Mistery Circle

2017-09

《 色読のタマ 》 - 2012.07.28 Sat

《 色読のタマ 》

 著者:黒猫ルドラ








「ただいまー。」
「パパー!お帰りー!お腹すいたー!」
「ごめんね。早く帰して貰ったけど…もうこんな時間やね。何か食べに行く?」
「行くー!」
「やったー!」

蕀が入院してしまい、仁は一人で子育てと仕事をしていた。
仁の職場の人も、仁の家族を心配し、仁に早く帰る様に促してくれたけど、それでも仕事を終えるのは7時を過ぎる。
子供たちは、学校から帰ると、腹ペコで仁の帰りを待っていた。

「じゃあ、何処に食べに行こうかね?」
駐車場に向かいながら話す仁の言葉を遮り、和葉と聡は走って行った。
「あ!プレゼントくれた猫ちゃんやー!」
「どこ行くん?和葉ちゃん!聡くんー!」
目の前には白い猫が後ろを振り返りながら小走りしていた。
そして、家の横の橋を渡った瞬間、二人の姿が煙の様に消えてしまった。

「あれ?和葉ちゃん?聡くん?」
仁は呆然と立ち尽くし、出かける前に子供たちにGPSを着けなかった自分を悔いた。

と、その時。
仁の足元に。尻尾にビーズが着いた黒猫が擦り寄って来た。
「ん?蕀?病院居るんじゃ無いの?」
「ニャーン。」
仁は黒猫を抱き寄せ家に戻ると、人柄のヘアピンをコップに入れた砂に刺した。
すると黒猫は蕀よりは少しふっくらした黒髪の女性へと姿を変えた。
「あれ?あ、スミマセン。」
仁は慌てて女性から目を背けた。
「よい。そちは蕀の家族か?」
「はい。あなたは?」
「わらわはタマじゃ。蕀の幼少期に共に暮らしておった。」
「蕀と?じゃあ、蕀の家族なんですか?」
「まあ、家族と言えば家族じゃった。…それより、この姿は寒いのう。」
「あ、スミマセン。そこの服を着て下さい。」
「これかの?」
「はい。蕀の服ですが。」

タマは蕀のワークパンツとセーターを着ると、仁に言った。
「和葉たちはミルザと共に黄泉二丁目歓楽街に居るぞ。行くぞ。」
「黄泉二丁目歓楽街?」
仁は聞き慣れない街の名前に呆然としていた。
「何をしておる?早ようせんか!」
タマの声に仁は、はっとした。
そう言えば、和葉と聡を見失っていた事を思い出した。
仁は慌ててタマに付いていくと、タマは橋の前に立ち、手を広げた。

「開け!黄泉への道!」

その瞬間、橋の向こうは眩く煌めく中華街になった。
更に呆然としている仁に、タマは着いて来る様に促した。
「案ずる事無かれ。着いてまいれ。」
仁は恐る恐る橋の向こうに渡り、中華街へと進んで行った。
「ここは、黄泉二丁目歓楽街。そこのスナックには蕀の母方の祖母が、よく来ている様じゃ。」
「へぇ…。」
「ミルザの居る色読王国は、この路地裏の奥にある。」
仁は不思議な街並みに唖然とするばかりだった。

路地の突き当たりには、黒く塗られた木の門があり、その門を押し付けながらタマは言った。
「ミルザ!ミルザはおるかの?」
「ミルザは国王陛下の所に居るよ。」
「そうか、クローディア。」
キジトラの猫をタマはクローディアと呼んだ。
「猫が喋った…。」
「ん?君は誰だい?カマキリ食べる?」
「いや、遠慮しとくよ。」
「そう?美味しいのに。」
クローディアと呼ばれた猫は、美味しそうにカマキリを食べた。
「はっはっは。驚くのも無理もない。クローディアだけは何でも食べてしまうからな。」
「え、あ、はい。驚きました。」

それより喋る猫に色読王国って何だ?
戸惑う仁に、お構いなしにタマは、どんどん前へ進んで行った。
置いていかれない様に着いていくと、目の前に壊れそうなボロ家が飛び込んできた。
そのボロ家の庭は広く、100平米はありそうだ。

「和葉ちゃん!柿、美味しいねー!」
「人間は、その実をおやつに食べていたよ。」
「猫は食べんの?」
「私達は、その木で爪は磨ぐけど、その実は食べないわ。」
庭の奥から和葉と聡の声がした。
行ってみると、大きな柿の木から実をもいで和葉と聡が食べていた。
そして、木の枝には三毛猫が居た。

「タマ様、お導きありがとうございます。私はミー子。この国の女王です。」
柿の木の枝に座ってる三毛猫が仁に挨拶をしてきた。
「はじめまして。ここは?」
「色読王国です。蕀が子供の頃に住んでいた家なのですが、今は私達が住んでいます。
私達、色読王国の者は皆、そちらのタマ様の名を受けて代々、蕀を見守っているのです。」
「どういう事ですか?タマさん。」
「よかろう。少し長くなるがの。
蕀には生まれつき不思議な力があっての。誰か見守る者が居ないと危険なのじゃ。
蕀の力が暴走すると、日照りが続いたり雨が続いたりと気候に影響を及ぼす。
蕀は小さな時から神通力の強い猫が代々見守っていた。
わらわは二代目の守り猫じゃ。
しかし、ある時、蕀の父親に捨てられてしまっての。
後に迎え入れられたのが、このミー子と兄のピー助じゃ。
わらわはこの兄妹の為に捨てられたのかと初めは恨んだ。
しかし蕀の手により、わらわの祠を作られ、この兄妹はわらわを供養した。
その時にわらわは、この兄妹に蕀を守る力を授けたのじゃ。」
「そこにあるのがタマ様の祠です。私達は代々タマ様の御加護の下、蕀のお世話をしてきました。」
「私は末代のミルザ。ミー子様の産んだ子供たちから十世代程、下りまして私を最後に色読の猫は跡絶えました。」

和葉の足元にいた白い猫は、そう言った。
「ここに居る猫は、みんなママの飼ってた猫なんよねー。」
和葉は沢山の猫に囲まれて嬉しそうだ。回りを見渡せば猫達は、ゆうに100匹を超えるであろう数である。
「私達は外飼いの猫。その寿命は短く一匹一匹が長く生きる事は出来なかったの。
でも、女系家系で代々栄え、蕀が23才になるまで寄り添っていたの。」
「彼女はチュンリー。私の従姉で最後の雌猫です。」
「初めまして。私も産後は蕀のお世話になったのですが、引っ越してしまい、タマ様の御加護が無くなってしまい、代を長らえる事は出来ませんでした。」
「蕀、猫が産まれると自分の布団で世話してたって言ってたからね。」
「ええ。そして産まれた猫達に名前を付けたのは、蕀です。」
「そうなんだ。」
回りを見渡すと、沢山の猫達が蕀の話をしていた。

「それよりタマ様。どうして、この者達をここに呼んだのですか?」
ミー子がタマに言った。
「今、蕀の危機なのじゃ。」
タマは神妙な顔つきで話を始めた。

「わらわは色読の猫達が産まれる時に、蕀の力が穏やかになるよう、まじないをし、生の世に放った。
そして、蕀が光博を宿した時に光博に蕀の力を自在に操る術を託して、生の世に送ったら。
しかし…」
「光博君と蕀は別々に暮らす様になったんだね。」
「左様。そこで和葉にわらわの力を託そうとしたのじゃが、和葉も蕀同様の力を秘めていての。あまり強い力を託す事が出来なかったのじゃ。
そこで和葉自身の身の危険が起きない様な弱い力のみを授けたのじゃ。」
「その力とは?」
「動物と話せる力じゃ。」
「それで和葉ちゃん、動物と話せるんですね。」
「動物と話が出来たら、来る時、ここへ連れて来れると思っての。」
「そうだったんですか。それで蕀の危機って?」
「蕀を封じる結界が弱まっておるのじゃ。」
「蕀を封じる結界?」
「左様。先程も申したように、蕀の力が暴走すると天変地異が起こる。」
「どうすれば…」
「案ずる事無かれ。その為にわらわはここへ、お主らを呼んだのじゃ。
何か蕀が身に付ける物はないかの?」
「蕀が身に付ける物?ああ、蕀のネックレス。
先週借りてて付けっぱなしだ(笑)」
「何故、お主が付けておるのじゃ?」
「いや、蕀とお揃いで買ったんですけど、俺の無くてしまって。」
「まぁよい。少し貸してはくれぬか?」
「これです。」
仁はネックレスを外すと、タマに渡した。
そして、タマはネックレスを受け取ると、不思議な力が込めて、仁に渡した。
「姿ある物は生の世に持っていけないが、力だけなら託す事が出来る。
これを蕀に付けるが良い。」
「ありがとう。」
「長くここに居ると良くない。」
「帰ろうか。和葉ちゃん、聡くん。」
「もう帰るん?柿、持って帰って良い?」
「持って帰って良いが、生の世に出た途端、消えてしまうぞ。」
「えー?消えるのー?」
和葉と聡は残念そうにしていた。
「皆さん、こちらへ。近道になります。」
そう言うとミルザが門の外の来た道の反対へと案内した。
路地の奥に進み、小さい階段を登ると黄泉二丁目歓楽街に入る前の橋の麓に居た。


「ミルザ、またねー!」
「ニャーン」
和葉に返事をしたミルザは夜の闇に消えていった。
「あ!タマさんに貸した服!」
「なんじゃ?」
「…タマさんは帰らないんですか?」
「蕀が居ない間、一人で人間の仕事と動物の仕事は大変じゃろう。
わらわが少しだけ力を貸そう。」
「ありがとう、タマさん。仕事の間、二人が気掛かりで仕方無かったんです。」
それからタマは、蕀が退院するまでの約束で和葉と聡の世話をする事になった。



「照葉野さん。今日、飲み会ミーティングですよー?」
「今田君。照葉野君は子供が待ってるから帰さないと。」
「いや、私、出れますけ。嫁の猫が世話してくれてるんで。」
「猫が?」
「え?猫なんて言いましたっけ?嫁の家族ですよ?」
「照葉野君、それ、本当に家族かい?猫又じゃないかい?
山に住む妖怪。
それは美しい女性の姿で男を惑わし、巣穴に誘い込むと言われてる…(笑)」
「驚かすの止めてください。れっきとした家族ですよ(笑)」
「本当かね?(笑)」
「本当ですって(笑)ちょっと家族に電話してきます。」

プルルルルル…
「もしもし、タマさん。」
「おお?箱が喋ったぞ?」
「タマさん、すみません。今日、飲み会で遅くなります。」
「おお、その声は仁かの?そこでなんじゃ?水でも飲むのかの?」
「違います。人が集まって、お酒を飲むんですよ。」
「おお、集会か。人間も集会するのじゃな?よかろう。子供たちはまかせろ!」

電話している一部始終を見ていた専務と今田さんは、仁に聞こえない様にヒソヒソ話をしていた。
「ねぇ、専務…照葉野さんの言ってる家族って、本当に猫じゃないですかね?」
「タマさんって言ってたよね…。」
「じゃあ、行きましょうか、専務。今田さん。」
「ああ、行こうか。本当に大丈夫なのか?照葉野君。」
「大丈夫ですよ。」
「そうか。」


その頃、蕀は精神病院閉鎖病棟から、開放病棟に移る準備をしていた。
「照葉野さん、荷物は、その箱に入れて下さい。後でスタッフが病室まで運びます。」
「はーい。」
蕀はそそくさと荷物を纏めていた。急性期の患者のいる閉鎖病棟は完全に外の世界と隔離されているのに対し開放病棟は敷地内なら自由に動ける。
ただ、閉鎖と違って人間関係が難しいとの噂だったので、蕀は少し不安だったが、グラウンドで散歩出来るのが楽しみでもあった。

荷物を纏め終わった蕀は仲良くなった他の患者さんに挨拶に行った。
「奈良ちゃん、井手口さん、ウチ、今日から開放やけ。」
「おー、開放行くんかー。」
「寂しくなるねー。」
3人は喫煙所で最後の一服をした。

開放に移った蕀は、同じ病室の患者さんに挨拶をした。
ボスとおぼしきおばちゃんは、蕀の着ていたダッフルコートをいたく気に入り、可愛がってくれた。
しかし、ちょっと前に開放に移った武藤の悪口を言っていたので、蕀は面食らってしまった。

デイルームを散策してると、レクの時、井手口さんと仲良く話してた患者さんを見つけた。
「(あの人、もっと酷い患者の病棟じゃなかったんだ。)」
見た目がけっこうアレなので、もっと酷い病棟にいる患者さんだと思っていた蕀だったが、井手口さんと仲が良いから、きっと良い人だと思い、すぐに話し掛けた。
「井手口さんと友達?ウチ、照葉野。よろしく。」
「矢井田です。よろしく。」
聞いてみれば、矢井田さんも同じ病気の統合失調症。
すっかり意気投合して仲良くなった。

「矢井田さん、何、女の子と話よるん?」
エルビス・プレスリーみたいな強面の人が横から割ってきた。
「照葉野です。今日から開放に来ました。よろしく。」
「照葉野ちゃん?あの閉鎖の人、彼氏?」
「違うし。ウチ、結婚しとるし。」
熊戸さんと言う、この人。のっけから随分無礼である。
「え?子供四人?矢井田さん家、七部屋あるけ、矢井田さんと結婚したら?」
「だーかーらー!!ウチ、もう結婚しとると!」
この熊戸さんって人は、結婚してるって言ってるのに、やたら恋愛がらみで弄ってくる。
嫌な感じのいけすかない男だ。

そうは言うものの、それ以外は平和で蕀と矢井田さんと熊戸さん、それに武藤さんも混ざって、毎日四人でお菓子パーティーをしていた。
怖いと思ってたおばちゃん連中も蕀には親切で、武藤のkyな言動が気に入らないだけで愚痴っていただけの様だ。
蕀は熊戸さんのアイディアで、おばちゃん達にお菓子の差し入れをしたら、おばちゃん達もお菓子を分けてくれた。
しかし、熊戸の恋愛弄りはますますエスカレートするばかり。
ある日、とうとう蕀はキレてしまった。

「今ある家庭を壊せと言うのか!昔の二の轍を踏めと言うのか!!」
「ただ、俺はこう思ったって言っただけやん。別に悪い事、言ってないし。」
熊戸は全然悪びれる事無く口車を回した。

そして、蕀は日に日に病状が悪くなり、ある日、仁に公衆電話から電話した。
「仁。ちょっとトラブルがあって、ここじゃ余計に悪化しそうだから、帰りたいんだけど…」
「トラブルって何?」
「いや、事故と言うか、犬に噛まれたとでも思って。」
「うん。わかった。」
仁は迅速に病院に電話し、退院手続きをした。
主治医も病院で悪化するなら退院して良いだろうと判断を下した。

「ウチ、家族が強制退院の手続きを始めた。」
「寂しくなるね。」
「うそーん。照葉野ちゃんと、もうちょっと楽しく過ごせると思ってたのにー。」
一番ショックを受けてるのが熊戸だった。
「ちょっと話が…。」
熊戸が蕀を喫煙室に誘った。
「何?」
蕀がついていくと熊戸は
「ここだけの話な…。」
と言って黙りこんだ。
最初は不思議そうにしていた蕀だが、ふと高校の時に聞いた、すっごい面白い話があると前ふりして、すっごいくだらない事を言うギャグを思い出して、フッと笑った。
すると熊戸は
「卓球女王は武藤が嫌で閉鎖に行ったんだが、奈良がもっと嫌で帰ってきたんだよ。」
と、誰もが知ってる様な事を話した。
やっぱりな。
と、思いながら、
「そんなん皆、しってるよー。」
と言い、蕀は去った。

しかし、それからと言うもの、熊戸はナーバスな表情で落ち込んでいた。
それは夕食の後、皆で談話してる時も変わらなかった。

「熊戸さん、何、ナーバスな顔しとるん?」
「これが本当の俺なんよ。」
「ははーん。本当はウチの事、好きだな?」
「…。」
「ここでからかうなら、わざといちゃついて『好きなんだろ?』ですよね?」
パワストブレスを付けた患者さんに同意を求めたら、頷いた。
「ウチの事、好きなんだろ?」
「…。」
「はぁー?振り払えよ!キモいんじゃ!何でお前に好かれなあかんのじゃ!!!」
蕀は思い付く限りの罵詈雑言を熊戸に浴びせた。

その夜。
蕀はムカついていた。
今までの恋愛弄りは熊戸が好きバレするのが嫌で誤魔化してた巧妙な罠だったんだと。
そう思うと怒りがこみ上げてきて、どうしようも無かった。
外は風が吹き荒れ、雨雲を呼び、今にも大雨が降りそうだった。


その頃。
光博は友達と電話をしていた。
「何?ちょっと電波が悪いかな?外に行ってみる。」
「おい、増岡。外、凄い天気だぞ?」
「大丈夫だって。車庫あるし。」
「車庫あったな。」
外に出た光博は吹き荒れる風に煽られるのを覚悟して車庫に向かったが、なんとも感じない。
「おい、増岡。外の風、ヤバくね?」
光博のスマホのストラップには、蕀のあげた安全ピンが光っていた。
「大丈夫。それよりちょっと急用思い出した。また明日ね。」
「おう、わかった。学校でな。」

光博は、あわてて花世に電話した。
「ばあちゃん、ママ、何かヤバくない?」
「珍しいね。光博から電話してくるとか。大丈夫よ。ママ、入院しとるけ。」
「ちょっと前にママから電話あったけ知っとるけど、もしかしたら、ママ、病院で暴れてるかも?」
「そんな事、無いって。」
「絶対ヤバいって。まさはる君の電話番号教えて。」
「仁さんの?良いけど?」

光博は花世から仁の電話番号を聞くと、直ぐ様電話した。
「まさはる君、光博やけど。ママが暴れよる。」
「何だって?」
横で聞いていたタマが何やら聞き耳を立てている。
「そう言えば、この風、蕀の気配がするの。」
次の瞬間、病院の方から雷鳴がした。
「光博君、わかった。すぐ病院に行く。」
仁は電話を切ると、すぐ出掛ける準備をした。
「和葉ちゃん、聡くん。パパ、ママの所に行ってくるね。
タマさん、二人をお願いします。」
「仁。蕀の力が暴走を始めておる。ネックレスを付けるのじゃ。」
「わかりました。」
「パパー!これ持っていったら大丈夫だよー!」
和葉は蕀の力が込められた安全ピンを渡した。
「蕀は、そんな物を作っておったのか。」
タマは感心している。
「じゃあ、行ってきます。」

その頃、病院では、怒り狂った蕀が荒れ狂う風を吹き荒らしていた。
「熊戸…貴様…許さん…」
蕀が手のひらをひらりと扇がせると、猛烈な風が吹き、熊戸を吹き飛ばした。
指を立てふり下ろすと、強烈な雷が落ちて病院中の電気が消えた。
真っ暗な中に3つに割れた金のオーラを纏い、黒目を金に光らせた蕀の姿が浮かび上がった。
「うわぁー!助けてくれー!」
(一見普通に見えるけど、ウチは普通じゃない。
何かの拍子で閉鎖病棟に居るヤツみたいにウチも暴れるんぞ。)
熊戸が蕀と会ったときに言われた言葉を噛み締めていた。

と、その時。
物音に気が付いた看護師が来て、蕀を止めに入った。
「邪魔するな!」
蕀が手を扇ぎ、看護師達を吹き飛ばした。
看護師は病棟の入口のドアまで吹き飛ばされた時に、かすかに声を聞いた。
「すみませーん!照葉野ですー!妻が暴れてませんかー?」
仁である。
看護師は事情を説明して、仁を蕀の所に通した。
「仁!邪魔するな!コイツが悪いんだ!」
蕀は手を扇いだが、仁には効かなかった。
「蕀、落ち着いて。」
仁は蕀を抱き締めると、蕀の首にネックレスを付けた。
「離せ…はな…」
蕀は抵抗しようとしたが、ネックレスが蕀の力を吸い取り、さっきまで光っていたオーラや黒目は元に戻った。

「何があったんですか?今のは。」
看護師が尋ねる。
「私にもわかりません。ただ、言える事は、蕀を守ろうとする者達が、私に力を貸してくれたんです。」
「よくわからない事もあるんですね。所で照葉野さんは?」
「気を失ってるみたいです。」
「すぐ、ベッドへ。」
看護師は仁の腕の中でうずくまっていた蕀をベッドに連れていった。

「照葉野さんの旦那さん?あの人は化け物ですか?」
「そうです。」
「危うく、あたし、殺される所でしたよ。」
「トラブルの種を蒔いたのは、貴方ですね?ケンカをするなら容赦しませんよ。」
仁は壁に手のひらを合わせ、強烈な寸勁を放った。
バァーン!という爆音が病棟中に響き渡った。
「うわぁぁぁあああ!コイツも化け物だー!」
熊戸は一目散に退散して行った。


月曜日の朝。
この日は仁は仕事を休み、蕀の迎えに行った。
熊戸以外の開放病棟の人は、退院する蕀を見送った。
蕀が家に帰ると知らない女性が居た。
「タマさんだよ。」
「タマさん?」
「わらわを覚えておらぬのか?」
そう言うと、タマはビーズの付いた髪ゴムで長い髪を結んで黒猫になった。
「タマ!?」
「ニャーン。」
「蕀が入院してる間、タマさんが和葉ちゃん達の面倒を見てくれたんよ。」
「ありがとう、タマ。」
「ニャーン。」
仁が砂の入ったコップに、人柄のヘアピンを刺すと、タマが人間になった。
「蕀。身体は大丈夫かの?だいぶ消耗しておる様じゃが。」
「うん。きつい。」
「そうじゃろうの。そのネックレスには、わらわの力が込められておる。そいつをしておれば、力は暴走すまい。」
「うん。じゃあ、これを付けてれば良いんやね。」
「左様。仁、これから家族の世話はどうするかの?」
「えー?タマさんにお願い出来ないんですか?」
「残念じゃが、わらわはこの世界に長くは居られん。」
「そうですか。」
「だが、またわらわの力が必要とあらば、訪ねてくるが良い。」
「わかりません。でも、どうすれば?」
「水辺で黄泉への扉を開くのじゃ。そのキーホルダーを貸してみ?」
「これですか?」
仁はタマに「JIN」と書かれたキーホルダーを渡すと、タマは力を込めた。
「これが黄泉への鍵になる。これで道を開くのじゃ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「では、またの。」
そして、タマの姿はスッと消えた。

タマの身は滅びているが、この魂は猫達と共に色読に留まる。





《 色読のタマ 了 》





【 あとがき 】
なんか、書く毎に長くなってるなwww(。>д<)
最初は落書き帳に7ページとかだったのに、今回32ページだよwww(。>д<)
黄泉二丁目歓楽街は、昔、お母さんに個人的に書いた小説の舞台。
それ読みたい人はウチのサイトの「黒猫ルドラの平日」のMC作品集に来てちょんまげ(*´ω`*)
お待ちしておりますゆえ~(*´ω`*)

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