Mistery Circle

2017-10

《 Night 》 - 2012.07.02 Mon

《 Night 》

 著者:すぅ







夜の帳が降りてきて、月ももう沈んだ。
漆黒の夜。
そう、そこは闇。
闇は俺の天下だ。

そう、俺は夜が好きだった。
何もかもを黒く塗りつぶす闇。
その中を、音もなく彷徨うのが好きだった。
ほんの少しの月明かりも、俺にとっては十分すぎるくらいに明るい。

自由気ままに振る舞える夜。
いつものように当てもなく、夜の街を彷徨っていた俺。
そう、夜はいつも俺の時間だった。

そして、ある月のない夜に、俺は君に出会った。
君もまた夜の中を、当てもなく彷徨っていた・・・・はず。
それともそれは俺に出会うため?
なんて思うのは、自意識過剰かな。

でもあの日君に出会ったのは、きっと運命。
偶然という名の必然。
一目惚れなんて、そんなもの信じてなかったけど
実際にあるんだなって、あの日わかったよ。

一目見た時に全身に電気が走るって聞いたことがあるけど、あれは本当だね。
ビビビ、というよりバチバチ、そんな感じだった。

君に初めて会った時の衝撃。
雷に打たれたのかと思ったよ。
真っ直ぐ俺を見つめる君の瞳に俺は射抜かれた。
雪のように白い君の笑顔が天使に見えた。
優しく、暖かく包み込んでくれそうな君に、俺は一目で夢中になったんだ。

初めてあったあの日から、いつも考えるのは君のことばかり。
会いたくて会いたくてたまらない。
もっともっと君を知りたい。

その日から俺は夜の中、あてもなく君を探した。
君を待った。
俺は本当に、君が欲しかった。

そして、あの夜のこと。
君と初めて過ごした夜の事は忘れない。
想いは通じるんだな・・って思ったよ。
君の細くて白い身体を抱きしめた時の気持ちを
君の滑らかな感触を俺の手は覚えている。

君との逢瀬はいつも夜だった。
ある夜のこと。
「ねぇ、ずっと一緒にいよう。」
そう言った俺の言葉に、一瞬驚いた表情を見せ、
それから悲しそうな顔をした君。
わかってるよ。
君がはめているその細いリング。
それが君の枷だってこと、俺は知ってる。

こんなにも細いのにな。
その枷は、太く大きく君を縛り付けてる事
俺は知ってる。

だから時折悲しそうな顔をする君を
俺は黙って抱きしめてた。


そんなある日・・・・・。
君は、突然いなくなった。


夜。
俺の時間。
でも、君のいない夜は嫌いだ。
白く見える吐息が、君を思い出させる。
手を伸ばして夜に同化していくその白を、掴んでみる。
掴めると思ったから。
でも、俺の手は虚しく空を切るだけ。
君はいない。

何をしても、つまらない。
退屈、というより馬鹿馬鹿しい。

また吐息。
吐息、というより溜息だな。
妙に達観している自分が、なんだか可笑しくなる。
苦し紛れの苦笑いを、夜にこれでもかとぶつける。

見上げた、空。
そこには、夜空を裂いて縦横無尽に走る電線が。
なんだあれ。
蜘蛛の巣、みたいじゃないか。

あれ?
蜘蛛の巣に何かがかかっている。
白く見えているあれは・・・君?

もう一度目をこらして見る。
蜘蛛の巣に見えたのはやっぱりただの電線だった。

さっきのは目の錯覚?
それとも何かの暗示?
君のいない寂しさが見せた幻?

いや、全てのものには意味がある。
これは何かの暗示なのだ。
俺は走った。
あてもなく夜の中を。

君のことが聞けるなら、どこへでも行った。
誰の話でも聞いた。
君の香りが残っているなら、それを追いかけた。

そしてついに見つけた。
君の家・・・・。

夜の闇にまぎれてそっと窓から覗いてみた。
君なのか・・・・・?

君に寄りそう優しそうな男性。
そうか、あの人が君のご主人なんだな・・・。
あれ?
君じゃない。
あれは君の写真だ。

その人は君の写真に語りかけていた。
横顔が悲しそうだ。
それを見て、俺も悲しくなった。

もしかして、君はご主人さえ置いていなくなったのか?

君には何か事情があるんだ。
誰にも話せない事情が。
きっとそうにちがいない。


その日からさらに俺は、死に物狂いで君を探し続けた。
どんな小さな手がかりでもいい。
君を探し出すんだ。
俺が。

あの電線の幻が、きっと何かを教えてくれているんだ。
俺の中の何かがそう言っていた。

その夜俺は夢を見た。
夢の中の君は、捕らわれの姫だった。
俺は、助けようとしてしくじる勇者。
姫の鎖を、剣で断ち切ろうとした。
何度も何度も。
でも、鎖は切れない。

目覚めて俺は噂に聞いていた、ある場所の事を思い出した。
昔、物知りの老人に聞いたことがあるあの場所のことを。

老人は言った。
「あそこには、決して近づいちゃなんねぇ。」
遠い記憶だが、はっきりと覚えている。
子ども心に、「そこへ行ってはいけない」と俺の本能か感じていたからだ。


でもなぜだかわからないが、確信があった。
「君はそこにいる。」と。

そう思ったとたん、俺は駆け出していた。

走った、走った。
夜の中を。
そして俺はついにその場所に来た。

その場所がどこにあるのかは、誰もが知っていた。
でも、自分から近づくものは誰ひとりとしていなかった。

俺は、その場所の前に立った。

大きな建物だ。
門は、固く閉ざされ明かりもついていない。
「今は、誰もいないみたいだ」
俺は心の中でつぶやくと、慎重に門を乗り越えて中に入った。

建物の中に入っても、中を窺い知ることはできない。

「朝になるまで待つしかないか。」
辛抱強く俺は待った。

夜が明けて少しした頃
重たい門が開く音がした。
見ると若い兄ちゃんが面倒臭そうに門を開けていた。
「“イツツ”・・・か。コイツが君を攫った一味の一人だな?」

注意深く様子を窺っていると、開けたままの門の中に車が入って来た。
降りて来たのは中年の男だ。
「今度は“シマヒサ”・・・か。まだ仲間がいるのか?しかしいったいコイツラは何者なんだ?」
確かめに行きたかったが、俺の中の何かがまだ出るなと言っていた。

そう思った瞬間、身体がぞくりとした。
「見つかったか・・。」
凍るような視線を感じたと思ったら、小柄な老人が足を引きずるように入って来た。

どうやら見つからなかったようだ。
俺は、ほっと溜息をついた。
名前が見えないが、どうやらアイツが一味の親玉のようだ。

どうにか奴らの隙をついて、君がそこにいるか確かめなくては・・・。

一晩中起きていたせいか、俺はいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「おいお前、そこで何してるんだ?」
何が起きたのかわからなかった。

気がついたときには、一味の親玉とその部下らしいイツツに俺は捕まってしまっていた。
君を助けに来たはずなのに捕まるなんて。
俺としたことが、なんて醜態だ。

奴らは俺を建物の奥に連れて行くと、顎をしゃくって部屋を指した。
「さぁ、この部屋に入って大人しくしているんだな。
運が良けりゃすぐに出られるかもしれないぞ。」

部屋の中を見渡す。
ここに居るのはどうやら俺と同じ目に遭った奴ららしい。

そしてその中に俺は見つけた。
君を。
間違いない。
少しやつれているけど、夢にまで見た君だ。

「やっと見つけた!大丈夫だった?」
そう言う俺に、彼女は悲しそうに笑った。

「俺が助けに来たから、安心して。」
そうは言ったものの、脱出する術など考えていない。

でも、君と一緒にいられるだけで俺は幸せだった。
このままここで死んでしまってもいいとさえ思った。

俺は君の盾になり、部屋の中で君を守った。

そうこうしていると、あの親玉が部屋の前にやってきて俺たちを一瞥すると
「さて、そろそろお迎えが来るかな。」と無表情に言った。
その声は、死神からの死刑宣告に聞こえた。

しばらくすると、パタパタと足音が聞こえ、イツツがやってきた。
そしてその後ろにもう一人。

俺は、我が目を疑った。
俺は、部屋の外に信じられない人物を見つけたのだ。

「あれは君のご主人・・・・。なんでここが・・・。もしかして、奴らから連絡があったんじゃ?」
俺の頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。
ヤバいぞ。
こんなところで、ご主人と鉢合わせなんて。
俺どんな顔すればいいんだよ。

「ここですよ。」とイツツがご主人に言う声が聞こえた。
安堵の表情を浮かべるご主人。

やっぱり君を救うのはご主人なのだと思い知らされる。
夢の通り俺は間抜けな勇者でしかないのか。
何もできない自分が悔しい。

イツツが大きな錠前に鍵を差し込みガチャガチャと回した。
がちり、と音を立て錠は開いた。

君を攫って逃げるなら、今しかない。

奴らに攫われた君を今度は俺が攫うんだ。

君を縛っていた枷を俺が外してやる。
そう、君と一緒に俺も逃げる。

思いは先走るのだが、現実はそう甘くはなかった。

「おっと、お前は出せないな。」
イツツの手が俺に伸びる。

逃げられない!
そう思った時、君が俺にしがみついた。
君が俺を庇ってくれてるのか。

それを見てご主人が目を丸くして言った。
「サツキ、もしかしてソイツのことが好きなのか?」

君は黙って頷く。

ああ・・俺もう死んでもいいや。
君のご主人の前だとしても、君の腕の中で死ぬなら本望だ。

しかしそう思ったのもつかの間、俺は君から引き離された。
「だから、お前はこっちだ。」イツツが俺を連れて行こうとする。

「待ってくれ!」
俺は耳を疑った。
君のご主人がイツツを引きとめている。

どうやら俺は助かったらしい。
君のご主人に助けられるなんて、君を愛する者として情けない話だが、
ここは素直に感謝しておくことにする。

だってご主人がいても、君の心はもう俺のもの。
そう思っていいんだよな?

ご主人が君を抱き寄せ、複雑そうな表情で問い詰める。

「サツキ、おまえ何時の間にオトコ作ったんだ?」
君は目をくるくるさせて知らん顔だ。

ご主人はちょっと困った顔をしたが、仕方なくその日は俺を家に連れて帰った。

そして・・・・・・・
そのまま俺は君と一緒に暮らしている。

君を縛っていた枷の細いリング。
そいつから君を開放しようと躍起になっていた俺。
今では俺も同じ枷をしている。

「サツキ、ナイトご飯だよ!」
どうやら俺は「ナイト」と呼ばれるようになったらしい。
夜みたいに黒いからってのもあるけど、君を助けるために頑張ったからでもあるらしい。
ちょっとくすぐったい気持ちもするが、まぁそう呼ばれてやってもいいかな。

愛しい君と優しいご主人。
自由気ままな夜の一人歩きの時間はすっかり減ってしまった。
ちょっと退屈な時もあるけど、こんな幸せがあってもいいなと今は思う。

さて、ご飯の時間だ。
俺はのんびり返事をしながら、ダイニングルームに向かった。
「にゃ~ぉ♪」





《 Night 了 》





【 あとがき 】
自分でお題を出しておきながら、全く書けずに時間が経つばかり。
皆様、変なお題ですみませんでしたっ!(汗)

気晴らしに(参考にとも言う。)これまでのMC作品を読ませていただきました。
前回鎖衝さんが、作品中に私の作品を引用してくれて嬉しかったので、今回は私が少しばかりの恩返しを・・。
とある作品(わかりますよね)の登場人物を逆さ(漢字を)に読んで誘拐犯?一味にしてみました。
それにしても、なぜか猫の話になってしまう不思議。
皆様、どのへんから猫だってわかりましたか?(笑)


すぅ
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