Mistery Circle

2017-09

《 羽のもがれた蝶の行方 》 - 2012.06.30 Sat

《 羽のもがれた蝶の行方 》

 著者:氷桜夕雅






ただ1つ救いなのは.そこここに花が飾られていることだった。それが唯一ここが“病室”であることを示す唯一の証
みたいなものでそれがなければここは病室などではなくただの“工場”にしか見えない。
窓のない真っ白な空間、それこそ小さなホールくらいの大きさの部屋に等間隔で並ぶベッドの列、いくつあるだろうか?正直奥の壁が見えないので幾つベッドがあるのかはわからないがただその数は尋常じゃないほど多いとは思った。
ベッドには患者を覆うように無数の機械が取り付けられ低く鈍い音を鳴らし足元には踏み場のないほど無数の配線が敷き詰められている
「どうかなぁ秋葉ちゃん、ここ“第一研究室”の感想は広いでしょー?」
「これだけ広いと天井の蛍光灯をLEDに変えたほうが電気代浮くと思います」
これから上司になるであろう女性に私は適当な答えを返す。正直私、乃木坂秋葉はこの脳医学研究所に来ることは本意ではなかった。
「あー本当だね!流石龍ヶ崎教授の紹介で来た人は目のつけ所が違うね!目の付け所がシャープペンシルだね♪うふふ、これで電気代が浮いて週一だった飲み会が週二になるかもぉ」
上司に・・・・なるであろう女性、まるで手入れされていないだろうボサボサの長髪にノーメイク、いつから洗濯していないのかわからない小汚い白衣に身を包む柳生奏は私の嫌味にも、いや気づいていないのかもしれないけど楽しそうに答える
この実験しか興味ありません!な彼女ではあるがそれでも私の尊敬する龍ケ崎教授の一番弟子とでも言われる優秀な人で
なんでも学会でも沢山の研究報告を披露しているらしい、実際この被験者に取り付けられている珍妙な機械を作ったのも彼女だとか、にわかには信じがたいけど
正直言えば龍ヶ崎教授がどうしてもって言わなければ私がこの脳医学研究所に来ることはなかった
元はといえば大学も卒業間近だっていうのに研究にばっかり明け暮れていてまともに就職活動していなかった私を心配してくれて龍ケ崎教授はここを紹介してくれたんだろうけどこればっかりは余計なお世話と思う
「乃木坂さん、今日はまぁ初日だからお仕事も頼まないし緊張しないで気楽な感じで、ね?」
私の不機嫌さが顔にでているためか素なのか心配するように柳生さんが顔を覗きこんでくる
「いえ、すいませんあまりにすごい機械だなぁって思って。私の仕事ってこれを管理と聞いているのでちょっと不安になってしまって」
私は申し訳なさそうな振りをしつつ頭を下げる。とはいえ折角の龍ケ崎教授の推薦で来たのだから教授の顔に泥を塗るようなことはできない、都合のいい事なのか二週間は研修期間という扱いで研修終了後に正式採用してもらうかは私が決めていいとのことなので研修だけはまじめにやって最後に上手いこと言って断ればいい
「それでこの機械はどういった機械なんですか?」
「んーこれはねぇ、一言で言えば『起きたまま夢を見る』機械だよ」
「『起きたまま夢を見る』?」
「まぁ実際見てもらったほうがいいかな、こっちに来て」
そう言うなり柳生さんは軽い足取りでベッドとベッドの間をどんどん奥へと進んでいく。初日ということもあってスーツにパンプスで来たが次からはスニーカーで来たほうが良さそうだ、じゃないと配線に足が取られて転けるのは時間の問題だろう
「えっとぉ、Eの128、このベッドだね」
「このベッドになにがあるんですか?」
足に絡まる配線をどけながら私は尋ねる。ベッドに横たわっているのは細身ながらも結構な筋肉質の身体をした男性だ
「秋葉っちは滝崎太平って知ってる?」
「あのその前に秋葉っちっての、なんですか」
「え、その方が親しみやすいでしょ?」
あっけらかんととそんなことを言う柳生さんにわざわざ文句をいう気も失せた。もういい、それで少しでもこの仕事が円滑に進むのなら多少のことには目をつぶろう
「滝崎太平と言えばオリンピック選手ですよね、確か幼い頃からの水泳選手で今度のベルリンオリンピックの選考会にもでるとかいう」
スポーツには興味ないが確かそんなことをニュース番組でやっていた気がする。でもここでこんな話をするってことは
このベッドにいるのが滝崎さんってことなんだろうか?
「滝崎太平、2034年3月12日生まれの34歳。今度のベルリンオリンピックに出れれば四度目の出場になるんだけどぉ」
淡々と言葉を吐きながら柳生さんはベッド脇にある機械を操作している
「まぁ彼の活躍は今年は、いえこれから先も見ることはできないでしょうね」
「それってどうゆう意味ですか?」
ベッドに死んだように横たわっているのはその滝崎太平で間違いないだろう。けどなんで彼がこんな胡散臭い場所にいるのかは全くわからない
「どうゆう意味って、まぁそりゃ簡単な話よ秋葉ちゃん。彼は心が折れちゃったからここに来て起きながら夢を見ているの」
「すいません、何を言っているかさっぱりです」
思わず心の内が声に出ていた。心が折れた?起きながら夢を見る?やっぱり日本語って難しいな、さっぱり理解できない「んー面倒くさいけどやっぱりここがキモだし説明しなくちゃね」
柳生さんがボサボサ頭を掻きながら何かを考えるように呟く。頭からは頭垢が飛び散っているしどこぞの探偵かと言わんばかりだがそこいらまで一つ一つケチをつけているほど私も暇じゃないので黙っておく
「この機械はね、私が作ったんだけど“起きながら夢を見ることができる”機械なの、それも自分に都合のいいね」
「自分に都合のいい?」
「そ、彼───滝崎太平はそれこそ最初のアムステルダムオリンピックでは金メダルを取って世間では神童扱いだったんだけど年々彼の力は衰えていってねぇ、今迄はそれなりにオリンピックにも出れてそれなりの成績をおさめてたんだけど今年はその彼の生きがいとも言えるオリンピックの選考で落ちたんだよねぇ~」
確かに滝崎太平と言えば私みたいなスポーツに興味のない人でもどんな人と聞かれれば「オリンピック選手」だというほどのイメージが強いそんな人物だ、そんな彼がオリンピックの選考からもれていた……普段の私ならどうでもいいで済む話なんだけど流石に本人がこんな状況になっていては話を聞かざるをえない
「それでそれが彼がここいる理由とどう繋がっているんですか?」
「簡単な話だよ♪彼は自分の身体の衰えに彼は絶望してしまった、引退して解説者なり指導者なりに進む道もあっただろうけど彼はそれを拒んだ」
柳生さんは何が楽しいかはわからないがベッド脇から小さなモニターを取り出すと私の前に差し出す
「だから夢の中で永遠とオリンピック選手をやってまーす♪」
モニターに映しだされた映像にはどこかのプールだろうかそこで他の選手に圧倒的な差をつけ気持ちよさそうに泳いでいる滝崎太平さんの姿があった
「まさかこれが夢の中の映像だとか言うんじゃないんですよね」
「それがまさかまさか夢の中の映像なんですね、にゃはは」
屈託のない笑顔で柳生さんは答える。なんだろうそんなことがあってもいいのか、考えるだけで物凄く頭が痛くなってきた
この映像が夢の中の映像?まずそこから色々言いたいんだけどこの掴みどころのない柳生奏さんが言うことだ、本当のことなんだろう、じゃなきゃ本物のオリンピック選手がこんなところにいる理由がわからない
「まぁここに来て初日の秋葉っちには理解できない世界かもしれないけど私達はこうやって現実に絶望した人に『理想的な夢の世界』を用意してあげているのよぉ。これで再び現実に生きる希望が湧けばいいなぁーなんて思うんだけどどうも私の機械が完璧すぎてぇほとんどの人が戻ってこないけどね!」
ケラケラと柳生さんは笑うが全く笑うことはできない話だ
「あ、そうそう実は滝崎の隣にはもっと凄かった人がいるんだよぉ」
凄かった人、もう既に柳生さんにとっては過去の人扱いなんだろう。
その隣のもっと凄かった人、それを見て思わず息が止まった。
ベッドの上にはクマのぬいぐるみが沢山並び小奇麗な衣装に身を包んだ少女が寝かされている。顔の部分はバイザーに覆われていてわからないがそれが誰なのかすぐわかった、天才子役と言われてクマのぬいぐるみで腹話術をしながら旅路を稼ぐドラマで一躍脚光を浴びた難波愛海ちゃんだ
「難波愛海ちゃんって去年は引っ張りだこな子役だったけど今年は姫崎葵の登場でまるでダメダメだったよね」
「まさかここに寝かされているのが難波愛海ちゃんだと?ちょっと待って下さい、おかしいですよ彼女まだ小学生ですよね」
そう彼女は確かまだ小学生になったばかり、そんな彼女がこんなところにいるべきじゃないのは誰だってわかるだろうに
「知っているよん、でも愛海ちゃん今年に入ってからお仕事ないんだよ?可哀想じゃん」
「可哀想って、そりゃ人生やってればいくらでもそんな挫折あると思います。それを───」
「歳とか関係ないわよ、この子にとって子役で活躍することが夢なんだからそれが失われた悲しみは深い」
私の言葉を遮り柳生さんは低い声で答える。さっきまでのおちゃらけた様子とは打って変わって鋭い目付きで睨みつけてくる彼女に私はそれ以上言葉が出なくなってしまった
「そ・れ・に!この機械を取り付けるためには本人だけじゃなくてご家族の了承も必要なんだよね♪私が勝手に決めているんじゃないんだよーそこら辺のことを理解してほしいな」
「わ、わかりました」
口調こそすぐに戻ったが少なくとも目付きだけは「私に逆らうな」という威圧が込められている。正直ただの頭の弱い人かと思ったらそうでもないらしい。腑に落ちないことは多々あるが今日は初日ということもあるし大人しくしておいたほうが賢明だろう
結局それからこの日はずっと私は黙って柳生さんの被験者自慢とも言うべき一人語りを永遠と聞かされるだけ終わった。それはまるで子供が採集した自慢の昆虫を見せびらかすような話の連続で正直気分が悪いだけだった
「今日は初日だから帰っていいよ、にゃはは」
なんて言葉で今日は結構早く早い開放されたが正直やっていけるかは不安一杯だ
研究所を出てすぐ来た龍ケ崎教授の「初日の仕事ご苦労様、柳生君は少し変わっているから大変だと思うが大丈夫か?」なんてメールに少しじゃないだろ、と思いつつ心配させるわけにもいかないので「大丈夫です、問題ありません」とだけメールを返しておく、問題ないかは正直自信はなかった



 翌日、昨日の教訓を生かして動きやすい地味な灰色のパーカーにジーンズという出で立ちで研究所を訪れた
ついでに言えば化粧もしていない、なぜって?そりゃ必要無さそうだったから
「おはようございま……ってなに!?」
研究所のあのベッドが並ぶ部屋に入った瞬間目に入ってきた景色に思わず驚きの声を上げてしまった
なぜならそこには大量の花束が箱に入れられ並んでいたからだ、花の種類は様々だがどれもプリザーブドフラワーのようだ
「おはよー秋葉っち、青春しているかな?」
「いえ別にしてませんけどおはようございます」
花束の箱の真ん中でなにやらリストを見ながらこちらも見ずに声を掛ける柳生さんに思わず昨日のように反抗的な態度で答えてしまう。いけない、ついこの人と話す時には自分でも反抗的になっているなと思って気をつけなければと昨日反省したのに
「あの、この花束はなんなんですか?」
「これはねープリザーブドフラワーってのでね、長時間保存できる花ね」
「えっとそうゆうことが聞きたいんじゃなくってですね」
「ああ、これはここにいる被験者の家族からのお見舞いの花束ね。初めは家族の意志に任せてたけどこんなに沢山あると手入れも面倒だからこちらで指定した花しかこないようになっているの」
「そうなんですか。それで私も手伝ったほうが宜しいですか?」
ようはここにある踏み場もない沢山の花を被験者の人の所に飾ればいいわけだ、それくらいの仕事なら簡単だ
「いやぁーこんな雑用は他の職員がやるからいいよ、私も“目安”のチェックをしているだけだし秋葉っちは第二面接室に行ってもらえるかな?いいともぉー」
「わかりました、それでは失礼します」
私はくだらない洒落をスルーしつつ頭を下げる。柳生さんは会話の最後までずっとこちらを見ることなく手に持つリストを神妙な様子でじっと見ていたがもしかして昨日の私の反抗的な態度が癪に触ったのだろうか、とはいえ今更そんなことを気にしていてもしょうがないし大人しくその第二面接室へと向かうことにする
「それで第二面接室ってのは……どこ?」
研究所自体それなりに大きい建物なので予め貰っておいたパンフレットを確認しつつ歩く
ただなんだろう引っかかるところもある、確か柳生さんはあれでも研究所のトップそんな人がなんで花束の管理なんてしているんだろう?
実際“こんな雑用”なんて言っているのに何故ああも真剣な様子で“目安”のチェックをしているんだろう?
そもそもなんの“目安”なんだろう?
気になることは沢山あるがあんまり好奇心旺盛なのも仕事に支障がでるだろうししばらくは黙っていよう
「ちょうどこのあたりだけど……ってなにあれ」
目の前の人だかりに思わず足が止まる。結構な数の人間が廊下に並んでいた。どうやらここの研究員では無さそうで老若男女、学生っぽい人もいれば主婦やサラリーマンの姿も見える
「あ、ああここが第二面接室なのか」
彼等が並んでいる先がちょうど私が手に持ったパンフレットでいうところの“第二面接室”だということに気付く
ああ、そうか彼等がここにいるのはあの柳生さんが作った“起きながら夢をみる”機械を求めてのことか
正直あの機械の存在は納得がいかないがその機会を求めてこんなにもたくさんの人がいるってことはそれなりに認められているってことなんだろうか
「ちょい、ちょーい!秋葉っち、なにこんな所で突っ立っているの?」
不意に背後からの声にかかる。振り返るまでもなくそんな風に私を呼ぶのはただ一人だろう、振り返ると慌てた様子の柳生さんが立っていた
「あ、えっとすいません」
「ダメだよ?時は金なり言うでしょ?ちゃっちゃとこの面接片付けないと午後からの仕事に響くんだから」
相変わらずのボサボサ頭を掻きながら並ぶ人たちの横を抜け第二面接室へ入る柳生さんにゆっくりとした足取りでついていく
「けど入って二日目の私なんかが面接の場にいていいんですか?」
面接室の中には誰もいない、ということは私と柳生さんの二人で面接を受け持つんだろうけど正直面接官なんてやったことないのであまり自信はないのだが
「大丈夫、私が被験者の面接するから秋葉っちは数合わせみたいな感じで椅子に座ってふんぞり返ってれば」
「は、はぁ」
数合わせとははっきり言ってくれる。まぁ直接私が面接する必要がないのは結構なことだけどふんぞり返っていてと言われても地味なパーカーにジーンズでは様にならない気がする、今更言っても遅いけど
木製の長テーブルにパイプ椅子が三つ、内二つに私と柳生さんが座り面接は始まった
「それじゃあちゃっちゃと始めちゃうよ、最初の方どうぞぉー♪」
柳生さんはタブレット端末を操作しながら声を上げる。どうやら面接者の情報は全部あの中に入っているみたいだ
「失礼します」
低い声とともに入ってきたのは顎髭の濃い小太りの男性だった。灰色のパーカーにジーンズという出で立ちがちょうど私と一緒であまり嬉しくない。柳生さんの「まま、座って座って」という言葉に彼は一礼をすると深くパイプ椅子に腰を掛ける
「ええっと中村建太君、21歳。職業はフリーター……でよかったかな?」
「はい」
「ねぇ秋葉っち。フリーターってことはようは無職ってことだよね?プータロウだよね?」
ふんぞり返ってればいいって言ったってのにいきなりそんな質問をこっちに投げかけてくる柳生さんには閉口せざるを得ない。しかも本人の前で普通聞くかなそうゆうこと、御本人が凄く嫌そうな顔でこっちを見ているんだけど
「いやまぁバイトしている人もいますし一概に無職とも言えないんじゃないですか?」
「あ、そっか。そだねーじゃ訂正する必要はなしっと、ええとそれで中村君はどういったことで私の“起きながら夢を見る”機械の被験者になりたいのかにゃ?」
マイペースに話を続ける柳生さんに中村さんは「この人大丈夫か?」といった表情で顔を強張らせたが面接ということもあって直ぐに表情を戻し語り始める
「僕には学生時代からずっと付き合ってた彼女がいたんです。でも先週急に別れを告げられて」
「ほうほう、それでなにが理由なの?」
「それがなんでも『他に好きな人ができた』とかで」
「へぇーそれは大変だね」
今にも泣き出しそうな中村さんとは対照的に全くの無関心といった様子の柳生さん。せめてもう少し真摯に聞いてあげてもいいんじゃないかとおもうが、まぁ無理な話だろう
「僕としては大学を卒業したらプロポーズしようと思っていたんです。空いた時間にバイトをいれて結婚指輪とかの資金を貯めていたのに」
「うーん、わかるわかるつらいねぇ」
「彼女のいない人生なんて生きていてもつまらないんです。だから“起きながら夢を見る”機械の被験者になりたくて」
彼女の事を思い出したんだろう、最後の方は涙声になりながら懇願する彼に少しだけ同情したくなる
「そうだ、秋葉っちはなにか聞きたいことあるぅ?」
「えっ私ですか?」
ふんぞり返ってればいいって言ってたのになんでまた私に話を振るかな?とはいえ発言権を得たのだから至極真っ当なことを聞いてみるか
「それじゃあえっと中村さんでしたか、一つ質問していいですか?」
「は、はい」
「別れた彼女のことなんて忘れて新しい彼女見つけた方がいいと思うんですけど」
私の発言はどう考えたって正論。少しは可哀想とか思ったけれど彼女にフラれたくらいで現実逃避、非現実な世界で人生を過ごすなんて馬鹿げている
「いやでも僕は、僕には彼女がいない生活なんて耐えられないんです」
「えっと別れてまだ一週間ですよね、あと一ヶ月もしたらどうでもよくなりますよ?あの機械に入ったら現実ではなにもしていないのと一緒、終わった過去よりも新しい出会いのある未来に期待した方が貴方のためだと思いますけど?」
そこまで言ってちょっと言い過ぎたかなと思った。この煮えきらないクヨクヨ男に対してではなく隣でさっきから睨みを効かせている柳生さんに対してだ
「そう、言われるとそうなんでしょうけど・・・・」
「きっと生きていればもっと可愛い彼女ができますって」
「そうなんでしょうか・・・・」
うつ向いてゴニョゴニョと呟く中村さんに私が更に言葉を続ければ考えを変えてくれるかもしれない、そう思った矢先だ
「いやいや秋葉っち。彼あれだよ?21歳でこんな老け顔だし前の彼女引きずるくらいの根暗だよ?今後彼女なんかできるとは思えないじゃない?」
面接官という上の立場なのか素なのかはわからないが柳生さんが歯に衣着せぬ言葉を言い放った
「あの、柳生さんいくらなんでも御本人の前でそうこと言うのは!」
「えー?でもだってウジウジしちゃってキモイじゃん♪よく彼女も付き合ってたと思うよ、んでんで何年付き合ってたのぉ?」
「に、二年です」
再び俯いてしまった中村さんがか細い声で答える。先ほどまでとは違って柳生さんの辛辣な言葉に憔悴しているんだろう
柳生奏さん、この人はいったい何が目的でこんな酷いことを言うんだろう?更に柳生さんは罵倒を続ける
「二年もよく頑張ったよねぇ彼女も、そして君は一生独身のままウジウジ孤独死♪いやぁ、こんな現実嫌だよねぇ?」
その言葉を聞いて思わずハッとなった。この人がやろうとしていることはとことん現実に絶望させてあの機械に放り込みたいだけ、きっと本当に中村さんのことが可哀想だとかそんなこと気にしちゃいない
私が質問したことで少しは現実に希望を持ち始めていた中村さんをこれで完全に絶望させてしまった
「君のことを唯一わかってくれる彼女も現実ではもういない、一生現れないけど私の機械なら君のことを永遠に愛してくれるんだよ?想像しただけでも素敵じゃない?」
そう言う柳生さんの表情はまさに悪魔の微笑みだった
「あのそれで、僕は被験者になれるんでしょうか?」
「んと中村君はえーここに書いてあるけど非喫煙者でお酒も飲まないんだよね?」
「え、あ・・・・あ、はぁそうですけど」
「それじゃオッケー♪住所に書類を送っておくので色々手を混んで御両親に判子貰ってちょーだい。あ、なんか昔そんな名前のお菓子あったなぁ」
あっけらかんとした様子の柳生さんに私も中村さんも呆然とするしかなかった
なんだかんだ話させておいて結局決め手は酒、煙草をやらないかそんなことでいいのか?
「はいはい~それじゃ次の人呼んできてね」
「あっはい、ありがとうございました。失礼します」
中村さんもよくわからないようだったがとりあえず立ち上がり頭を下げると部屋を出ていく。私は恐る恐るではあるがそのことを尋ねてみることにした
「あの柳生さん、あんな適当な感じで決めちゃっていいんですか?」
「いいのいいの、実は色々と計算されているんだなぁ、角度とか。そんな感じで残りもちゃっちゃとやっちゃうよー」
脳天気にそう言いながらタブレットを操作する柳生さん、どうしたらこんな性格になるのか全く理解できない
これが本当に研修でよかったと二日目にして思う、この人が上司だと気苦労が絶えないわ




「ふぅ・・・・こんなのがあと十日も続くのか」
午前中の面接を終え、私は無数に機械とベッドの並ぶ“第一研修室”へと一人戻ってきた。戻ってきたというかどうやらここで被験者の状態を見るというのが本来の私のメインの仕事だ
目の前のパソコンには被験者のナンバーと状態を示すデータが表示されている。異常があれば知らせるというそれだけの仕事
やりがいのない仕事だ、そう思うが今となってはこの方が良かった気がする
なにせ午前中の面接、結局あのあともずっと話を聞くだけ聞いて柳生さんの判断基準は喫煙歴、飲酒歴があるかないかだけで合否を決めていた。しかもそれを一人でやってくれるのなら一向に構わないんだけど時折私に話を振るから面倒だ、話は聞いていなきゃいけないし質問するにしても当たり障りない質問でないと柳生さんの機嫌をそこねる
いくら研修といえどこんな不毛な仕事、私には絶対にできないなと思う
「けどまぁ、ここにいる人達。そんなに現実が嫌なのかな」
テーブルの向こう側に並ぶ無数のベッドの光景を見るとふとそんなことを思ってしまう。なにせ面接に来る人のほとんどが本当に些細なことで現実から目を背けたがる。やれ就職に失敗しただ、受験に失敗した、リストラにあっただの
そりゃ本人としてはつらいことなんだろうけどそれだけで現実の自分を捨て去ってしまえるのか、それは私には今でも理解できない
でもそんな想いを持ってここに来た人は一体どれくらいいるんだ?
私は手元のマウスを操作し画面に表示される被験者の一覧を確認してみる。数十、いや数百はいるだろうか画面に表示されているのは“身体良好”を示すグリーンの背景に被験者の名前が表示されている
「ん、これはなんの印だろう?」
被験者の名前の横に星印がついているのとついていないものがあることに気がついた。その星印にマウスカーソルを合わせてみるとポッポアップで“1/6”と表示される
「他にもあるのかな?」
他のを星印に合わせてみると“3/6”とか“4/6”だとかの数字が並ぶ、どうやら“1/6”だけじゃないようだ
「日付、じゃないかそれじゃ六分の一ってこと?」
この数字が何を表しているのかはよくわからない。画面から目を外し、ベッドの方へと視線を移してみるとすぐにあることに気がついた
「ん、これって」
画面の星印とベッドを見比べるとそれが何を意味しているか、それがすぐにわかった。単純な話、星印がついているベッドには花が飾られているってことだ
けどそうなるとあの数字はあの花に関することなのか?とすれば花の交換時期、六日か・・・・いやあの花は確かプリザーブドフラワーだからもっと寿命があるだろう、ってことは六ヶ月を意味しているのか?
「で、それがなんだっていうのよ」
恐らくこの星印が花を示していてそれの寿命が恐らく六ヶ月に設定されている?そこまで無駄に推理しておいてそれが何を意味しているのかはさっぱりわからないから困ったものだ、花の寿命なんかをここに表示しておいて何の意味があるんだろう?
そんなことを考えていたら目の前のパソコンが突如としてけたたましい音を鳴らし始める
「え、なに私なにか変なことしたかな?」
原因を探そうとパソコンを操作するがなぜこうなっているかすらよくわかっていないし、思えばこんなことが起きるなんて説明受けてないので対処の仕方もわからない
「とりあえずアラートが鳴るってことはどこかに異常が出ているんだとは思うんだけど」
とはいえ慌てていてもしょうがない、冷静にパソコンの画面をスクロールさせて異常を探す。いくらベッドの数が多いとしても異常があるならきっとなにか変化しているはず、そう思うんだけど
「はいはいはいはい~!!全国の女子高生のみなさーん、可愛い子だとおもった?残念!柳生ちゃんです!!」
その原因を見つけるよりも先にまた面倒そうな人がテンション高く部屋に入ってきた、しかも手には煎餅の袋を持って
「柳生さん、あのなにか先程からアラームが鳴っているんですけど、これどうしたらいいんですか?」
「ごめんごめん。まさかこんなに早く鳴ると思ってなくてね♪とりま、ちょっと待ってね」
煎餅を口に咥えると面接時にも持っていたタブレットを操作しだす。おそらくここでアラームが鳴ったことはあのタブレットにも伝わっているんだろう、でなきゃこんなにも早くここに来るはずがない
「んとねー秋葉っちのパソコンでCの193番、佐竹雄二さんの所が赤く光っているはずだからそこをクリックしてみて」
「は、はい」
アラームが鳴り響く中言われるがままにマウスで画面をスクロールさせる。被験者の番号がわかれば場所を探すのは容易い、直ぐに場所はわかり緑一色の中に唯一赤く光るアイコンをクリックするとアラームはすぐに止まった
「止まったね♪それじゃ回収に参りましょうか!」
煎餅を齧りながら柳生さんが声を上げると部屋に担架を持った研究員が二人入ってくる
そもそも“回収”というまるで物の扱いのような言い振りに違和感を覚える
「秋葉っちもいい機会だからついてきて」
「わかりました」
渋々了承すると柳生さん、そして二人の研究員の後についていく
私が言うのもなんだけど柳生さんはともかくやってきた二人の研究員も特に慌てる様子もない、パソコンの表示からしてグリーンが“身体良好”ならレッドは“身体異常”でしょうにこんなに呑気にやってて大丈夫なのだろうか?
「んーとCの198番だからここか。それじゃちゃちゃっと回収しちゃって」
現場につくと柳生さんはすぐに二人の研究員に指示し自分は煎餅に齧り付いている。私は柳生さんの後ろでその様子を見ていたがその“身体異常”を起こした佐竹さんは苦しんでいる様子もなく眠ったように動いていなかった
「あの身体異常なんですよね。すぐにお医者様とか呼ばなくていいんですか?」
「ん、その必要はないよ。だってもう死んでるし」
「し、死んでる!?」
あまりにあっさりとその言葉に思わず聞き返してしまった。死んでるって人が死んでいるっていうのになんでこの人は呑気にも煎餅なんて食べているんだ
「まぁ死んでるって言っても脳死状態で身体は生きているんだけどね。この機械って脳に負担が凄くかかるからね、こうゆうこともあるのよたまに」
そう言いながら携帯電話を取り出すとどこかへ連絡を取り始める
「やっほー♪うん元気だよー。んでんで例のアレ、またそっちに送るからお願いねー♪」
たまに、そう言いながらも随分と慣れた様子じゃないか。それにこの遺体をどこへ運ぼうとしているんだ?
怪しい、怪しすぎる。しかもなんだか人が死んで嬉しそうなのが怪しい
「まぁ後は彼等に任せて秋葉っちはまたパソコンの前に戻っていいよぉ~」
「わかりました、ではそうします」
妙に笑顔な柳生さんに私は軽く頭を下げる
この時だっただろうか、ただ適当に過ごしてしまえばいい研修で柳生さんの秘密を暴いてやろうなんてこと考えたのは
それはもしかしたらこの被験者管理という単調な仕事に余計なスパイスを効かせたかったそんな軽い気持ちだったのかもしれない



それから一週間後、私は仕事終わりに第一研究室のPCの前で
龍ヶ崎教授へ向けてメールを打っていた

経過報告
しばらく私は大人しく柳生さん、もといこの研究所の人間の行動を観察した
午前中は被験者面接と言う名の非喫煙、非飲酒の人間の選別で午後は被験者の身体情報管理と退屈な仕事ばかりだったが時間は充分あったので私はこの研究所のデータをかき集めた
それによって様々なことがわかった。まずこの無数にあるベッド、その被験者の数は7366人。この数字自体には特に意味がないのだが実はこの人数がここ一週間変動していない
別に対したことでは無いように思える話だが毎日毎日被験者面接をして何人かの採用が出てこの機械を取り付けられている。実際にあの彼女にフラれたって面接に来た中村さんも今は妄想の彼女とよろしくやってる、そんな感じの人がここ一週間で8人増えているはずなのだ
けれども被験者の数は7366人のまま、つまり8人増えた分8人減ったということだ
じゃあその8人ってのはどこへ行ってしまったんだ?
なんでもペラペラ話してくれそうな柳生さんではあるがこうゆうところだけはのらりくらりとしてまともに話になら無い
逆に言えば隠さないといけないことがあるってことだと思う
考えられることはいくつかある。まず一つが佐竹さんのように身体異常を起こし脳死ということでどこかへ連れていかれたか
もう一つはこことは別の場所に同じような場所がありそこへ移動になったか、そして最後は自分の都合の良い妄想の世界から
急に目が覚めて現実と向き合う気になった・・・・か
とはいえ身体異常を起こせばけたたましくアラームが鳴るわけだしそれを私は聞いていない。当然私のいない時間になっているというのも考えられるけどそんな都合よくあるとは思えない
別の場所に移動されたというのもいささか疑問だ、あの機械はなんでも柳生さん以外の人には扱えない代物らしいし実際にあるとしてもなにも隠れてコソコソ移動する必要もないと思う。となると最後は自分でここから出ていったってことになるけどそれが一番無いような気がするな
「うーん、いまいち確証が得られないな」
龍ヶ崎教授に気になったことは報告するよう言われたので考えながら携帯電話のボタンを押していくが気になることが多すぎてなにを書いて良いかわからなくなってきている
「他に気になることと言えば『いなくなった8人は全員花が飾られていなかった』とかいや、花は関係ないか」
携帯電話のボタンを押す指を止める。花なんてあまり関係ない、どちらかというとあの柳生さんが持っているタブレット型PC・・・・あれにはこのPCには入っていない情報があるはずだ
『柳生奏のタブレット型PCに秘密があると思われます』
花の行を消してその文章を挿入するとそのまま龍ヶ崎教授へメールを送信した
この研究所に出入りできるのもあと五日、できればそれまでにあのタブレットの情報を手に入れることができればいいんだけど
「お、秋葉っちこんな時間までまだ残ってたんだ」
そんなことを考えると不意に背後から声がかかった。言うまでもない私のことを秋葉っちなんて呼ぶのは柳生さん以外いないんだから
振り返ると柳生さんは手に持ちきれないくらいのスナック菓子とコーヒーの缶を抱え立っていた
「柳生さん、すいませんすぐに帰りますので」
「んーそうなんだ」
私が振り返り頭を下げると机に荷物を置くとその中からコーヒーの缶を取りだし私の前へと置いた
「これ秋葉っちにあげるよ~♪遅くまで頑張ってるけど研修なんだから無理しないでね」
「ありがとうございます。柳生さんはまだお仕事ですか?」
「そんなところぉ~♪今日は徹夜だよぉ~やだ~」
柳生さんは憂鬱そうに言うと再び荷物を抱えフラフラと歩きだす
「それじゃねぇ、お疲れさま~」
「はい、お疲れさまです」
私は柳生さんの背中を見ながら考える。徹夜で作業だなんて一体なにをするんだろう?本当ならもう少し残っていればなにかわかるのかもしれないが流石に用もないのにここにいるというのは難しいだろう
「と、なれば・・・・」
夜遅くまで残るのがダメなら逆に朝早く行くしかない、それなら対して咎められることもないし、もしかしたらなにか情報が得られるかもしれない
「よし、それしかないな」
思い立ったら即実行が私の取り柄だと自負している。柳生さんからもらったコーヒーを一気に飲み干すと私は決意を固めた



翌日、私は始業時間よりも二時間ほど早く第一研究室の前までやってきた。あんまり早いんで守衛さんでもいるのかと思ったが案外すんなりと中に入ることができたのは幸運だった
「おはようございまぁす」
研究室の恐る恐る扉を開け部屋の中の様子をうかがう、私が指摘してからすぐに変わったLEDの電球が煌々と部屋を照らしている
「誰もいないのかな?」
辺りを見渡しながらベッドの脇を抜けていつもの被験者を管理しているパソコンの前まで進む。被験者の管理画面なのでパソコンの画面は当然つきっぱなし、スリープモードにすらなっていないが一つ気になることがあった
「あれ、花がない?」
画面には花が設置されていることを示す星印がどこにもなかったのだ
「回収でもしたのかな」
私はパソコンの奥を立ち上がり覗き見る。だが表示ミスというわけではないようだ、実際どのベッドにも花は飾られていない
一体どうゆうことなんだろう?
てっきりあの星印の数字の意味は花を変える月日くらいにしか思っていなかったが一気に回収されていると言うことはもしかして別の意味があるのか?
「ん、あそこに落ちているのってもしかして柳生さんの・・・・」
ちょうどベッドとベッドの間、太めのケーブル同士の間に刺さるように落ちているのは柳生さんのいつも使っているタブレット型PCだった
「なんであんなところに?」
近くに柳生さんがいるのだろうか?私は入念に辺りを警戒しながらタブレット型PCへと近づいていく
あのいつも髪の毛ボサボサでメイクも一切してない人だ、案外その辺で転がっているって言うのも考えられる
はやる気持ちをなんとか押さえて周辺のベッドを調べる
ベッドの下だとかケーブルに埋もれてたり職権乱用で良い男のベッドに潜り込んでいるかもしれない
「いない・・・・ってことはこれってチャンスなんじゃ」
一瞬そう思ってみたりもしたが逆にここまで上手く行き過ぎるとなにかの罠なんかじゃないかと勘ぐってしまう
とはいえ虎穴に入らずんば虎児を得ずとも言うし覚悟を決めてゆっくりとタブレット型PCを手に取る。大体いけないのはこんなところにこんなものを放置している柳生さんなんだから少し触ったくらい大丈夫だろう
「まぁとはいえロックがかかっているだろうからせめてメモリーカードのコピーは取らないと」
データをコピーする程度なら容量にもよるが大した時間はかからないはず
「え、嘘でしょ?」
そう思ってメモリーカードを取ろうとしてふと画面に手が触れてしまう、するとどうだろうロックがかかっているだろう画面はあっさりと開き、そこにやたらと重要そうな資料が目に飛び込んできた
「嘘でしょ・・・・ロックをかけてない事も信じられないがこの資料が本当なら」
思わず息を飲む。まさかこの研究所もとい柳生楓がやっていることがこんなにも恐ろしいものだとは思わなかった






「柳生さん、あの乃木坂秋葉って人凄いですね!!」
第一研究所の被験者管理用パソコンの前でぼけぇ~っとしていたらなにかと元気の良い新人の石崎栄枝が私に声をかけてきた
「ん、なにがぁ?」
「なにって次々とこの研究所の秘密を探り当ててますよ!」
ちょっと正直徹夜で眠たいから話しかけてほしくなかったんだけど栄枝っちは妙にハイテンションで続ける
「なんていうかこう二時間ドラマの刑事さんみたいで見ていると楽しいんですよ、次々と謎を解明していく感じが」
そりゃねぇ~だって私の機械は『自分に都合の良い世界』しか見せないんだから当然でしょ
「そんなことよりぃ、ちゃんと秋葉っちの親御さんから判子とお花代もらってきた?」
「はい!それならここに、お金の方は研究所の口座に振り込まれていました」
わたしの怪訝そうな声にも関わらず栄枝っちは甲高い声とともに判子の押された“被験承諾証”差し出す
「まぁ仕事さえこなしてくれればぁ~別に人の夢を覗き見ようと勝手だけどいくら見ても時間の無駄だと思うよぉ」
どんなに夢の中でオリンピックで活躍しようとも
どんなに夢の中でアイドルとして活躍しようとも
どんなに夢の中で私のことを探ろうとも
現実じゃない、まるで現実世界には影響を及ぼさない
だから、わたしが思うにそんな人間は役に立たないからさっさと別の人間の糧になればいいと思う
献花はその基準、あのプリザーブドフラワーを飾るためには法外なお金を出さないといけないようにしてある
花があるうちはまだその人の事を誰かが思っていて現実へ帰って来いと引きこもった扉を叩いていると判断している
しかし花がなくなった人間は現実世界から完全に忘れられて妄想の世界に陥った愚者、そんな人間を生きながらせるくらいなら
現実を生きたい人間にその権利を渡すべきだと考えている
結果、現実から切り離された愚者には脳死を引き起こし、それから臓器移植ということで他の人間に役に立ってもらっている
・・・・私の秘密を探ろうとしたただ一人を除いては
「あの、それであの人の話って本当なんですか?」
「ああ、秋葉っちの夢の中の話が本当かどうかって?そうだねぇ~真実を知っているのは」
興味津々といった様子の栄枝っちに私は乃木坂秋葉の横たわるベッドを見て呟く
「わたしたちの秘密を知っているのはあの人だけね」



《 羽のもがれた蝶の行方 了 》



【 あとがき 】
どこぞのかぼちゃが私信なのにさらっと掲載するのでいつか煮物にしてやろうと画策している今日この頃
ギリギリ間に合わせた感が半端ないです、申し訳ない


【 その他私信 】
果たして乃木坂秋葉は大丈夫なのか?




数ヶ月後、そこには元気に走り回る乃木坂秋葉の姿が
乃木坂秋葉(21歳・本人)
「いやぁぁぁ・・・。あの時はホントしぬかと思いましたよ、でも教授が助けてくれてホント助かりましたよ、教授には今でもとても感謝していますね♪」

だが!世の中にはもっとすごいヤツがいた!!!
ではアメリカの静かな農村で起きた悲劇を、アメリカの番組、レスキュー911からの最新映像で紹介しよう!!


べ、べつに好きで書いてるわけじゃないんだからね!  氷桜夕雅

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