Mistery Circle

2017-10

《 流し雛 》 - 2012.07.10 Tue

《 流し雛 》

 著者:知







 その話をするということがどれほど難しく、どれほど残酷なことであるか、彼女はよく覚えていたため彼がいくら問い詰めてもただ微笑みを浮かべることしかできなかった。
「……はぁ、話す気がないんだな」
「ごめんね」
「話せない理由についてもか」
「……そうだね……」
 彼の言葉を受け彼女は暫く考えると
「ねぇ、ここらへんに何か見える?」
 そう、彼と彼女が離れて立る丁度中間ぐらいの辺りを指差し聞いた。
「……何も見えないけど?」
 彼は目を細めじっと彼女が指差した辺りを見つめながら彼女の質問にそう返した。
「……うん、そうだよね。だから、私は何も話せない……ううん、こー君は聞かないほうがいいんだよ」
 彼女の事情を知る者からすればこの彼女の言葉は彼が知りたかったことに関するヒントになる物だった。けれど、何も知らない彼がそんなことに気づくはずもなく
「そんな馬鹿げ……」
 つい半歩、彼女に近づいてしまった。
 彼はしまった、という表情を浮かべ、彼女はそんな彼の様子を見、
「今日はここまでだね……こー君ももうこの時間の私と会わないほうがいいと思うよ?」
 そう言うと、きびすを返し走り去っていった。
 彼女の足の速さは異常とも言えるほどであり
「おい、ちょっと待っ……」
 彼が走って追いかけようとしても彼女の姿は周りの暗さも相まって見えなくなっていた。


「ふぅ、もう、大丈夫かな?」
 彼女はそう一息つくと、後ろを振り返り彼が追ってくる気配がないことを確認し、ゆっくりと歩き出した。
「それにしても、こー君、本当にしつこいよね……まぁ、高校生の私がこんな時間に毎日一人で歩いていたら幼馴染として何か言いたくもなる……かな?」
 彼女はそう言うと鞄の中から携帯電話を取り出した。時間を確認すると、条例上、未成年が出歩いてはいけない時間を過ぎていた。
「あーもうこんな時間……少し急ごうかな」
 彼女は時間を確認しそう言うと、少し速く歩き始めた。


「到着~」
 二、三十分後、河口にたどり着いた。
 かなりの距離を歩いたのに彼女は疲れを見せるどころか、寧ろ、歩き始める前よりも元気なように見えるぐらいだ。
「さて、上流の神社に戻らないとね」
 彼女は一息つくとそう言い、目的地へと向かい歩き始めた。
 彼女は毎日、川の上流にある神社から河口まで往復しているのだ。何故、毎日夜遅くにそんなことをいているかというと
「この”厄”の取り扱いも大分、慣れてきたね。今となっては厄を集めた後のほうが集める前より体の調子がいいもんね」
”厄”とは災難やわざわいを意味し、人間の生命や生活の健全と安定をそこなう要因と考えられているもの。
 彼女は普通の人には見えない厄が見え、又、厄を集めることができるのだ。勿論、あまりに大量の厄を集めてしまうと厄に飲まれてしまい、彼女に不幸が襲ってくることになるが。彼女は毎日厄を集め祓っているのだ。
「私に集まる厄の量が増えているね。私が取り扱える厄の量が増えたから、という理由もあるだろうけど……多分、この地方に漂う厄の量が増えている気がする。やはり、私の考えている通りなのかな? だとしらら、もう、私も長くはない……か」

 この地方には稀に厄が見える人が生まれてくる。その人は巫女と呼ばれており、巫女は厄を集め祓う義務を負う。科学が発達した現在でもその習慣は残っていて、彼女は数百年ぶりに生まれた巫女なのだ。
 古くからの伝承に過ぎないと思っていた彼女の両親は彼女が普通の人には見えない厄が見えていると知ったとき、巫女としてではなく普通の女の子として育てようとした。伝承の巫女は全員が短命だったからだ。短命な理由は厄に飲み込まれるからと思われているがそれが正しいのかはわからない。けれど、厄を集めることをしなければ早死にすることはないかもしれないと、両親は考えたのだ。
 彼女も小さいながらも空を漂う黒い物が自分にしか見えていない、私が見えているということを他の人に知られてはいけないと気づいていて、両親以外にそれが見えるということを言ったことはなかった。
 しかし、彼女は年が経つにつれ空を漂う黒い物の量が少しずつではあるが増えていること、増えるに従いこの地方に小さな不幸や災害がの量が増えていることに気づいた。
 そのことに気づいた彼女は地方の上の者に自分には厄が見えるということを伝え、両親には巫女になると伝えた。
 巫女になるという彼女の意思が固いと知った両親は彼女の意思を尊重し、上の者は彼女が厄を集めるための準備――一主な物として、彼女が厄を集めるために歩く上流にある神社から河口までの道を夜間、彼女以外の誰も通れないようにするというもの――を整え、彼女は巫女として活動するようになった。

「……今、私の周りにある厄の量だと、普通の人なら私にどの程度近づいたら災いが起こるんだろうね」
 上流にある神社に向かっている途中で彼女はふとそんなことをつぶやいた。
「巫女になってすぐの頃、巫女が短命なのは伝承の通りの理由からだ、と思っていた。でも、それは違うって数年前に気づいた。だって、巫女になってすぐの頃は私の周りに厄が沢山あると体調が悪かったのに、少しずつそれは良くなっていって数年前からは逆に私の周りに厄が沢山あったほうが体調がよくなったから」
 最初は独り言のようにつぶやいていたが。途中から誰かに語りかけるように彼女は言った。
「そうなると何で巫女は短命なのかって考えて私が出した答え……巫女が完全に人ならざるものになり普通の人から見えなくなった時点で巫女が死んだものと普通の人は扱った、というもの。実際は巫女は長生きで、例えば先代の巫女も最近まで生きていたか、かなり弱ってはいるけれどまだ生きている……違うかな?」
 見えない誰かに尋ねるようにそういうと、目的地である上流の神社へとたどり着いた。
 彼女は一息つくと舞を――厄を祓う舞を踊り始めた。
 見るものを魅了する見事な舞だけれど、観客は誰もいない。ただ、厄を祓うために踊られる舞。けれど、だからこそ素晴らしい舞だった。
「この舞、最初から誰に教わるとなく体が勝手に動いたんだよね。勿論、巫女になってから毎日毎日踊っているからかなり上手にはなったけれど……不思議だよね」
 彼女に集まった厄の殆どを祓い終えると踊るのをやめ、そうつぶやいた。
「……ねぇ、厄神様……私が消えるまで後、どれくらいの時間が残されていますか? 最近になって、今まで気づかなかった貴女様の気配を感じるようになりました。けれど、まだ、貴女様のお姿を拝見するどころかお声を拝聴することもできません。そのときがきたら時間切れ、ということでしょうか?」
 彼女はある一点をまっすぐ見つめそう言った。
「さて、もう、こんな時間。明日も学校があるし帰らないと」
 質問に対する答えが聞こえないことも気にせず、彼女は携帯電話で時間を確認するとそうつぶやき、帰路についた。
 ふと、空を見上げると、夏なのに空はまだ夜で暗かった。





《 流し雛 了 》





【 あとがき 】
色々な意味で習作です。
そのせいで読みづらかったりわかりづらかったりするかも知れません。
いや、わかり辛いのは描写不足が原因かもしれません。短いし。MCが新しくなってから自分の作品の中で一番短いものになったかも……
まぁ、理由はなんにしろ、謝っておきます。

この話を読んでいると、MC50回記念の作品で「あれ?」と思う作品があるかもしれませんが気にしないでください
というか、そもそも、締切に間に合うかかなり微妙orz

【 その他私信 】
8/15締切……ぐはぁ(吐血
仕方ない、ここは締切後に提出するしか(ry


忘れられた丘  矢口みつる(知)
http://wasureraretaoka.blog86.fc2.com/

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