Mistery Circle

2017-05

《 幽霊 》 - 2012.07.16 Mon

《 幽霊 》

 著者:ろく








恋人の寝息を聞いているのが心地良い僕はきっと変態なのだろう。
まー、変態でも構わない。耳を澄まし意識を集中する。
おや?止んだ。
どうやら気配に気づかれてしまったらしい。
まったくもって彼女は野生の勘が鋭いから参ってしまう。
『ヘイ!マイスイートハニー!今日も世界一愛しているぜ!』
『ヘイ!マイスイートダーリン!私よ!ってアンタ本当に馬鹿じゃないの?朝っぱらからそのテンションとか本当に……。馬鹿も休み休み言ってよ!』
『馬鹿も休み休みか、馬鹿が休んだらどいうことになるんだろう。』
いつもの調子……、いつもよりちょっとふざけた調子で朝が始まった。
というのも、これには理由がある。
『にしても昨日のこと……。』
『忘れよう、気にしないようにってのも無理だよな。実際あれは鮮明に見えてしまったんだし。ちょっと朝調べたんだけど、どうやらそこはかなり有名な心霊スポットらしい。』
『そうなんだ。あれはやっぱり幽霊ってことなのね。そう思いたくは無いけど。でも幽霊って科学的に考えると存在しないんでしょ?』
『うーん。科学が全てでは無いよ。科学的にはありえないからって存在しないとは限らないと思う。確かに人の意思は別に特別な物じゃなく必然的に起こる物理現象で、それが魂だなんて考えるのは現実的では無いね。』
『でも、結構目撃情報があるし、日本と全然離れたヨーロッパなんかにも幽霊って存在あうるんでしょ?』
『詳しくは知らないけど、らしいね。あえて無理矢理幽霊の存在を肯定してみるとするとしたら。人間より遥かに高度な生命体が人間を哀れんで、救済の為に人間の人格をスキャンして無念を晴らさせてやるとか。本当無理矢理だけど。晴らさせるだけなら見える意味は無いから。存在が見えているというより晴らさせるという目的の為に見せているという考え方の方がまだ現実的だけど。』
『本当ご都合主義でありえないってことね。まー、妄想の可能性の方が高そうね。』
『まー、そういうこと。』
表情からするに彼女が安心したようだ。
不安の表情もしおらしくて可愛と思った、そんな僕は変態なのだろう。
でも、そのままにして楽しむほど鬼畜ではない。
変態ではあるけどあくまで紳士、そうさ変態紳士なのさ。
僕は再びベットに戻って彼女とじゃれあった。
彼女の声、匂い、顔、体が全て愛おしい。



ある日のことである。
昼休みに彼女から電話がかかってきた。
『相談したいことがあるんだけど、悪いけど今日は仕事が終わったらすぐ帰ってきて欲しいの。』
『うん分かった。』
電話越しの彼女の声は不安に満ちていた
あえてどういう内容かは聞かなかった。。
仕事が終わると僕らのアパートに直行した。
出迎えた彼女の顔は予想通り不安に満ちていた。
深刻な病気にでもなったのだろうか?
その顔を見た僕は不安になった。
『その、できちゃったの。』
『ありがとう。』
『ん?』
『僕の子供を生んでくれるんだろう?』
『そう、良かった。気に病むことも無かったわね。』
『そう、決まってるじゃないか。君の早合点のせいで仕事に手もつかなかった。確かにまだ僕らは結婚もしていないけど答えは決まってる。』
僕にとってあの時が最高の幸せだった。



ある日のことである。
昼休みに彼女から電話がかかってきた。
『話したいことがあるんだけど、悪いけど今日は仕事が終わったらすぐ帰ってきて欲しいの。』
『うん分かった。』
電話越しの彼女の声は不安に満ちているようだった。
前にこんなことがあったな。
きっと何かの冗談だろう。
妊娠して彼女がそんなことを言うなんて性質が悪すぎる。
冗談だったら、汚い言葉で罵倒していじめてあげようか。
そんな馬鹿なことを考えながらも、若干不安は残る。
出迎えた顔は蒼白だった。
『その、私長くないみたいなの。』
『え?』
『ごめんなさい。』
『冗談だよね?』
つい口に出てしまった。
『そんな性質の悪い冗談言うわけ無いでしょ……。』
性質の悪い冗談であって欲しかった。
『別に僕にあやまる必要性は無いけど、何かの間違いだよね?もう一度検査に行こう!』
僕は激しく動揺していた。
再度検査をした結果最悪なことに間違いないようだ。
『ごめんなさい。』
『だから謝らなくていいよ。一番つらいのは……。』
『ううん。そういうことじゃなくて、あなたの子供生めそうに無いこと。』
『子供は確かに欲しいけど、気にしなくて良い。気にせずにとにかくちょっとでも長く生きてよ。お願いだから。無茶を言ってるのかも知れないけど。』
『ごめん。うん、分かった。』

幸か不幸か彼女の辛く厳しい闘病生活は長く続いた。
長く生きてと言った僕の願いを彼女への呪いになってしまったのか。
少しの後悔を残しつつも、彼女が長く生きていることには僕にとっては幸いなことだ。
僕はなんて強欲なんだろう。
彼女は僕の強い反対を押し切り、病床の中子供を生んだ。
『ありがとう。』
『私頑張ったでしょ?そして、これからもっと頑張らないと。お母さんにもなったんだし。』
『うん。そうだね。』
奇跡は起きた、そして奇跡はこれからも続くものだと思った。
その夜彼女の容態は急変した。
『もっと頑張るって言ったじゃないか!子供を一緒に育てるんだろ?君が居ないと困るよ。』
『ごめん。』
『許さない。約束は守ってよ。』
『ごめん。でもお別れが近いみたい。』
『許さない。何よりも僕をこんなに好きにさせておいて先に死ぬなんて酷いよ!』
『本当にごめん。』
『化けて出てきて、僕君に酷いこと沢山言ったし、長く生きてなんて言ったし君を一杯苦しめた。幽霊はやっぱ居るよ。』
『うん。分かった。』
それが最後の言葉だった。



『お父さんまた窓を見ているの?ぼうっとして。しっかりしてよ。』
娘がそう言った。
『うん。そうだね。』
僕には彼女の姿が見えている。
鮮明に。
幽霊は確かに居る。
あの日僕らが見たのは間違いなく幽霊だった。





《 幽霊 了 》





【 あとがき 】
恋愛小説は難しいですね。
とある漫画の影響で、幽霊って居た方が夢があるよなって思い始めてそれがもろに出た内容になりました。


夢見る頃を過ぎても  ろく
http://liketearsinrain.blog39.fc2.com/

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