と叫んでみせた。
「実際私も、井岡さんに逢うまで気付かなかったわ。まさか松永氏が女性で、そして亮の恋人そのものだったなんてね」
 言われて私は、肩をすくめてみせた。
「だから仕組んだのね? 私が彼を殺した犯人だと思って」
「その通りよ。こうして亮の従兄弟二人に芝居まで打ってもらってね」
 視線は自然に、大西涼へと集まっていた。――サングラスを外した彼は、確かに亮に良く似ていた。でもそれはただ似ていると言うだけの事で、やはり亮本人とは違う人だと感じさせる。未だどこか胸が苦しくなる、そんな容姿を見せてくれる人でしかなかった。
「最初は全然違うシナリオだったのよ。”松永秋真”さんと言えば、いつもいつも誰もがうなるトリックミステリーを書いて来る人だからさ。一筋縄な騙しじゃあ無理だと思って、こうして手の込んだキャストも用意し、暴露させるつもりだったのに」
「俺の弟もボヤいてたよ。何で車で先回りして、あんな奇妙な場所で列車を見送る役なんだってね」
 大西涼は言う。そしてまた、部屋の笑いが巻き起こる。
「大変だったわ。まさか待ち合わせ場所に現れるのが女性だなんて、思いもしなかったから。――だから急遽、計画を変えたの。”松永秋真”さんが女なんだとしたならば、真実はもっと単純なんじゃないかと思って」
「単純で悪かったわね」
 私はおどけた口調でそう言った。
「でもその真実は、私が予想していたよりも、もっとずっと単純だった。あなたに白状させようとしていた事も先にあなた自身から喋り始めるし、実際に信憑性もあった。後に残されている事は、その話が本当に真実であるのかどうかを判断する事。そしてもう一つは、どんなショックを与えてでも、あなたのその傷を癒さなければいけないだろうなって言う事」
「えぇ――ショックだったわ」私は返す。
「忘れよう、忘れようとしながら、いつしか私は本当に忘れていた事がね。――もう本当に忘れてた。亮の命日も、そしてこの路線があの現場に続いていた事も。そして――もう既に、輪郭程度にしか彼を思い出せない事。――あんなに好きだったのに。――あんなに想っていたのに」
 思わずまた、涙が込み上げる。そして私はその酔いに任せたまま、自由に泣いた。
「後悔したわ。何度も何度も。それこそ、夜が来る度に。どうして私はあの時、すぐに救急車を呼ばなかったんだろうかって」
「井岡さん……。判ってるわよ、彼は即死だったって事ぐらい」
「いいえ、生きてた」私は言った。
「かろうじて、生きてたわ。小さな声で私に向かって、『早く逃げて』ってささやくぐらいには」
「……」
 誰も何も言わなかった。誰も私を責めはしなかった。
 きっと矢ノ口を除く二人は知っているのだろう。亮の父親は地方の議員で、もしも息子が不審死で発見されたならば、言われなき罪をかぶせられる危険性もあったであろう事を。
「そう……。最後に『逃げて』って言ったのね。彼らしいわ」
 そんな及川の言葉に私は小さく首を横に振った。
「もう一言、あったの。彼は最後に――」
 最後に彼は私を見つめ、哀しそうな目でこう言った。
「『僕を忘れないで』って」


【 終章 】

 向こうに見える山々の稜線に、うっすらと紫色の筋が滲み始めた。
 あれだけ鬱陶しかった雨は、いつの間にか止んでいた。既にその空には、雨雲らしき片鱗すらなかった。
 結局、最初に酒にダウンした大西涼が下段のベッドで高いびきをかいている以外、他の三人は一睡もしないまま朝を迎えた。まるでその前の晩の寂しさが嘘のように、途絶える事なく喋り続けの翌朝だった。
 もう間もなく、終点のA駅だった。そんな状況でもやはり、「仮眠でも取ろうか」の一言も無く、私達は同窓会の如くに話し続けた。元々は”小説”と言う形態を取って自己主張をするのが得意な人々ばかりなのである。当然話題だって豊富にあるし、事”小説談議”のような話になれば、それは留まる事を知らなかった。
「どうせ今夜もまた、似たような話題で盛り上がるんだろう?」
「どうでもいいけど、今日の予定の観光は悲惨ね。歩きながら寝ちゃうかも」
「そんなの関西勢だって同じよ。ウチら以上に盛り上がって、死んだような顔になってるんじゃない?」
「いいよな、向こうは。きっとのんきな宴会で一夜を明かしてんだぜ」
 口々に言い合い、そして笑った。同時に車内アナウンスが、昨夜と同じような暗い声で、A駅の到着時刻を知らせてくれた。
「ところで……あそこで寝ている大西君は、我が”輪舞曲-Rondo-”のメンバーじゃあないのよね?」
 私が聞けば、及川美香は、「もちろんただのエキストラ」と答える。
「なら必然的に、あなたは”十六夜来羅”さんって事になっちゃうんだよね。そこがどうしても引っ掛かって……」
「あら、私が十六夜じゃあダメなのかしら?」
「まさか! だって十六夜さんの作風は……」
 矢ノ口満が、まさかを強調しながらそう言うと、「どうしてそこで疑問符なのかなぁ?」と、及川は首を傾げる。
「そうですよ。私があの、メルヘンたっぷりな少女趣味作家、”十六夜来羅”です。どうぞよろしく」
「信じられない!」
 矢ノ口は叫んだ。
「失礼ね。じゃあ――こう言えば良かったかしら? 私が”輪舞曲-Rondo-”管理人、内藤霧彦ですって。――くすすっ」
 今度の、「信じられない!」は、私と彼の二人の声が綺麗にハモった。

 最終駅へと停まった列車の中、井岡博美と及川美香は、まだ半分夢うつつな大西涼を抱えるようにして、部屋を出た。
 一人居残った矢ノ口満は、もう一度忘れ物はないかと部屋を点検し、そしてそっと窓を見た。
 向こうには、反対側のホームが見えるだけ。だが矢ノ口はその窓の方を向きながら、どこか寂しいような、それでいて限りなく優しい眼差しで、ゆっくりと微笑んだ。
「――君の事は、誰一人として忘れてなんかいないよ」
 そう言って矢ノ口は、自分のポケットから何かを取り出す。それは、まだ封も切られていない新しいままのガムのケース。昨晩に、井岡博美から譲り受けたものだった。
 矢ノ口は黙ってそれを窓辺へと置けば、まるで誰かに挨拶でもするかのように小さく手を上げ、そして部屋から出て行った。
 無人となった部屋で、小さくカーテンは揺れた。
 窓は閉まり、風が吹き込んで来る筈もないのにカーテンは大きく揺れてふくれあがり、そしてそれがまた何事もなかったかのように治まった頃――。
 窓辺のガムは、手品のように消え失せていた。



《 夜行列車 了 》



【 あとがき 】
どうも。鎖衝です。
事後承諾になりますが、今回の作品中に、MCメンバーの方数人の名前を拝借させていただきました。
あ、いや、事後報告かな? すいません、すいません。(汗(汗
さて、この作品中で語られる事の無かったもう片方のサークルメンバー。
どうしてもそれを書きたかったので、こちらのブログに載せておきます。
『 湖底撈月 -フゥテイ・ラオユエ- 』
http://chainpiercing.blog33.fc2.com/blog-entry-10.html
ちょっとホラーなミステリーですが、良かったらどうぞ。^^

『 上昇既流 』 鎖衝

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