Mistery Circle

2017-11

《 落ちた涙のその価値は 》 - 2012.07.10 Tue

《 落ちた涙のその価値は 》 一作目

 著者:氷桜夕雅








いつでも。何世紀もまえから。悲恋の話なんていくらでもある。
リア王にオセロ、ハムレットで後はマクベスだっけかシェイクスピアの四大悲劇ってのは・・・・まぁ見たことはない。なんていうのだろうかこれは話のネタとしてどこかで使おうと思ってただけだ。
まぁそんなシェイクスピアの話ほどじゃないのかもしれないが今から話すのはそんな俺にとって辛くて悲しい話だ。
「ということで次の曲なんだけど・・・・」
そう言葉を挟んで俺は正面にいる客のほうを見る。ステージ上を無数のスポットライトが照らし、そこにパイプ椅子を置き座る俺を数万の瞳がみつめる。
俺はその瞳をざっと見渡すと軽く息を吐き次の言葉を口にする。
「次の曲をやる前に伝えたい話があるんだ」
俺は意を決して言葉を紡いでいく。
この曲は俺の大好きだった女性───高坂栞のことを歌った唄だということ。
今はちょっと名前をネットで検索すればどっから調べたのか知らないが俺の個人情報なんてあっさりとわかるからここにいる客達の何人かは基礎知識みたいなもんなんだろうが俺は小さい頃施設で育った。
親の顔なんて当然覚えていないし、なんで施設に入れられたのも覚えていない。だけどはっきりと覚えていることが一つだけある。
その時俺とちょうど同じタイミングで施設に来たのが栞だったこと。
栞は・・・・なんていうかぐずでのろまで、要領は悪いしちょっとしたことですぐ怯えて泣くしなんか子供心に面倒臭いと思ったのを覚えている。
けど今になって思えば栞は人との間に壁を作っていたんだと思う。栞は一度も施設に来る前の話をしなかったが塞ぎ込むのに充分な出来事があって施設に来てしばらくは施設の大人達にも同じ境遇の子供達とも距離を取っていた。
それは小さい子供が身を守るために必死に考えた事だったんだろう、脆く弱いその盾を壁に抵抗していたのだろう。
気がつけばそんな施設に馴染めない栞に俺は手を差しのべていた。・・・・文字通り俺が栞の手を引いて皆の輪に入っていったんだ。
『あの時、湊都君が手を握ってくれたの・・・・とっても嬉しかったよ』
大人になってからも栞はあのときの事がよほど嬉しかったのかことあるごとに言ってやがったな。
俺としてはそのときはただ栞が孤立しているのがちょっと可哀想だったからって、その程度のもので特別栞に対して思うことはなかった。
そりゃそうだろう雨の中捨てられた子犬を可哀想と思い助けてやることはあるけども、その犬に恋愛感情抱くか?・・・・っと、これは例えとしては微妙だったか。
ともかくそんときゃまったく栞の事なんざ目にも入ってなかったんだ、それがまぁどうしてこうなったんだろうな。
「まぁここまで言ってしまえばわかるだろう?」
俺は独り言のように呟くと辺りを見渡す。まぁマイクを通して大きくホール中に声は響き渡るんだがな。ああ、ここまで話してれば大方予想はつくだろう、じゃなきゃ栞の話なんてしてはいない。
こう言うのはなんか癪だが俺が栞の事を好きになったのはある出来事が切欠だった。
施設では月に一度、第三の土曜日だけ夜更かしして良いなんて変わった日、“お楽しみ会”があった。
でもまぁ夜更かしして良いって言っても流石にやりたい放題ってわけにもいかない、テレビを見るなんて禁止だったしましてゲームなんて御法度だ。それほど大きくない部屋に押し込められ施設の言うなれば先輩方の話を聞かされるっていう俺としては退屈でつまらない時間なんだがそこでたまに出る先輩はそんな俺の気持ちを察してるのかまではわからないがいつも話もそこそこにギターを演奏してくれていた。
俺が初めてその人の演奏に出会えたのは施設に入って半年ほどの事だっただろうか、何度かあったその名ばかりの“お楽しみ会”に嫌気が差しつつもこれまた手を引いてやった日以来もはや金魚の糞のように俺の後ろをついて回る栞の奴を連れて参加したあの日だ。
『んじゃまぁ話もこれくらいで一曲弾くよ』
“お楽しみ会”に施設の大人はいない、あくまで開催しているのは施設にいる先輩方だ。だけどまぁそれなりに『ちゃんとやるように』って言われているんだろうな、大体出てくる先輩方はその施設での生活の仕方だとかのつまらない話でこの先輩みたいにギターを弾くなんて事やってくれはしなかった。
『へへ、今日は新曲にチャレンジしたんだ』
昼光色の蛍光灯が部屋をオレンジ色に染める部屋で先輩はいつもどこか嬉しそうにギターを構える。
今になって思えば先輩の演奏は下手くそだった、それなりに練習しているんだろうがそもそもチューニングから間違ってるし弦の押さえ方でさえイマイチだ。言うなればなにかに影響を受けてギターをやりだしたけど誰も聞いてくれないから後輩に聞かせてやろうって魂胆だったんだろう。
でもな、そんな下手糞な演奏を俺の隣できちんと体育座りして、目を輝かせて楽しんでる栞がいたんだ。
施設に入ってあんな嬉しそうな栞の姿を見たのは初めてで、その表情に俺は一気に心を惹かれた。
・・・・いや、それは違うか。確かにその栞の表情は俺の心を掴んで離さなかった、けどどちらかと言えば今までずっと俺が面倒みてても笑ったりしてなかったのに、あの下手糞な演奏でこんなにも幸せそうな顔してるのが・・・・気にいらなかった。
俺の方がこいつを幸せにしてやれるんだからなって、そう思ってたんだ。
だから俺はあの時、いつかギターを習って日本一、いや世界一のギタリストになって栞をもっと喜ばせてやる、そう誓った。
・・・・そうさ、依存って言ってしまえばそれまでだが初めから俺は栞が好きだったのさ。
「さぁてそろそろ本題だ、帰るなら今のうちだぜ」
そう言いながら俺はギターの弦を軽く弾く。聞き入っているのか突然の語りに呆れているのか静まり返った客達のいる空間にギターの音色だけが響く。
なにやってるんだろうな俺は、何万人と集まるこのホールで。
チラリと幕外見ればじゃマネージャーが心配そうな顔で「リハーサルと違うじゃないですか!」てな顔してやがる。
だけどな、この曲はただの金儲けのだけの曲じゃないんだ。全部伝えておきたかった、そうじゃなきゃ駄目な曲なんだ。
「・・・・俺は最後まで伝えられなかった、栞の事が好きだって気持ちを」
俺は軽く息を吐いてじっと目を閉じる。今でも思い浮かぶあのときの情景、あいつは抜けてるくせに肝心な所はいっつも俺より先を行きやがる。
『私、湊都君のこと・・・・好きでいてもいいかな?』
中学校の卒業式のことだったか、栞にそう言われた。ったく栞が俺のこと好きだってのはずっとわかってたっての!というか学校中で相当噂になった、競馬のオッズでいえば1.1倍の予想がついてたわ「栞は湊都が好きらしい」ってのはな。
そしてそれは俺も同じだったんだ、でもなにか踏ん切りがつかなかった・・・・そして栞に先を越された。
『いいぜ、俺も別に好きな奴いないし・・・・大体栞振ったら泣きそうだしな』
結局見栄に見栄を張ったそんな言葉しか俺は返せなかった。
付き合い初めてからもずっとそんな調子だ、栞は純粋で素直でいつも俺のことを好きだと小っ恥ずかしくなるくらい口にしていた。
俺はそれにずっと甘えていた、最後の最後まで。
高校を卒業し施設を出ると俺と栞はもう当たり前のように二人で小さなオンボロアパートを借りて住むようになった。
俺は近所の楽器屋でバイトをし、栞はスーパーのレジで働いて・・・・四畳半の小さな部屋でなんていうか貧乏全開な生活だったがそれなりに楽しかった。
定職につかなかったのは俺にはギタリストになるって夢があったから。
とはいえ俺がギターを買ったのは高校を卒業してからだ。施設じゃバイトとかは禁止だったからな、ヤキモキしたよ。言葉にこそしなかったが栞に俺がギターを弾いているところを早く見せてやりたかった。
ま、でもバイトの初任給でギターを買って帰ったときは栞怒ってたけどな。
『もうっ!初任給でたらちょっと豪華なディナーするって言ったのに!湊都君ってばなんの相談もなしにぃ!』
栞はテイクアウトした牛丼屋の豚丼を前に頬を膨らませ怒る。けどその一方で俺がギターを弾くのを心待にしていたらしい、ぶつくさ言いながらも喜んでくれていた。
「さて、そろそろこのノロケ話はいつまで続くんですか?って顔しているよな。残念ながらここからが本番さ」
俺は近くにあった水の入ったペットボトルを手に取ると静かに口に運ぶ。
思ってた以上に冷えていた水が喉元を過ぎると身体から一気に熱を奪っていく。
その冷たさに身を預けながら俺は再びじっと目を閉じる。
あの日のことを鮮明に思い出すように・・・・



「ほいじゃ湊都君、これチューニングお願いね」
「はい、わかりました」
俺は副店長の櫻井さんからギターを受け取り返事をする。
楽器屋での俺の仕事は客から預かったギターのチューニングや弦の張り直しを店の奥でやる文字通り裏方の仕事だ。
というのもまぁ初めは店頭に立って接客やレジ打ちをやらされていたのだがこれがあんまり向いていないようで気がつけば店の奥が定位置になっていた。
だが正直接客は向いてないと自分でもわかっていたしこうやって仕事と言いながらギターを触っていれる方が楽しいので俺には合っていると思う。
音叉を鳴らしながらペグを回しチューニングしていく、いきなりこれをやれと言われたときには面食らったが今ではそれなりになってきていると思う。
「だいぶ上手くなってきたな湊都」
隣で弦を貼り直している店長望月さんがいつもの仏頂面でそんなことを言う。この人がいつも仏頂面なのは今に始まったことじゃない、なんていうのかないっつもこんな感じなんだ。ほりが深くいかつくて偏屈そうに見えるその風体にちょっと初めて会ったときは警戒してしまったが実のところ凄く良い人だ。
なんてったって全くの初心者である俺を雇ってくれただけじゃなく色々とギターについて教えてくれた人だからな。
ま、なりがなりなんでこの人も俺と同じ裏で仕事しているのがメイン、表の接客とかは副店長である櫻井さんがやるってのがこの楽器屋の常となっている。
「そ、そうですか?まぁ毎日やってますからね」
「音叉でやるとな音感が鍛えられるんだ、あれからギターの練習しはしているのか?」
「ええ、もちろん!そっちも毎日練習してますよ!」
俺の言葉に望月さんは顎を擦りながら満足そうに頷く。
「まぁ栞ちゃんみたいなあんだけ可愛い彼女がいれば良い格好もしたくなるよな」
「別に栞は関係ないですよ!俺は純粋にギターが上手くなりたいだけです」
俺は慌てて否定するがそれはもう見え透いた嘘だった。栞がいなきゃギターなんてやりたいなんて思うことなかっただろう。
でも上手くなりたいってのは本当のことだ。馬鹿らしい話だが俺よりもギターの上手い奴が現れたら栞がそいつの方へ行ってしまうんじゃないかって本当に思っていた。
「そうかいそうかい、まぁなんにせよ上手くなるのは良いことだ。今作ってる曲も良い感じだしな」
「な、なんで望月さん俺が曲作ってるの知ってるんですか!」
吹き出しそうになる俺が望月さんを見ると望月さんはこちらを見ることなく真剣な様子でペグを弄っている。
「そりゃ昼休みにずっと練習してるの聞いてるからな。初めは粗削りの原石みたいな酷い曲だったが今は良い曲になってると思うぜ」
「うっ・・・・」
確かに見よう見まねで休憩室で曲を作ってたんだけどそれを聞かれてたと思うと途端に自分のやってたことが恥ずかしくなる。
「なるほどなるほどギターやる奴の動機なんざは大半女の子にモテたいだとか格好つけたいがほとんどなんだが、湊都は女に脇目も振らず真面目な奴だなと俺は感心しているぞ」
「そこに繋がってきますか・・・・」
くっそ、これは完全におちょくられてる気がする。わかってて言ってるだろこの人、俺が栞のためにギター練習しているの。
「ま、あんだけ良い子なら湊都が惚れてギター練習するのもわかるな」
「いやいやいや!俺が栞に惚れてるんじゃなくて栞の奴が俺に惚れてるんですよ!」
「ようは似たようなもんだろ、大切にしろよ」
「わかってますよ・・・・」
そう言いながら笑う望月さんに悪態をつきながら俺は答える。
何気なくかけられた言葉、そして何気なく答えた言葉。けどその「大切にしろよ」って言葉の意味を俺はそのときまったく理解していなかった。



「ありがとうございました~!」
仕事終わり、俺はいつもの牛丼屋の店員の声を背中に聞きながら店の外に出る。
「ほんといつもこれだよな」
なにかたまには違うものをと思いつつも結局はいつもどおり豚丼とサラダのセット、よく飽きないと思う。
「まぁいいか、飽きたら飽きたときだ」
レジ袋を持った手を背中に回し独り言を呟きながら家路へと足を進める。
夕日が町を染める中各々が待つ人のいる家へと帰っていく。それは家族であったり恋人であったりするのだろう。
そりゃ一人で・・・・家に帰っても誰もいない人もいる、けどそれがそのころの自分にはそれは思い浮かばなかった。
俺には栞がいる、それが当たり前で・・・・だから一人になるなんて待っている人がいないなんて考え自体が頭の中になかったんだ。
「しっかし店長に聞かれてたとはなぁ、今度からこっそり練習しよ」
そんなことを呆然と呟きながら歩いていくと程なくして小さなアパートが視界に入る。木造築四十だか五十年の風呂なしキッチンなしトイレは共用、勿論クーラーなんてものは当然ない・・・・そのオンボロアパートの二階、そして角の部屋に俺は視線を移す。
「いるみたいだな、栞」
灯りがついているところからすでに栞が帰ってきているのがわかる。
赤錆一杯の鉄製の階段を一歩一歩上がる。踏み込む度に響く軋む音に「いつか金持ちになって凄い家に住んでやるからな」と思いながら階段を上ると廊下の一番奥、木製の扉を開ける。
「ただいまぁ」
「あっ、湊都君おかえりなさい!」
俺の言葉に栗毛のショートボブにいつものギンガムチェックのワンピースを着た栞が走って俺の元までやってくる。その様子はまるで子猫みたいだ。
どんなに疲れていても、どんなにオンボロのアパートでもこうやって栞に出迎えられるとそんなこと気にならなくなる。
「お仕事お疲れさま、湊都君早くご飯食べよ」
「ああ、そうだな・・・・。って栞なにか嬉しそうだけどなにかあったのか?」
いつもの様子とは少し違う栞の様子にそう尋ねると栞は小首をかしげながら微笑みを浮かべる。
「ふふっ、すぐにわかるよ」
そう言う栞に俺は思わず今日はなにかの記念日か?とじっと考えてみるも一向になにも思い浮かばない。なにかと栞は記念日に五月蝿いからな、やれ出会って何日目記念だとかバイト初めて何日目記念とかともかく記念日が大好きだ。俺は栞以外の女性とは付き合ったことないからわからないけどみんなそうなんだろうか?
まぁなんにせよなにかの記念日だとしても俺はなんにも用意していない、あるとすればいつもの牛丼屋で買ってきた豚丼が二つ、それだけだ。
「あのさ栞・・・・」
なんにせよこの展開なら謝っておいた方が良さそうな気がして先に小さなガラステーブルの前に座ってる栞に声をかける。
「なぁに湊都君?お腹でも痛いの?」
「いやそうじゃなくてだな、今日ってなにか記念日だっけ?栞が妙に嬉しそうだから気になって」
「ふふふっ、なぁんだそんなことかぁ~。えっとね~」
俺の言葉にクスリと笑みを浮かべるとテーブルの下からビニール袋を取り出す。
「今日はね、お惣菜半額のきんぴらごぼうが二つもゲットできたんだよ!」
「は・・・・?嬉しいことってそれだけ?」
心底拍子抜けしながらテーブルの反対側に座ると栞は少し頬を膨らませて反論する。
「それだけって、湊都君は私がどんな想いでこのきんぴらちゃんを手にいれたと思ってるの!レジでチラチラみながら一つ、また一つと無くなっていくお惣菜に私はどれだけ心を痛めたか」
「はいはい、ちゃんと仕事しような栞。ほい、豚丼」
栞の言葉を聞き流しつつ俺はビニール袋から豚丼と割り箸を取り出すとテーブルに置く。
「ちゃんと仕事はしてるよっ!五分に一回くらいお惣菜コーナー見てたけど」
豚丼と割り箸を自分の方へ引き寄せながら小さく言う栞に「それ仕事ホントにしてるのか?」と言いたくなったがあえて言わずビニールに入った割り箸をテーブルに押し付けビニールから箸を取り出す。
「まぁいい、飯食おうぜ」
「うん・・・・そうだね、それじゃ」
『いただきます』
俺と栞の声が重なりいつもの夕飯が始まる。
「でねでね湊都君・・・・今日ね、仕事でね」
テレビもラジオもない部屋で二人っきりだけど栞はお喋りなので退屈はしない。やれ仕事場でこんなことがあったとか、お客さんとこんな話をしたとか俺はそんな栞の話に適当に相槌を打ちながら箸を進める。
全く小さい頃はほとんど俺の後ろに隠れてて施設の人とも全然話さなかったってのに今じゃよく喋る喋る。まぁ良いことなんで気にはしない、俺の方はといえば特に接客とかはしてないで裏でギター弄ってるだけだから特に話すこともない、のだけど
「そういえば・・・・」
「ん?どうしたの湊都君?」
栞が職場の話をしているので思い出した、今日は俺も一つだけ話せる話題ってのがあることに。
「今日さ、店長に俺の曲褒められたんだ」
「えっ本当!?」
俺の言葉に栞の表情がパッと明るくなる。
「ああ、なんか休憩時間に俺が練習しているのを聞いてたみたいで・・・・良い曲だって褒められた」
「うんうん!望月さんに褒められるなんてやっぱり湊都君凄いんだよ!そうとわかったらご飯後すぐに練習だね!」
そう微笑む栞に照れ隠しに「そうだな」とだけ言って俺は残った豚丼を口の中にかき込んだ。



───どれも小さな幸せだった。
家に帰って来れば栞がいて、一緒に食事をして、ギターの話をして、みんな小さな幸せ。



「えへへ、それじゃ褒められた湊都君の曲。今日も私が独り占めだね」
「へいへい」
食事も早々に終わらせ、部屋の電気を消すと二人して頭から布団を被る。
そこは小さな防音室、栞が懐中電灯のボタンを押すと淡いオレンジの電球色が二人の間を照らす。
なにせオンボロアパートだからな、音漏れを気にしてやりだしたことなんだけど効果はおそらくない、がやらないよりかはましと言った感じだ。
だけど俺は・・・・一度も言ったことないがこの空間が好きだった。いい大人の男女二人が部屋を消してやることが電気を消して布団を被ってギター演奏なんて笑ってしまうような話、なんだけどな。
「それじゃ弾くぜ」
「うん!」
目を輝かせ頷く栞から少しだけ視線を逸し俺はギターを弾き始める。正直まだコードの抑え方もなにもかもぎこちなく下手だと思う。けどそんな俺の様子を嬉しそうに聴いてくれる栞が居る。
あの時と一緒だ、施設で栞が先輩のギターを弾いてるのを目を輝かせながら見ていたその視線が今俺に向かっていることが心の底から嬉しかった。
誰にも邪魔されない二人だけの防音室。
この楽しい時間がずっと、永遠に続いてほしいと普段信じもしない神に祈っていた。



───目を逸らしていたわけじゃない、ずっと気がついていた栞への気持ち
いつか言おう、いつか言おう・・・・そう思っていた感謝の言葉と好きだと言う気持ち
俺はこの小さな幸せがずっと続くものだと思っていた、だから恥ずかしさや照れくささに毎回先延ばし先延ばししていた。
結局最期まで・・・・




そんな楽しい時が一瞬で崩れ去ったのは夏の暑い日だった。
「えっ?それは本当ですか!?」
バイトの休憩中に知らない電話番号からかかってきた一報。それはアパートの近くにある大学病院からで栞がスーパーの店先で急に倒れたという連絡。
その時の記憶は今でもよく覚えていない、頭が真っ白になって俺はギターを持ったまま望月さんや他の仕事仲間がなにがあったのかと聞くのも無視して飛び出し、更には猛スピードで走るタクシーの前に飛び出していた、らしい。
病院に着いてからもよくわからないことの連続、栞の担当医師とかいう奴のあまりの意味不明な説明に頭がおかしくなって笑っちまいそうだった。
「栞が何万人に一人の難病だって?」
「ええ、しかもかなりのスピードで病気は進行しているようです、それでですね・・・・」
栞のいる病室の前で聞いた医者の言っていることはさっぱりわからなかった。
剥離だとか解離性だとかよくわからないくっそ長い病名で俺達の住んでいる日本じゃ手術ができなくてしかもそれには何千万とかいう金が必要だとか
正直「は?なにを言っているんだこいつは」って気持ちだった、けど深刻そうに
「すぐにでも手術しないとそう長くは・・・・」
と言った医者の言葉だけは真実を伝えていた。
あまりに唐突で非現実的な話に馬鹿な俺の頭じゃ話も整理できやしない。何万人に一人?そんなのがなんで栞に降りかからなきゃいけないんだ?
栞はこれからもずっと俺の傍にいてくれて一緒にギターを聞いてくれるものだと思っていた。



「あっ、湊都君」
一通り話を聞いて病室に通された俺を出迎えたのはベッドで上半身だけ起こして微笑む栞だった。
現実感なんて湧くわけもなかった、だってそこにいたのは普段と一切変わらない栞の姿だったんだから。
さっきのはなんの冗談だったんだよ、夢なのか?妄想なのか?疲れが見せた幻覚か?そう思わせるほどに普通なんだからな栞は。
「ごめんね湊都君、バイト途中だったでしょ?」
「そんなことどうだっていい!・・・・それでその、冗談だよな?」
冗談であってほしかった、俺を驚かせようと冗談をいっているんだよな?そう思いたかったが珍しく栞が俺から視線を外したのをみて察してしまった。
「ずっと言えなくてごめんなさい」
窓の外を見つめながらそう言った栞の言葉に俺はシーツをぎゅっと握りしめる。
「施設に入れられる前からわかってたんだ。というよりもわかってたから私、施設に入れられちゃったんだと思う。それまではお父さんもお母さんも優しかったもん」
「くっ・・・・!」
つまりは栞の両親は難病がわかった栞を助けるわけでもなく、責め立て施設に捨てたってことか。なるほどそりゃあんなにも怯えて施設にやって来たわけだ栞の奴は。
「栞、こっちむけよ」
「やだよ、だって思い出したら泣けてきちゃったもの」
「いいからっ!」
その両親へと怒りと弱々しい決意を秘め俺は強引に栞の顔を振り向かせる。栞の頬に止めどなく伝う涙を袖で拭うとじっと瞳を見つめる。
「俺が何とかする!だから諦めるな」
手がない訳じゃない、栞は手術をすれば助かるんだ。その言葉は栞にだけではなく自分を奮い立たせる言葉でもあった。
なんとかしたい、いやなんとかする。自分の好きな女の子一人だって救えなくてなにが男だと言うのだ。
「無理だよ湊都君、だって手術にはお金一杯いるんだよ・・・・」
「そんなこと関係ない、俺が栞を助けてやる!」
俺は栞を絶対に見捨てない、絶対に助けてやるんだ。
栞がどんなに諦めようとも俺は絶対に諦めない、そう誓った。



「世の中金じゃないっていうけどさ、結局は金なんだよなぁ」
ギターを引きならし何万といる観衆に言葉を投げ掛ける。
今となっては、いや今でも大金と言えば大金なんだが用意しろと言われたら用意できるだけの金は持っている。
時間も押しているんで先に言ってしまうがあの時、金なんて集まりきらなかった。いや当然だよな、身寄りもないただのバイトの俺が数日で何千万なんて稼げるわけもない。
金があれば俺は、栞は・・・・全然違う人生を歩んでいただろう。もしかしたら今日この場で皆の前にいなかったかもしれない。
だけど因果なもんでさっき言った「世の中結局は金」って言葉、確かにそうなんだが当然金があったとしても栞が戻ってくるわけでもないんだから困った話だよな。
金がないときに金があれば救えた。
でも今、金があっても栞は戻ってこない。
栞が病院で生活するようになってから俺は必死で働いた。というよりそれしかできなかった、角膜でも臓器でもいや俺の身体全部を金に変えれるなら変えたかったがさすがに病院もそこまではやってくれはしない。
結局は今思えば俺にできることは栞のためにギターを弾いてやることだけだったんだ・・・・
けど俺はそれすらも手放そうとしていた。



それは夏の暑い日、俺は一つの決意をして栞を病院の屋上へと連れ出す。
ベッドのシーツが沢山干してる中、バァっと吹いた風に少し伸びた髪を栞が抑える。
「ねぇねぇ湊都君、病院の屋上でなにをするの?というか入っちゃダメだよね、ここ」
「しょうがないだろ、さすがに病室で演奏するわけにはいかないからな」
緑色のネットに背中を預け俺はそう言いながらギターを構える。栞が倒れてから一週間、栞の様子は以前と変わらずいたって健康そうでこれが本当に難病を抱えた人なのかと疑いたくなるくらいだ。
「演奏?それってもしかして」
演奏という言葉にパッと表情を明るくする栞を前に俺は小さくギターの弦を弾き答える。
「ああ、俺の作った曲が完成した」
ギターを買ってからずっと作ってきた曲だ、そして今日これが最初で最後の演奏になる。これがこの演奏が終わったら俺は・・・・
「ねぇねぇ湊都君、携帯で録音してもいい?」
「ああ、いいぜ。それじゃ・・・・」
俺は小さく頷き、ギターを弾く。青い空と白い雲、眩しい太陽の下、目の前には自分の好きな栞がいる。
栞は録音しているのもあるか言葉には出さないけどとても嬉しそうに身体を横に揺らしながら俺の演奏を聞いてくれている。
俺はこの幸せをぐっと心に刻みこむようにしてギターの弦を弾き続けた。




演奏を終えたその日、楽器屋に訪れた俺は一つの提案を店長である望月さんへと投げかけた。それは俺のギターを買ってもらう、という提案。
「本当にいいのか湊都?」
堅物の望月さんが珍しく心配そうな声を上げるが俺の決意は変わらなかった。
「いいんです、ちょっとでも足しにしたいですし・・・・それとも売れないですかねそんなギター」
「いやそういうわけじゃないんだがな、しっかり手入れしてあるし大事に使っているのはよくわかる」
俺のギターを触りながら望月さんは少し寂しそうに言う。本当は俺だって手放したくなかったのだがこうなってしまった以上致し方ない。
「でもギター辞めちまったらそれこそ栞ちゃんが悲しむだろ」
「ええ、でもギターを弾いてても栞が助かるわけじゃないですから」
その言葉が全てだった。ギターを弾いてるだけで栞が助かるっていうのならいくらでも腕が引きちぎれそうになっても弾いてやるさ、でもそんなわけがないのだから少しでも売れるものは売ってしまい何千とする費用の足しにしたかった。
「まぁお前がそこまで言うのなら買った時と同じ値段で買い取るよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「ああ、けどな一つだけ湊都に言っておくことがある」
望月さんはギターを置くとじっとこちらを見つめて少し息を吐く。
「お前のあの曲は人に勇気を与える曲だった、だからこのギターは店先には出さないからまた買いに来い」
「は、はい・・・・」
俺はその時言った望月さんの言葉がよく理解できなかった。俺の曲が人に勇気を与える?それってどういうことだ?俺がギターを弾いてたのはただ栞に見て欲しかっただけ、他の誰かに勇気を与えたかったとかそういうわけじゃないんだ。
ただ栞にそばに居て欲しかっただけなんだからな。

楽器屋を出た俺の足は真っ直ぐ栞のいる病院へと向かっていた。
いつも俺の背中にあったギターは既に無く、その重さのなさにおかしな話だが少し居心地の悪さを感じるほどだ。
「栞の奴、怒るかな・・・・」
ギターを売ったことは当然栞には言ってない、けどこれは栞の為なんだ。俺としてもギターを手放したのは辛いことだったがそれよりも栞を失うことのほうがもっと辛い。
「今日は一日休みだし、ずっと栞のところにいようかな」
流石にこのところ働き詰めで俺の体は悲鳴を上げ始めていた。働き先に迷惑をかけるわけにもいかず楽器屋でも「気持ちはわかるがいい加減休め」と言われたところだ。
本当は俺の体のことなんてどうでもいいから働きたかった、結局家にいたって誰もいないし手持ちぶたさと焦燥感にどうにかなりそうだったからな。
そんなことを思っているといつのまにか俺は病院の前にある公園まで来ていた。
ちょっとした噴水だけのある小さな公園は平日の昼間ということもあって人はまばらだ。そんな普段ならただ通り過ぎるだけの公園なのだが俺はそこでふとベンチに座る男に目が行った。
「なんだ、あいつ・・・・この暑い日に」
普通の人間なら注視することもない、ただ通り過ぎるだけなんだがその男の姿はこの夏の暑い日には似つかわない真っ黒なトレンチコートに同じ色をしたテンガロンハットを被り、その表情は大きなサングラスで隠れよく見えない。
一言で言えば警察に通報されてもおかしくないような変なやつだった。
「・・・・まぁだからといってどうだっていいがな」
変な奴であることには変わりないがそんな奴と関わっているほど俺も暇ではなかった。チラリと俺の視線に気がついたのかそいつは一瞬顔をあげたがすぐにそっぽ向いたので俺は足早にその場を立ち去る。
公園を抜けるとすぐさま茶色い煉瓦のような外壁の建物が見えてくる。ここ一週間で何回来たのだろう、多分あのオンボロアパートに帰るよりもずっと通っている気がする。
栞のいないあの部屋がどれだけ寂しいものか、それはこの一週間で嫌と言うほど理解したつもりだ。
結局俺の帰る場所はあのオンボロアパートじゃなく栞のいる場所なんだとこのとき思い知った気がする。
病院の受付を抜け階段を上がり一番上の三階へと進む、上がってすぐの部屋が栞のいる病室になる。
本来個室なんて金がかかるものだと思ったが栞があまりに難病だったのか特別に用意された部屋だった。と、いえば聞こえは良いのだろうが感染症でないにしろそんな難病の栞をそこいらの入院患者と同じように扱えない、そんなところだと思う。
「栞、入るぞ」
病室の扉を軽くノックして返事も聞かないまま俺は部屋へと入る。
栞はベッドの上で携帯からイヤホンを伸ばし実に楽しそうな様子を見せていた。
「お~い、栞?」
「あっ、きゃっ・・・・み、湊都君!いつからいたの?」
俺の姿に気づき栞は少し恥ずかしそうに頬を染めるとイヤホンを外す。
「いや今来たところだけどどうした?」
「そうなんだ。ちょっと朝湊都君が弾いてくれた曲を聞いてたのさっき看護婦さんに見られちゃってちょっと恥ずかしかったから、また看護婦さんが来たのかと」
照れ臭そうに髪の毛を弄りながら栞はそう言う。そりゃあれだけ楽しそうに、嬉しそうに聞いていれば笑われても仕方ない。
けどそれだけ栞が俺の曲を気に入ってくれているということ、それは嬉しいが少し心苦しくもあった。
「そっかまぁ気に入ってくれたようで俺も嬉しいよ」
そう言いながら俺はベッドの横にある椅子に腰かける。
「うん、湊都君の曲を聞いてると凄く元気が出てくるよ。これね、他の皆にも聞いて欲しいな」
大事そうに携帯を握りしめながら栞は言う。
「いや俺は・・・・」
俺はこの曲は栞にだけ捧げたもので他の誰か、有象無象に聞かせたいと思ったことは一度たりともない。望月さんにだって誉められたものの聞いてほしくなかったと思うくらいなんだからな。
「これ歌詞をつけたらもっと良い曲になると思う、ね?湊都君」
「あっ、いや歌詞とかは・・・・考えてない。つーか俺は歌うとか無理だし」
歌うなんて小っ恥ずかしいことできるわけがない。この曲は栞のことを想って作った曲だ、曲には栞への気持ちを音にして形にしてある。それを言葉なんてはっきりと形にしてしまうとそれは俺の心の扉を全開にして晒し出すようなことと同じ、それを聴くのが栞だけと言うのならまだ、まだ我慢できるが知らない人間に聴かせるなんてこと俺には無理だ。
「そんなことないよ~。実は私ね、少しだけ歌詞考えてみたんだ・・・・だからちょっと弾いて・・・・あれ?」
栞の言葉が止まる。気がついたんだろう、俺がいつも背負っているソレがないことに。
「あれ?湊都君、ギターどうしちゃったの?修理してるの?」
「いや修理なんかしてない」
「じゃあ忘れてきたの?」
「忘れてもない・・・・」
「それじゃあ・・・・」
「売ったんだよ、あのギター!」
必死に聞いてくる栞に俺は堰を切ったように吐き捨てる。
「今日望月さんに売ってきた、少しは治療費の足しになるだろうし」
「駄目だよ湊都君、湊都君はギター弾いてなきゃ」
俺の言葉に栞ははっきりした口調で怒るわけでもなく諭すようにそう言った。もっと激昂するもんだと思ってたから正直その言葉は意外で俺は栞の顔も見れなかった。
「湊都君の曲、私は私以外にも聞いてほしい。とっても良い曲で元気が出るし・・・・こんな所で、私なんかのためにギターを辞めちゃうなんてやだよ」
「ギターを弾いてれば栞の病気が治るんだったらいくらでも弾いてやるよ。けど現実は違う!それにあの曲は他の誰にも聞かせたくない、そんな意図で作ったんじゃない・・・・」
俺がギターを弾いたのは他の誰でもない、栞の為だ
俺が曲を作ったのも、栞の為だ
そして俺がギターを手放すのも、栞の為なんだ
確かに俺の夢はギタリストだ、けどそれは知らない奴等のためにギターを弾く奴じゃない、栞のためだけのギタリストになりたかった。
栞が、栞が居てくれなかったらギターを弾いたって意味がないんだ。
「そっかぁ、それはそれで嬉しいな」
心が熱く、感情的になっている俺に対して栞は冷静だった。病気で苦しんでいるのは栞だ、不安や焦燥に押し潰されそうな筈なのに微塵とそんな様子を見せない。
「でもね、これは湊都君が未来に進むために必要なことだよ。私のことはもういいの、それよりも・・・・」
「いいわけないだろ!!!」
俺は栞の言葉を遮り叫ぶ。
栞がいない世界なんて俺には必要ない、栞が笑ってくれない世界に意味なんてない、栞が側にいてくれない未来なんてどうだっていい。
「湊都君・・・・」
「・・・・ごめん、ちょっと俺疲れているみたいだ、今日は帰るよ

さすがに大声を出しすぎた、驚いた様子を見せる栞の顔もしっかりと見れず俺は小さく謝罪の言葉を告げると踵を返し逃げるように病室を飛び出す。
「くっそ・・・・俺は・・・・っ!」
本当に辛いのは栞なのに俺はいったい何をやっているんだ。


行く宛もなく病院を出た俺はフラフラとした足取りのまま、気がつけば公園へとたどり着いていた。
未だどうしていいかわからない不安感と焦燥感は消えることなく胸の奥で燻っている。
「で、あんたが涙に価値をつけてくれるってのは本当なんだな?」
突然どこからともなくした声になんとなく視線を動かすと病院に来るときに見たあの怪しげな黒いトレンチコートを来た男の
前に高校生だろうか見るからに不良と言わんばかりな金髪にダボダボのズボンを腰まで下げた男がなにやら話しかけていた。
「涙に価値をつける?」
俺の聞き間違いでなければ不良は確かにそう言った。
その言っている意味はよくわからなかったがその怪しい男がケラケラと笑い、大きく頷くのを見て思わず俺は足を止めてしまっていた。
「どこの誰から聞いたか知らないけどその通り、僕が君の涙に価値をつけてそのお金を支払うよ。もしかしてチャレンジャーかな?」
「おう、へへっ・・・・泣くだけで金が貰えるっていうからなぁ」
そう言うと不良はナイフを取りだし制服の袖を捲りあげる。
「本当に貰えるならこれからいじめてるやつ毎日連れてきて金儲けできるぜ」
「ふぅん、なんでもいいけど君はいくら欲しいんだい?」
興味なさそうにその男は言うのを気にせず不良は手に持ったナイフを自らの腕に押し付ける。
「そうだなぁ、まぁ今日は一万ってところか?じゃやるからな!」
正直二人のやり取りに「世の中暇な奴もいるもんだな」と呆れていたがどうしてか俺はその場から離れることができなかった。
「うぉぉぉりやぁ!」
不良は気合いをいれた雄叫びと共に自分の腕をナイフで切りつける。何度も何度も切りつけ十数回切りつけたくらいでその男に切りつけた腕を見せ言い放つ。
「いってぇ、これでどうよ!?涙も出てるし一万円貰えるんだろ?」
「全然、全然駄目だね~それじゃ五円あげるのも億劫になるくらいの駄目さ加減だ」
しかしその男はオーバーに両手をあげるとつまらなそうに呟く。
「な、なんでだよ!!!ちゃんと涙でてるじゃねぇーか」
不良は激昂し詰め寄るが男は平然とした様子で立ち上がることもしない。さもつまらないと言った感じに小さく欠伸をすると不良の顔に指を突きつける。
「だってそれ目薬の涙じゃないか、それにナイフで腕を傷つけたっていっても薄皮ちょっと撫でただけ・・・・本当にやる気あるの?」
嘲笑うように男は言うと座っていたベンチから立ち上がる。今まで座っていたからよくわからないが男の背丈は不良よりもかなり高い、その異様な格好に見下ろされおもわず不良が後ずさったほどだ。
「君が欲しいのは一万円、そう言ったよね?」
男はそう言うと不良の腕を掴み・・・・
「じゃこれくらいはしないと!」
そう言ったその瞬間、静かな公園に木の折れたようなバキという音が響き不良が地面を転がった。一瞬だったが男が不良の手を自らの方へと引き、それと同時に掴んでいた腕の付け根に向かって思いっきり入ったのが見えていた。
「あがががっ!!!!腕が腕があああっ!」
地面をのたうち回りながら不良が腕を抑え叫ぶ。
「腕が!腕が折れたぁぁぁ!痛い痛い痛いっ!」
「おいおい全く騒ぎすぎだよ。男だろ~それくらい我慢しなきゃ、それに骨折れてるんじゃなくて脱臼してるだけだって」
泣き叫ぶ不良に男はそんなことを言いながら呑気な様子で不良の元へ近づいていき・・・・途中で俺と目があった。
その異常な光景にその場を立ち去るべきだったのだが足が動かず、そんな隙もなかった。
そんな恐怖に駆られてる俺に男は白い歯を見せて屈託もなく笑うとこう言った。
「あっ、君もやる?多分ねまだ五千円分くらいの涙しか流せてないんだよねぇ」
「いや!もういい!もうこんなことやりたくねぇ!!」
俺が答えるよりも先に不良が苦悶の表情とともにそう言うと地面を這いずりながら男から逃げようとする。
「ちょっとちょっと、お金も受け取らずに帰るのは無しだよ」
男は不良の前に回り込むとしゃがみこみ脱臼しているその手にお札を握らせようとし、ピタリと動きを止めた。
「ああ、腕外れてるんだっけ・・・・しょうがない、ちょっと痛いぞ~」
相変わらずケラケラと男は笑うと不良の外れた腕を掴み体を押さえると強引に押し込む。
「あががががっ、痛い痛い!!」
「君全然ダメだねぇ、堪え性もないし演技も下手だし・・・・もうそれで立てるだろ~二度と興味本意で僕の前に立たないことだねぇ」
「くっ・・・・こんな割りに合わねぇこと誰がもうやるかよ」
そう言いながらお札を握りしめ去っていく不良を見ていると俺の中で自分でも恐ろしいと思うような考えが頭を過る。
「いやぁ~最近の若いのは根性ないねぇ~」
呑気にそんなことを言ってる男の方を俺はじっと見る。こいつは見た目こそ怪しさ全開で近づきたくない、そんな印象は変わらない。しかしさっきの不良とのやり取りを見てわかったこともある。
こいつは確かに不良に金を渡していた、それは涙の価値というよくわからない基準ではあるが確かな事実。
「あんたはなんでこんなことをしているんだ?」
言うなれば見た目こそ信用できないがこの涙に価値をつけるという行為だけは信用できる。
「単純明快至極簡単な話さ、僕はまぁちょっとした事故のせいで涙が流せない身体なのさ。だから感情が昂るたりしても絶対に涙は流れない。いやぁだから目薬が手放せないよ僕、うん」」
俺の問いに男はトレンチコートについた埃を手で払うとあっさりとそう言う。
「だから涙に執着している。そんなわけで色んな涙を買っているただの金持ちの道楽さ・・・・。君も涙を売ってくれるのかい?」
そう問われて俺は黙って頷く。
「ほほっ、面白いね君。さっきの見ててなお、やろうとするんだからね」
「あんたは怪しい格好はしてるが金の支払いに関しては少なくとも信用できそうだからな。それに今俺には金が必要なんだ」
そう金が、金さえあれば栞を助けられるんだ・・・・そのためだったら悪魔でもこの怪しそうな男でも信じてやる。
「くくっ、いやぁ素直な若者だ。それで君はいくら必要なのかい?」
「一億円、あんたもってるか?」
「ひゃぁ~言うことも大きいね君。いいさいいさ、僕からすれば一億円の価値のある涙を君が流せるというのなら払ってあげるよ」
男は俺の提示した金額に少し驚いた様子を見せたがうんうんと頷くとまた白い歯を見せてケラケラと笑う。俺は確信した、こいつは持っている・・・・本当に一億円を、しかもそれを見ず知らずの俺に払ってもいいと言っている頭のイカれた野郎だ。
「それで君はどうやって一億円分の価値のある涙を流すつもりだい?」
「あそこだ・・・・」
期待混じりにはしゃぐ男の言葉に俺は近くにあるビルを指差す。
「あそこのビルから飛び降りる」
栞のためだったらなんだってやってやる、俺の体がどうなろうともな・・・・




「ええぇ~と、確認したいんだけど本当にやるの君?」
廃ビルの屋上にやってくると男は先程までとはうって変わって妙につまらなそうにそう呟いた。
「なんだよ、今更払うのは無しとかいうのは困るんだが」
屋上のフェンスを越え、縁に立っていた俺はその言葉に振り返る。
「いや払う物は払うよ、けどさぁ君死んだら意味ないじゃん」
「まぁ確かに死んだら意味ないな」
俺はそう言うと再び向き直す。日はすっかり傾き夕陽が橙に世界を染めている、地上までは数十メートルといったところだろうか。落ちたら間違いなくただじゃすまないだろう。
「でも俺だってなにも考えてないわけじゃないさ」
じっと下を見てポツリと呟く。俺の体は確かにどうなってもいい、けど死ぬわけにもいかない。ここで金を貰い栞を救うまではな。
俺は下を見たまま少し視線を動かす。そこにはこのビル街には珍しく大きな木が生えている。だがまぁさすがに大きいとはいえ高さで言えば一番高いところでも地面から数メートルといったところ・・・・俺はそこに向かって跳ぼうと決意していた。
上手くあそこの木に落ちることができれば枝や葉がクッションになって落下のダメージはある程度軽減できるそう踏んでいた。
もちろんだからといって怪我なく済むわけはないだろう、それにそこまで跳べるかも今この震えている足でできるのかどうか自信はない。
「それじゃ行くぜ」
精一杯の強がりと共に俺はフェンスにもたれ掛かり助走の距離を取る。
「僕が言うのもなんだけど、頑張りたまえよ青年」
「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」
俺は意を決して叫びながら地面を蹴り屋上の縁から跳ぶ。
一瞬の浮遊感、そしてすぐに来る引力が俺を地面へと引き摺り落とす。血の気が一気に引き、手がなにもない空を掴む。
「ぐがっ!」
そして次の瞬間、自分の体はなにかにぶつかりその痛みに苦悶の声が漏れる。そしてそれがクッションというにはほぼ遠い最初に跳ぼうと思っていた木の枝の上だと気がついたときには
「くっ、ううううっ・・・・!」
俺の体は地面に叩きつけられていた。全身に今まで感じたことのないような鋭い痛みが走り自然と涙が頬を伝う、だがそれは自分がまだ生きていることを文字通り実感させてくれる痛みだった。
「いやぁ、大丈夫かい君?しっかしまぁ見事に跳んでその程度で済んで良かったねぇ」
いつのまにか俺の前には男が立っていて不適な笑みを浮かべながら俺を見下ろしている。俺を助けるわけでもないその様子に嫌みの一つでも言ってやろうと思ったが体の痛みからそんなことを言える状況でもなく、ただ呆然と仰向けになり奴の顔を見上げることしかできない。
「最近の若者にしては君は、ずいぶんと僕好みのようだね!でもまぁその涙に一億円の価値はないかな」
男はそう言うとコートの内ポケットから札束を取りだし俺の胸へと放り投げる。
「まぁでも君の努力に免じて百万円、その涙に価値をつけよう」
「百万か・・・・」
掠れた声で呟くと俺は札束を握りしめる。百万円、それは今まで手にしたこともない大金であることには間違いないが栞を救うにはまだ全然足りない。
「ありがとうよ、それじゃ後九十九回もやれば・・・・目標達成だ」
ふらつき、体の痛みに耐えながらも立ち上がると俺は男に向かってそう言い放った。
「おいおい、九十九回ってもしかして百回跳ぶっていうのかい?」
俺の言葉に流石に男も驚いた表情を見せる。
「それ以外に一億稼ぐ方法はないからな」
「・・・・残念だけど、それは無理だね」
「はっ・・・・?なんでだよ!まさか払うのが嫌になったとかじゃないんだろうな!」
フラつきながらも俺は男に詰め寄ると男はやれやれと言わんばかりに溜め息をつくと俺の肩に手を乗せる。そんな大した事のない行動、勢いがあったわけでもないのだが
「あぐっ・・・・」
男の手が肩に触れた途端、俺の全身にまるで稲妻が落ちたかのような痛みが走った。
「ほれみたことか、骨とかまではいっていないようだけど相当体にダメージいってるよ、そんな状態で百回も跳ぶなんて無理だね。それに・・・・さっきの百万円は特別報酬みたいなものだよ、同じものをもう一度見せられたところでそれに僕は価値をつけれることはしない」
男の言うことはもっともだ、そんな美味い話・・・・いや百万円貰えただけでも充分に美味しい話だったと思うしか無い。
「なにが君をそう突き動かすのかは知らないが今日は帰りたまえ、そんなに金が欲しければまた今度やればいいじゃないか」
「・・・・そうだな、そうするよ」
自分自身の体の状態に関して言えば自分が一番よくわかっている。確かに今の状態じゃさっきのように跳ぶことなんてできないどころか失敗し死ぬのは確実。
「それじゃあな、また会おう・・・・」
少なくとも今日この涙に価値をつける男に出会えたことだけは喜ぶべきことだろう、俺は振り返ること無く男に別れを告げると家路へと歩き出した。



「ただいま・・・・」
俺は誰も居ないアパートの扉を開けるとポツリと呟く。栞が病院に入院してからというものこの二人で楽しく過ごしていた部屋も今は寂しい空間となってしまっている。
病院に栞の必要な物は全て持って行って俺の荷物のほとんどは金にするために売ってしまった。残ったガラスのテーブルに男から貰った百万円をどんと置くと電気も付けず、倒れこむようにしてフローリングに体を預ける。フローリングの固さと冷たさに全身の痛みが増す気がしたがそんなことも気にせず俺はじっと天井を見つめる。
「これくらいの痛みがなんだ・・・・栞は死にそうなんだぞ」
痛みを堪え自分に言い聞かせる。これくらいの痛み耐えてやる、栞はもっと辛くて苦しい目にあっているんだ。
「栞待ってろよ・・・・必ずお前を助けてやる」
そう誓いながら俺はズボンのポケットに手を入れ携帯電話を取り出そうとする。
結局栞を怒鳴りつけて出てきてしまったからな、ちゃんと謝らないと・・・・そう思ったのだが
「あれ・・・・携帯どこやったんだ?」
ポケットの中をいくら弄ってもどこにも携帯電話はなかった。
「もしかしてどこかで落としたか・・・・」
正直このオンボロアパートに帰ってくるまでもかなり体はふらつき頭がぼうっとしていたのではっきり覚えていない、もしかしたらあの廃ビルから飛び降りた時に落としたのかもしれない。
「・・・・しょうがない、明日探しに行くか」
あるとすればあの廃ビルあたりだろう、ただ時間も時間なので今から探しに行こうという気にはなれなかった。
「ごめんな栞、でも俺は・・・・」
伝えられない栞への謝罪の言葉を呟き俺は目を閉じた。どっと疲れていたのもあってか俺の意識は自分が思っているよりもずっと早く夢の中へと落ちたのだった。



「ぐっ・・・・ぬぅ」
翌朝、いつもより早く目覚めた俺はゆっくりと体を起こす。寝起きは最悪だった、布団も敷かずフローリングで寝たせいもあるがなによりあの廃ビルから飛び降りたことの体へのダメージが回復しきっていなかった。
「だが頑張ればなんとかできるかもしれないんだからな」
テーブルに雑に置かれた百万円の札束を見て呟く。あの涙に価値をつけてくれる奴に今日も会わなければそう思い俺は思い体を無理に起こし病院へ行く準備をする。
「雨、降ってるのか」
外から見える景色は朝だというのに黒い雲に覆われ窓ガラスに小雨があたり歪んで見える。
「そいや携帯、大丈夫かな・・・・まぁたいしたデータも入ってないけど病院に行くついでに探しに行くか」
入ってるデータと言えば栞の電話番号とバイト先の電話番号くらいなのでなくなったとしてもそう気にはならないが流石に連絡する手段がないと不便だ。
俺は靴を履き替えるとビニール傘片手に外へと出た。
「そうだ、栞にケーキの一つでも買っていってやろうかな」
部屋の鍵をかけながら独り言を呟く。
その時はまだ俺を待ち受けていた現実などなにも知らないでいた。



「あそこだと、思ったんだがな」
病院の入り口、傘置き場にビニール傘を畳み突っ込むと俺は思わず愚痴る。
家を出てケーキ屋で栞の好きなマロンケーキを買い、覚えている限りの昨日歩いた場所を遡って歩いてみたが携帯電話は見つからなかった。
「まぁ悪用されないように一応後で携帯会社には連絡しとくかな」
一番怪しいと思った廃ビルになかったので俺としては携帯電話のことはほぼ諦めていた。
病院内は朝ということもあって人はまばらだ。静かな院内を俺は階段を上がり栞のいる病室へと向かう。
「ん・・・・あんたは」
栞の病室の前には昨日の男がいた。黒いトレンチコートに黒いテンガロンハット、サングラスまでして相変わらず怪しさ一杯だ。けどそんなことよりもなんでこいつが栞の病室の前にいるのかそっちの方が俺には気になった。
「ああ、君か。遅かったじゃないか・・・・これ君のだろう?」
男は俺に気がつくと手に持っていた携帯電話を差し出す。それは俺が昨日無くした携帯電話だった。
「昨日廃ビルの下で君が落としたみたいだね、あんまり人の携帯の中身を見たくはなかったけど少し見たよ」
「それは別に構いやしないけど・・・・」
そう言って俺は男から携帯電話を受けとる。
「あれ・・・・」
俺は受け取ったときにはじめて気がついた。男の服装がまるで雨の中を全速力で走ったかのように濡れていたこと。
そして携帯電話を開くとそこには沢山の不在着信と一通のメールがあった。
それはこの病院からの電話で朝からずっと鳴っていたようだった。
───嫌な予感がした。
「謝って済む話じゃないが僕は君を見つけることができなかった、すまない・・・・」
「栞っ!?」
俺は男の言葉にハッとなり栞の病室の戸を勢いよく開ける。
そこに待っていたのは最悪の現実だった。
「嘘、だろ・・・・」
昨日まで元気だったじゃないか、それがなんで急に・・・・
俺は震える足でゆっくりとベッドに横たわる栞に近づく。
白い顔かけなんかしやがって冗談きついのにもほどがあるぞ。
「栞?お前の好きなマロンケーキ買ってきてやったんだぞ、そんな冗談みたいなことしてないでさ・・・・一緒に食べようぜ」
涙で前が見えなくなりながら顔かけを取るとそこにはまるで人形のように白く穏やかな表情の栞がいた。
「僕が病院に来たときまだ彼女は生きていた。少し聞いたよ君のことを、そしてよくわかった君がいや・・・・君と彼女がお互いのことを大切に思っていることを・・・・」
「栞っ・・・・栞ぃ!!」
栞の胸で泣きじゃくる俺に男は大きなジュラルミンケースをテーブルに置くと静かに告げる。
「謝罪というわけではないがここに一億円ある。それは君と彼女の涙の価値として受け取ってくれ」
「今更、今更・・・・そんな金要らないんだよ!!!栞を、栞を返してくれよ!!生き返してくれよ!!!」
俺は激昂し男の服を掴むと壁に力一杯押し付ける。
「あいにくとそうしてあげたいのは僕だって同じだ。けど僕はおとぎ話の魔法使いでもなんでもないのさ、それにこの金は彼女の想いでもある。君の携帯に一通メールが届いていただろう?彼女からだよ」
「栞から・・・・」
「僕は彼女の言葉は直接言った方がいいと思って君を探したんだけど間に合わなかったんだよ」
男の悔しそうな言葉に俺は掴んでいた手を離し携帯電話を開く。確かに一件、今朝の話だ栞からの未読メールがあった。
俺は震える手でメールの開封ボタンを押す。飛び込んできた文章に俺は涙が止まらなかった。


『だいすきな みなとくんへ』

私は、湊都君のことが大好きです。
ちっちゃい頃からよく言ってたよね
でも湊都君は私のこと好きなのかな?
いつも私ばっかり好きって言ってて湊都君は
ぜーんぜん好きって言ってくれないから時々
わかんなくなっちゃう、なんてね

えっとそれで湊都君、昨日はごめんなさい。
私のために色々頑張ってくれてるのに冷たいこと言ってごめんなさい。
ちょっと私、自信なくなっちゃってた・・・・ダメだよね。
でもね、本当の事言うね?怒らないでね?
私はやっぱり湊都君にずっとギターを弾いていてほしいです。
湊都君が私の手を引いてくれたときのように、湊都君の曲で辛い気持ちを抱えている誰かを助けてあげてください
湊都君は気づいてないかもしれないけどこれって凄いことなんだよ!
その話をね、湊都君の携帯電話を拾ってくれた人に話したら私なんか泣いてたみたいでその涙に価値をつけてくれたんだ。
変な人とは思ったけど貰っちゃったしそのお金、私にはもったいないから湊都君にあげるね。
それでまたギターを買って湊都君の曲聞かせて欲しいな、そうしたらね病気なんてどっかいっちゃうと思うから

大好きな湊都君へ、またメールするね





「ま、そういうわけで俺の話は終わりだ。だからこの曲は・・・・」
今でも栞にだけ聞いて欲しい曲だ。少なくともここにいる何万人の観客に聞かせるためのものじゃない。
けど、けどな・・・・今俺がこうやってギタリストとして何万人といる観客を前にギターを弾くようになったのは栞のお陰だ。
『湊都君の曲、私は私以外にも聞いてほしい。とっても良い曲で元気が出るし・・・・』
栞はそう言った。そしてそれが栞の想いだから、俺は再びギターを手にした。
「だからこの曲は!今でもこの曲はお前らに聞かせる曲じゃねぇ!天国にいる栞へ送る歌だ!!栞!!俺は今でもお前のことが大好きだぁ!!!」
俺は叫びギターをかき鳴らす。
それを女々しいだの過去に囚われてるなんて笑う奴がいるなら笑えばいい。
俺はこれからもこの曲を弾き続けるだろう、それは・・・・
栞と出会ったときの気持ち、一緒に語り合ったときの気持ち、
栞のことを好きだって気持ち、そして栞を失ったときの気持ち
その全ての気持ちをたぶん、わすれないために。





《 落ちた涙のその価値は 了 》





【 あとがき 】
もう三本書くとか
言わないよ
絶対~♪

はい、いつもいつも自分の作品を駄作と言ってきましたが今回途中までは自信作でした、書き終わってまぁ結果はいつも通りでしたけど
いやだって大体自分で自信作言った作品の評価に限って評価低いからね、予防線予防線
酒を飲まずに書いてたせいか、はたまたただ涙もろいせいか後半泣きながら書いてたので次はお酒を飲んで書こうと思います、まる

【 その他私信 】
しおりandみなと おんすてーじ☆ミ

湊都「にゃんでだろ~にゃんでだろ~にゃんでだにゃんでだろ~♪」
栞「にゃんでだろ~♪ヽ(´▽`)/」
ジャジャジャジャン!

湊都「おすすめカクテルは一つしか書いてないのに原稿三本書くことになってるのにゃんでだろ~♪」
栞「にゃんでだろ~♪ヽ(´▽`)/」

湊都「三本書くことが決まって必死に話考えてたら某カボチャに『記念MC落とす人多そうなのでもう一本書いて』言われたのにゃんでだろ~♪」
栞「にゃんでだろ~♪ヽ(´▽`)/」

湊都「Twitterで『後書きのネタは大衆に受けるネタにしてます!』と言ったくせに何故かこのネタなのにゃんでだろ~♪」
栞「にゃんでだろ~♪ヽ(´▽`)/」

湊都「にゃんでだ、にゃんでだ」

栞「にゃんでだ~♪ヽ(´▽`)/」
栞・湊都「にゃんでだろ~♪」


【 お題当てクイズ回答 】
わかりませーん\(^o^)/


べ、べつに好きで書いてるわけじゃないんだからね!  氷桜夕雅
http://maid3a.blog.shinobi.jp/

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