Mistery Circle

2017-06

《 離れて暮らす息子とキャンプに行ったんだが 》 - 2012.07.26 Thu

《 離れて暮らす息子とキャンプに行ったんだが 》

 著者:黒猫ルドラ








「うちは諜報員養成学校なんだ。一目して軍人と分かる者、即ち軍服、坊主刈りの者は何人と言えども絶対に出入りさせるな。」
蕀は、シルバーのワゴン車にドンと手をつき、そんなセリフを言い出した。
「…ママ、何言いよるん?」
淡々と突っ込みを入れるのは、長男の光博。
まだ、残暑が厳しいのに冬服の学ランを着た次男の景太が光博に続いた。
「オレの学ランが見たいって言ったの、ママやん。せっかく暑いの我慢して着てるのに。」
「すまんすまん。冗談やねん(笑)いやぁ、景ちゃん坊主刈りやけん、実家にある学ランみたいな軍服の写真みたいで、つい(笑)」
「…全く、何言ってんだか。景太、ママも学ラン見たし、着替えて来たら?」
「うん、そうする。」

光博と景太は、蕀が最初に所帯を持った時の息子。
子連れで帰る身寄りが無い蕀は、元夫の安次と離婚した際に、身寄りも収入もゆうにあって、確実に面倒を見て貰えそうな安次の所に二人を託したのだ。
二人は安次の実家で安次と安次の母の弥生と四人で暮らしてるが、手は離しても、心は離さないと思ってる蕀は、年に数回、こうして会っているのだ。

今回は景太が中学生になっての初めての集まり。
普段は見れない子供の学生服が見たくて、蕀は、光博に頼み込んで、景太に学ランを着て貰ったのだ。
因みに光博の学生服は、メールで写メを送って貰ったから、取り合えず良しとする。


「ママー。頼まれてたテント、こんな感じで良い?」
「この骨組みにブルーシートを被せるんやね。上等!!」
蕀は、仁と自分と光博と景太と和葉と聡の全員が入るテントを探していたが、ネットで買うにしても、けっこう値が張る買い物になるので、大工志望の光博に頼んで簡単なテントを作って貰う事にした。
小さい頃から秘密基地やなんやら作るのが好きな光博は喜んで引き受けてくれた。
「じゃあ、車に積み込んどいてー。」
「はーい!」
シルバーのワゴン車の後ろのドアを開けた。もちろん、ナンバーは、わナンバーである。
「ふー…。暑かった。ママー!準備出来たよー!」
「良し!じゃあ行こうか。さっきはありがとね 、」
普段着に着替えた景太も来た事だし、直ぐに出発する事にした。

「ママー。今日は貯水池の上流にある公園でキャンプするんよね?そんな公園あるん?」
「あるよー。光博が幼稚園の時に行った事があるけど、覚えとるかね?
ほら、光博が深みで溺れて、自力で生還してきた所ー。」
「覚えてないよー!(笑)」
行く先は、この街の水瓶の貯水池の上流にある川の流れる公園だ。
特に遊具は無いが、水遊び出来る様に整備されている。
山道を走る事になるが、車で行くと、そう遠くは無い。
「和葉ちゃん、行った事あるー?」
「和葉は初めてやね。楽しみにしとき。」
つのる話をしているうちに、車は、あっと言う間に公園についた。


公園に着いたら、直ぐに和葉と聡と景太は川遊びを始め、光博と仁はテントの設営、蕀は、バーベキューの火起こしを始めた。
「まさはる君ー!もうちょっと、そっち広げてー!」
「光博君、こう?」
「そうじゃない!タテじゃない!横に広げてー!」
火起こしをしながらテント設営の二人の様子を聞いてた蕀は、仁のどんくささに苦笑した。
因みに光博と景太は、初めて仁と出会った時に、仁が「まさはるって読んで」と、訳のわからない事を言ったモンだから、まさはる君と呼んでいる。
因みにまさはるとは、あの福山雅治の事だ(笑)
今でこそ落ち着いてるが、蕀と出会った頃の仁は、かなりのミーハーだった。
そう。蕀がただのヲタだと言う事も知らずに…。


テントが組みあがった頃に、バーベキューの炭にも火が着いた。炭火コンロから、赤々と炎が上がってる。
「あっつー…。仁、ちょっと涼んでくるけん、火を見とってくれん?」
「蕀、バーベキューは、まだせんの?」
「いやいや、火力が強いけん、火が落ち着いてから。」
アウトドア経験の少ない仁に、アウトドア馴れした蕀が間髪入れず答えた。
「お疲れさま。光博も川、行こう!」
「うん!」
蕀は白いパーカーを脱いだ。下は露出控えめのビキニである。泳ぐ気満々だ。
「ママー!僕、浮かんで流れるよー!」
「ママ、沈むよー(笑)」
蕀がアグレッシブなのは、昔と変わらないらしい。

日差しが弱まり、空が赤みがかって来た頃、夕飯のバーベキューが始まった。
まだ焼き始めたばかりなのに、金網が汚れてる。
ふと見ると肉が1パック空になっている。そして、横にはビールの空き缶が転がっている。
そして、テントからは仁のイビキが聞こえていた…。
「…まさはる君、もう寝とるね。」
「…放っといて良いよ。」
「パパ、お酒飲んで寝るもんね。」
「ママー!平たい肉、あるー?」
「あるよー。」
「ママ、これ、ステーキの肉?」
「違うよ。ロース肉。光博、ピーマン焼く?」
「和葉ちゃん、ピーマン嫌いー!」
「和葉のやないっちゃ。」
「僕、ピーマン好きー!」
「俺もー!」
「オレは平たい肉ー!」
「和葉ちゃん、ステーキ食べたい!!」
「だから、ロース肉!!」

仁を除いた全員は、和気あいあいとバーベキューをした。
バーベキューを終えた頃には、すっかり日も暮れ、持ってきた手持ち花火をした後は、皆でテントに入り、携帯ゲーム機で遊んだ。
ゲームをしながら談笑してたが、昼間の疲れか、下3人は気付くと寝入っていた。


「光博、小腹が空かない?」
「空いたねぇ。」
「最近、光博、よく食うもんなー。急に背も伸びてきたし。カップ麺、食う?」
「食う!」
二人は外に出て、念のために持ってきた卓上コンロで湯を沸かし始めた。
「キャンプで食べる夜食も良いねー。」
「キャンプの醍醐味やね。」
談笑しながら湯を沸かしてる、その時、白い布みたいなのが、川の上を揺らめいた。
「光博!!見るな!!」
間髪入れず、蕀の平手が光博に飛んだ。
そして、気絶した光博をその場に寝かすと、蕀は、つかさず手首に嵌めてたビーズの髪ゴムで髪を結び、猫になった。
「うねうねあ…」
まさか、こんな所、くねくねが…。しかし、くねくねは水辺に出ると言うからな…。

猫になり、猫の脳になった蕀には、くねくねの、その意味はわからなかった。
蕀は怯む事無く、くねくねに向かって走り出した。
猫の脳には、くねくねは、じゃれつきたいヒラヒラに見える上に、猫には除霊する力があると言う。
「おーうくにうきゅー!!」
蕀は、くねくねに飛びかかり、盛んに右腕を振り回した。

ザバーン!!

くねくねは、煙の様に消え去り、蕀は勢いで川に落ちた。
川から上がり、体を振り、水気を飛ばした蕀は、テントに入り、仁の所に向かった。
「にん!にん!」
早くに寝ていたので、目が覚めてスマホを弄っていた仁は、直ぐに蕀に気付いた。
「えあいん!えあいん!」
蕀は、和葉のカバンを爪で転がしながら、仁に鳴いた。
「蕀、猫のまんまじゃ言葉がわからんけ、取り合えず人間に戻って。」
蕀の弄っていた和葉の和葉を取り上げると、中から人柄のヘアピンを取り出して、川べりの砂場に刺した。
「仁…」
蕀は一瞬人間に戻り、また猫になった。
「あおーん…。」
蕀は仁に尻を向け、尻尾をゆらゆら揺らしている。
「ああ、髪ゴム付いてたから、また猫になったんや。」
仁は、髪ゴムを外して、もう一度人柄のヘアピンを砂場に刺した。
「すまんね、仁。実はくねくねが出てさ…ウチの往復肉球で撃退しtんやけど…」
「蕀、先に服、着ようよ…。」
「細かい事は気にするな!!」
「気にするよ!!ここ、野外だよ!!てか、威張って言うなよ…」
蕀は服を着て、仁と光博をテントに運んだ。
「それで、くねくねってお化けが出たけん、猫になって撃退したんやね。」
「そう。」
「で、何で光博君、倒れとるん?」
「見て、意味がわかったら、発狂して死ぬけん、見る前に掌打して伸した。」
「こらこらこらこら!!何も掌打すること無かろう!!」
「遊びか!!本気か!!」
「はっきり!!させろ!!」
「金的!!つえー!!」
仁は、蕀に乗せられて、喧嘩芸骨法のチームソングを歌ってしまい、叱る事をはぐらかされてしまった。
そして、真夜中の山奥に二人の訳のわからない歌声が響き渡った…。


「あれ?いつの間に、俺、テントで寝とったん?ってか、顔いてぇ…。」
気付いたら朝になっていた。一番早くに起きた光博の顔には、冷えピタが貼ってある。
そして、枕元にメモが置いてあった。
(光博、昨日、お化け見て気絶した時に顔打ったけど、大丈夫?お腹空いたら緑の袋にクロワッサン入ってるから、食べてね。)
光博が袋からクロワッサン出してると、仁が起き上がった。
「光博君、大丈夫?昨日、気絶しとったね。」
「うん、顔がちょっと痛い。ぶつけたみたいやね。」
(言えない…お母さんが掌打して気絶させたなんて、言えない…)
「でも、無事で良かったね。随分ヤバイお化けが出たって聞いたから、心配したよ。」
「うん。ママの手紙にお化け出たって書いてたけど、俺、覚えてないんよねー。」
(蕀、随分早くに気絶させたんやね…)
「それなら良かった。何か見るとヤバイヤツだったらしいけ。」
「俺、心霊苦手なんよねー。見なくて済んで良かった。ママ、無事なん?」
「ああ、蕀なら、お化け撃退したって言ってたよ。」
「ママ、つえぇ…。」
「皆が起きたら、帰る支度して、帰りにジョイフル行かん?って、蕀が言ってたよ。」
「じゃあ、朝は軽めにしとくねー。」

そう言って光博はクロワッサンを2~3個食べた。


荷物をまとめ、公園を後にした一行は、ジョイフルで昼食を食べ、光博と景太の家に向かった。
「テントは光博が持っとく?ママが預かっとく?」
「一応、俺が持っとく。友達とキャンプにいくかもしれんけ。」
荷物を下ろしていると、競馬から帰って来た安次がこっちに寄ってきた。
「お前もおれと一緒居れば、光博と景太と離れずに済んだのにのー(笑)」
安次はニヤニヤしている。
別れた事情を知っている仁が安次を睨み付けた。
仁の放つ闘気に怖じけづいた安次は早足で、家に逃げた。
「ママ、お父さんが迷惑かけてごめんね…。」
「全く、何なんだよ…。自分でウチを見放したらのに。」
蕀は呆れた顔で鼻から溜め息を吐いた。
「おれと一緒だったら、なんて、よく言うよ。蕀の気持ちも考えんで…。」
仁も呆れ顔である。
「ママ、今の方が平和そうだよ。」
光博は、幼い時に見た、荒れた蕀の姿を思い出していた。
「すまない。光博には苦労をかけるね。」
「良いよ。慣れてるし。それに、お父さん、俺達には普通だから。」
裏切ったのは、安次、あんたの方じゃないか。
そんな台詞が頭に浮かんだ。





《 離れて暮らす息子とキャンプに行ったんだが 》





【 あとがき 】
このシリーズに光博と景太は登場させるつもりは無かったんだがなぁ…
お題がお題だったんで、流れで出しちゃった…orz蕀は、もっと幸せな人生を送らせたかったんだがな…フィクションだし。


黒猫ルドラ
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