Mistery Circle

2017-05

《 遠い昔の事 》 - 2012.07.24 Tue


 著者:黒猫ルドラ







 ややこしい関係の中でコミュニケーションが上手く運ばなくなってるのは、みんな同じ。
ましてや、普通の人とは少し違う蕀にとっては、なおの事だった。


 今から25年前。
 ジェンダーフリーなどとは叫ばれる前の時代。
 小学生だった蕀は先生に怒られていた。
「男の子とばっかり遊ばないで女の子と遊びなさい!!」
「だって、女の子の遊び、楽しくないもん…」
 蕀の反論は煙の様に消えた。
 蕀は昔から、セミ取りや男の子と一緒になって野山を駆け巡る遊びが好きな子供だった。必然的に、いつもつるむのは男の子。
 そして、自分が女である事が嫌で嫌で仕方なかった。
(…自分が男だったら、普通の子供だったのに、何で自分の身体は女なんだろう?)
 そんな蕀の思いを受け止めてくれる人は皆無だった。
 とは言え、根が生真面目な蕀は無理して女の子達に声を掛けた。

「みや子ちゃん達、遊ぼうー。」
「鉾之原は仲間に!?入れてやらんー!」
 女の子達は無情であった。
 女の子も中学年になると色々思う事があるのだろう。常に男の子とばかり遊び、異色な雰囲気を放っている蕀とは遊ぼうとしなかった。

 家に帰ると近所に住んでいるセイヤが遊びに来た。セイヤは同じクラスだが、学校では一緒に遊ばない。
 蕀はきっと、いじめられっ子の自分と遊んでるのがバレると、セイヤの方がからかわれてしまうんだろうな、と、察していたので、セイヤとは家の近所でだけ遊んでいた。
 近所の仲間内の中では唯一の男と言う事で威張っているが、セイヤ自身もいじめられっ子だった。
「今日、新しいゲーム買って貰ったけ、一緒にやろう!」
「うん、良いよー。何それ?」
「こんとらー。」
「こんとらかー。(コントローラーの略かな?)」
 早速、我が家のスーファミにカセットを入れてプレイを始める。
 ゲームの中ではマッチョな男二人が果敢にも敵に向かって行く。

(ゲームの中は良いな…ウチもゲームに入りたい…)
 蕀には、このセイヤ以外、友達が居なかったからだ。
 一年生の時は友達が沢山居た。毎日の様に色んな友達と公園で遊んだり、市の保有している空き地で遊んだり、楽しく過ごしていた。
 僅かに女の子の友達も居たが、女の子の友達とは一対一で話をする事が多かった。
 その頃は何ら普通と変わらない、ちょっとボーイッシュな子供だった。

 そんなある日、家の近くで遊んでいた時にセイヤに言われた一言が引っ掛かって、それ以降、誰と友達になれば良いのか解らなくなった。
「お前と同じクラスのタチョは、俺と同じ保育所だから、友達になるなよ。」

 蕀は別にタチョと友達では無かったんだが、違う保育所出身だと友達になったらいけないんだったら、今までの友達以外に誰と友達になったら良いのか解らなくなった。

 そして、二年が終わった後のクラス編成。
 蕀は今まで友達だった子とは、みんな離れ離れになって、セイヤ以外に友達の居ない生活を送る様になった。

 そんなこんなで放課後は一人で山を散策するか、セイヤが来た時はセイヤと遊ぶ事を繰り返していた。
 だから、ゲームの中の世界が羨ましかった。
 そこには友達が居る。仲間が居る。
 ゲームの中の住人になれば、こんな自分にも仲間が出来るのでは?と、淡い期待があった。


 ある時、学芸会の練習で旧友達と偶然近くに座り、すっかり話が弾んでいた。
 久しぶりの学校の友達。嬉しくて嬉しくて堪らない。蕀は水を得た魚の如く喋りまくった。
 その次の瞬間。
 生活指導の先生に全員ゲンコツされた。
「余計なお喋りはするな!!」
 力強い先生の拳に皆はうずくまり、黙りになってしまった。
 それは蕀も例外じゃない。
(女相手にゲンコツかよ…)
 こんな時だけ、調子の良いもので、自分が女なのを盾にしようと思い、次はゲンコツされないようにスカートを履いて来ようと思ったのは、少しズルい発想だった。
 こうして蕀の楽しい時間は終わりをとげた。

 そうこうしている内に学年は一つ上がり、五年生になった。
 一年生の時、初めての運動会の時にマーチングクラブの演奏を見てから、心に決めてた事がある。
 それは、五年生になったら、マーチングクラブに入ると言う事だった。
 マーチングクラブは他のクラブとは違って掛け持ちが出来る。
 しかし、もう1つ違う所があって、マーチングクラブには入るのに会費の500円が掛かる。
 家が貧乏な蕀は500円と聞いて諦めてしまった。
 蕀のお小遣いは50円。
 それもすぐに使いきってしまう。500円なんて用意出来ない…。

 放課後、静かになった学校の講堂で一人、ぼんやりしていた。
 すると、旧友のコバンがやってきて、ボソッと言った。
「何でマーチングクラブに入らんかったと?」
 コバンはマーチングクラブに所属していた。
 講堂を通ったのは、マーチングクラブの部室に向かう途中だったからだ。
 蕀は躊躇いながら答えた。
「ウチが楽器に触ると、楽器が腐るって言われそうだから…」
 コバンが答えた。
「俺も楽器が腐るって言われてるよ。でも、練習したら大丈夫だって。」
 コバンなりの精一杯の励ましだった。
 確かに、お金が無いのもあったけど、度重なるいじめで、自分にすっかり自信を無くしていたのもあった。
「俺、大人になったら、大工になりたいんだ。」
 そう言い残してコバンは去って行った。

 大人になったら…か。
 大人になったら、ウチは何になりたいだろ?スーツ着たい位しか思い浮かばないや…。
 よく考えたら、子供って、家や学校以外で他人と出会う機会ってあんまり無いんじゃないか。
 蕀は将来の夢も開ける事なく一人ぼっちの子供時代は過ぎていった。





《 遠い昔の事 了 》





【 あとがき 】
うーん…。自分でお題を出しといて、なかなかストーリーが開いてこなくて、うんうん唸りながら、蕀の昔話を書く事に決めた。
ちょっとと言わず、かなり重いんだが…(苦笑)
この主人公の蕀は、いつも書いている小説の蕀なんで、将来は自分の性別を受け入れたみたいです。変態だけど(笑)


黒猫ルドラ
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