Mistery Circle

2017-06

《 強い敗者と弱い敗者 》 - 2012.07.27 Fri

《 強い敗者と弱い敗者 》

 著者:しどー








  初めに

この物語に出てくるイワン・モフロフ。フランシカ=フランシスは以前書いた物語に出てくるキャラクターとの接点は同じ名前であることだけである。
 もしかしたら、前の物語でいうフランシカの言う前世かもしれない。それはまた別の話。


 1つの王国があった。平和であったが支配階級の存在に耐えかねた民衆は蜂起し、それは革命運動となった。革命の勢いは強く、革命宣下から半年で西部主要都市を制圧した。君主制でなく民主制を求め貴族の三男坊であった、オーネストが家を捨て立ち上がった。革命の火は始めこそは弱かったものの火は日を追うごとに強くなっていく。最初は暴動であったが、もはや戦闘と呼べるようなものになっていまい。常に先頭に立つオーネストの姿に人はついて行った。

 しかし、その快進撃を止めたのは1つの存在。難攻不落大要塞ワッコセ砦。
 山々に囲まれ、そこを通るかもう1つの道を通らなければ王都への足掛かりにはならない。もう1つの道を通ればいい。そう思う人もいるだろうがこの道はあくまでも商用路。もともとこの地域の都市ワスサで娼婦館の主で始まり、街をも財で支配し更には貴族階級を買った商人。イワン・モフロフがこの商用路を開拓した。関を設け、更には近隣国との商用の場とした。しかも、その近隣国にはある程度の武装は認めるも、自国の武装は認めない。そのような触書を作り関内に武器を持ち込んだ際にはそれなりの罰金を払うことになる。しかもその罰金は見つけた者へそのまま懐に入る。入口を金で誤魔化しても出口でもたかれる。美術品に該当しそうなものであれば、しかるべき許可を得ることが必要になり偽造をすれば家の幹を枯らすほどむしり取られる。外国の手を借りても結局はむしり取られる。外国はそのまま領主に報告すればそれなりな見返りを金でもらうことが出来、もしも見逃しても何とかして利益にしようとするそんな外交官ばかり。それにワッコセより弱いこの関を壊すのは容易いがその場合、近隣国は自衛の大義名分をもって攻めてくる。。どちらかになるかは完全に賭けに出ることになりその辺りにイワンの手は既に回っており「今はこの国が生きている方が利益になる」という状態になっている。
 この関は、金と欲望が支配していた。キツネタヌキ、腹の読み合いを得意とするものしかいなく勢いだけでは勝ち得るのは難しい。
 革命軍が西側をある程度制圧したのもこの2つの壁に手だてがなく、仕方なく士気を落とさないためにそれすることしかなかった。

 ワッコセを落とす方がまだ利である。そう判断した革命軍はワッコセを3度攻撃した。しかし、全ては失敗した。
 地形を利用した川をせき止め、機を見て開放する水攻め。高い要塞の壁。連勝を糧に強まる結束と士気。この3つでも苦戦を強いられるというのにもう1つがもっと警戒された。
 怪談な話で初めて聞く者は、驚いた。この砦の回りには「サキュバス」が出る。毎夜毎夜18人は発狂するか死ぬ。安らかな顔ではなく、いいようもない恐怖に襲われ酷いものだった。たかだか18人。しかしそれは確実に襲ってくる。まじないなど関係なく、地位や育ちに関係なく気まぐれに。
 朝になり18人の犠牲者くる。しかし、その影響があるのか移動や組み立ての高速化がある程度はかられ野営地には夜襲が来ない。ここでの戦いは劇的でなく少しずつ削る戦い方を取っていた。極力、命を大切にして半ば嫌がらせのように挑発していく。これが革命軍の出した対要塞戦の戦闘であった。
 この戦いで徐々に砦を少しずつ壊していくのは成功しているが、革命軍の大半は20~30の男性が多い。そのためか、中にはこの戦い方を良しとせずに好機を見ると奥深くまで突撃するものも少なくなった。そういったものは撤退時間を過ぎて戻らない場合、死んだものとして処理された。

 死を減らした戦い方。その中でのどうしようもない確実な死。そして、それは何もないこととして処理される。その矛盾に若い一人が悩んでいた。胸の奥のモヤモヤ。その気持ちは何なのだと。
 年上は毎夜毎晩、怒声交じりの作戦会議を行い結局は何も変わらない同じ作戦をする。

 疑問を持っても、ただ明日に使う投石器を早く見立てられるようにロープの組み立ての練習を反復するばかり。同志オーネストは命を大事にすることが一番大事と言っていた。大人がしっかりと子供たちを守ることが出来、子供たちは学を深める。貴族階級だけが独占していたその権利をすべての人が手に入れるために。オーネストはそう言っていった。誰よりもまっすぐに、強く。
 だが、そのオーネストはこの難攻不落の要塞を攻略せずに関をなんとか通るようにその領主と接触したが、そのあとそれを狙っていたことが知れ捕まり生きたまま腹の薄皮を切られ、そこから覗く骨という骨に薔薇のような彫り細工をされてその死体が晒された。同志の医者が言うにはすべて生きているうちにやられたものらしく、そうとうな痛みであるはず。それでも革命軍の拠点を攻撃されていないというのはオーネストがあの世にまで秘密を抱えていってくれた。そしてオーネストの死が団結をより一層固くさせ、美談は偶像をさらに大きくさせた。

 大人たちは酔っている。若い者はみなそう思っていた。現実を知っているのは自分たちだけと。疑問をもつ彼もその一人。それでも彼はそれを言葉にしなかった。なぜなら、そういうと自分が小さく見えるのだ。なぜかわからないが、言ってしまえば自分はきっと自分を幼く感じてしまう。
睡魔から襲われる前に寝た。日が出ればサキュバスは出ない。そのためにも遠くで早めに寝てしまうに限る。

 日の出前、粗末な装備を整え整列を済まし点呼を終え目的地へと向かう。同郷の者はいなく、皆が皆くだらないことを小声で話し怒られる。今までどんなことをしたか、どんなにつらかったか、苦しかったか。彼はくだらない、そう思い目的地を見据えて歩いた。苦楽は寸や尺で測れるものはない。他人のことは他人のことでくだらない。そう思っていた。そのせいで自分が浮いているのも実感していた。でも、自分を貶めてもそれ以上の対価をえることはなく今の状態を受け入れることにした。誰も自分をほめてくれなくてもいい。ただ、今を変えたい。それだけでこの革命を参加した。それ以外は全部余計だった。
 結局は不平不満の吹き出し口がこの革命なのだと実感していた。

彼がやるのは巨大な矢の発射装置であるバリスタ。土台を組み若くしなやかな細木を人数で引く。声を上げれば場所を特定されるので旗手が代行する。素早く組み立て射撃して解体して逃げ別でまた素早く組み立てるこれが基本的な行動であり、偵察が済んだ土地を移動する。
しかし、この3度目の要塞戦。鉄壁の将軍であるティゲルが何もしないわけがなかった。息子であるヤクト大佐率いる兵を要塞外に布陣させた。この二人が手を組むとなかなか難しい戦いとなる。他所の国からは大蟹と呼ばれている。本陣や布陣も堅く、容赦のない攻撃。死体に隠れて生き延びようとするものを徹底的に許さない。そのことを革命軍は察知していなかった。
そして、その偵察隊がすでに捕まり合言葉を知られ、革命軍偵察隊に扮した国王軍が本隊のいるそばにバリスタを構えさせられていた。

 各射撃のチームが構え、旗手が旗を上げた。これを合図に国王軍が攻め入った。もはや虐殺に近いほどの勝敗。ハリネズミと思えるほど背中に矢を受けた者。味方が手を放し張力に負けてバリスタの矢のように弾かれる者。まるで貴族の狩りのように犬に追われ狩場に誘われる者。生き残れた人数が圧倒的に少ない状態であった。
 悩んでいた彼は何とか逃げ出すことに成功したものの…。地図を見てある程度の現在地がわかり、ハッした。その場所は真っ直ぐに帰ろうとしてもサキュバスに襲われる場所。しかも、そんなことをすれば途中で国王軍に見つかる可能性は高く、追跡されて拠点がバレれば殺される可能性が極めてたくなる。

 今を変えたくて、革命軍に志願した。誰もが不平不満を言わないで済むための国を作る。貴族が利益を生むための政治でなく国民すべてがある程度の平等な暮らしができるように国民で治める国を作るための革命。
 それなのに今の自分は、自分が死ぬ。その運命すら変えることが出来ない。武器というには頼りなさすぎるが本来はロープを切るために持っている短刀を抜き。自らの首に添えた。全身が硬くなり震えが止まらない。自殺、それをすれば一番考えられる中で一番簡単に死ねる。それなのにそれが出来ない。自分はこの程度なのか。この程度しかできないものだったのか。自分か悲しいほどに小さく感じてしまう。
 この革命軍の考えは少し自分とは違う。それに国王の政治がいいとは言えない。自分は全部に不満があるのに妥協した中でそれに近いものを選んでいた。悔しいと思っていたとき、何かのピースがハマった。同志オネスティの言葉。「大人がしっかりと子供たちを守ることが出来、子供たちは学を深める。」

いつまで、自分は子供でいるつもりなんだ。自分の不幸を逃げる免罪符に革命をするのであれば、そんな半端な覚悟で参加していた自分は今死ねば良いと思う。

彼は短刀をしまい。叫んだ。自分はここにいるぞ、と。国王軍に見つかるように、国王軍に見つかるまでずっと。
国王軍はその願いを叶えるには迅速をもって叶えてくれた。すぐさまに武器を捨て降伏の意思を示した。重装甲の騎馬隊はなぜ降伏するか、それを槍越しに聞いてきた。彼は、自分は何もしならないで不平不満だけをもって戦っていた。でも、結局は逃げだった。知りたい。本当にこの革命が必要なまでにこの国は壊れているのか。
それを雄弁に話す彼は先ほどまで自殺を考えていたようには見えない。騎馬隊は彼の手に縄をかけると捕虜として砦に連れて行った。慈悲の心ではなく、今の国王軍の中でも何かが変わりつつあるのがわかっていた。国王を補佐する貴族が国王を丸め込み、国政を行っている。しかもその貴族は麻薬を国にある程度流通させ自分の利益を肥やす輩。どの貴族もそれの腐敗を討てる力はない。見て見ぬふりを決めるしかない。だが、状況は少し変わりつつある。一人の商人が貴族になり金をさらに増やしそして立場の弱い貴族に収支のアドバイスなどをして横に大きく広がりを作り始め元老院ですら、彼の快進撃に口をはさめなかった。彼がいたことにより確実に上に重く大きくのしかかっていた王を傀儡にしている貴族の立場を確実に小さくしていった。
兵士たちも分かっていた。今この国に起きているのは革命と革新。どちらにしようとも国は変わる。そんな中で頭を失ってものたうち回る蛇と闇を掃う太陽と。どちらにしろ危機であり機会がある。そうなれば同じ国の中で国民がいがみ合いつぶし合う必要はない、そうわかっていた。悩みに答えを見つけた彼の話を聞いて、兵士たちは死んだ革命のリーダーも考えは似ていた。ただ自分らの敵か味方の違いだけと分かった。
結局、どちらにせよ。国が一時的に弱くなる。そのために自分らが強くあり続けなくてはいけない。捕虜となった彼を一時的にとはいえ捕虜収容所に送った。彼がその収容所で自分の思想を深め革命家オネスティの後継者と言われるようになるのはそのしばらくした後の話。

この第3次要塞攻略戦は革命軍の敗北が決定した。しかし、この戦いは無駄ではなかった。ヤクトがあえて見逃した1射目のバリスタの矢は要塞の建築としての弱点を射抜き、要塞戦で防御力を大きく崩した。誰もが勝者であり、敗者である。
首のない蛇は未だ道連れを求め、身を焼く太陽の存在を見ることが出来ず、さらなる苦しみを浴びさらに暴れる。その愚かさは、その身の血が太陽を染める日まで続くだろう。





《 強い敗者と弱い敗者 了 》





【 あとがき 】
課題 長く物語と語り部を変えない。
結果 語り部を変えないですんだけど、結局短い。ぐぬぅ

さてさて、しどーです。
悩んだあげく自分の中で出来ている物語の風呂敷を広げるしかできない。ということしかできなかった。
まぁこれはこれで、その物語を補完するため…と少し悪い顔をしておきましょうか。
いつか世界観を自分で広げて、その中で物語を作るために。

そして、この期間中に頭に入れた物語。銀河英雄伝説(アニメ)と纐纈城忌憚。田中芳樹先生の物語ですね。
スポットライトをあてたキャラは完全に銀河英雄伝説のメインキャラクターですね。これ。改めて読み直しても。
田中芳樹先生の物語を模するなら、もっと人を出してもっと消耗品のように殺さなきゃ…。

自分への課題が増えた気がした…。
次回はお題次第ですが、もっと鉄と血の臭いを出したいです


Sidh's story しどー
http://id24.fm-p.jp/16/cidh/



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