Mistery Circle

2017-08

《 蕀の家 》 - 2012.07.23 Mon


 著者:黒猫ルドラ







大蛇(おろち)の幸せ…
それは、彼女が彼に残したて行った、最後の期待であった…


プルルルル…ピッ。
「お母さん~(´д`|||)ウチだけどさぁ…(´д`|||)また具合悪いのに仁とケンカしてさぁ…(´д`|||)
ほら、ウチって易怒性統合失調症やん?調子悪いと怒りに怒りにが吹き出して、収集つかんwww(。>д<)一人で行くけ、そっち行って良い?」
「あんた、そんな具合悪いんね…(´д`|||)良いよ。お父さんには、お母さんから言っとくから。しばらく家で休み。」
「ありがとう~(*´ω`*)すぐ行く~(*´ω`*)」

ガチャ…

「あんた、蕀がまた体調崩して家に来るって。」
「そうか。和葉と聡は来るんか?」
「来る訳、無いでしょ!!龍介が居るのに、子供連れてくる訳、無いでしょ!!」
「そうか…」

親父こと大蛇の長男の龍介は、生まれつき自閉症と言う障害がある。
それも、かなりの重度で言葉すら話せない。
犬が吠える声や、ケンカの怒号、子供の大声が特に苦手で、その声を聞くたび、恐怖におののき混乱し、挙げ句にパニックを起こして暴れるのだ。
パニックを起こせば、まず、自分の頭を強くゲンコツする事から始まり、次に手当たり次第に物を投げ、壁や家具を殴り壊し、最後に近くで宥めている母に頭突きを食らわすのだ。


自閉症の障害者は手加減を知らない。
その力は寧ろ、普通の人より強い位だ。
まして大人の男である。
母親は龍介に頭突きされるたび、顔に大きな痣を作ってしまうので、度々ファンデーションを厚保塗りして隠していた。

しかし、驚異の動体視力と注意力を持つ蕀には、あっさり見抜かれ、蕀は龍介が家に居る時は子供は実家に連れて行かない様にしていた。
これも蕀なりの母に対する配慮である。

「で?蕀はいつ来るんか?」
「さぁ?すぐ来るって言ってたけどね。今日は蕀の食べれる物を用意せんとね。」


それから1時間。母が夕食の支度に取り掛かった頃に蕀は来た。


「ただいま…(´д`|||)疲れたー(´д`|||)もう、参ったよ…(´д`|||)仁が火に油、注ぐもん…(´д`|||)」
「蕀、お帰り。和葉と聡は大丈夫なん?」
「うん。福祉のホームヘルパーに頼んで昼間の面倒見て貰ってる。夜は仁が何とかするやろ。」
「なら安心やね。そろそろご飯やけ、待っとき。」
「手伝おうか?」
「良いよ。あんたは休んどき。」

「親父、ただいま~(*´ω`*)夜勤明け?」
「おう。介護職はキツいのぅ…ボケ老人の相手してたら、こっちがボケそうやわ。」
「だぁね…(´д`|||)でも、親父がボケ老人は似合わんぞー(´д`|||)」

「龍介~姉ちゃんだよ~(*´ω`*)覚えとる~?」
「忘れるわけないやろ?」
「だって久しぶりやん?何年ぶり?」
基本、子育てに専念してる蕀は、滅多に龍介と会う機会は無い。子育てに責任感を感じてる蕀は、少々の事じゃ一人で実家に帰らないのだ。
実家に帰る時は龍介がショートステイで留守の時。
その時だけ、家族揃って実家に帰るのだ。

「来る前に主治医の所に行ったんだけど、先生も実家に帰って休みって。ここで無理すると、また悪化して入院するって。」
「入院したら、まずいねぇ…」
「だよね…(´д`|||)和葉と聡も悲しむよね…(´д`|||)入院すると2週間は出れないし…(´д`|||)」
「お前、子供悲しませるなよ。俺もお袋が死んでから、何もかもする気せんくなったけーのー。」
「わかってるよ。だから、早めに帰れる様に、ここに来てんじゃん。ほら、強い薬も頓服で貰ってるし。」
「何かこれ?」
「統合失調症の薬。健常者がのんだら、どうなっても知らないよ~(*´ω`*)」
「何かそれ(笑)」
「ご飯出来たよ~。」
「はーい~(*´ω`*)」

久々に娘と囲む食卓。
大蛇は満足だった。
大蛇は小学2年生の時に母親を無くして以来、施設で育てられたので、暖かい家族の団欒に飢えていた。
やっと恵まれた家族も龍介の障害の悩みで冷えきり、暖かい団欒とは、程遠い物だった。
龍介の障害を受け入れられなかった大蛇も、今は蕀に説得され、受け入れられる様になっていた。
悩みはまだあるが、今は若かった頃より、ずっと穏やかな暮らしをしている。

「お母さんー。じゃあ、ウチ、寝るねー。」
「うん。おやすみ。」

「蕀、随分疲れとーごとあるのー。」
「そう言う病気なんよ。」
「こんな薬、飲んで大丈夫なんか?」
「蕀はわかっとーよ。」


大蛇は妻と話ながら、すこし考えていた。
(健常者がのんだら、どうなっても知らないって、何が起こるんかの…)

「龍介も寝たし、じゃあ、あたし、寝るねー。」
「おう。」


部屋の灯りが消された部屋は、薄暗く、窓から差し込む街灯の灯りが部屋をほのかに照らした。


大蛇の手には、蕀の薬のリスペリドンとフルニトラゼパム。それに、ワイパックスとドグマチールとセロクエルだ。

(親が子供を守らんでどうする?こんな薬、飲んで大丈夫か試さんとの…)


大蛇は飲み残しの焼酎で一息に薬を飲んだ。
しばらくすると、辺りが目映くなり、世界を霧が包んだ…


気付けば河原に居た。
なだらかに流れを称える水のたもとには、手のひらに収まる様な丸い小石…
少し離れた所では、沢山の子供たちが小石で遊んでいる…

「お…大蛇!?大蛇なの!?ダメよ!!貴方はまだ、こっちに来たら!!」
うっすらと見覚えのある女性の姿があった。
しかし、返事をする前に女性は体の赤い化け物に引き摺り去られてしまった…

「今のは…」

「そこの物!!何をしておる!!」
青い平安装束の男に話し掛けられた。
「いや、何もしとらんぞ。」
「直ぐ様、こちらへ来い!!」

大蛇は和装束の男に、何やら琉球の城の様な所に連れていかれた。
連れていかれた所で待っていたのは、黒い平安装束の大男。
手には、何やら、本と細長い板を持っている。


「鉾之原 大蛇か…まだ、お前は来るべきでは無いぞ。」
「ここは、何処ですか?」
「ここは地獄の入り口、閻魔の間じゃ。死者の来る所ぞ。」
「ならば、貴方は閻魔様ですか…?」
「左様じゃ。鉾之原大蛇は確か、照葉野 蕀の父親じゃったなぁ…。あの娘も昔、ここにフラッと来た事がある。あの時は魂が壊れそうだったのでの、しばらく極楽で休養をさせておったぞ。その間、我が部下が代わりに蕀の体に入っておったから、そちも知っておろう。」
「…蕀が精神壊れて正気を失った時ですか?」
「左様。時にそち。母親を失ってから、随分悪行を働いた様じゃのう…。」
「はい…。」
「しかし、そちの子供は、よう育っておる。蕀もお主の境遇に心を痛めておったぞよ。」
「そうですか?」
「近頃、蕀が、お主を母親に会わせたいと願っておる様じゃの。」
「蕀…」
「良い機会じゃ。お主の母親に合うてこい…と言いたい所なんじゃが、お主の母親は親より早くに…」
大蛇は母親の居場所にピンと来た。
「お袋!!」
「待て!!行ってはならぬ!!」
制止も無視して、大蛇は一心不乱に走り出した。


(…債の河原や!!きっと債の河原に居るはずや!!蕀が言っとった!!親父の母ちゃんが債の河原の小石積みしてたら、親父が助けてあげてねっての!!それに、さっきの女性…)


大蛇は三途の川の畔に戻ってきた。
見渡すと、やはり河原で子供たちが小石を積んでいる…
そこに一人の女性が小石を積んでいた…

「お袋!!」
「大蛇!!貴方は早く帰らないと!!」
「そうもいかん。俺は娘に言ったんだ!!子供の時、お袋を助けたいと思っとったっての…
お袋、すまんかった…
あの頃は力が足りなくて救ってやれんかった…」
「良いのよ、大蛇。貴方達が生き延びてくれたら、私はそれで良いの。だから早く…」
「いや、その前に、お袋をここから助けるぞ!!」
「でも、鬼が…」
「良いけん、はよ走れ!!」

大蛇は母親の手を握りしめて走り出した。
母親もつられて走り出した。
しかし、逃亡者に気付いた鬼が追いかけて来た。

「大蛇!!私は良いから早く逃げて!!貴方はまだ、生きられるんだから!!」
「俺はお袋を見捨てたくない!!」

「アッカーン!!」
妖怪ウォッチの赤鬼さながらに鬼が追いかけてくる。
大蛇は置いてあった鬼の金棒を盗んで、鬼を思いっきりどついた。
金棒の重さも合間って、頭が砕けた赤鬼は、その場で倒れてしまった。


どのくらい走った事だろう?
気付いたら、小さな小屋が建っていた。
庭には野バラが咲いている。
そこに、平安装束を気崩した若者が、場と不釣り合いなママチャリでやって来た。
「あー~(*´ω`*)蕀ちゃんのお父さん~(*´ω`*)久しぶりです~(*´ω`*)覚えてます~?」
「誰だ?お前は?」
「やだな~(*´ω`*)前に蕀ちゃんの体に入ってたじゃないですか~(*´ω`*)覚えてません?」
「ああ、あのカタカナ言葉のヤツか…(´д`|||)」
「あれ、何ででしょうね?普通に喋ってる筈なのに、変な言葉、変な行動になっちゃうんですよね~(*´ω`*)やっぱ人の体は勝手が違うのかな?」
「そうか。そんでお前が何か様か?」
「良かったら、この鍵、使っててください~(*´ω`*)そこの小屋の鍵ですよ~(*´ω`*)」
「あそこね、蕀ちゃんの家なんですよ~(*´ω`*)お父さん、大工仕事出来るって言ってたから、みんなが住める様にリフォームして下さい~(*´ω`*)蕀ちゃん、みんなが来たら、皆で住むって言ってましたので~(*´ω`*)」
「そう言う事か。なら貰っとこう。」
「それじゃあ~(*´ω`*)」


中に入ると、小さなワンルーム。
フカフカのベットに小さなキッチン。
窓からはテラスに続き、庭の野バラがよく見える。野バラは蕀の好きな花だ。

母親を風呂に入れて、置いてあった蕀の服を着せたら、ベットでゆっくり休ませた。
長年の疲れからか、グッスリ眠っている。

母親が寝ている間、大蛇は増築を始めた。
近くに町があり、材木も工具も良い感じに手に入る。
日中は増築しながら、母親と共に食事を摂り、
夜になると、母親と共に寝た。
とても幸せで充実した時間を過ごしていた。

いつかは帰らなきゃいけない。
しかし、大蛇は驚くべき時間は、まだ永遠で、過去のものとはならないと固く誓った…


しかし、無情にも、それは打ち破られた。
増築が終わった頃に、ママチャリの男が迎えに来た。

「お父さん~(*´ω`*)まだ、死んで無かったんですね~(*´ω`*)
てっきり死んでたんかと思ってましたよ~(*´ω`*)」
そうだった。まだ死んで無かったのだ。
「大蛇。私はここで待ってるから、行っておいで。帰ってきたら、また一緒に暮らしましょう。」
「お袋…」
「大蛇、立派になったのね。こんな立派なお家作って。」
「こんくらい、出来て当然よ。」

「行ってらっしゃい、大蛇。」
「…おう…行ってくる!!」
「お父さん~(*´ω`*)じゃあ帰りましょう~(*´ω`*)後ろ乗って下さい~(*´ω`*)送りますよ~(*´ω`*)」

「大蛇ー!!あっちでも、しっかりねー!!」


気付いたら、布団で寝てた。
いつもの我が家の居間に敷いている布団だ。
枕元にはいつもの缶コーヒーが置いてあった。
その横には置き手紙。


(親父へ。
ウチの薬、飲むなよ。作用でクラクラするやろ?
しかも、酒と一緒に飲むとか自殺行為やわwww
これ飲んでシャキッとしてね~。)

「蕀か…」

ガチャ…

「あ、あんた、やっと起きたんね…蕀、帰ったよ。」
「そうか。」
「あんた、いくら今日、休みって言っても、ご飯も食べんで寝てから、体に悪いよ…」
「おう…」
「それに、蕀の薬、飲んだってね。お酒と精神薬は一緒に飲むと効きすぎるんだから!!あんた、しばらく禁酒ね!!」
「そりゃ無理や…」
「無理ややない!!」

そして大蛇は一週間禁酒になった。
母親との出来事は、きっと夢じゃない。





《 蕀の家 了 》





【 あとがき 】
急に書きたくなって、親父の話の続編を書いて見ました。
こっちは、キチンと造作してます。
楽しんでくれたら幸いです。


黒猫ルドラ
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