Mistery Circle

2017-10

《 ~蕀の逆襲~ 》 - 2012.07.27 Fri

《 ~蕀の逆襲~ 》

 著者:黒猫ルドラ








(自分の不幸をにげる免罪符にするヤツは死ねば良いと思う。)
バリーン!!
蕀は、思いっきり姿見を殴った。
「蕀!!何しよんね!!鏡なんか割って!!」
「何でもない…」
「あんた、怪我せんかったね?」
「大丈夫。」
「何しよるんね…」
「…ごめん。」

ウチの気持ちは誰も知らない。
統合失調症で辛くても苦しくても、気が狂いそうな時も、頼る人なんて居ない。
泣き言言っても誰も助けは来やしない。

「光博?何か外の様子がおかしくない?」
「いや?普通やけど?」
「そうかなぁ?何か変。」
蕀のまわりに不穏な空気がまとわりついていた。
(バカ!)
「ん?」
(光博をバカと思えと?何でだよ?嫌だよ!)
蕀の脳には、あきらかな異変が起こっていた。
統合失調症の初期症状だ。
取り合えず、薬を飲んで、症状を抑えなければならない。
持ってきたバックパックをさがす蕀。
しかし、探せど探せど薬は見付からない。

「仁、ヤバい…薬、忘れとる。」
「えー…どうしよう…俺もお父さんも、呑んどるし、取りに行けん…」
「だよね…なんとか気合いで持ちこたえるか…」
「そうして。」

食卓には、ビールの空き缶と焼酎、それにつまみの刺身が半分残ってる。
付いてるテレビは親父の好きな釣り番組。
「蕀の仕掛けがよく連れるんです。」
「釣竿は、蕀の様に引くと、バレにくいんですよねー。」
テレビがやけに、ウチの話をする…
「ママ、食べんの?」
いつもは大食いの蕀を変に思って、景太が声をかけてきた。
「うん。なんとなく…」
結局、蕀は何も食べずに食事が終わった
そして、蕀の変な行動は、増すばかり。
だんだん正気を失い、意識も曖昧になって行った。
蕀は棒を持ち、剣道の型をやっていた。
「ママ、剣道出来るんやね。」
剣道部の光博は、少し嬉しそうだった。
「うん。高校の時、必須科目でやってた。敵を滅ぼす為に鍛練しなきゃならない。」
「敵?」
光博は不思議に思っていた。
しかし、蕀には、敵の大群が襲いかかって来る予感がしていた。

次に、安全ピン4つとアルミホイルを取りだし。ヒラヒラと振り回した。
その時の蕀の黒目は金に光、銀の安全ピンとアルミホイルは光を反射し、煌めいた。
「これで良し。」
「何しよるん?」
不思議そうな光博。
「これでお守りが出来たんよ。キラキラした物には、ママの力を込める事が出来るんよ。はい。これが光博の。」
「うん。」
「景太ー!和葉ー!聡ー!これ、お守り!つけとってー!」
「…で、アルミホイルどうするん?これもお守り?」
いぶかしながら聞く光博。
「いや、これは魔術具を作る。杖に巻いて、ママの力を増幅させるワンドにする。」
「ワンドってなん?」
「魔法の杖の事。」

(ママ、どうしたんやろ?何か変。まさはる君に聞いてみよう。)
「まさはる君ー!ママ、何か変なんやけど…。」
「うん。ママ、統合失調症が出てるけど、薬がないんよねー。薬があれば落ち着くけど。」
「薬があれば落ち着くんやね?」
「そうだけど?」
「俺が取って来る!」
「危ないよ?夜やし。」
「何か嫌な予感がする。景太、和葉と聡とママをお願い!」
「どうしたん、兄ちゃん。」
「いや、ママがヤバい気がするから、薬を取りに行く。さっきの安全ピン、一応大事持ってて。」
「わかった。」
「じゃあ、行ってくる!」

しゅっ…
しゅしゅしゅっ…
「蕀、何しよるん?」
「お祓い。」
しゅぱぱっ
「少しはキレイになったかな?」
(ヤバい…光博くんの判断が正しいかも…)
「お母さん、とにかく蕀を寝かせましょう。」
「そうやね。なんか変やね。蕀、ここで寝り!」
「寝たくない!」
「蕀、俺と寝ようか。」
「断る!」
蕀は上着を羽織り、外の出ていった。

外に出るや否や、自作のワンドを振り回した。
すると、だんだん風が強まってきた。
不信に思った仁が駆け付けると、蕀は目を閉じて何かの儀式の様にワンドを掲げていた。
「ヤバい!蕀が雷を呼びよる!」
「パパ、ママ、雷出せるん?」
「うん。出せる。前にもこうして雷を操ってたんだよ。病気の時に。」
「ママ、魔法使い?」
「そうかも…危ないから、和葉は中に入っとき。」
「でも、心配…」
「大丈夫。光博くんが薬持ってきたら、治るから。」
「光博兄ちゃん、待つ。」
「パパも何とかやってみる。」
「パパー!」
「聡、危ないよ!」
「ママ、家出なん?僕のgps付けたら?」
「そうやね、念のため。」

聡からgpsを受け取った仁は、祈る蕀の腕にgpsを付けた。
「取り合えず、中に入って様子見よう。」
中に入った仁と和葉と聡は、窓辺で様子見ていた。
すると、蕀のケータイに、光博から電話があった。
「ママ、大丈夫?」
「大丈夫やない。今、外で雷呼びよる。」
「雷?今、ママの家に着いた。何て薬?いっぱいあるけど。」
「リスペリドン。それで収まる。」
「わかった!急いで戻る!」
光博は、急いで自転車を飛ばした。すると、急に雨風が強くなってきた。
ヤバい…と思ったけど、なぜか光博だけ平気だった。
「もしかして、これ、ママの力なん?ママのお守りって、こう言う事?」
とにかく、光博は、蕀の実家に急いだ。

「そうだ!猫にしたら、落ち着かん?」
「良いかも!ママ、猫だったら丸くなるかも?」
仁の思い付きに、和葉も賛同した。
仁は、慌てて外に飛び出で、蕀のビーズの髪ゴムを取り上げた。
「神の名の元、この世界を滅ぼし…」
蕀は珍妙なセリフを吐いている。
構わず、蕀の髪を結んだ。
すると、猫になった蕀が、シャーッ!と飛びかかってきて、ワンドのアルミホイルを外し、勢いよく振り回した。
すると、途端に雨風は嵐になり、雷がおちてきた。
そして、蕀は、どこか行ってしまった。

「パパー!gps!」
「そうやね!猫になっても外れて無かったみたいやね。探して見よう。」
仁は、直ぐ様gpsアプリを起動した。
すると蕀は自閉症の弟のりゅうが泊まってる施設に向かっていた。
風が、その施設に向かって吹いている。
仁は、あわてて光博に電話した。
「光博君、ごめん。ママ、猫にしたら、、もっと嵐が酷くなって…。光博君、大丈夫?」
「うん。お守りのおかげで何ともない。ママは?」
「りゅうの泊まってる施設に向かってる。」
「取り合えず、一旦戻る!」
「わかった!」
慌てて帰って来た光博は、既に息が切れてる。
にも関わらず、仁に付いてくる様に行った。

「景太。ママのくれた安全ピン、ちょっと貸して。これ付けるとママの呼んだ嵐が平気なんよ。今から、ママ、迎えに行くけ。」
風呂で蕀の妹と遊んでた景太は、キョトンとして
「どうしたん?」
と聞いてきた。
「ママが大変なんだよ!俺は今からママを助けに行く。こっちの事は宜しく!」
「いばちゃん、どうしたん?」
「統合失調症!」
リビングでは、仁が蕀のくれた安全ピンを持たすと平気な事と、これから光博君と蕀を迎えに行く事を話した。
「gps役に立ったね。」
「ママ、猫やけ、人間戻ったら、裸やん。」
「そうね、服。これ持っていき。」
花世が寝間着のワンピースを渡した。
「蕀に無理矢理、薬飲ますなら、スポイト持っていけ。」
大蛇もスポイトを手渡した。

「まさはる君、薬ってこれ?」
光博は、液状リスペリドンを見せた。
「そう。それ!それが効き目が早い!」
「良かった。急ごう。この安全ピン付けて。」
「わかった!借りてく。じゃあ行ってきます!」
光博は仁をのせて、仁はgpsアプリでナビをした。

「にうい、よーあいや。おの、あないみ、くういみ、おもいいれ!]
(憎き障害者。この悲しみ、苦しみ、思いしれ!)
蕀は既に、りゅうの部屋の前で儀式を行っていた。
「りゅう!りゅう!」
りゅうが部屋の窓から顔を出した。
りゅうは、鼻歌を歌って、蕀を歓迎している。
「りゅう!おあえいうあいああい!」
(りゅう!お前に恨みは無い!)
「いあい、よーあいあ、ゆうあん!」
(しかし、障害は許さん!)
蕀はアルミホイルに気を込めた。
窓辺のりゅうに意識を研ぎ澄まし、雨雲に溜まった雷を、りゅうに解き放った。
ドドーン!!
光と同時に爆声が鳴り、りゅうの辺りが黒焦げになった。
そして、りゅうは倒れた。
音を聞きつけたスタッフが、慌ててりゅうを見に来た。
すると、言葉を話せないりゅうが、スタッフに話し出した。
「いばら…ねこ…かみなり…」
ビックリしたスタッフは、救急車の手配が終わるや否や、花世に、りゅうが喋った事を伝えた。
事の詳細を聞いた花世は、直ぐ様、タクシーでりゅうの搬送された病院へ向かった。

そうこうしてる内に、仁と光博は、りゅうのショートステイ先の施設に着いた。
「あの猫が、ママなん?」
「そう。」
「まさはる君、スポイト。」
「うん。」
蕀は気が済んだのか、焼け焦げた施設の前で、香箱を組んでいる。
光博が蕀を抱き上げて、スポイトで薬をねじ込むと、じきに嵐は収まった。
「まさはる君。今、人間に戻すと、俺のチャリに乗らんよね?ワンピースにくるんでカゴ乗せようか?」
「そうやね。」
ワンピースにグルグル巻きにされた蕀は、チャリカゴに乗せられた。

「光博君、疲れたやろ?帰りは俺が漕ぐよ。」
「良いけど、まさはる君、そっち右。」
「あ、ごめん。俺、方向音痴やけ。」
「やっぱ、俺がチャリ漕ぐんやったー。」
「そんなんいわんでよー。」
「よー、うおーやんあ、うおもうよな。」
「ママ、鳴いた。」
「なんか喋りよるみたいやけど、和葉ちゃんやないと、わからんのよねー。」
「…結構、遠いね。」
家に着くと、景太と妹が、ドリエル差し出してきた。
「いばちゃん、寝たら治るんやろ?安全ピン借りて、買ってきた。」
「ママのお守り、意味わからん。何で雨風平気なん?」
「ありがとう、妹さん、景太くん。すぐ飲ますね。」
「いばちゃんは?」
「この猫。お父さん、砂ありますか?」
「庭に、なんぼでもあるぞ。」
仁は、ビーズの髪ゴムを外して、庭の砂に人柄のヘアピンを差した。
すると、蕀は人間に戻った。
「本当にママに戻った。」
親族一同驚いている。
「何?そのアイテム。」
「和葉ちゃんが白い猫に貰ったんよ。」
「なんかアニメみたいやね。」
すると、蕀がジャージに着替えて出てきた。
「みんな、ありがとう。ウチ、なんしよったん?」
「なんか、りゅうの所に行って、雷落としてたよ。」
「うわー…マジかー…。」
「蕀、正気に戻った?」
「うーん、まだ、とぎれとぎれで曖昧…」
「取り合えず、寝とき。」
「うん。」

ドリエルが効いて、蕀が寝付いた頃、花世は救急病院のベットの横に座ってた。
ベットでは、りゅうが片言で話してる。
「かよ。」
「なーに?りゅう君。」
「いばら、ことば、くれた。」
「そうね。姉ちゃん言葉くれたね。」
「いばら、すき。あそんでくれた。」
「良かったね、優しいお姉さんで。」
「けんかごっこ、たのしかった。」
「楽しかったねぇ。」
りゅうが言葉を覚えた。
「ねえ、お母さんが、どれだけ嬉しいか、りゅうにわかる?」
「かよ、うれしい。」
「嬉しいよ。」
「かよ、よかった。」





《 ~蕀の逆襲~ 了 》





【 あとがき 】
精神科に入院決まって、チョッパヤで書いたでの。
精神科、スマホ持ち込み禁止なんよね。
次回は会えるかどうか…
ではでは。


黒猫ルドラ
mixiアカウント
 http://mixi.jp/show_friend.pl?id=11676366



● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック:

http://misterycirclenovels.blog.fc2.com/tb.php/469-e7d55ff6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

《 ローレライの憂鬱 》 «  | BLOG TOP |  » 《 強い敗者と弱い敗者 》

プロフィール

MC運営委員会

Author:MC運営委員会
このブログの八割は、カボチャで構成されております。

カテゴリ

Mistery Circle(メインカテゴリ) (40)
寸評 (30)
MCルール説明 (1)
お知らせ (36)
参加受付 (24)
出題 (35)
メールフォーム (3)
内藤クンのおもちゃの部屋 (9)
天野さんの秘密の部屋 (8)
Ms.伍長の黙示録の部屋 (0)
伊闇かなでの開かずの部屋 (4)
未分類 (28)
亞季 (2)
いつき (1)
伊闇かなで (3)
空蝉八尋 (4)
黒猫ルドラ (13)
ココット固いの助 (22)
桜井 (1)
桜朔夜 (1)
鎖衝 (11)
知 (21)
しどー (13)
瞬 (3)
白乙 (12)
すぅ (13)
すずはらなずな (30)
田川ミメイ (2)
辻マリ (14)
夏海 (3)
七穂 (1)
氷桜夕雅 (32)
ひとみん (4)
松永夏馬 (12)
望月 (8)
幸坂かゆり (21)
李九龍 (13)
りん (3)
ろく (1)
Clown (12)
MOJO (1)
pink sand (9)
rudo (8)
×丸 (4)
MC参加者に聞け (7)
Mistery Circle ヒストリー (1)

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

検索フォーム