Mistery Circle

2017-08

《 るーぷるーぷるーぷ 》 - 2012.07.08 Sun

2013年度 総合オススメMC 《《 ☆☆☆☆☆☆ 星六つ作品 》》

Mistery Circle Vol. 49 掲載




《 るーぷるーぷるーぷ 》

 著者:rudo








社会? つか世間? まじ…… うざいっ
ほんっと うざい
むかつく

はらたつ
いらつく

不愉快
あー やだやだ。

朝、7時50分。
各駅しか停まらない小さな駅の
幅も狭いホームは
いつにもまして混雑している。

こういう事になる理由はひとつしかない。

電車が遅れているのだ。
そして遅れる理由の大半は
人身事故だ。
まったくいい迷惑だ。
急いでいる時に限ってこれだ。

ムカムカしながら
朝の一連を思い出す。

朝起きた時から今日はろくな日じゃないと
思ったんだ。

なんでこんなにぎりぎり急いでいるかって
それは目覚ましが鳴らなかったせいで
起きるのが遅れたからで
さらに大慌てで部屋を出ようとしたら
ドアがあかない。

なにかが引っかかって開かないのだ。
誰よ? 

人のドアの前に何おいてんのよ?

悪態をつきながらドアをガンガン押して
やっと人一人通れるくらいあけて
覗けばゴミ袋だ。

カッと頭に血が上る。

今日は燃えるゴミの日で
たいがいは前の晩に出すことにしている。

それをときどき思い出したように
 「ゴミは収集日の朝に出してください」
と書いた紙を貼り、戻して来る。

やっているのはゴミ置き場前の家のババアだと思う。
暇さえあればゴミ置き場をカーテンの隙間からうかがって
用もないのにゴミ置き場のまわりをうろうろしたりしている。

ちゃんと出した人間のところに
間違いなく戻して来るところをみると
ゴミを開けて中を確認しているんだろう。

それも気持ち悪い。
だいたいそれってプライバシーの侵害にならないの?

思い出してますます不愉快になってきたところで
楽しそうな忍び笑いが聞こえる。
横目で見るとまだ学生だろうカップルが
いちゃいちゃと何かつつき合いながら話をしていた。

「ゆうちゃんがもたもたしてるから
 悪いんだよ、もう遅刻しちゃうじゃない」

「だからさ 今日はもう講義なんてやめて
 このまま遊びに行こうぜ」

「だあめ」

「それでさ 昼は豪華にヒルトンのランチバイキングしようぜ
 バイト代入ったからおごるよ」

「……えー ほんとお?
 どうしようかなぁ」

むぅむぅむぅむぅむむっかつく。
なにが どうしようかなあ?
なにがランチバイキング?
しかもヒルトン?

ヒルトンのバイキング聞いたことある
たしか3000円くらいする。

ちっ 

「それにしても遅いね」
もうすっかり学校など行く気がなくなった彼女が
甘ったれたような声を出している。

「あー 人身事故らしいよ」

「えーっ朝から自殺?」

「いやあ ほんとに事故じゃないの?
 ホームから落ちたとか
 入ってくる電車に接触したとか……」

「朝から大変だねぇ
 たいしたことないといいねぇ」

ちぃぃぃちちちちちちっちっちっちっ

大変なのはこっちだよっ
冗談じゃないよっ
ホームから落ちた? ふざけんなよっ
入ってくる電車に接触ってなに?

あーもうっ
頭にくる 死ねよっ
死んでいいよっ

そうだよ。
人にこんなに迷惑かけてんだから
たいしたことないなんて許せないっ
死ねっ
死んで詫びろっ

あーいらつくっ

何度も何度も人身事故でを繰り返していたアナウンスが
やっと電車が来ることを告げた時
すでに遅刻は確定した。

乗り換え駅に着いたら電話入れなきゃ。
遅延証明書ももらっとかないと……
あれ?
なんか違和感。

違和感を感じたところにちょうど電車が
パンパンに人を乗せて入ってきた。

この駅で降りる人間はほとんどいない。
ということはこのホームに溢れんばかりにいる人が
さらに乗るということで
当然 乗り切れない人間が出ることになる。

周りを見渡す。

冗談でしょ。
こんな時に こんな状態なのに
ベビーカーを押してる奴がいるっ

朝のラッシュ時に子供を連れていることじたい
おかしいと思うっ

しかもいくら折畳もうとベビーカーなんて
ただでさえ密着する電車の中で
ヨダレ垂らした赤ん坊の顔が目の前にきて
足元に硬いベビーカーがガンガンあたって
これがんーんーとかぐずり出し
泣き出したりしたらと思うと気が狂いそうだ。

そうだよっ
だいたい子供なんて大嫌い。
なんで子供つれて電車なんかのるわけ?
家にいろよっ
朝っぱらからどこ行くんだよっ

そんな話を昼ごはんの時に話題にしていたら
ちょうど子育て中の派遣社員の女が口を挟んできて
子供を好きで朝の時間に電車に乗せる母親はいない
周りのそういう冷たい態度にどれだけ
働く母親が傷ついているか……
ちょっと泣きそうになりながら抗議してきた。

近くの保育園が空いてなくて
電車でいくつか行かなければならないことが多々あるのだそうだ。

みんなはバツの悪い顔をしながら黙った。
ちょっと悪いと思ったらしい。

だけど私はますますムカついた。

なにを偉そうにっ
だったら仕事やめればいいじゃんっ
そうだよっ やめろよ。
迷惑だよっ

そうだそうだっ 迷惑だっ
先週も子供が熱を出したとか言って
保育園から電話がかかってきて早退したんだ。
で 彼女の仕事は私たちに回ってきて
結局その日は残業になったんだよっ

帰りに久しぶりに何か食べていこうって言ってたのにさ。
しかたないから明日に延期しようってことになってさ。
なのに翌日は子供の熱が下がらないから休むだってっ

おかげでその日も彼女の分のしわ寄せで
残業になったんだよっ

子供がいるから
子供が子供が子供が子供が子供が子供が子供が

うわーーーーーーーーーーーーーーつ
むかつくっ

電車のドアは人に押されてなかなかあかない。
やっと開くとドアでせき止められていた人が
支えを失ってホームに押し出されて
あわててまた乗り込もうとする。

今度はそれをこの駅で手ぐすね引いてまっていた乗客が
自分もさっきまで乗ってたんですよみたいな顔して
ぐいぐいねじ込もうとする。

負けてられないので私も思い切り前のくたびれたスーツのオヤジの
背中に体当たりした。
とても乗れそうもない感じだけど
同じことを考えている人たちが後ろからさらにグイグイ押してくるので
じわじわと電車の中に食い込んでいく。

よし、とりえあず乗れそうだ。

「無理なご乗車はおやめください
 次の電車をお待ちください」

駅員が声をからして叫ぶ。
マイク使ってんだからそんな叫ばなくても聞こえるよっ
うるさいっ

うるさいうるさいうるさいっ
次のなんか待ってたら遅刻しちゃうよっ

もう既に遅刻なんだからっ
そうだ電話しなきゃっ
電話もあんまり遅くなるとまずい。
とりあえず一報入れとかないと。

と ドアの方で無理だよとか
なによとか
いたいとか
ざわざわしだした。

すみませんすみませんすみません
消え入りそうなか細い声であやまりながら
だけど態度は全然ゆずらない
中年の図々しいババアのように
ぐいぐいとその自分の立ち位置を確実に広げようとしているその女。

その女の腕には指をテカテカにしてしゃぶっている
赤ん坊とでかいマザーバッグ。

この混みようなのになにげに彼女の周りの
ささやかな空間。

それはその空間のしたにベビーカーがあることを示している。
折りたたんでもSサイズの女が一人たつくらいの場所を占領する
ベビーカー。

いつの間にっ
どうやって乗ったの?
自分の体だけでも入れ込むのに苦労したのにっ

そのせいかどうか
いや私にはそのせい以外考えられないけど
そのせいでドアがなかなか締まらず
周りは降りろよ的空気が漂い
だけどその女は スミマセンを繰り返しながら
ますます奥へと入ろうとしていた。

すると誰かが その女に「大丈夫ですか?」とか
声をかけている。
さらに赤ん坊に「こんでまちゅねぇ」とか
話しかけ誰か席を譲ってあげればいいのにねぇ
なんか言っている。

はあ? どこの偽善者だよ?
ふざけんなよっ
どうしてもその偽善者の顔が見たくて
無理矢理に振り向いたらものすごい加齢臭に吐き気がした。

だあっ
なんだこいつっ
じじいっ
くせーよっ
くるしいよっ
なんの匂いなんだよっ
ほんっと 加齢臭ってなんなの?
なんか昔の整髪料みたいな
タンスにゴンの昔のみたいな……
えーと樟脳?とかいうんだっけ?
体臭であって体臭ではないようなふりをするにおいっ
油臭いっていうか?

分析すればするほどむかつくっ
何しろ密着してるし耐えられず
また無理やりほかに顔を向けると
今度はものすごい化粧品の匂いっ

単品ではいいにおいなのかもしれないけど
あれもこれもでまじって とんでもないにおいっ
香水かけすぎだよっ
いや ファンデーションの匂いかっ
いい匂いとでもおもってんのか?

これだったらまだ加齢臭の方が…
いや 加齢臭は耐えられない。
だけど化粧品の匂いも耐えられない。
まだ浮浪者のにおい……

あれも相当なものだし……

ふと気がつくと電車は動いていない。
あれ?

アナウンスは前が詰まっているので
赤信号のためしばらく停車いたします。
とかいっている。

なにそれ?
この状況でしばらく?
しばらくってどれくらいよ?

あーっもうやだ ほんとやだっ
イライラする。
みんな死んでよっ
死んでいいよっ

爆弾テロでもなんでもいいよっ
ムカつくやつ
今までムカついたやつ
これからムカつくやつ

私の嫌いな奴
あの派遣の女も
その子供も
その旦那も

あの時ひよった同僚も
ホームのカップルも
このクソみたいなおやじも
みんな死ねばいいっ

すれ違いざまに肩がぶつかっても腹が立つ
歩いている前を横切られても腹が立つ
なかなか開かない踏み切りも
そこにどんどんたまっていく人ごみも

駅前の店に入りたくても自転車がずらずらと停めてあって
すぐそこが入り口なのに隙間がなくて入れないっ
その元凶はママちゃりだ。

そうだよっ この世で一番醜い乗り物はママちゃりだ。
重くてでかくて
だいたい乗ってるやつは子育て中で
この世で一番ずうずうしい生き物だ。

この世で一番醜い乗り物に乗った
この世で一番醜い生き物
それは子育て中の女だと思う。

しかも最近は町中ではあきたらず
オフィス街にまで顔を出す。

会社の近くのランチが安くておいしいカフェは
その醜い女たちに占領されて
最近はほとんど入れないっ

あの暇なやつらは何時間でも並んでいるのだ。
私たちは一時間しかないから諦めるしかない。
 
だんだん憎しみで息苦しくなる。
子供のんあ とかんーとか
あのまっすぐの遠慮のない目がいらつくっ

何じろじろ見てんだよっ
見んなよっ
くそがきっ

なんでお前なんかっ
まだ何にも出来ないくせに
うんちもおしっこも垂れ流しのくせに

電車なんか乗ってなにやってんだよっ
家でころがってろよっ

にらみつけていたら子供の顔がゆがんできた。
泣くなよっ
泣いたら殺すっ

泣いたら泣いたら……
 
「ほーら もうすぐ着きますよ
 次の駅は大きいから降りる人も多いからね
 楽になりますよ」

だまれっ ばばあっ
お前の孫か?

5

駅に入り電車は乱暴に停車する。
惰性で人が前後に揺れ、ほとんどお互いに寄りかかりあった人たちが
支えをなくしてよろめく。

私も急に親父がのめるから空間が出来て
数歩たたらを踏む。
こんなに混んでいるのにそんな隙間があるのが信じられない。
つまりはもっともっと人間はぎゅうづめにすることができるってことなんだ。
なんて思ってちょっと感心したところでかぼそい、だけど
しっかりと主張する不愉快な声がした。

「押さないで、こどもがいるんです」

はあ?
周りの人はあわてて子供とそれを抱えた女から
体を離そうと外へとつめる。
なんだと?

4

そこへ駅に着いたアナウンスとともにドアが開いた。
過剰押しつぶされつめられた人間が膨張し
その勢いでホームに押し出される。

ここは乗換駅だから 降りる人間も多い。
降りたくなくてもとりあえず流れるように降りるしかない。

なのにこのドアの場所はスムーズに流れない。
ベビーカーが邪魔だ。

しかもこの女は自分はここでは降りないのだと全身で主張している。
そして濁流の中の巨岩のようにふんばって

「押さないで、子供がいるんですっ つぶれちゃいますっ」

はあ? 振り向いた瞬間担ぎなおそうとゆすったマザーバッグが
私の顔を直撃したっ 

3

て………てめーーーーーっ

なのにこの女はあやまるどころか
私が押したとでもいうようににらみつけてきた。

2

このっ くそっ どけよっ

だめだ我慢できないっ

でも いや、だめだ
私は人間だ。
とにかくここで降りよう
いったんおりて電話して
もう ゆっくりいこう……

そう思ったところを、まだ降りる人がいるに
この女は涎た子供をかかえ
愚鈍なマザーバッグを握りしめ
無骨なベビーカーを引き寄せ
奥へ行こうと逆走してきた。

そしてその乱れた流れの中で
私の携帯が落ちた。

あっと思ったときにはその女の足が画面に乗った。
しかもヒール。
子供連れなのにヒール?
しかもピンヒール?
なんてこと。
まだ 買ったばかりの…

1

そしてそまま私は外へはじき出され
女は奥へともぐりこみ
私のスマホはそのまま他の人にも踏みつけられ
蹴られ……

蹴られ 蹴られ蹴られ蹴られ蹴られ

うわあああああああああっ

カウント 0

私はキレタ。

押し出されたドアに突進し
閉まろうとするドアに半身をつっこみ 

てめーっ 死ねっ
みんなしねっ

どこかで誰かがどなりちらしてる
危険を察知してドアがもう一度あき
駅員が走ってきて

どなりちらしているのが自分だと気づいたとき
私は子供の髪の毛をつかんで力任せに引っ張っていた。

女のきちがいじみた叫び声と
子供の神経に刺さる不愉快な泣き声と
罵る自分の声と

取り押さえられ 
狭くなった視界にドアが閉まり
走り出す電車が見えた。

みんな死ねっ
この世で一番醜い生き物は子育て中の女だっ

死ねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねっ

叫びだした私にひるんで緩んだ手から逃れ
私は醜い生き物と大事なスマホが落ちている走り出した電車に
突進した。

そして死んだのは私だ。

多分死んだ。

「ただいま ○○線 △△駅にて人身事故発生のため
 運転を見合わせております。 お急ぎのところまことに
 申し訳……」

なによっ また人身事故?
まったく一日おきくらいに電車が遅れているだの
とまっているだのって……
人身事故多すぎだよっ
むかつく はらたつっ

ほーんっと腹立つっ

そんな迷惑な奴死んでいいよっ

死ね。





《 るーぷるーぷるーぷ 了 》





すみねこ屋 rudo
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