Mistery Circle

2017-10

《 Vault that borderline 》 - 2012.07.20 Fri


 著者:知







「――やってくれたな、魔法使いめ!」
 息も絶え絶えにそう言う剣士に
「あら、『魔法使い』の城に攻め込んできておいてそんな台詞を言うなんて甘いと言うしかないわね。その甘さの代償は貴方の命で頂くわ」
 私はそう言い残すと剣士にかけている魔法の威力を強め圧死させた。
「はぁ……虚しい」
 思わずそんな言葉が口から漏れてしまった。
 私がこの地に城を構えてからそろそろ一年になる。
 細かい変化はあるけれど私が期待した変化はまだ訪れない。中央の動きは次第に激しくなってきた。このままだと徒に死体が積み重ねられていくだけ。
 中央の命に従いここに来た者に対し慈悲を与える気はさらさらないけれど……
「……」
 そんな事を考えていると私の袖を引っ張る感触がした。
「ああ、ごめんなさい。心配かけたわね……大丈夫よ。大丈夫」
 私はそういうと安心させるように微笑みかけるとふさふさな毛が生えている頭をなでる。
「あなたにも心配をかけたわね」
 頭をなでながら私の後ろに立っている存在にそう声をかけると
「……姐さんには俺達獣人と違い人間と争うことに色々思うところがあるだろうからな」
 と、ぶっきら棒な声とは裏腹な言葉が返ってきた。
「俺達獣人……ね。少し前のあなただったら出てくるとは思えない言葉ね」
 私がそう言うと猿型の獣人である彼は困ったように頬をかいた。
『獣人』とひとくくりで言っても様々な型の獣人がいる。型によって仲のいい悪いがあり、私が今頭を撫でている犬型の彼と私の後ろに立っている猿型の彼は種族的には正に犬猿の仲。
 そう、そんな彼らであっても話し合い、時に争い、その中で境界線を見つけその境界線を互いに守れば無駄な争いはなくなる。種族全体ではなく個人の間柄なら絆を深めることもできる。そう、できるはず……なんだ。
 頭を撫でるのをやめ猿型の彼の方に振り返ると怪我をしていることに気づいた。
「あら、怪我しているじゃない。流石に連戦が続くとあなたでも怪我を負ってしまうわね」
 そう言って怪我をしている箇所に触れようとすると
「……姐さんの方が色々大変なんだ。これぐらいの怪我に構うことはない」
 そういい、一歩後ろに下がった。
「そうね。でも、今の戦いは私たちのためではなく私のため――いえ、私の我が儘の戦いだわ。私の考えに賛同して無謀とも言える行動についてきてくれたあなたたちをこんな段階で失うわけにはいかないの。争いだから志半ばで失うことになるかもしれない。でも、それが今であってはいけないわ」
「……相変わらず強情な人だ」
 彼がそう肩を竦めそう言うと
「それはお互い様、でしょ?」
 私は微笑みながらそう返し彼の傷に触ろうとすると
「ぐるるるるるるる」
 唸る声が聞こえ後ろを振り返ると毛を逆立て唸っている犬型の彼がいた。
「侵入者……今日これで何組目かしら」
「……姐さんがまだ話せもしない犬を連れてきたときは何故こんな幼い子を、と思ったが……気配察知に関しては一線級だな、本当に」
 彼はそういうとよくやったというように頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振った。
「……子どもというのは種族が違っても可愛いもの、だな」
 仕掛けが発動した音がすると撫でていた手を止め犬型の彼に隠れているようにと言うと、改めて気合を入れなおしたという表情で言った。
「ええ、本当にね」
 もう少し待って進展がなさそうなら無理矢理にでも動くしかない、そう覚悟を決め私は侵入者の登場を待ち構えた。


「よくきたわね、人間」
 私がそう声をかけると急に別の部屋に飛ばされて戸惑っていた人間たちが身構えた。
 その様子を見、急造のパーティではないことがわかった。各々の強さも一定以上のレベルは超えているようだ。
 久しぶりに当たりがきた? その前に後一つ確認をしないと……
「それにしても今日は千客万来ね。ねぇ、人間は自分の命を粗末に扱うのが好きなのかしら?」
 私がそう言うと部屋のあちらこちらに死体が転がっていることに気づき警戒心を強めた。
 これは当たりね。隣に立っている彼の方を見ると私の視線に気づいたのか軽く肯いた。
「さぁ、自分の命を粗末に扱いたいのなら、かかってきなさい」
 私はそう言うと魔力を高め戦闘体勢に入ると人間たちも身構えた。
 さて、どう攻めてくるのかしら? ある程度の実力があれば私が魔力を高めたことで決して敵わない相手だということは理解できるはず。
 そんなことを考えながら待ち構えていたのだけれど、一向に攻めてくる気配が感じられない。
 ……何かを待っている? 一体、何を?
 一分近く互いが身構えている状況が続いただろうか、このままでは埒が明かない、そう思い声をかけようとしたとき
「互いに戦闘体勢に入ってから一分半……約束の時間が過ぎましたし、私のしたい通りにさせていただきますね」
 そう言いながら一人の女性――まだ、二十歳ぐらいだろうか――が前に出てきて
「初めまして。今日はあなたと争うためにここに来たのではなく、話をするために来ました」
 私にそう話しかけてきた。
「私と? 酔狂な人間がいるものね」
「そうでしょうか?」
 私がそう皮肉をこめた言葉を気にする素振りも見せず微笑みながら小首を傾げたその瞬間、彼女の長い黒髪に隠れていたイヤリングが見えた。
 なるほど……これは当たり所ではなかったということね。
「変わった人間がいるものね。いいわ、私とどういう話をしにきたのかしら?」
「話というより尋ねに来たと言うほうが正解かもしれませんね――あなたは何者か、それを知りたくてきました」
「私が何者か知りたくて、ね……あなたの中では私に会った瞬間もう答えは出ているでしょうに……」
 私たちがそう言葉を交わし合っていると
「ちょ、ちょっと待ってくれ、ちゃんと説明してくれないか?」
 と、剣士の男がそう口を挟んできた。
「あら、仲間には全く教えないでここまできたの?」
 何も教えないでよく仲間がついてきたものだ。
「あなたに直接会うまで私の中でも五分五分でしたので。もし、違ったら徒に混乱させるだけですから」
 彼女はそう言うと仲間達の方へ振り返り
「そうですね……皆さんは、彼女が何者に見えますか?」
「何者って魔法使いじゃないのか?」
 術使いの男が彼女の言葉にそう返した。
「確かに彼女には『魔法使い」の特徴である『黒い羽』がありますからね。では、術使いであるあなたに問いますが、魔法使いと術使いの違いを知っていますか?」
「魔人か人間か、じゃないのか?」
 彼女の問に術使いの男がそう答えると
「はい、そうですね。そして、魔人と人間の違いは闇の力を使うか否か……闇の力は人間には使えない、そう言われていますね。闇の力を使う彼女は『魔法使い』そう考えるのが当たり前です……けれど」
 そこで一呼吸置き私の方をちらと見、
「最初に疑問に感じたのは彼女が何故この場所に城を作ったのか、ということでした。彼女は人間を滅ぼすため、その拠点としてこの城を作ったというように言われていますが、そうだとしたら不可解な点があります」
「不可解な点?」
「はい。先ず一つ目。何故、この場所に城を作ったのかということ。人間を滅ぼすというなら最低限中央を攻める必要があります。ですが、この場所は中央から遠すぎる」
「……あまり中央に近い場所だと城を作るのに色々手間がかかるから、じゃないのか?」
 彼女の言葉に術使いの男がそう返し、彼女はその言葉に肯き
「そう考えるのが当たり前、ですよね。では、疑問点二つ目。人間を滅ぼすというなら彼女が城を作ってからもう一年になろうとするのに全く攻めにこないのは何故? ということです。戦力を整えている? ありえません。彼女は一人でも十分に中央を攻める力を持っています。実際、トップクラスの実力を持つ冒険者が城に攻めて返り討ちにあっていますしね。それに、もし、本当に人間を滅ぼすつもりなら戦力を整えてから事を構えるのが普通じゃないですか? それに、中央もおかしいのです」
「中央が?」
「こんな辺鄙な場所に城を作ったというのにそれを最初に発見したのは近くの住人ではなく中央の人間という点。そして、彼女たちは攻めてくるどころか一度も城の外にすら出ていないのに中央が討伐の依頼を冒険者に出している点」
「確かに腰が重いと揶揄される中央にしてはおかしいな。この場所に何かあるのか?」
 彼女の言葉を受け、剣士の男がそうつぶやいた。
「正確には重要な何かがある場所、そこに行くにはこの場所を通るしかないようです。ただ、その重要な何かの正体は中央に属しているとはいえ下っ端の私には判明しませんでしたが……ただ、私は城が偶然にこの場所に作られたのではない、そう感じ色々と調べていく中で彼女の正体に気づきました」
 彼女はそう言うと私の方に振り返り、彼女の仲間たちも私の方へ視線を向けた。
「細かい説明は省略しますが、最初に分かったのは彼女が魔人ではなく人間だと言う事でした。彼女が人間だという証拠は彼女自身が色々残しています。気づける人は気づけるというような物ですが」
「ええ、正解。私は人間よ。そうね分かりやすい証拠、見せましょうか」
 私はそう言うと背に生えている『黒い羽』を消し
「……こちらに切り替えるの久しぶりね」
 今度は『白い羽』を背に生やした。
 これは力の強い術使いである証拠。彼女以外の人間は信じられないものを見たというように呆然としている。
「なるほど切り替えできるのですね……闇の力をどのように手にしたのか気になるところではありますが今は置いておきましょう。そして、彼女が人間であるということがわかって次の疑問が生じました。下っ端とはいえ私は中央の人間……それなのに知らない事を何故彼女は知っているのか。ただ漫然とこの場所が中央にとって重要だからという理由ではなく何故重要な場所なのかということを知ってこの場所に城を作った。彼女の行動からそう見えました。だとしたら、理由は簡単……私のように下っ端ではなく上に属する人間だから……」
 そう言うと彼女は続きを話すべきが戸惑うような素振りを見せた。
「そこまで……なわけがないわよね。私の名前まで分かっているんでしょ?」
「……はい。上に属していて闇の力の研究をしていたことがあり、又、この数年で行方不明又は死亡となっている人物。そんな人は一人しか該当しませんから……聖女カナエ様」
 私の名前を彼女が呼んだ瞬間
「聖女カナエは死んだはずでは」
 今まで一度も話さなかった巫女がそう叫ぶように言った。
「正確には死亡扱いですね。葬儀は行いましたが遺体はありませんでしたから」
 その言葉を受け巫女は完全に言葉を失った。
「よくそこまで調べることができたわね。いくら中央の人間――『中央の巫女』とはいえ極秘扱いの情報は手に入らないでしょうに」
 私がそう言うと彼女の仲間たちが驚いたように彼女を見た。仲間にも『中央の巫女』であることは隠していたか。
「……流石……いえ、私には知らない『中央の巫女』である証拠があるのですね」
 何かに気づいたようにそう彼女が言った。
「このレベルの『巫女の勘』を持つのに下っ端なのね。色々、変わったみたいね……一つ質問していいかしら?」
「はい、なんでしょうか?」
「もし、私が素直に人間だと言う事や聖女カナエであることを認めなくそう考えるようになった理由を問われたらどう答えるつもりだったの?」
「そうですね……『女の勘』と答えてあなたの反応を見たと思います」
「そうでしょうね……そして、そう返されたら何も言い返せる気がしないわね」
 私と彼女しか分からない会話をしてしまった。彼女の仲間たちは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしながら私たちの会話を聞いていた。
「『巫女の勘』……ただの勘ではなく予知予言と言っても過言ではないわ。中央の巫女は全員がこれを持っていてその素質があるから中央に属することができる。ただ、意図して勘を働かせることはできないけれど。これ以上の事は知るべきではないから説明はしないでおくわ。中央に命を狙われたくないでしょ?」
『巫女の勘』に関することはその殆どが秘密レベルか極秘レベルのものなのだ。
「……っ……確かにそうですね」
 どうやら、巫女の勘が働いたようだ……この彼女の様子からするとこの場所の秘密に関すること、か。あまり長話をするのは彼女にとってよくなさそうね。
「私の正体が分かったところで、私の目的に関して軽く話しましょうか」
「……目的ですか」
「ええ……ねぇ、今の人間と魔人……いえ、人間と人間以外の知的生命体との関係についてどう思うかしら。と言ってもそんなこと考えたこともないわよね」
 私は彼女たちと少し距離をとりながらそう話し始めた。
「私は闇の力に関する研究をしていく内にこう考えるようになったわ。確かに彼らと違いはある、けれど根本的なところは人間と変わらないと。嬉しいときは笑い、悲しいときは泣く……だから、今の彼らとの関係に……境界線に疑問を持つようになったわ。人間よりの境界線過ぎる。実際、彼らに不満が溜まっていて細かい争いが起こっているのはあなたたちも知っているわね」
 彼女たちは首を縦に振った。
「でも、ただ争うだけでは何の解決にもならない。人間は……中央の上の一部の人間以外は彼らのことに関して知らな過ぎるから。知らない方が都合がいいから情報を隠しているのだけれど、それではいけないと私は考えた。でも、ただ、私が事実を広めていくだけではただの妄言だとされるのが落ち。ならば、どうすればいい? ねぇ、力があるものの言葉と力がないものの言葉どちらが信用されると思う?}
 私はそういうと頭の中のスイッチを切り替えた。
「ただ争うだけでは何の解決にもならないと言ったわね。でも、争わないと始まらないことがあるのも事実。今の境界線を変えたい? では、先ずはその境界線を飛び越えることから始めましょう。それが可能なことを私が証明して、ね」
「あなたが闇の力を使えることで、ですか?」
「いえ、それだと共存できるという証明には弱いでしょ? 闇の力――魔力と術力、その両方を同時に使えないと、ね」
「まさか、魔力と術力は相反するから共存できない。これは、実験結果も出ているはずだ」
 術使いの男がそう言葉を荒らげる。
「そう、私もそう思っていた。だから、魔力と術力を切り替える際、一旦両方を零にしてから切り替えていたわ。でもねこんな事を言われたの。人間にとって術力は生命に関るもの。術力が零になる、それは生命活動の停止を意味する。ならば、魔力に切り替えたとき僅かとは言え魔力と術力が共存しているのではないか、とね」
 私はそう言うと術力を維持したまま魔力の開放を始め、両方の力が半々になった時点で開放をとめた。
 今の私の背には右半分が白、左半分が黒の羽が生えている。
「これが私だけができるものなのか違うのかわからないわ。でも、この力は境界線を変えるのに役立つはず……死にたくなかったら身動き一つとらないようにね」
 私はそう言うと精神集中を始めた。
「それは予想外の副産物でね……今のところは私だけが使えるオリジナルのものよ」
 私がそういうと手の中にある魔力と術力の両方をこめた白と黒が半々になった玉を解き放った。
 するとその玉は城全体を包み込み視界が灰に染まるや否や物凄い爆発音を立て城が全壊した。
「……なっ……」
 あまりの光景に彼女たちは声も出ないようだ。
「これが私の力……本来はある程度距離が離れたものを対象に放つのだけれど……中央は城の周りを常に監視している。これで私の正体もその力もちゃんと分かったでしょう。さぁ、人間よ話し合い(争い)を始めましょう。私は逃げも隠れもしない」
 あちこちに無意味な死体のある城では話がしづいらい。この城は最初から彼女のような存在が現れたときこうする予定だった。
 これで漸くスタート地点……中央がどう出るか……無意味な死体が積み重なることがないことを願いつつ、中央にとって重要な何かがある場所へと向かい歩きは始めた。





《 Vault that borderline 了 》





【 あとがき 】
もう、頭の中で話ができがっているのに上手く文章化できない状態が常になっている気がする。
予定してた描写は書けていないし……色々とやばいなぁ……

【 その他私信 】
書きあがった瞬間送ったので色々誤字とかミスとかあるかも><



忘れられた丘  矢口みつる(知)
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