Mistery Circle

2017-11

《 デザート 》 - 2012.07.23 Mon


 著者:しどー







「電気くらい消して寝てくれよ。面倒じゃねぇか。」

 そして、カチリ。そう、寝ぼけていた俺の耳に忌まわしい音が聞こえすぐに飛び起きた。周りは既に暗闇に沈み一切の光がなく、半狂乱になりながら明かりを探した。

 部屋全体を闇が呑みこんでしまった。

 カーテンを口で咥え、ギイィーッと音たてて開ける。月明かりが闇を淡くぼかしていき、ぼんやりとした闇の中で悪魔が残念そうに俺を見た。
「またな。」そんなふうに俺を見て去った。

「誰だ!アーヴィンの部屋の電気を消した奴は!」
「俺じゃねえ!」
「お前が見回りにいっていたじゃねぇか!嘘つくな!」
  怒号罵声、何かを殴る音が響いた。

 俺はイカレちまった。
 一昔前ならば戦争神経症。今でいうコンバットストレス。俺は発作が起きると戦場にいてしまうようだ。その間の記憶はない。だが、その間にも5人の人間を殺した。警察官が俺をぶち込んだ留置場で俺がイカレていることを知った。
 闇で部屋がすべて塗りたくられたとき。俺には悪魔が見える。きっとその悪魔が殺したんだ。

 明るい俺の部屋からはいつだって俺の仲間が動物園のようにはしゃいでいた。俺のように化け物を見えているヤツもいれば、見てしまっておかしくなったヤツもいた。目を離すと自殺するようなヤツだって。
 治そうと頑張る医者はやめるか、薬をキめてしばらくしたら俺らと同じになる。残るのは金の問題と割り切って作業としているヤツだけ。
 面倒ごとは嫌い。面倒なヤツは飯を抜かされてオムツの中が自分のモノで爆発させられる。だから俺みたいのはある程度、優遇された。

 俺は、部屋を暗くしなければ面倒を起こさないし騒がないし要望を出さない。ないない尽くしで最高の待遇。気が向いたら適度になんかくれた。お湯がないカップラーメンとか最高にイカしたプレゼントだ。お湯があったら、ぶっかけてやりたいくらいにな。

 夜に電気をつけたままで寝る。家族はいくらまっても来てくれない。人殺し、そう思われているのだろう。なんとしてでもこの状態を打破しなければ。俺はあの悪魔のせいでここにいる。この悪魔を証明するためには…。

 そうだ、この悪魔に打ち勝ったように見せなくては、いや違う。この悪魔をいないようにすればいい。
 そうすれば俺は健常者として裁判の場に出られたら、裁判で無罪を証言できる。この悪魔は俺には何にもしない。
 ならやれることは簡単だ。コイツだって娑婆のほうがいい。そうに決まっている。暗闇を作らなくては。ヤツと話をしよう。今まで俺が暴れたせいで毛布はない。夜は両腕を肩で止められている。

 部屋の隅に自分で影を作る。ちいさくとも悪魔は来る。待てば、こうしてホラ。辺りを見渡し足音もしないのを確認した。
「おい、話がある。」
 悪魔はニンマリと笑みを浮かべたままで何も答えない。
「俺は外に出たい。お前も外に出たいだろう。」
 悪魔はコクコクと縦に首を振る。「じゃあ、しばらく暗闇で大人しくしてくれ。治ったと思われれば外に出れる。」
 悪魔はケタケタと笑った。

 翌日、1度だけでいい電気を消してくれ。そう頼んだ。騒いだら殴ってもいい。そう付け足すと見回りの看護師は心よく受けてくれた。

 その夜。静かに眠れた。ふと目が覚めて暗い部屋で驚いたが心に安らぎは十分に残っており、その日から夜の光はなくなっていった。
 それがだんだんと看護師に伝わっていき、そのあと医師からの「回復の兆しあり」という風に許しを得た。今までされていた拘束具は外されオムツもトイレへと変更された。

 やっと人間の扱いをされた。それが最初の感想だった。
 そして、日曜に知らない人間が来て最初こそは誰だったかわからなかったが、それが教会から来た神父だとわかり、あそこの異常性に気付けた気がした。

 大げさだが色を感じた。悪意のある人間以外と接することがここまでも心安らかさを感じられるとは…とても素晴らしい。
 神父の日曜礼拝に参加し、それが終わると神父に呼び止められた。

「悪魔とは悪しきものです。自らが主導権を得ていると思ってはいけませんよ。」

 簡単にそういうと神父は去っていった。
 悪魔のことをわかっているのか、そのあと俺は裁判可能の判定を得た。

 なんとしてでも、無罪を得なくては俺が無罪ということを。
 状況を確認する間もなく裁判が始まった。

 裁判はゴネてでも長引かせる。
 それが俺の考えられる最初の1手だ。そこから矛盾を見つけて、弁護士を雇って逆転を狙う。とにかく時間を稼ぐ。

 裁判が始まる。
 裁判官と陪審員、検察が俺をぐるりと囲む。
 皆、疲れている顔をしている。
 傍聴人に家族の姿はない

「裁判長、被告の精神状態の報告書です。」
「うむ。」
 そういうと裁判長はその資料を見て、閉じた。
「被告の精神状態は裁判を受けることが出来る状態と判断し裁判の再開を再開する。」

 罪状
 連続殺人

 1人目
 背後から刃渡り30cmほどの刃物を寝かせ、肋骨を避けそのまま心臓を刺した。その後、叫び声を消すために口を抑え、更に喉を切り裂く。そのため、出血性ショックで死亡。
 被害者は被告の一人息子。

「これが犯行を証明する証拠の一覧です。確認をお願いします。」

 2人目
 被害者の頸部に刃物を投擲したものの、直撃だけは回避したものの負傷をしその後、部屋に隠れているうちに出血が突如激しくなりそのまま死亡。被告がその後死んだ被害者の頭部を弾丸で撃ちぬいた。
 被害者は被告の奥さん。

「これが犯行を証明する証拠の一覧です。確認をお願いします。」

 裁判長は軽く見た後に、閉じ目頭を押さえて軽く首を横に振った。

「被告は戦争神経症とありますがそれを差し引いても、この犯行には十分な殺意があります。極刑を進言します。」

 何を言っている。
「資料を見せろ!」
 検察は俺の言葉を聞くと、「ええ、あなたには見る義務があるでしょう。準備していますよ。」そう言い資料をくれた。

 最初には特定された凶器。壁に刺さったままのその凶器の写真が載っていた。それには見覚えがある。俺が…。一気に吐き気がやってきて、手で押さえ出てきたものは飲み込んだ。

 涙で目の前が歪みながら資料を読んだ。俺は…、俺は、いや、俺じゃないすべてあの悪魔がやったんだ!俺じゃない!
 俺が家族を殺したんだじゃない。

 でも、証拠はすべて俺に纏わりついていた。

 裁判長を見ると、その横で悪魔が俺を指さしてゲタゲタと笑っていた。
「やっぱり、お前がやったんだろう!クソ!お前が俺の言うことを聞き始めたのは俺を殺せないから、殺せる場所に引きずり出させるためにか!」

 取り乱した俺を警備員が取り押さえる。
 悪魔がそれを見ながら腹を抱えて笑っていやがる。

「裁判長、被告の精神状態はッ!」
「裁判は可能と精神科医の印がある、これは逃れようとしていることなのだろう。」

 想像や仮説好みの傾向がここほど有害でない場所は他にないだろう。
 言えば言うほど俺の罪の色は陪審員から見れば濃くなっていく、いやもはや元がわからない程の黒なのだ。

「これ以上の審議は必要かな?」
 陪審員の1人が言い、それに賛同の声が続く。

「待て、俺の証言は!俺の!」
「却下する!これより審議とする。」

 陪審員が去ったのちに、悪魔が俺の横にきた。
 ヘラヘラと笑いながら。

「満足かよ、このクソ悪魔。」
 悪魔は俺の前でじっと俺を見た。

「満足。お前のツガイは『お前が裁判になれば殺される、ならイカれたとうことして守ってくれ』って頼んだから、私はその契約を守った。破ったのはお前、私はほとんどタダで仕事が終わった。ありがとう。お前のツガイの魂、美味しく頂かせてらもうよ。

あーっきゃっきゃっきゃっきゃ!!あーっきゃっきゃっきゃっきゃ!!」

 俺の中で何かが崩れた気がした。
 俺がしたのはいったい。

 俺は…、俺は……。

「陪審員の満場一致で判決が出た。被告人に絞首刑を科す。」

 俺はそのしばらくした後に独房に入れられた。
 その2週間…そこまでいかない日を過ごした。
 最後の食事を聞かれたが、いらないと言った。
 そしたら、どこか別の部屋に連れて行かれた。
 頭の上に布を被され、ゆっくりと歩かされた。
 階段をゆっくりと歩く1段2段3段4段5段。
 6段7段8段9段10段11段12段13段。
 そして止められ、横で聖書の言葉が囁かれた。

「神のご加護を。アーメン。」

 最期の音は落ちる風と、悪魔の笑い声だった。
「食後のデザートは、罪のソースを絡めてね。」





《 デザート 了 》





【 あとがき 】
 法廷モノあんまりみないので、ほぼテキトーです。まぁ法廷の綿密な描写を書いたら、この物語の3倍はくだらないね。



 さてさて
 しどーです
 読んでくれてありがとうございます

 改めて「死」って難しいですね。
 強制的な完結でもありますし、そして狂気ってのもなかなか難しいです。
まだまだ私は未熟ですわ

 今年1発目
 私なりに「死」をイメージしたのはこんな感じです。
 今年もよろしくお願いします


Sidh's story しどー
http://id24.fm-p.jp/16/cidh/

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