Mistery Circle

2017-09

《 海の花の夜の 》 - 2012.07.26 Thu

《 海の花の夜の 》

 著者:rudo








買い物をした帰り、いつもは歩くのだが
タイムセールにあたって買い込みすぎ、どうにも重くて
とてもバス停3つ分も歩けないと思いバスを使うことにして
バス停で並んでいる所を声をかけられた。
「木村佳也子……さん?」

後ろから本名で呼ばれて振り向く。
本名って言い方はへん。
旧姓。
今は結婚して栗田佳也子。

振り向くとブランドもののバッグとブランドものの紙袋を持った女が立っていた。
親しげにニコニコとしている。

だれだっけ。覚えがないとはいえ私の名前を知っているし
しかも旧姓。
化粧が濃くてよくわからないが、確かにどこかで見たことがある。

「えーと……」
どうしよう。思いあたらない。

「いやぁね。わからない? 私よ。美佳」

松浦美佳?
あの高校の時の松浦美佳?

「え? あの学園で一緒だった松浦美佳さん?」

「そうよ。思い出してくれた?
 今は松浦じゃなくて広瀬だけどね」

松浦美佳は、私立 青葉高校の同窓生で
中高一貫の学園だったため、高校からの入学者は少なく
同じクラスに配されていたのでみんな、それなりに仲が良かった。

仲が良かったとはいえ卒業してしまえば
まだまだ大学、就職と長い道のりの中、新しい友達や知り合いが増える一方で
だんだんと疎遠になるのは当たり前で
それが15年もたったとすれば、ほとんど赤の他人だ。

「ごめんなさい。気が付かなくて。
 なんだかすっかり変わっちゃって」

「そうねー、お互いもう30過ぎだもんね
でも私、すぐわかっちゃった。木村さん全然変わってないんだもの」

そう言って、口元に手を持っていきクフフと笑う。
その仕草は覚えている。
彼女は笑う時いつも口元に手を持っていく。

その間にバスがきて、一緒に乗り込む。

「ところで木村さんの家ってこのバスの路線だった?
 確か……新宿から私鉄じゃなかった?」

「結婚して今はこの先の欅が丘に住んでいるの」

「まあ。そうだったの?
 私も欅が丘よ? 知らなかったわ どの辺? 
そうかぁ、もしかしたら近所かもしれないわねぇ。あの分譲のところでしょ?」

そうか。美佳さんは、あの分譲を買ったのか。

このバスの終点にはメープルタウンという新しい住宅地があり
そこだけ、まるでヨーロッパのような街並みができており
注文住宅とまではいかないが、セミオーダー式の建売付で
それがまた、スタイリストやインテリアデザイナーがついて
イタリヤタイルや、海外ブランドのカーテン生地を使い
内装までコーディネートされるとあって人気があり
先駆けの20棟分はあっという間に売れてしまったのだという。

金持ちなんだな。
着ている服もブランドものなんだろうし
バッグは、そういうものに詳しくない私でさえ知っている
シャネルだし。
持っている袋はGUUCIやHERME'Sだ。

なんだかブランド市みたいで笑える。
でも、あきらかに勝ち組だとわかる。
成金ぽくても、節操なくいろんなブランド名をぶらさげていても
裕福で、何不自由のない生活をしているのは一目瞭然だ。

「私は……」

私は、バスで3つ目の欅が丘団地に住んでいる。
外観はこの間リフォームされたのできれいになったが
中身は昔のままの使い勝手の悪い2DKの手狭な団地だ。
住んでいるのは若い夫婦から年寄の一人暮らしまでさまざまだが
共通しているのは、一生団地から出られない貧乏人だということだ。

旦那は優しいだけが取り柄のおとなしい人で
穏やかに日々、暮らせればよいと思っている。
それに不満はない。

が、美佳さんの手はきれいだ。
水仕事なんてしたことないんだろうな。
そう思うと少し切ない気持ちになる。

爪には凝ったネイルが施されていた。


--------------------------------------------------------

 バス停に着いたとき、広瀬美香は疲れ切っていた。
行きは車だったので7㎝のピンヒールを履いてきていたし
電車なんてここ数年乗ったことが無かったから
あんなに混むなんて思ってもなかった。
しかもまだ家に着いたわけではない
さらにここからバスで20分はかかるのだ。

一流のスタイリストやインテリアコーディネーターが一緒に内装を
デザインしてくれるというのを売りにしたトータル分譲地があると聞いて
モデルハウスを見に行き、あまりに素敵ですぐさま契約してしまったが
これは失敗だった。
モデルハウスが都心にあったので、つい現地は違うということを
失念してしまったのだ。
実際、越してきてみれば近所に買い物するところもなくコンビニも駅まで出なければならず
それもバスでだ。

まさか買い物の途中で、置いて行かれるなんて
ほんと、もう考えどきかもしれない。
旦那に女がいるのはわかっていた。
まだ隠そうとしている頃は良かったが今では堂々としたもので、私がいても
平気で携帯に出る始末だ。
それでも、仕事の電話だと見え透いた嘘を言うだけマシなんだろうか。

荷物は車に置いてくれば良かったと後悔しながら
やっと駅についてバス停に向かうと女が一人立っていた。
その後ろ姿になんとなく見覚えがあった。

背筋をまっすぐにのばし、凛とした空気を感じさせる後ろ姿。
そんな気持ちのいい姿勢の人なんてめったにいるものじゃない。

木村佳也子。

ぼんやりとはっきりしない色のTシャツに中途半端な長さの
フレアスカートをはいて、雑誌のおまけでついてくるようなポシェットのようなものを
斜めがけにして、両手に持ったスーパーの袋からネギが飛び出している。

その短く詰んだ爪のささくれた手。
それなのになんでこんなにきれいに見えるのかなあと思う。

---------------------------------------------------------------------

「私は……、三つ先の欅が丘団地入口で降りるの」

「え?」

「私は欅が丘メープルタウンじゃなくて
 欅が丘団地に住んでるの さよなら」

「……またね」

バスが欅が丘団地入口で止まる。

降り際に急に思い至る。

同じクラスで同じ制服を着て
大多数の中学からの持ち上がりの子たちに
意味のない敵対意識をもって虚勢をはっていたけど
本当に敵対して虚勢をはっていたのは
同じ外部入学した者同士だった。

おっとりと育った幼稚舎からの持ち上がりの子たちと
激戦をくぐって高校から外部入学した私たちと
いつも意識していたのは私たち外部組ばかりで
持ち上がりの子たちは、外部も何もなんとも思っていなかったに違いない。

それをなんとか美佳さんに伝えたいと思ったが
時間も言葉もなかった。

-----------------------------------------------------------------

「私は欅が丘メープルタウンじゃなくて
 欅が丘団地に住んでいるの」

そう言って降りようとする木村さんを呆然と見ていた。
なんといっていいか言葉が浮かばない。

私たちは同じだよ。
あの学園で異端だったように
今度もまたジョーカーをひかされてるだけだよ。

でもジョーカーは大逆転の切り札にもなりえる。
まだ終わってない。

もうきっと会う事はないだろうな。
わかっていたけど、「またね」とだけ言った。

たぶん聞こえなかったと思う。





《 海の花の夜の 了 》





【 あとがき 】
言いたいこと、書きたいことがあったけれど
うまく伝えられずまとめられないままの投稿となってしまいました。わけわからない話になってしまってごめんなさい。

【 その他私信 】
遅くなって、ごめんなさい。ごめんなさい。
しかも意味不のままでごめんなさい。


すみねこ屋 rudo
http://nekosumiya.exblog.jp/

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