Mistery Circle

2017-10

《 図書恋愛 》 - 2012.07.01 Sun

《 図書恋愛 》

 著者:ひとみん








本の虫は同類を好きになるもんだ。

本を挟んで、見つめ合う二人を見て確信した。類友って真理。



ごくり。
図書館の貸し出しカウンターの前でひとつの本を2人でもち、人の頭の上で見つめあうこと数分。
後ろには並んでいる人がいるにもかかわらず2人の異様な雰囲気に呑まれたように、カウンター越しの2人を周りは見ていた。

「あの・・・」
「はい」


「つ、月が綺麗ですね」

告白はえーよ。

















本のソムリエ、と呼ばれる人がいる。公立の図書館や本屋に勤めていて、相談に乗ってその人の今の気持ちや状態に一番合った本を提供する、という職業だ。
自称のようなあいまいなスペシャリストではなく、検定試験に受からなければなれない立派な資格のひとつだ。
私の友人の小泉真もこの仕事についていて、現在同じ職場で働いている。

「小泉」
返却された本の整理をしていた彼は、こちらを振り向いて首をかしげた。
「はい、これ今日の依頼分。整理の続きは私がやっておくから」
手紙を渡すとこくりとうなずき、すぐに中身を一つ一つ丁寧に読み始めた。
全ての手紙を読み終わるとポケットから出した付箋にペンでスラスラと文字を書き、手紙に貼り始めた。そして足早に児童書の棚へ行き、桃色の背表紙の本を出してパラパラと軽く中身を確認し、頷いてからまた次の本棚へ写り本を取り出していく。

しばらくしてから机に持ってきた本を置き、図書館専用の便箋に手紙を書いていく。

「友達と仲直りきる本とのリクエストありがとうございます。仲直りする前にどうして喧嘩して悲しかったのか、自分の気持ちを確かめてみるといいと思います。僕はこのサナとクジラの世界一周」がオススメです。仲直りできることを心から祈っています」

「ハッピーエンドで終わる感動する本が読みたい、とのリクエストありがとうございます。今まで借りられた本の履歴から、お客様には「影と光の調和」がオススメです。図書館員の間でも密かに人気で、最後の読後のさわやかさが気持ちのいい小説です。いつもご利用ありがとうございます。」

「西川良子先生の小説と似た作風の小説が読みたいとのリクエストありがとございます。西川先生のような時代小説がお好きであれば、香川哲弘もお客様の好みの作家さんではないかと思います。導入に「江戸町人物語」はいかがでしょうか。いつもご利用ありがとうございます」



丁寧に手紙を記入し、依頼の有った内容に応えた本に挟んでいく。こんな本が読みたい、こういった本はあるかしら、という依頼に一つ一つ丁寧にあたり、本の楽しさを知ってもらう。それが本ソムリエの仕事のひとつだ。

全ての手紙を書き終わった後、彼は私のところに来て袖を引いた。
終わったといういつもの合図だ。

「お疲れ様。それからこれはプライベートの手紙」

私はポケットから出した手紙を渡した。手紙の裏に書いてある名前を見ると彼は普段は鉄面皮とも言われる顔をふにゃ、とも、にへ、とも言いがたい心底嬉しそうな崩れた表情をした。一人で悦に浸る彼に忘れないうちに伝えておく。

「恭子からの伝言。こないだ紹介してくれた本、楽しかったありがとうだとさ」

彼らはなんともいじらしく、成人した大人とは思えないような初々しいやり取りをかれこれ3ヶ月も続けていた。ITが発達したこの時代に。

文通である。

なぜか私の大学時代の友人を好きになってしまった小泉は、ご丁寧に3ヶ月も手紙でのみやり取りをし続けていた。
そんな奥手な小泉を(というか小泉の手紙を)気に入ったらしい恭子は、これまたご丁寧に文通に付き合っていた。

小泉は極度の上がり症で緊張しいだった。人前で話すとどもる、緊張する、無口と無表情に拍車がかかるの三拍子そろったウルトラでハイパーな上がり症。
そんな彼が一目ぼれとはいえ、すぐに声を掛けられるわけが無かった。ひとまず手紙で自分の気持ちを、と手紙を私経由で恭子に渡した。その手紙の内容がかなり響いたらしく、嬉しそうに返事の手紙を書いて翌日には恭子からの手紙を小泉に渡すことになった。
なんだこれ。

恭子は恭子で小泉とは別の意味で本と携わる職業に就いていた。大学で有名な教授の助手をしていて、彼女自身もいくつか論文を書いている。本を読むのは好きだが、それはストーリーとかキャラクターを好きになるのではなく、その作者の書いた文章とか日本語の使い方や韻の踏み方が好きでその本が好きになるとは彼女自身の言葉だ。

たしかに、ジャンルもバラバラで漫画から古典まで多彩に読みこなす彼女の本の趣味を理解することはかなり難しい。昔、告白してきた男性に

「日本語の使い方が好みじゃないから付き合えない」

と断ったことはかなり大学の中で有名なエピソードだ。


そんな日本語にうるさい彼女に、正直言って小泉の手紙を渡すのはかなりの不安があったが、思いのほか気に入ったらしく、かなりの好印象を小泉は持たれた。
ここから文通が始まった。




そんなやりとりが約3ヶ月ほど続いたある日、恭子から電話があった。

「はるか、小泉君は今週いつ出勤するの?」
「すぐには分かんないから、シフト確認したらメールする」
「おけ、ありがとう」


































そして恭子が職場に乗り込んできて、小泉に挨拶しに来た。小泉は感極まったか何なのか、いきなりこの告白である。

通じるのか、この告白、通じるのか!?

ごくり。





























「お母さん、私の名前のゆらいって何?」
「ん?急にどうしたの?」
「自分の名前のゆらいを聞いて、発表するっていう国語の宿題が出たの」
「ああ、懐かしいわね、お母さんもやったことあるわ」
「ねえ、ゆらいは~?」


「あなたの名前はね、お父さんとお母さんが一番好きな小説に出て来た名前からとったのよ」





《 図書恋愛 了 》





【 あとがき 】
なんで一目ぼれしたのとか色々すっとばして書きたいシーンだけ抜き出しました。

なんか最初に考えた話とだいぶ方向が変わってしまいました。
うぬぬ。もっと・・・ちゃんと・・・文章練らないとダメですね・・・反省。

今回ぜんっぜん話が浮かばなくて超絶悩みました。
オラアア、出て来いよ!!!お前はもっと頑張れるはずだろおおおおおお!!!!!
と、残りわずかなマヨネーズを搾り出すような気持ちでこの文章を書きました。

悩んだ時間プライスレス。


ひとみん
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