Mistery Circle

2017-10

《 魂の消滅 》 - 2012.07.29 Sun

《 魂の消滅 》

 著者:黒猫ルドラ








その、真っ白なドレスは、歌も歌わずに物語も語らずに。
ただ、そこに佇んでいる。

そもそも事の発端は、妹の藍が結婚して、何となく自分も結婚式を挙げたくなったから、そのドレスを買った。
仁と出会った頃は、色々バタバタしてて、蕀は仁との結婚式を挙げてなかった。

「ねぇ、仁。結婚10周年記念に結婚写真を撮影に行かない?」
「良いよ。」
「場所は思い出の公園ね。」
「懐かしいね。」

そう決まると、蕀はネット通販で安いドレスとタキシードを買った。
それから、気候の良い日を選んで撮影に行こうと話し合っていた。

前の結婚式の時も、ウエディング用のアクセサリーは、けっこう安そうなのを使ってたし、ブーケも造花。
バカ高かったのは、料理と会場代で、記念撮影もスタジオで二枚。
そんなに高いもの使わなくても良いよね。
と、蕀は気楽に考えていた。

それに、今、ガーデンウエディングなんて流行ってるし、公園で子供たちと簡単なパーティーしたら、良い記念になると考えていた。

100均の造花を買って、手作りのブーケ。
ヘアアクセとかも安いやつ。
白い靴はありもので。
ハロウィンのコスプレ感覚で準備をしていた。

矢先、毎日、仁の帰宅が遅いのに気がついた。
「…。仁。飲み会の時は連絡してって言ってたのに。」
仕事の関係で飲み会の多い仁は、前から連絡しないと心配するって言ってるのに連絡をよこさない。
それに、電話もメールも返事がない。
「まったく…どっかで野垂れ死んでなきゃ良いけど。」
蕀は不安な日々を送る事になった。

そして、目の前にあるのは、真っ白ドレスとタキシード。
あぁ、そう言えば、前に結婚式を挙げた時は、本当はお金が無いから挙げたくなかったんだっけ。
なのに、親父が自分達の積み立て貯金からお金出して、向こうの親御さんと話つけて無理矢理式を挙げたんだっけ。
気乗りしないまま式を挙げた蕀は、後に離婚と言う憂いき目にあったわけだが。

「…ドレス着たら、離婚になるのかな?」
蕀に、ふと不安がよぎった。
前のドレスは親父の為に着たドレス。
今度こそは自分の為にドレスを着たい。
そう思って買ったドレスだけど、仁の帰りが遅くなる度に不安が募っていった。

「ただいま。」
「お帰り。最近遅いね。どこ行っとったん?」
「今日も飲み会。」
「ちゃんと電話してって、いつも言いよるやん。」
「ごめん。専務とかも待ってるし、電話しづらくて。」
「もう。死んじゃないかって心配したんだからね。」
「ごめんね。」

そう言って、仁はすぐ布団に入ってしまった。
なんか近ごろ、仁が素っ気ないな。
そんな風に蕀は思っていた。

もしかして、ドレスを買った時、嬉しくて試着したからかな?
やっぱり、ドレス着ちゃダメなのかな?
目の前にぶら下がってるドレスがプレッシャーを与える。
昔だって、ドレスを着なけりゃ離婚にならなかったのかな?
蕀は悩んでいた。
(好きで離婚したんじゃない。)
そして、一度離婚すると、次から離婚のハードルが下がるのを実感していた。
(こんな毎日、不安だったら離婚した方がマシだ。)

仁は毎日、どこに行ってるの?
仁は毎日、何をしているの?
不安になって、仁の鞄に和葉のGPSを仕込んだ。
仕事が終わるのが7時。
それから30分おきに居場所をチェックした。

7時には会社に居る。
七時半には、何故か橋を渡って仁の地元に居る。
それからずっと、仁は地元の海に留まっている。
そして、帰ってくるのが10時過ぎ。

「ただいま。」
「おかえり。仁、何処に行っとったん?」
「別に。」
「嘘言わんで。地元に帰って海辺に居たやろ?何しよったん?」
「何で知っとると?」
「和葉のGPS、鞄に入れとったんよ。」
「そっか。」
「何しよったん?」

「実は最近、毎日、母ちゃんが夢に出て来てね。
供養の為に実家に行ったんやけど、父ちゃんが実家に入れてくれんでね。
それで近くの海で供養の為に祈ってたの。」
「何で海で?」
「何か呼ばれてる気がして。」
「何それ?恐い。」
「母ちゃん、寂しいんやないかな?賑やかなのが好きな人やったけ。」
「そうやね。」
「母ちゃん、どうしたら、あの世で幸せになるかな?」
「んー。あの人の事やけ、何かパーティーでもして供養した方が喜ぶんやない?」
「そうかもしれん。」

すると、ふと目の前に真っ白いドレスとタキシードが目に止まった。
「ウエディングパーティー、仁の地元でする?」
「そうやね。母ちゃん喜ぶかもしれん。」
「会場はどうする?」
「いつも、俺が車を停めてる所が空き地になってる。そこだったら母ちゃん見えるかも。」
「じゃあ、そこでしよう。」
「次の休み、土曜なんやけど。」
「珍しいね。その日にしよう。」

話はトントン拍子に進んだ。
当日はレンタカーを借りて、仁と蕀は和葉と聡を連れて、光博と景太を迎えに行った。
後部席は四人がはしゃいでる。

海を架ける橋を渡ると、仁の地元はすぐにある。
海沿いの波止場に車を停めると、アウトドア用のテーブルに弁当箱を並べ、パーティーを始めた。
弁当箱に入ってるのは、思い出の料理とお洒落なスイーツ。
スイーツは大の甘党だった仁のお母さんに合わせて用意した。
そして、仁と蕀は、それぞれタキシードとドレスを着て、子供たちもお洒落着を着ていた。

聡にスカーフを掛けると、神父の様にセリフを言わせた。
「あなたは、この者を愛する事を誓いますか?」
「誓います。」
二人は声をそろえて言った。
和葉と光博と景太は、おめでとう!と、パーティークラッカーを鳴らした。

みんなは出来るだけ楽しくなる様に、歌を歌った。
蕀もドレスの呪いを振り払おうと、精一杯歌った。

ひとしきり賑わった後、仁は一休みしようと車に戻った。
ほんの一休みのつもりが、日頃の疲れからか、がっつり眠ってしまった。

そして、こんな夢を見た。
「仁ちゃん、有り難う。私はもうね、六道を終わるんよ。
最後に仁ちゃんの晴れ姿を見られて良かった。」
そう言って、仁のお母さんが消える夢だった。

仁が目を覚ますと、もう日が暮れようとしていた。
蕀と子供たちは、とっくに片付けを済まし、車の中でゲームをしていた。

「あ、仁、起きた?」
「俺、寝てたね。」
「帰ろっか。」

帰りの車の中で、仁は蕀に夢の話をした。
「不思議な夢やったね。」
「母ちゃん、成仏したんやね。」
「良かったやん。」

そんな話をしていたら、ふいに蕀は幻聴を聞いた。
(蕀ちゃんのドレスの呪いは、私が持っていってあげるからね。)
仁のお母さんの声だった。
(私の魂は、もう消えるの。)
消える?
後ろから和葉の声が聞こえた。
「なにもないって、どんなふうにみえるんだろう?」

幻聴も独り言も車のエンジンとゲームの音が掻き消して、何事も無いように、家路へと向かった。





《 魂の消滅 了 》





【 あとがき 】
いやぁf(^_^;
今回はね、プライベートで嫌なことがあったから、なかなか書けなくて辛かったwww(。>д<)
んで、最初書いたのは没にしたと言うwww(。>д<)
はぁ…(´д`|||)


黒猫ルドラ
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