Mistery Circle

2017-08

《 蕀の里帰り 》 - 2012.07.30 Mon

《 蕀の里帰り 》

 著者:黒猫ルドラ








「さぁ、ついたよ。」
「色読だー!!」
「ママー!ミルザはー?」
「え?」
「ミー子女王様はー?」
「えー?…ここだけど。」
指差した先は、雑草でおおわれ、石の墓標はほとんど欠けたりかたむいたりしていた。
て言うか、もはや墓標と言うのか、ただの転がってる石ころなのか、見分けもつかない位だ。
「柿の木は?お家は?」
「え?伐採されてるし、取り壊されてるよ?」
蕀は何故、子供達が昔飼ってた猫達の名前を呼ぶのか、わからずに茫然と立ち尽くしていた。

「ママ、ここ、本当に色読?」
「そうだけど?」
「前はバスに乗らんで行く色読やったよ?」
「うん。レストランの町を通って歩いて行ったんよねー。」
「そんな近くに同じ名前の町、あったかな?」
「ここ、和葉ちゃん達の行ってる色読やないよ。」
「そっか。」
「僕、喉乾いたー。」
「和葉ちゃんもー。」
「うん。取り敢えず近くにサンシャインってスーパーがあるから、行こうか。」
「はーい。」
蕀の住み慣れた町、色読は、今も同じ場所にスーパーもあるし、公園もある。
確かにここが色読なんだが。

「ママが小学生の時、友達のお母さんが、ここでレジのお仕事してたんよ。」
「そうなんやー。」
「和葉ちゃん、コーラ。」
昔と変わってキレイになったサンシャインの中でブラついてると、不意に知らない人の話し声が耳についてきた。
「アイツ、ヤバくね?」
「マジ、ヤベェ!」
ちらっと突き刺さる視線。
蕀はヒヤッとした。
「(え?ウチの事?)」
不安に駆られるのを誤魔化そうと、頭を締め付ける束ねた髪を振りほどくと、また、別の所から声が聞こえた。
「髪型、変わったよねー。」
「うん。変えたー。」
また、見知らぬ声が蕀の耳を突き刺す。
蕀は和葉と聡を急かすと、足早に会計を済まし、逃げる様に隣の人気の無い公園で休憩した。

「ひと休みしたら、早く帰ろう。」
「えー?まだ遊びたいー。」
「疲れたけ勘弁してー。」
「ブランコ乗りたいー。」
「はいはい…。」
蕀は早く帰りたいのを諦めて、子供に付き合う事にした。
「(早く帰りたい…)」
げんなりしてスマホを取り出し、仁にメールした。
[今、色読なんだけど、和葉も聡も、ここじゃないって言う。
何か、ミルザとか、ミー子女王様が居るって言うんだけど。]
[色読?今、近くに居るよ。]
[時間ある?]
[ちょうど、そっちの方にお客さん送った所だから、帰りに家まで送れるよ。]
[良かった。今、サンシャインの横の公園だから、サンシャインに着いたら電話して。]
[わかった。]

助かったー。と、一息ついて、和葉と聡を説得しに行った。
「パパが迎えに来るけ、遊ぶのそれまでねー。」
「えー?まだ遊びたいー!」
「パパもお仕事の合間に迎えに来てくれるんやけ、我慢して!」
「はーい。」
和葉と聡は勢いよくブランコを漕いでいる。
自分もここで、よくブランコ乗ったなー。
と、蕀は懐かしく思った。
それから20分が経った頃に、仁から電話があった。
「今、サンシャインの駐車場。」
「わかった。そっち行く。」
蕀は和葉と聡にブランコを止めさすと、直ぐ様サンシャインの方に向かった。
そこには古い型式のアウディが停まっていた。

後部席に子供を乗せて、助手席に座った蕀は、仁に、色読の生家に行った事を話した。
「あー。それで色読に来とったんやねー。」
「折角、来たのにー。」
蕀ははぶてている。
「二人の言ってる色読は、本当の色読じゃなくて、タマさんの連れて行ってくれた色読と思う。」
「タマの?どこ?そこ。」
「家の近くの川で道を開いた先に繁華街があってね。」
「ん?」
「あ、明日から、お盆休みやけ、行ってみる?」
「うん。」
「じゃあ、行ってみようか。」
「うん。」
「行けるかわからんけど。」
「何やねん?」
そうこう話してる内に、車はあっと言う間に蕀と子供達を家まで運んだ。
「今日は早く帰れるけ。」
「うん。早く帰ってきてね。」
「行ってらっしゃーい!」
「行ってきます!」
仁が会社に戻るのを見送って、蕀は子供達とシャワーを浴びた。
蕀は夏になると、外から帰った後、シャワーで体温を落とさないと身体に熱気がこもって安らげない。
ついでに子供にも水浴びさせている。
「明日、本当の色読、行くん?」
「わからんけどね。」
「後でミルザ探しに行こう!」
「はいはい、行っといで。」
風呂から上がった蕀は居間でうたた寝をした。

「ただいまー。」
「キャー!らっこ泳ぎー!」
「僕もらっこ泳ぎー!」
「蕀ー?」
「がー。」
「蕀、寝とるね。」
そう呟くと、仁はビールのプルタブを開けた。
「あの子達も楽しそうに遊びよる。」
スーツを脱ぎ散らかすと、仁は蕀の横で扇風機にあたりながらビールを飲んだ。
蕀が目を覚ます頃には、夕暮れも近づいていた。
「ママー。お腹すいたー。」
「ママ、疲れとるけ、何か食べに行こうか。」
「やったー!」
「仁、どこ行くん?」
「行けたらやけど、黄泉二丁目歓楽街。」
「黄泉二丁目歓楽街?」
「ああ、タマさんと行った所。」
「ああ、和葉達が言ってる色読の。」
「タマさんに入り口の鍵を貰ったんだ。じゃあ、行こうか。」

家を出てすぐの川のふもとに着いた仁は、タマの力が込められたキーホルダーを出して、どうすれば良いのか悩んでいた。
「聡。ミルザ、ここでレストランの街に行く時に、何か言ってたねー。」
「うん!こうやって手を広げてー!」
聡は楽しそうに両手を広げる動きをした。
「あ、そうか。呪文があったな。」
仁は、キーホルダーを指に掛けると、タマがやった様に、開け、黄泉の道へ!と唱えながら両手を広げた。
すると、薄暗い川の向こうにきらびやかな中華街が広がっていた。
黄泉二丁目歓楽街である。
入って直ぐに、チラシ配りの人が、スナックジェンヌのビラを配っていた。
(お盆前。5割引。)
「スナックジェンヌって、婆ちゃんの居た店やん。行ってみらん?」
「子供の飯、ある?」
「付きだしが定食みたいで結構豪華だよ。」
「なら、行ってみようか。」

すぐそこにあるスナックジェンヌの店先で、ミルザがミルクを飲んでいた。
「あ、ミルザや!」
「どうしたんですか?こんな所で。」
「子供が色読に行きたいって言うんで、夕食がてらに来たんです。」
「セントラル、持ってませんよね?」
「セントラル?」
「黄泉の通貨です。私は少し持ってるんで、ご馳走しましょう。」
「ありがとう。でも、ミルザが使ったら、後で困りませんか?」
「いえ、私は猫用通貨のニャントラルを使っているので大丈夫です。
マスターに、私が支払う様に言って下さい。」
「ミルザ、一緒に来んの?」
「私は猫用テラス席に居るからね。」
「中には入れんの?」
「聞いてみようか?」

「いらっしゃい」
中に入るとマスターが無愛想に挨拶した。
ミルザが事情を話すと、マスターは頷いた。
「ミルっち?」
「ミルっち、じゃなくて、ミルザ。」
「いっつも、そう言ってたん?」
「そうだけど?」
「所で、お祖母ちゃんは?」
「お盆に子供の所に行くから、もう出てるよ。」
「そうなんだ。」

ドリンクを飲みながら、雑談してたら、十分夕食になろうかと言うような、付きだしが出た。
「子供には、サービス。」
マスターは、子供に、おにぎりをサービスしてくれた。
「蕀、お盆だし、疲れてない?」
「うん、キツい。」
「タマ様に相談して、こっちで休めるか聞いてみようか?」
「休む所、あるん?」
「色読の家で休めば良いよ。」
「色読行きたーい!」
「じゃあ、明日、タマ様と迎えに行くね。」
「所で、ミルっち、なんで喋れるん?」
「黄泉の国では、みんな喋れるよ。」
「ミルザね、前にプレゼントくれた白い猫なんよー!」
「ああ、白い猫って、ミルっちやったんやね。」
「タマ様に頼まれてね。じゃあ、明日、迎えに行くね。」
「じゃあ、タマさんに宜しくお願いします。」
「ごちそうさまー!!」
「おいしかったねー!」
「ミルっち、支払いなんやけど、クーポン使う?」
「助かるよ。」
店を出ると、川原の道までミルザが送ってくれた。

「ねぇ、仁。色読って、ウチが昔、
住んでた家があるんかね?」
「そう言ってた。」
「ミー子が女王様で、猫達が住んでるんやね?」
「そうやね。」
「死んだら、黄泉の色読に行くのかな?そう考えたら、死ぬのがちっとも恐くないね。」
「縁起でも無いこと、言わんでよ。」

翌朝、アラビア装束みたいな衣装を着た、タマが来た。
黄泉に入ると、それぞれに何か術を掛けて、色読に長く滞在出来る様にしてくれた。
仁のお盆休みの間の三日間は、色読で過ごす事となった。
束の間の蕀の里帰り。
子供の世話は、猫達に任せ、蕀はゆっくり過ごした。





《 蕀の里帰り 了 》





【 あとがき 】お盆時期に里帰りの作品、書きたかったけん、書いてみた。
ウチも里帰りしたいなー。


黒猫ルドラ
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